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19.真相と愛情

お久しぶりです。今回だいぶ長いです。。


 文句を言いながらも元気にウェジットに背負われたヒュイスにユキは近づいていった。近づいてきたユキにウェジットも立ち止まり、背負われているヒュイスにユキは安心して笑顔を向けた。


「ヒュイス。よかった、無事で」


 そう言うとなぜかヒュイスは眉を潜めて不機嫌そうな顔でユキを見下ろした。


「……バーカ。なんできたのさ」


「? 来ちゃまずかったのか?」


 言われている意図がいまいち読み取れず、首を傾げながら聞くとヒュイスはなぜかぐっと口をへの字に曲げてから、はぁっと深い溜息をついた。


「……いや。ありがと。おかげで助かったよ」


 諦めたように溜息をついた後、再度ユキに顔を向けてヒュイスは礼を言った。それを合図にウェジットもユキも歩を進める。この先はタクミたちのアジトの方面だ。ヒュイスの無事は確認できたし、ぎゃあぎゃあと騒いでいるタクミはとりあえず放置して、仲間と合流を優先させることにした。

 ヒュイスの言葉にユキは嬉しくなって笑みを深めた。


「いや、私の方こそありがとう。お前の合図でタクミの居場所がわかって駆け付けることができた。無事タクミはなんとかできたよ」


「……そっか。あいつなんとかできちゃうなんて、やっぱ君強いんだね」


 ヒュイスは後ろで網を揺らしながら騒いでいるタクミを横目で見送りながら、だるそうにウェジットに背中を預けていた。その様子にユキは心配そうに眉尻を下げた。

 無事だったとは言ったものの、肩や足の怪我が目に入った。ウェジットが手当をしたのか、今は止血をしている。だが、その様子が痛々しい。その時連れ去られたあの時に肩を剣で貫かれていたことを思い出して、ユキは顔を背けた。


「……ごめんね。ヒュイス」


「何が?」


 謝るとヒュイスは目だけユキの方に向けながら聞き返した。その声にユキはぎゅっと拳を握った。


「あの時、動けなくて。足がすくんで動けなかったこと。私が強ければ、そもそもこんなことにはならなかったのに」


 このことは何度振り返っても後悔ばかりだ。あの時、あの瞬間、一歩でも足が動いていればヒュイスもセトウもあんな怪我を負わずに済んだのに。自分の中にあった一瞬の恐怖に負けてしまった自分が恥ずかしい。しかし、そう後悔しているユキにヒュイスは溜息をついてだるそうに答えた。


「別にー。それはこっちだって一緒だし。あんたはこうして結果的に助けてくれたでしょ。おあいこってことにしとこうよ。そもそも僕は君に守られる立場じゃないんだから。気にしなくていいことは気にしなーい」


「けど……」


「あとそういう自己嫌悪ってやつ、めんどくさいからもう二度と言わないこと。そして何気に『自分が動けていれば』みたいな自分強い自慢もやめてよね。天然で言ってるのが余計にムカつくから」


 その言葉にユキは目を丸くした。

 まさかそんな風にとらえられるなんて思わなかった。

 確かに今回の一件で自分の弱い部分をはっきり目に見えてしまったけれど、それによってちゃんと自分を見直すことができたし、コントロールできるようにもなった。何か目的や守るものさえあれば、ユキはどんな恐怖でも動ける。それが自分の強さだと思えた。だから剣の実力も含めて強くなったことは、確かに自覚はあるし、誇りだ。まさかそういった驕りの様なものが口の端々から出てしまっていたのだろうか。

 ユキはヒュイスの事情もウェジットから聞いている。もしユキの言葉が自慢しているように聞こえたならヒュイスが不機嫌になっても仕方がないのかもしれない。無意識とはいえ、相手を不快な思いをさせてしまった。

 けれどそのイラついたようないい方とは裏腹に、なんとなくだが「もう気にするな」という気遣いの言葉にも聞こえてくる。もしかしたらユキの勘違いなのかもしれないが、ヒュイスの気遣いが嬉しかった。


「……ありがとう。ヒュイス」


 ヒュイスは生意気な態度と言葉を発するが、ユキは割と嫌いではない。物事を達観してみているし、自分の意思もはっきりしていて真っすぐだ。それがユキには眩しくて、素直に尊敬もできる。

 思ったまま口に出すと、ヒュイスは嫌そうに顔を歪めながら思いっきりユキの方へ振り向いた。


「きっも! キモイキモイ! やめてほんと! 鳥肌立つから!」


 ヒュイスは身体中でユキの言葉を拒否するように脚をジタバタさせた。まさかの態度にさすがにユキもムッと眉を寄せた。


「……いつも思うんだが、どうして私が何か言うたびに気持ち悪いって嫌がるんだ? さすがに私も傷つくんだが」


 最初に会った時と言い、ヒュイスに慰められた時と言い、なぜかヒュイスはユキが褒めたり、礼を言ったりすると、悪態というか悪口を言うのか。はっきり言うところは嫌いではないのだが、こうも目の前で悪口を言われてしまうとさすがに傷ついてしまう。

 そう文句を言うと、ヒュイスはふんっと顔をそっぽ向いた。


「だって僕、君が嫌いだし」


 迷いのない言葉にユキは驚いたように目を開いた。ヒュイスは誤魔化しや噓がない分とても素直だ。そのヒュイスがそういうのだから本当にそう思っているのだろう。そういえば力量試しに兵たちと闘った後も同じようなことを言われた。それを思い出し、少しむっとした。いつユキがヒュイスに嫌われるようなことをしたというのだ。


「……私が何したっていうんだ。私はお前の事、好きだけどな」


「……」


「?」


 少々不貞腐れたように零れた言葉。すると先ほどまで会話していたヒュイスの返事がないことに疑問を持ち首を傾げる。が、しばらくしてはたと気づいた。


(……なんか、恥ずかしいことを言ってしまった……)


 少々恥ずかしくなり顔を下に向けるが、相手がヒュイスだし鼻で笑い飛ばしてくれるから、あまり気にすることもないかもしれない。

 ……と思っていたのだが、少し待っても一向にヒュイスは何も言い返してこない。何かと思いヒュイスの方を見上げると、なぜかヒュイスは心底呆れたような表情をしてユキを見下ろしていた。

 

「……それぐらいスバル王子にも素直に言ったらいいのに」


 ぼそっと呟かれた言葉とスバルという名前にユキは瞬時に顔を赤くして反応した。


「なッ! お、おおおおお前には関係ないだろ⁉ そ、それにお前に言った好きというのは、その、そういうのじゃなくて……ッ!」


 身振り手振りを加えながらあわあわと否定していると、ヒュイスと同じく呆れたような声色でウェジットが加わった。


「ほんとにですな。王子が攫われてからも、さらにややこしいことになっておられましたよ」


「え、あれよりさらに? 何やってんのさ、あんたら」


 ヒュイスに続いてウェジットも呆れたような表情をユキに向けてきた。そういえばこの二人には散々スバルとのことで色々見られたし、聞いてもらったし、迷惑もかけてしまっていた。そのことがあるせいで、二人の視線にユキはいたたまれない気持ちになった。


