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星とプラネタリウム

 大階段とは、学校の近くの大きな階段である。


 そこの上は見晴らしが良くて、東京都内だけど、頑張れば富士山も見える。


 そんな場所は、空も広く見える。


 早めに行って待っていると、後輩がやってきた。


「先輩。こんばんは……さむい」


「そりゃあ一月の夜だから」


「ごめんなさい」


「いや、久々に会えてよかったし、ほら、すごい天文部としてはいい日だな」


「そうですね……今日やりたかったことも、それなんです」


「星を見たい……ってことか。今日すごい晴れてるな」


「はい」


 僕は後輩の横顔を見た。


 階段の上から二段目に座ってみる。


 そうして見上げると、後輩の横顔、そしてその先に、星が見えるようになる。


 僕は南東の空を見ている。


 圧倒的に目立つのはオリオン座。


「ねえ先輩」


「どうした?」


「天文部、なくなっちゃっても、大丈夫なんですか?」


「大丈夫だと思う。プラネタリウムは、児童館がもらってくれることになったんだ。これからも現役だよ、ぶっ壊されたりはしない」


「それはよかったです」


 後輩は安心したように笑った。


 今は後輩は高一、僕は高二だ。天文部がなくなった来年はどうしようか。


「……とにかく、逆に今までよく持ってたとは思うけど」


「天文部がですか?」


「そう」


「確かに、なんでなくなるのというより、なんでなくならかったんだって感じですよね」


「そうだな……多分プラネタリウムの行き先が見つかるまで待っててくれたんだろうな」


 僕は夜空から後輩に焦点を移した。


「でも、無くなるのは寂しいですね」


「まあ……そこそこはな。でも、ひかりはさ、こんな潰れそうな部活に時間取られたら友達付き合いにも支障が出るしやだって……」


 後輩……ひかりは前にそう言っていたのだ。


「まあいやでしたよ? 確かに。私、そこまで星に興味があるってわけでもないし……」


「そうなのか?」


 それは初めて聞いた。


「はい。どっちかっていうと、興味があるのはプラネタリウムの方です」


「そうか。プラネタリウム……」


「私、昔体弱くて外で遊べなかったので。星もあんまりみようとは思わなかったんです。でもある日、小学校の科学館見学でプラネタリウムを見て、すごいなぁって」


「なるほど」


「なんか初めてみんなと同じだけ楽しめた気がしたんです。運動会とか学芸会とかあんまり楽しい思い出はなくて。不器用なので展覧会は大嫌いでしたし」


「まあ……確かに不器用かもな」


 プラネタリウムの補修をしようとしていた時、めっちゃさらに破壊しようとしてたし。


「返答がそれですか。全く……」


「ごめんね」


「いえ……まあとにかく! そういうわけでプラネタリウムは……好き、なんですよ」


「うん。よくわかった」


 僕はうなずいた。プラネタリウムが好きなひかりがいたおかけで、最後寂しく、一人で天文部ごとさようならするなんてことにならずに済んだ。


 ひかりに感謝だなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際、高校3年間とか、限られた時間のなかで技術を伝え残して行く、っていうのはかなり大変なんですよね… すぐに途切れてしまう。 うちの子供も、一昨年? 学校のプラネタリウムの操作を伝授されたの…
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