表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

2-1 どうやら舐められてるらしい

 結局、シンが何者でどうしてこんな力があるのか、それは分からずじまいだ。打ち明けようとも何度か考えたが、例え異世界人であると言うことを納得させても元々魔王だったなんて言えるはずもない。その為、今は黙っておくのが良いとなった。


 そして翌日、何百年ぶりかの登校にシンはほんの少しだけ心躍らせていた。どんな人間が学院にいるのか、そして何が起こるのか、これからの未来がとても想像出来なかった。


「シン、忘れ物はないか?」


「問題ないよ。荷物はカバンにしまってある」


「良し。なら行ってこい! 先生に勝ったんだってとこ見せつけてやれ!」


「俺はそんな自慢しないよ。それじゃ行ってきます」


 玄関を出て、学院までの道をのんびり歩く。こうして街中を歩くなんて果たして何時ぶりだろうか。前は椅子に座って顎で人を使い仕事をこなし、敵が来れば戦って殺しての繰り返しだった。


「懐かしいな。この感じは」


 そんなことを呟き、学院の校門の前まで来たところで5人の生徒に囲まれる。


「邪魔」


「てめぇだろ? 転入生ってのは。不正をして合格したっていうインチキ野郎」


「はぁ……メイギスが見てた中でそれを指摘されなていない時点で、それは無いってわからない?」


「校長を呼び捨てなんて何様だてめぇ? それもどうせ校長を金かなんかで買収したんだろ?」


「くだらん。俺はお前らに構ってるほど暇じゃない。どかないなら殺すぞ?」


 シンは本気でそう発言する。だが、それを本気と思わなかった5人は声を出して笑う。


「殺すって、お前みてぇなガキに出来るわけねぇだろ? おもしれぇな! やれるもんならやってみろよ!」


 男子生徒はシンの肩を軽く突きそう言う。シンは「わかった」と言い、笑う男子生徒の腹を目掛けて手刀を繰り出す。


「ぐふぁっ!? い、いでぇえ」


 シンの手は男子生徒の腹を貫通し真っ赤に染っている。それを見ていた周りの4人の生徒は笑い声が一瞬で悲鳴に変わり、その場から走って逃げて行く。


「なんだしょうもない。やれと言ったからやったのに、そちらから逃げるとは情けない」


「ぬ、抜いてくれ……し、死ぬ……」


 みるみると男子生徒の顔色が悪くなり、これ以上いくと死ぬと思ったシンは、即座に手を抜き回復魔法を施す。


「貴様にこの魔法を使うのも勿体ない……まぁ死なれて問題になるよりマシか。『完全完治』」


 その魔法が発動されると同時に、男子生徒の腹は塞がりついでに制服までも戻道理になる。


「は、腹に穴がない!?」


「死にたくなかったらさっさと失せろ」


「ひ、ひぃぃ!!」


 男子生徒はアニメの雑魚キャラが出すような声を出しながら学院へと逃げ込んで行った。


「はぁ……これは先が思いやられる」


『完全完治』ありとあらゆす怪我、病気、呪いを完治させる魔法。死んだ者には使用不可。また、死から蘇った者にも使用不可。


 シンはため息をつきながら校門をくぐる。


「凄いなあの人……」


 影から見ていた彼女はそう呟く。


「マヤ? 何をそこで見ているの?」


「ひぃい! なんだエリーか……脅かさないでよ……」


「いやいや、何か後ろ姿がストーカー見たかったよ? そりゃ声もかけるでしょうに」


「そのおばさんぽい喋り方まだ直らないの? まあ仕方ないか。実際年齢的にはオバサンだし?」


「マヤ? 今私が機嫌良くて良かったわね。危うくその尖った耳を引きちぎるとこだった」


「辞めてよね! これはエルフの唯一の特徴なんだから!」


 マヤと呼ばれる彼女は尖った耳をピクピクと動かす。そしてもう一方のエリーも、同じく耳が尖った形をしている。


「ま、とりあえず行こうよ。今日はあの例の新入生が来るんでしょ? ちょっかいかけてやろうかしら」


「やめた方がいいよ。殺されるから」


「何知ったような口を聞くのよ。ほら、遅れるよ」


 エリーはマヤの手を引っ張って校門をくぐる。


 それからシンは校長室に呼ばれる。色々詳しい話をされるみたいで、今はメイギスと対面に向き合い椅子に座っている。


「早朝に来てもらって悪いな、シン」


「別にいいよ。面白い物も見れたし」


「面白い物?」


「ああ、いや、こっちの話。それで俺はなんで呼ばれたの?」


「とりあえずこの学院の話をしておこうとおもってな」


「確かに、聞いてなかったね」


「そうだろう。それでは―」


 この学院では、学年はあれどクラス分けがない。その為、1学年全員が同じ授業を受けることになる。在学期間は5年。20歳になるまではこの学院で生活をする。


 寮生活が基本となり、実家には月に1度だけ帰って良い。長期的な休みは1年に1度。年末には短期的な休みが設けられている。


 皆同じ授業を同じ時間に受ける為遅れは発生しないが、欠席した場合などはその分遅れとなる。だが、その補填は一切なく自己責任となる。単位制度は無し。期間内に基準値に達していれば合格となる。ただし、基準値を下回った場合は退学となる。


 この学院には決闘制度が設けられている。好きな時に好きなだけ決闘をする事ができる。順位によって、成績も変動する。順位による退学は無いが、その分未来的な行動に支障が出てしまう。例であげれば、冒険者になった時に、その学院での順位で見られる為、あまりパーティーやクエストを受けにくくなる。


 学院での不祥事や揉め事は即刻処分とする。


「―とまぁ、大まかにはこんな感じだな。他に分からないことは?」


「お金とか食事はどうすればいいの?」


「お金は学院内の順位によって変動する。最下位でも1ヶ月暮らせるだけは援助する。食事は校内の学食を使うといい。まぁ外に出てもいいがな」


「へぇ。この学院ってお金あるんだね」


「まぁな。他に分からないことは?」


「テストとかはあるの?」


「ある。筆記と実技共にな。でもまぁ、お前なら余裕だろう」


「まぁね」


「そろそろ時間だ。大雑把で悪かったな、わからないことはまた聞いてくれ。それじゃ、初日の学院楽しんでこい」


「ありがとう」


 シンはそう言い、校長を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