「うるさいうるさいうるさーい‼ こっちだっていろいろ事情ってものがあるんだ!」


「へぇーそりゃタイヘンだ」


「……ッ」


 少しも大変だと思っていない棒読みな返事にユキは押し黙る。こっちは本当に大変だというのに。

 そう思って軽くヒュイスを睨みつけながら歩いていると、ヒュイスはユキの視線を無視しながらユキに話しかけた。


「スバル王子とは話せた?」


 その声色があまりに優しくて、ユキは少し目を見開いた。しかしそれがユキへの気遣いだと気づき、頬を緩めた。先ほどは他人事な態度だったのに、なんだかんだで気にしてくれているようだ。


「……話したよ。でも、まだ伝えてないことも、聞きたいこともあるから。これからだ」


 スバルとは喧嘩したままだ。その時は、自分の気持ちに精一杯でスバルを責めるような言葉を吐いてしまった。それも間違いなく本心で、言った言葉に嘘はない。

 けれど、それだけではないのだ。伝えたかった言葉は、言いたかったことは、それだけじゃない。

 そう言うとヒュイスはチラリとユキを見た。

 探るような瞳だ。

 しかしユキの言葉に嘘はないとわかったのか、ヒュイスはすぐに逸らした。


「……そっか。頑張ってね」


 ヒュイスが何を思ったのかわからないが、ユキはその励ましにコクリと頷き、目を伏せて微笑んだ。



@@@@@@@@@



「あ……」


 だいぶ坂を上った先にセンと他の仲間たちの姿が見えた。みんな怪我もなく無事、とまではいかなかったが、どうにか切り抜けられたようだ。その姿にほっとすると同時にセンの隣で立っていたスバルに姿が見え、思わず声が出る。その声が聞こえたのかスバルは一瞬だけユキの方に目を向けたが、すぐに逸らしウェジットに背負われているヒュイスに顔を向けた。


「やっほースバル王子。久ぶりだね。ごめんね、変なことに巻き込んでさ」


 背負われたままヒュイスはいつもの生意気な調子でスバルに話しかけた。それにスバルは呆れたように溜息をついた。


「……話は後だ。とりあえず今は早く帰るぞ」


 その声と同時にスバルはユキ達に背を向け、センはそれを合図に大声で周りの仲間に号令をかけた。スバルが背を向けたられ少しだけユキは寂しくなった。作戦もあったからというのもあったが、喧嘩をした後だからお互い気まずくなってあまり積極的には話していなかった。こっちから勝手に一方的に怒っておいて、相手からは話しかけてもらえない、などとわがままなことを思ってしまっている。ちょっとだけ心が沈み込んだ。


「ユキ」


「は、はい……」


 スバルが背を向けた拍子にユキも続こうと足を進めた時、スバルに呼び止められた。少し、緊張し声が上ずる。するとスバルは少し躊躇する様子を見せたが、すぐにユキの方へ見やった。その表情は普段ユキに向ける気を許した顔ではなく、真剣な眼差しをした、上司としての顔がそこにはあった。


「……よくやったな」


 一瞬何を言われたかわからずに、ユキは口を開けて放心した。しかし言われた言葉の意味に徐々に気が付き、ユキは恥ずかしくなり思わず頭を下げた。


「! は、はい! あ、あの、ありがとうございます!」


 そう早口でそう言うとスバルがその場から立ち去ろうとする気配があり、おずおず顔をあげた。視線の先には思った通りスバルが背を向けて歩いる姿が見えた。その後姿にユキはぎゅっと胸元を握りしめた。


 嬉しい――……。

 スバルは普段王城で書類仕事などをしているときもユキの働きを褒めてくれる。しかしやはりユキが頑張って身に着けたものは剣の実力だ。それを褒められる機会など実際あまりなかったが、今回異質な状況ではあるが初めてユキがその実力を披露できたと言える。そしてその実力が結果に繋がり、主に褒めてもらったのだ。これほどうれしいことはない。それに何よりスバルに、そのことで褒めてもらったことが何より嬉しいのだ。ひどいことをたくさん言ったはずだ。それなのに、話しかけてくれたことが、褒めてくれたことが、本当に嬉しくて、舞い上がって、身体中が熱くなった。


『結局無駄だった! あんなに頑張ったのに、それなのに……ッ!』


 少し前、スバルに向けた言葉を思い出す。

 間違いじゃなかった。これまで頑張ったことは、無駄じゃなかった。

 間接的にでも、スバルの役に立てたのなら、ユキの努力は報われた。

 そう思うと少しだけ、涙がにじんだ。


 ユキはスバルのあとを速足で追いながら、ユキはチラリとスバルが羽織っているマントを確認した。

 それは、先ほどタクミと闘っていた時、不意に飛んできた矢の方向にいた人物が羽織っていたマントと同じ。そしてその背に背負っている弓矢も。

 それを確認したユキは、目を伏せ、スバルにバレないようにそっと笑みをこぼしたのだった。



――――

―――――――――



「護衛騎士様!」


 山から下りてまっすぐ城に戻ってきたとき、ユキの姿を見た一人のコントラス王国の騎士が血相を変えてユキの下に駆け付けてきた。

 その表情に嫌な予感がして、声を固くしてその騎士に聞き返した。


「どうした?」


「セトウが……!」


「ッ‼」


 セトウの名前を聞いて顔が、身体が強張った。それは後ろにいたスバルも、ヒュイス達も同じで、場の空気に緊張が走る。


 その後発せられた言葉を聞くと同時に、ユキは走り出していた。



@@@@@@@@@



 ユキは城からある塔に走り、ある部屋に入る。

 白を基調とした部屋で多くの横に並ぶベッドや薬を運ぶカート、窓が開いているのか白いカーテンが舞っている清潔感のある部屋。ここは城に常駐している医務室だ。カグネ王国では戦場から帰ってきた怪我のある徴収兵はここで治療される。もちろんこれら施しは国から戦場の功績として与えられる権利だ。なので、その分薬はある程度この医務室に揃っており、城と連結している小さな塔が一つの塔を中心に花びらのように五つに分かれて塔が建てられている。ここが医療エリアとされている。今回の戦いでも重傷者はここで治療を受けている。

 そこにたどり着くとユキはまっすぐとある人物のもとの駆けていった。


「セトウ!」


 そう声をかけた先には、ベッドに寝ているセトウに呼びかけた。その身体には何枚もの包帯が巻き付けられていた。セトウはタクミとの戦闘で腹に穴をあけられ重症だった。ユキが運んだ時にはかすかに息はしていたけれども、助かる可能背は低いものと思われていた。

 けれど――……。


「……護衛、騎士様……」


 するとセトウはゆっくりと、微かに瞳を開け、ユキの呼びかけに答えた。その声はかすれている。しかし瞳を開け、呼びかけに答えてくれた。この反応はセトウが生きている証だ。その光景に涙がにじんだ。


「よかった! 目を覚まして!」


 ユキは近くにあった椅子に座り、そっとセトウの手を握った。セトウはぼうっとしながらその握った手をじっと見て、ユキの方へと目を向けた。


「……俺は……」



「……タクミにやられた。それでお前は生死を彷徨う怪我を負ったんだ」


「……そう、ですか」


 セトウは覚えているのかいないのか、はっきりしない返事をした。起きたばかりだからか、声がかすれ、ぼうっとした様子だ。その様子が痛ましくて、ユキはぐっと唇を噛んだ。あの時、剣がセトウの腹を貫通していたのを見て、正直もうダメかと思っていた。しかしカグネ王国の医療措置がよかったのか、それともセトウの体力のおかげか何とか一命はとりとめた。しかし奇跡的に意識を取り戻したとはいえ、セトウが重症なのは変わりはない。そうさせてしまったのはまぎれもない、あの時のユキの判断ミスだ。

 そう思ってユキは椅子から立ち上がった。セトウはその様子をぼうっと見つめる。そしてセトウに頭を下げた。


「ごめんなさい。……私はあの時、判断を間違えた。謝っても、許されることではないけれど……」


 今セトウが生きてるから謝れるのだ。もしセトウが死んでいれば、ユキは一生自分を許せないでいた。自分の判断一つでどれだけ部下の命を左右することなのか、今回で思い知った。

 ただ、スバルのそばにいるために騎士になった。

 しかし考えもしなかった。

 スバルの護衛騎士になるということは、その実力が認められるということ。そしてそれは自然と誰かの上につき、指示を出す側に立つということを。人の上に立つというのは、剣が強いからというだけでは収まらない。

 自分の行いの甘さをユキは恥じた。きっとユキは誰かを指示したりすることは向いてはいない。いくら剣が強くても、状況把握してでの指示など、きっと行えないだろう。

 そう思い頭を下げていると、思いもよらぬ言葉が下りてきた。


「いいえ、護衛騎士様。それは違います」


 先ほどのかすれた声とは違い、はっきりとした口調でユキの言葉を否定した。その反応に驚いてユキは顔をあげてセトウを見た。目が合ったセトウの表情は見た事もない真剣な顔をしていた。それは少し、怒っているようにも見えた。その姿が先ほどのヒュイスの表情と重なった。


「俺が弱かったから、俺は怪我を負ったのです。自業自得でした」


「セトウ……」


 セトウはユキから視線を外し、天井を見上げ睨みつけるような鋭い視線を向けていた。セトウの目には昨夜の出来事が映っているのだろうか。


「俺、初めて知りました。王国騎士団に入ったから、そこそこ自分は強いんだと思っていたんです。でも、全然違いました。世の中にはもっと強い人がいるんですね」


 そう言ってセトウは自分の手をあげ、見つめた。セトウは大剣を扱う騎士だ。

 コントラス王国の王国騎士団は、騎士の中でも英雄キリエルが選んだ限られた者しか入隊できない。王国騎士団は一人の団長と五部隊で編制されている。そして今はセトウがその王国騎士団の五部隊の一つの部隊隊長をしているのだ。今回ユキがそのセトウの指揮を執ることになったのは、単純にスバルの護衛騎士であるという位でしかなかったというのと、元々ユキの実力が王国騎士団団長候補に匹敵していたというのが大きい。

 セトウの隊長としてのその手は硬く、とても太い。そしてそれはセトウの努力の証だ。だから、きっと王国騎士団にまで来るのにも、相当な訓練をしてきたはずだ。

 ユキは自分とは違うその手を、じっと見つめた。

 ただスバルのそばにいきたい為だけに鍛えた手と、王国騎士団として鍛え抜かれた手では、その差は歴然だった。

 

「知らなかったし、知ろうともしなかった。それでいいって思ってました。けど、きっとダメだ。このままじゃ」


 セトウはその手を、努力のその証をぐっと握りつぶした。何かを決意するように、強く、力強く握った。


「俺、強くなりたいです」


 セトウは真っ直ぐな瞳でで、そう力のこもった眼差しでユキを見つめた。

 しかし、ユキは首を振った。


「……こういう戦闘は今回限りだ。コントラス王国にいる限り、あんな戦闘は起こらない。だから、それ以上強くなる必要なんて、ないんだ」


 強くなりたい。それはユキにも気持ちはよくわかる。しかし、ユキの追い求めた強さとセトウの強さとはまた違っている。セトウは、あの時の自身の力不足を嘆き、強くなりたいと言っているのだ。力の強さを求めているのなら、それは今後必要のないものだ。あまりに巨大すぎる力は、相手をねじ伏せることができる。早々手に入れるものではない。

 しかしユキが否定をしても、セトウの瞳は変わらないままだった。


「そうですね、王国騎士団は本当に強い人しかなれない。王国騎士団に入隊した人はそれぞれの管轄の部下を持つ。城の警護の指揮はもちろん、自身の兵団の指揮だってする。そうやって国も城も守ってきた。けど、そのままでいいのかって思ったんです。もし外から攻撃があったとき、本当に俺らは守れるのでしょうか?」


「コントラス王国は、こことは違う」


「今はそうでも、きっといつの日か来る。強さが、あなたみたいな強さが必要になる日が」


「……」


 ユキは目を開いて驚いた。セトウは自身のことだけでなく、国の未来のことまでも考えていたのだ。

 たしかに今回で身に染みた。どれだけ国で強いと謡われても、特に争いのないコントラス王国ではどうせはハリボテの強さだ。なぜなら剣術は実際の争いの中で生まれた技術。その技術を高められるのも戦闘の中だけなのだ。実践経験の詰めるカグネ王国とは得られる経験では各段に違う。実際連れてきたコントラス王国の兵ではカグネ王国の兵はおろかセンやタクミにも敵わないだろう。セトウはそのことを危惧しているのだ。

 このままでは、もし他国が攻め込まれた時対処できないと。


「俺は強くなって、もしものとき、国を守れる人間でありたい。それが俺が死んだあとであったとしても、その強さを、技術を、伝えなきゃいけないと思ったんです。きっとそれが俺がここに来た理由で、この傷を負った意味なんだ」


「セトウ……」


 セトウは普段からあまり怒らないし穏やかな性格だ。だから普段の優しい顔つきからは想像できない険しい表情にセトウの決意の重さが現れる。

 生死を彷徨うほどの大けがを負って、今この瞬間にも絶え間なく激痛があるはずだ。それなのに、セトウはそれでも強くなろうとしている。

 そのセトウの強さにユキは少しだけ、羨ましく思った。


「俺も騎士なんだ。本当はあなたに守られるんじゃなくて、あなたと一緒に戦うはずだったのに……俺が、弱かったから……」


 悔しそうに顔を歪ませているセトウにユキは首を横に振った。


「お前は、弱くないよ」


 今度は、セトウが目を瞠ってユキを見上げた。目が合ったユキはセトウに優しく微笑んで、強く握りしめていた拳にそっと手を触れた。


「その傷でお前は死にかけて大変だったのに、それをお前は自分の強さに変えようとしてる。そんなお前を、私は弱いだなんて思わない」


「護衛騎士様……」


 ただただ落ち込んで、うだうだと悩んでいたユキとは違う。セトウは自分の弱ささえもバネにして、未来に繋げようとしている。それを誰が弱いだなんて言えるのか。

 そんな彼を、ユキは『守ってやらねばならない』と軽んじてしまった。申し訳なさと、少しの羨望がユキの中で拮抗していた。

 そんなユキがセトウにしてやれることは一つだけだ。


「帰ったら特訓つけてやる」


 そう不敵に笑って言うと、セトウはちょっと目を瞠った後顔を引きつらせた。


「それは……お手柔らかにしてください。護衛騎士様が本気で来られたらこんな怪我だけでは済まなさそうなので」


「バカ」


 少しからかうようなセトウの笑顔に、ユキも笑って返した。しかしユキにはほかに気になることがあった。それにユキは勇気を振り絞ってセトウに話しかけた。


「あとそれ、その『護衛騎士様』って嫌だ……。ユキでいい」


 少しだけ恥ずかしくて目をかすかに逸らしてそう言うと、セトウは驚いたように目を見開いたあと、おかしそうに笑った。


「……はい、ユキさん」


 初めて名前を呼ばれてちょっとくすぐったい。やっとセトウと仲間になれた気がする。嬉しくて思わず頬が緩む。名前を呼んでくれたことも、ユキを幻滅しないでいてくれたもの、祖国を想ってくれているのも、ユキは嬉しくてたまらなかった。


「……ありがとう、セトウ。優しい、勇敢な騎士」


「なんだか恥ずかしいなぁ」


「ふふっ」


 セトウは恥ずかしそうに頬を染めて笑ってるのを見て、ユキも笑い返した。

 少しだけ和やかな雰囲気。切り詰めていた緊張が解けていく気がする。久しぶりにこんな落ち着いた気分になれた。

 ユキはセトウがもう一度眠るときまでずっとそばで手を握っていた。



@@@@@@@@@



 そのころ、スバルとヒュイス、ウェジットは医療塔の奥にある広い医療室で三人で話していた。もちろん足や肩の怪我をしているヒュイスはベッドで療養中だが。肩に刺激を与えないように包帯で腕をつっており、矢で貫かれた太ももは包帯で巻かれている。ところどころの擦り傷も簡単にだが手当されている。痛々しい姿で休ませなければならないところだが、今の状況でそうも言ってられない。


「んで? 状況はどう?」


 ヒュイスは半身を起き上がらせ自分の吊るされた腕をしげしげと面白そうに見ながら、ウェジットに問いかけた。


「兵の死傷者が二十人。ササメのところの把握まではしていませんが、医療チームが総力で対応している状態です」


 聞かれたウェジットは部下から貰った報告書を読み上げた。それにスバルも付け足すように話に入った。


「ササメも似たようなもんだ。まあこっちはまだ軽傷が多い分マシかもな」


 その報告を聞いたヒュイスは溜息をつきながらそのまま後ろに倒れこんだ。


「はぁそっか。これは式典なんて無理だね。わかってたけどー」


「一応裏で式典の準備は進めてはいましたが、王子の怪我もありますし、今回は延期にするしかないですね」


「あーあ、じゃあどうしよっか? スバル王子」


 そう言いながらヒュイスは扉横で腕を組んでいるスバルにチラリと視線を向けた。それにスバルは睨むように眉を潜めた。


「……こういう話は普通相手国の王子は入らないんじゃねぇのか?」


 そう言うとヒュイスはははっと声を出して笑った。


「まあそんなこと言わないで、一緒に考えようよ」


 呑気なものだ。自分の国の方針の話を他国の使者がいる中で話すなんて、あまりに危機感がなく、毒気が抜かれ、思わずため息が漏れる。

 正直これからカグネ王国がどう動くかは気になるところだ。式典も延期になってスバルがこの国にとどまる理由はもうない。本来であれば式典を通してお互い友好を深めるためのものだったのだが、この状況では友好もなにもあったものではない。スバル自身も国に帰ってどう報告すべきか考えなければならないのだ。

 しかしスバルはヒュイスに聞きたいことがあった。


「……その前にいくつかお前に確認したいことがある」


「……なに?」


 改まって前置きをするスバルに何かを感じたのか、ヒュイスは探るようにすっと目を細めた。その態度にスバルは気にせず問いかけた。


「センたちが協力する見返りとして王の居場所の解答を求めてきてる。それはできるか?」


 ヒュイスは予想外だったのか、少し目を瞠った後考えるように天井に目を向けた。


「センって城で君を拉致したやつだね。あいつはなんでこの王選のルール変えのゲームに参加したのかな? 知ってる?」


「……」


 スバルはあの時センが言っていたことを思い出した。

 友が戦場に連れていかれて死んだと言っていた。

 死んだ友の死を泣けないのは嫌だと言っていた。

 自分みたいなやつを作っているこの国を変えなければならないと言っていた。

 なぜヒュイスがそんなことを気にするかわからなかったが、国を想って、他人を慮ったセンの思いを、誤魔化したり隠したりする必要はない。スバルは聞いたままの通りにヒュイスに伝えた。


「……もう力の強いだけの奴が上に立つべきじゃない、と」


 そう聞くとヒュイスは目を開いて意外そうな表情をした。その反応にはスバルは驚かなかった。何分あの見た目だ。そんな繊細なことを考えている風には見えなかったのだろう。しばらくしてヒュイスは表情を戻しすっとスバルから顔を逸らした。


「……ふうん、なるほどね。いいよ。教えてあげる。ちなみにスバル王子はわかった? 王の居場所」


 ヒュイスがあっさり了承したことに少々驚いたが、ヒュイスの問いかけにスバルは少し言葉を濁らせながら答えた。


「……まあ、大方はな」


「え? ほんと?」


 そう言うとヒュイスはまた驚いた表情をスバルに向けた。その近くで待機していたウェジットもそうだった。確かにあまり情報もない中で目星がついたと言われれば驚かれてもおかしくはないだろうと思う。少し自信はないが、スバルも当てずっぽうで言っているわけではない。


「ヒント、あっただろ。雑なヒント」


「うっわぁ。あれでよくわかったね。……引くわぁ」


「お前な……」


 心底引いたような表情をしたヒュイスにスバルは顔を引きつらせた。確かにヒントのようなものがあったが、しかし半分はこじつけの勘のようなものだ。

 センが言っていた。このゲームが始まる書面上の宣誓でヒュイスが妙なことを言っていたと。


『君たちみたいな能無しの鷹じゃあ、父もきっと退屈で寝てしまうね。もしかしたらそのまま国外逃亡しちゃうかも。まあ、カグネ王国にも守護神みたいなのがいたらそんなことできないだろうけど』


 小馬鹿にするような文章についつい流されがちだが、よくよく聞くと不自然な単語が多くある。


 『鷹』『国外逃亡』『守護神』


 まずは『鷹』という言葉。鷹は鳥類の中では知能の高い部類だ。能無しの鷹、というのは言葉としては不自然なことはないが、例えとして使う言葉としては鷹というのは適切ではない。さらに『国外逃亡』、急に出てきた不自然な言葉。考えられる可能性としては、おそらくだが王の位置を示している。つまり国外へと出られるような位置にいるということ。そして最後に『守護神』だ。『鷹』に『守護神』、この言葉を並べられて出てくる言葉は一つしかない。そしてそれらの言葉を組み合わせると、不思議とある場所が浮かんでくる。


「門番の男、あれが王だな」


「……」


「なんと……」


 『鷹』と『守護神』。この二つの単語が占めるのは、英雄キリエル・ヴァンモスがいるコントラス王国だ。そして『守護神』と『国外逃亡』。これらの単語で浮かんでくるのは外から入る客を検問して国を守り、外敵を見張り、国を守護する場所。それに該当する場所は、ただ一つだけだ。そして最初の『鷹』と『守護神』は、その場所の位置を示すとなると、答えはただ一つ。


 最初に出会った門番の男。ただ一人だった。


 『守護神』と『国外逃亡』は位置を。『鷹』と『守護神』で方向を指していたのだ。

 コントラス王国側の門番だということを。

 つまりは最初に出会い喧嘩を売ってきたあの門番が、カグネ王国の王だったのだ。


 解答をしたスバルにヒュイスはつまらなさそうな表情をして天井を仰いだ。その隣ではウェジットは素直に驚いていた。


「……せいかーい。ほんとよくわかったね、顔も覆面つけてたから怪しまれて当然かな」


 どうやら合っていたらしい。合っていたことに安堵の息を吐くと同時にヒュイスの言葉に首を傾げた。


「あ? 覆面なんかつけてなかったぞ」


「え? ……あの馬鹿親父。他の部下は事情を知ってるからって、さてはサボってたな」


 ヒュイスは天井を仰ぎながら睨みつけた。ヒュイスの瞳には父親の姿が映ってるに違いない。どうやら基本は顔バレしないように覆面をつけるように言っていたようだ。門番なんかよく人が通るところだ。下手したら人に見られて大騒ぎになってゲームになっていなかったかもしれないのに、ほんの当人は自由に過ごしていたようだ。

 

 ともかく、王の居場所をセンに教えるという確認はとれた。スバルにはあともう一つ確認したいことがあった。


「……お前、王になるつもりがないんだろ」


「なんで?」


 ヒュイスは驚く素振りもなく、スバルを見ずに白々しい態度をとった。その態度に真意が読めず思わず眉を潜める。


「そうだろ。王選のルール変えのこのゲームは場合によっちゃ自分の都合のいいルールに書き換え可能になる。ルール替えと言っても実質王を選抜していることと同義だ。それなのに、このゲームにお前が参加することが考慮されていない」


「……」


 そう、これがずっと引っかかっていた違和感だ。王を見つける事、それがこのゲームにおける最終ゴールだ。先ほども言ったようにこのゲームは実質王の選抜。つまり王の居場所を知っているヒュイスには最初からこのゲームの参加は不可能だ、意味がない。それなのに、ヒュイス自身が王を見つけることを条件として設定した。明らかに王を誰かに譲ろうとしていることだ。このカグネ王国では王選の公式試合の優勝者が王となる決まりだ。力のないヒュイスでは元々王にはなれない。それならこんな周りくどいことをしなくてもいいはずだ。もしこの王選の公式試合が生死関係ないもので、ヒュイスはそれから逃れたがったということだったとしても、それなら自分が参加しやすいようなゲームを作ることができたのではないのか。ヒュイスの行動は矛盾だらけだ。


「お前は王になるつもりが、いやなりたくないからこんなゲームを開催したのか? 何が目的だ?」


 その疑問を解消するために、スバルはヒュイス問い詰める。ヒュイスの真意を知るためだ。元々スバルが呼ばれたのは友好を築くためだ。それはヒュイス自身も言っていた。それなのに王を別の誰かに委ねるのであれば、それも意味がなくなるはずだ。ヒュイスの一連の行動と、このルール替えのゲームは全く意に反している。

 何が目的なのか、今後のコントラス王国のためにも、スバルは知らなければならない。

 スバルはじっとヒュイスの解答を待った。正直ヒュイスの言う事をどこまで信用していいのかはわからないし、それほどスバルはヒュイスと話してはいない。まともに話したのは初日での食事会の時だけだ。しかし見たところユキはヒュイスを信頼していたようだった。気に入らないが、そのユキの信頼を信じてみることにしたのだ。

 ヒュイスのベッドの隣で立っていたウェジットはチラリと主であるヒュイスの顔色を確認した。しかしヒュイスは変わらず天井を見上げたままだった。

 すると、しばらくしてやっとヒュイスが口を開いた。


「……安心してよ、スバル王子。僕は王になるよ」


 ヒュイスの言葉が静かにこの広い病室に響く。

 いつもの小生意気な声色ではなく、静かな声でヒュイスは確かに言ったのだ。


 王になると――……。


 スバルは一瞬息を飲んだ。その言葉を発するのに、どれほどの勇気がいるのか、スバルは知っていたからだ。

 するとヒュイスは身を捩らせ、半身を起き上がらせた。片腕が包帯で吊るされている状態だったので、隣にいたウェジットがヒュイスの背を支えてなんとか起き上がった。そうしながらもヒュイスは冷静な声で淡々と話し続けた。


「知ってるだろ。この国では強い奴が王だ。王選っていう実際はただの闘技場の勝ち負けでさ、王が決まるんだよ。最悪相手によってはデスマッチになる。僕は弱いから、ウェジットはなんとかするために公式試合では代わりの男を用意する予定だったみたいだけど」


 そう言いながら少し笑ってヒュイスはウェジットに目を向けた。目が合ったウェジットは参ったというように目を伏せていた。それを聞きながらスバルはかすかに納得した。センがスバルをヒュイスと間違えたのは王子であるヒュイスの顔を知らなかったから。つまりウェジットが意図的にヒュイスをあまり公にしないように工作していたのだ。もし公式試合の時、別の誰かを出しても偽物だとバレないように。

 しかしスバルが納得したいことはそんなことではない。


「お前らが作ったルールだろ」


「そうだね」


 そう言うとヒュイスは顔をあげてやっとスバルを見上げた。その表情にスバルは息を飲んだ。


「でもそんなのこのまま続けてさ、国を回せると思ってる?」


 目が合ったヒュイスの瞳には光がなく、その表情はあまりに冷淡なものだった。人を小馬鹿にしたようないつものヒュイスでもなく、子どものようなつまらなさそうな表情でもなく、その表情はまさしく一国の王子として、自身の国に絶望し憂いていた。まさしく王子としての姿があった。

 その黒い瞳に映りこんだスバルの表情は驚きに満ちた顔をしていた。


「今は先代が築いた傭兵を他国に貸し出す、なんてことでなんとか経済を回せてる。武器も金も入る。……けどわかってるでしょ? 今じゃ世界中の武器がこの国に集結してる。それを、他国がどう見るかなんて予想がつくでしょ」


 スバルは黙り込んでヒュイスの話を聞き続けた。そして、納得した。

 ヒュイスの言う通り、カグネ王国は内戦などの他国からの依頼で戦力として傭兵を貸し出している、傭兵の国だ。その報酬として金をもらって経済を成り立たせている。依頼があれば昨日の敵だろうが味方だっただろうか関係なく戦力を貸し出し、そして実績を出している。


 カグネ王国の傭兵を使えば、戦いに勝てると――……。


 つまりそれは国外中にカグネ王国の戦力の恐ろしさを知らしめていると言っても過言ではない。そして武器もその分手に入る。

 しかし今はその力に頼っていても、今後はどうなる。そんなのはわかり切っている。

 世界中がカグネ王国を危険視する。世界中を武器を集めたもはや武器国として、そしてあまりに強い逸材がそろう傭兵の国として、世界中から恐れられる。そしてその恐怖はいずれ国同士の結束に繋がる。


「その恐怖が鍵となり、国中のやつらが結託して、いつかこの国を亡ぼす日が来る」

 

 そう。ヒュイスが危惧していることは、まさしくそれなのだ。

 このまま続けていれば今は良くてもいつかは破滅へと繋がってしまう。


「だから、今のやり方を変えなきゃいけない。僕はね、死にたくないんだよ、スバル王子」


 そう言ってヒュイスは憎むように睨むようにスバルを見上げた。けれど、それが決してスバルに向けられているものではないと、スバルはわかっていた。

 おそらくその憎しみを向けていたのは、この国の歴史だ。


「先代の作ったわけのわからない王選なんかでも自分の死に頭悩ましてるのに、さらに傭兵の国になんかしたせいで、国もろとも死ぬなんて御免だ」


 ヒュイスは吊るしていないもう片方の手でシーツをまるで感情の爆発を抑えるようにぎゅっと握った。


「このゲームはそのためのものだ。僕と同じこの国を憂いている奴を見つけるためのもの。もしこの国を変えたいと思ってるやつが万が一にもいるなら、絶対にこのチャンスは見逃さないと思ってね。僕は無力だから、まずは味方を、同じ志の仲間が欲しかった」


 ヒュイスは決して面白そうだとか、自分が王にならないためにゲームを作ったわけではないのだ。この国のため、そして自身のために、必死に考えて抗っているのだ。


「きっと僕が今からやろうとしてることは、国民中の反感を買う。だから、今の内に理解してくれる仲間がいれば、少しは動きやすいと思ってね。……ちょっとした賭けだったんだけど。まさか都合よく見つかるとはね」


 そう言ってヒュイスは少し笑ったが、スバルは笑えなかった。例えヒュイスがどれほど正しくとも、きっとこの国民は理解を示さないだろう。いや、理解できないのだ。強さと言う単純なルールで王を決めてきた国だ。つまりそれは今現在のそして自身の快楽でしか物事を判断していないことだ。未来のために布石を打とうとしているヒュイスを理解できるわけがない。できたとしてももう少し国が発展する何年先の話だろう。逆に今まで成り立ってきたのがおかしかったのだ。

 そしておそらくヒュイスがたどろうとしているその道は――……。


「……お前のやろうとしてることは茨の道だぞ」


 そう告げるとヒュイスは一瞬だけ笑みを消し、そしてそのままシーツを強く握りしめた。


「わかってるよ。他国から滅ぼされる前に僕が国民に殺されるかもね。それでも、僕は何もしないで明日自分が死ぬかもしれないって怯えるのはもう御免だ。……もし死ぬときは、この国に一泡ふかして死んでやる」


「……」


 殺される恐怖に震えながらもヒュイスは必死に高ぶらせようと笑っていた。スバルはその姿にスバルは目を瞠る。スバルはヒュイスを思い違いしていた。常に人を小馬鹿にするような態度から、ただただ何も知ろうとしない生意気な子どもだとばかり思っていた。

 しかし違っていた。自分のしたいことにまっすぐで、迷いがない。そしておそらく努力家だ。この国の未来のことだって見据えている。

 ヒュイスという人間像がスバルの中でガラガラと変わっていく。


(こいつは、きっと王になるだろう)


 一度は王になっても欲しようと思った彼女を、スバルはまた諦めようとしている。

 目の前で自分を諦めないヒュイスを見ていると、どうしても劣等感に似た焦燥にかられてしまう。そして自分に問いかける。


 ――……自分はこのままで本当にいいのか、と。


 王になると決めた。すべては自分の望みのために、兄の存命のために。一度は決心したその思いが兄により否定され、それでも王になると決めた。貫き通すと、決めた。

 だからこそ、ヒュイスのような奴を目の前にすると足元が一気に崩れるような錯覚が起きる。スバルは決して国のためなんてこと、考えていないのだから。


「ま、でも死ぬつもりはもちろんないよ。だから僕が王になった時のため、まずは隣国であるコントラス王国と交流を持とうと思ったってわけ。どう? これが真相」


 そう言ってヒュイスはいつものようにおどけたように笑ってスバルを見上げた。その瞳に誤魔化しや嘘はない。これが真実ヒュイスの考えなのだとよくわかる。しかし、スバルにはこの国に来る前に思った疑問をヒュイスに聞かねばならなかった。


「……どうして俺だった? 兄じゃなく、なんで俺を招待したんだ」


 ずっと気になっていた。なぜ第一王子であるエイシではなく、スバルが呼ばれたのか。もしエイシの病気のことを知った上でスバルを呼んだのなら、コントラス王国の機密事項がカグネ王国に漏れたことになる。つまり、カグネ王国からの密偵がいるのかもしれないということだ。今のヒュイスの話を聞いた限りでは、そんなことはしれないような気もするが、確信がほしい。

 そう聞くと、ヒュイスはきょとんとした顔で首を傾げた。


「? 歳が近いと思ってね。第一王子は年上すぎるからさ。なんか話しづらいじゃん。ごめんって。悪いとは思ってるよ? そこらへんエイシ王子にフォローしといてよ」


「……そうかよ、兄上にはそう言っといてやる」


 ヒュイスはどうやら本来なら第一王子であるエイシを招待するべきじゃないか、とスバルに窘められたのかと思ったのか、ヒュイスは軽く謝った。しかしスバルは顔には出していなかったが、内心ほっとしていた。

 するとヒュイスはスバルの答えに満足そうに笑った。


「腹の内は晒した。これで式典の代わりにはなるかな?」


「ああ。十分な手土産だ」


「こういう交流は初めてでね。いつかはコントラス王国と貿易できたらいいなぁって思ってるんだけど」


「……この貸してもらっている内服。着心地は悪くないし、動きやすいように生地はよく伸びる。手土産につけとけ。宣伝しといてやるよ」


 式典は行われなかったが、ヒュイスのこの話はコントラス王国への友好の証となるだろう。この話を持ち帰り王に話せば、多少カグネ王国への警戒もなくなるはずだ。それに元民族であるがゆえに独自の織物がカグネ王国にはある。それを上手く売り出せばヒュイスの目論見通り、今後コントラス王国との貿易だって確保できる。それもまだまだ先の話になるだろうが、これがその第一歩目だ。悪くはない。

 そう考えていると、ヒュイスには珍しく申し訳なさそうに笑った。


「ありがと。スバル王子にはいろいろ貸しができちゃったね」


 申し訳なさそうにするヒュイスがおかしくてスバルは少し笑った。そんな顔をされるようなことをした覚えはないのに。


「いや、お互い様だろ。拉致られた俺の救助に兵を貸してくれただろ」


「まああれはお宅の騎士様が強かったからね。僕たちは『強き者に従え』っていう生業に従っただけだよ。……で、なんであっち側についたの? スバル王子は」


 なんでもないような言葉の中に出た確信的な話に、スバルは少し驚いて目を開いた。しかし聞く権利は確かにヒュイスにはある。世話になったこともあるし、何よりヒュイスは腹を割ってスバルに話をしてくれた。それに応えなければ友好なぞ築けない。

 そしてスバルは扉横にいながらではあったが、ぽつりぽつりと話し始めた。


「……俺が、今ここにいるのは王のためでも、ましてや国のためなんかじゃねぇ。俺はある人の助けになりたくて、ここにいる」


「……うん」


 ヒュイスはスバルの告白を静かに聞いた。


「けど、それが正しいのかどうかわからなくなっていた。あの人のためにしていることが、本当はそうじゃなかったのか、わからなくなった。……だから誰かのために、何かを成すために動いてるあいつらの行きつく先を見届けて、自分は間違ってないと思いたかった」


 兄のためにと動いたスバルと、仲間の死を涙を見たくないと動いたセン。誰かのためにと動いた二人はよく似ていたと思う。だから、スバルは手を貸そうと思った。自分がしてきた行いに、ユキを傷つけてまでした行いが、正しかったことを証明するために。

 だからこれはスバルのエゴなのだ。ヒュイスのような立派な志があって動いていたわけでもない。ただ自分のために、安心したいがために動いていた。

 情けない話だ。同じ王子でもここまで違うと、どうにも笑えてくる。


 そう静かに笑っていると、ヒュイスは納得したような声をあげた。


「ふぅん、なるほどね。……スバル王子もそっちの部類か」


「は?」


「いや、こっちの話だよ。ありがとね、話してくれて。ちょっとスバル王子のことがわかったよ」


「……」


 スバルにしては勇気を出して話したつもりなのだが、なんだか気が抜けてくる。しかも言葉にしながら結構自分でもそれなりに傷ついてしまっていたというのに、思いのほかにさらっと受け入れてしまって、スバルが逆に困惑してしまった。

 はあっと疲れたように溜息をつきたくなったが、思い直しスバルは壁から背を離して姿勢を正した。


「それに伴い、ユキのことも世話になった」


 スバルが攫われた後スバルはセンと行動を共にしていたが、そのせいでユキが散々振り回されたことだろう。そしてそれは協力してくれたヒュイスも同じ。スバルはその謝罪も込めてヒュイスに頭を下げた。数日前ならヒュイスに対して頭を下げるなんて絶対しなかっただろうが、今はヒュイスの思いも志を知っている。それに対しスバルは真摯であれないほど、落ちぶれてはいないつもりだ。

 しかしその姿を見て、なぜかヒュイスは顔を歪めた。


「あーそうだ。あれ、なんとかしたほうがいいよ? そばにいたいだの、なんだのってさ。拗らせすぎだよ。なんであんなになるまで放っておいたのさ」


「………………」


 真摯に頭を下げていたはずなのに、思ってもみなかったヒュイスの言葉にスバルは頬を引きつらせた。

 まさか、スバルとユキの間に起こっていることも知っているのか、この男は。

 そう目で訴えていると、ヒュイスは呆れたような表情をして肩をすくめた。


「はっきりしたほうがいいよ。好きじゃないんだったら、フるなりなんなりしてさ。あれは放置してると余計思い詰めて勝手に暴走するタイプ」


「……もう暴走しきってんだよ」


 ぼそっと居心地悪そうに呟くと、ヒュイスが「もういっそ抱いたら?」などと爆弾発言をしてきたので、とりあえずスバルは一発ヒュイスの頭をはたいた。中性的な顔立ちでとんでもない発言をしてくる。


「いったー!  ちょっと怪我人になんてことすんのさ」


「お前が馬鹿なこと言うからだろが! ……もう俺は行くぞ」


 痛そうに頭をさすっているヒュイスを横目に、スバルは病室から出ようとした。すると、後ろから気遣うような声が背中越しに聞こえてきた。


「もっとさ、スバル王子も自分を大切にした方がいいよ。特にあんな一途に想ってくれてる人がいるなら、なおさらさ」


「……余計なお世話だ」


 何が言いたいのか。何を伝えたいのか。わかっていた。

 けれど理解したくなくて、思考を遮るように、スバルは部屋のドアを勢いよく閉めた。



@@@@@@@@@



 ドア越しにスバルの足音を聞きながら、ヒュイスは溜息をついた。


「……優しい人ほど、ああやって思い詰めて悩むんだよね。正しいとか正しくないとかさ。そんなの捨てて、自分の気持ちに忠実でいれば、答えなんてほんとは簡単なのに」


 スバルは正しさに拘っていたようだが、正しさなんていうのは、人の数ほど存在する。だから本当は決まった正しさなんていうのは最初から存在していない。けれどそれでも人がその正しさにすがってしまうのは、それが一番安心できるから。なぜなら正しさというのは、どんなことをしてもそれを正当化させる武器でもあるからだ。

 そして優しい人ほど、他人を傷つけるのを何より嫌がり正しくない事だと思う。だから他人を傷つけないためにあらゆる手段を取る、その一つが自己犠牲だ。

 スバルもユキもそのタイプだった。他人に重きを置いて、自分を顧みない人種だった。

 スバルは『ある人』という人を、ユキはスバルを。

 それに比重をかけすぎるあまり、傷ついて、余計に悩むのだ。時には自分の感情に忠実にいれば本当は思いのほか上手くいくものなのに。それじゃ自分も、自分を想ってくれている人も誰も幸せになれないし、救われない。だから自分のためにも、他人のためにも、本当は自分の幸せのために動くべきだとヒュイスは思うのだ。

 そしてもう一人、それをわかっていない奴が隣にいる。

 ヒュイスはその人物に目を向けた。


「お前もね、ウェジット。よくもまあ、母さんが好きってだけで僕なんかに付きまとえるよ、物好きだね」


 そう嫌味を言うと、ウェジットは不快そうにぐっと眉間に皺を寄せた。


「……前から言おう言おうと思っていたのですが、私はもうあなたの母君に未練などありませんよ」


 じっとヒュイスを見下ろすウェジットの顔は、見下ろされているせいか、いつもの仏教面に拍車がかかって恐ろしい表情になっているが、ヒュイスは気にせず肩をすくめた。


「またまたぁ。僕を傷つけないと思って言ってるんでしょ? いいってそういうの。そういうのはあの女騎士でお腹いっぱいだから」


「こちらのセリフです。私が忠誠を誓っているのはあなただけです」


 いつもはこういうと何も言って来ないのに、今日はやけに粘る。ヒュイスはそれに内心首を傾げる。


「……もしそれが本当だとしても。それってお前にどう得があるわけ?」


 ウェジットがヒュイスのそばにいるのは母が好きだからだ。これは揺らがないはずだ。普通、恋敵の子どもの世話なんて嫌だろうに、わざわざ母のそばにいたいがために、恋敵の子どものヒュイスのお守なんてやっているのだ。そして母を愛しているから、ヒュイスを守っているのだ。母のためという理由以外、何があるというのだ。

 だから、なんて言い訳するか聞きたくてわざと質問をした。ヒュイスに忠誠を誓ったところで、一体何があるというのだ。弱いし、自分でいうのもなんだがわがままだし生意気だ。正直利益がないとこんな子ども守ろうと思えるものなのだろうか。

 なんて少し自虐的なことを考えていると、ウェジットは疲れたように溜息をついた後、床に跪きヒュイスを見上げた。

 ウェジットの美しい蜂蜜のような瞳と目が合った。その見上げた瞳が、今までにない真剣な、射抜かれるような眼差しで、ヒュイスは一瞬息を飲んだ。


「そんなのただ一つです。あなたを愛しているからです」


「……は?」


 あまりの、予想外すぎる答えに、ヒュイスは素っ頓狂な声をあげた。


 今、なんて言った――……?


 ぽかんと口を開けているヒュイスの姿に、ウェジットはおかしそうに笑いながら、ヒュイスの頬に手を伸ばし、優しく撫でた。


「自分の息子のように、大事で、愛しているのだよ、ヒュイス。ただ、それだけだ」


 剣しか知らないその武骨な手がヒュイスの頬を包んだ。少し不器用に慣れていない手つきで撫でたその動きが、必死に愛情を伝えようとしているのがわかる。嫌いだったウェジットの瞳から優しい陽だまりの様な眼差しを感じた。


 それは、確かに愛情と呼べるものだった。


 しかしそれらを目の当たりにしても、ヒュイスは信じられなかった。


「はは……マジで言ってんの? 僕を? お前が? 僕は君の恋人を奪った男の子どもだよ?」


 そうだ。ヒュイスは憎き恋敵の子どもだ。ヒュイスを恨んだっていいはずなのだ。なのに、なぜ、そんなことを言えるのか。ヒュイスにはわからなかった。


「そこらへん、正直もうどうでもよくなってるんで。昔の恋人の息子だろうが、なんだろうが、情を持ってしまったのだ。愛おしいと、思ってしまったのだ。そうなったらもう仕方ない。私は心のままに従ったまでだ」


「……」


 しかしそう言ってもウェジットの態度は変わらなかった。いや、敬語は崩れているが。

 しかし変わらず、ヒュイスを愛おしむような瞳だけを向けている。

 その瞳に、とうとうヒュイスは言葉が出なかった。

 ヒュイスは弱いがゆえに相手を出し抜くために人を観察する目は鍛えていた。

 だから、わかる。

 ウェジットは嘘でもなんでもなく、ヒュイスを気遣っているわけでもなく、本気で言っているということを。


 すると、ウェジットはヒュイスを見つめながら口を開いた。


「それだけでは、理由になりませんか」


「…………いや」


「ならこの話はもう終わりです。さっさと寝て休んでください。疲れてるはずなんですから。あ、あとそんな薄着もダメです。布団を増やして暖かくしてください。あと水分もろくに取れてないでしょう。水を持ってきますので摂取してください。水分不足は身体に毒です」


 ヒュイスが驚いて放心していると跪いていたウェジットが立ち上がりテキパキと動き出した。ヒュイスをベッドに戻し、部屋の窓とカーテンをすべて閉じ、隣の空のベッドから布団を取りヒュイスの上に何枚もかけていく。

 その光景をヒュイスは放心状態から戻れずベッドから何も言えずにただ見ていた。


「……ウェジット」


「なんでしょうか?」


 水を取りにいこうとしたウェジットを放心状態から戻ったヒュイスが呼び止めた。ヒュイスは振り返ったウェジットをじっと見つめた。

 いつもの仏教面だ。しかし疲れているからと寝かせてくれたベッド。温かくしろと言って風が無くなって少しだけ温かくなった部屋、先ほどより重くなった布団。

 それらから感じ取れる感情を汲み取れないほど、ヒュイスは鈍感ではなかった。


「お前、ほんと僕のこと好きなんだね」


「何か問題でも?」


 少しからかうように言うと、思いのほか真面目な表情でウェジットは首を傾げた。その迷いのない答えに目を瞠った後、ヒュイスは恥ずかしそうに笑みをこぼした。


「……ふふ。いや、悪くない。……そっか、僕って愛されてたんだなぁ」


「気づくのが遅すぎます」

 

 その答えにさらにヒュイスはおかしそうに笑った。


 愛情があると、思いたくなかった。

 だって、そう思って、勘違いだったら嫌じゃないか。

 育ての親のウェジットに、本当の親のように思っていたウェジットに、密かに憧れていたウェジットに、もし本当は愛されていなかったなど知ったら、どれだけ自分が絶望するかわかっていたから。

 だから、ヒュイスは予防線を張ったのだ。

 ヒュイスのそばにいるのは、母のためなのだと。

 そう思っていれば、余計な期待をせずに済むから。

 そうすれば、傷つかなくて済むから。

 そうして張った予防線だったが、どうやら張らなくてよかったものだったらしい。

 長年ずっと恐れて聞けずにいたことが、まさかこんな形でわかるとは思わなかった。

 

(……ああ、ほんと。僕もあの女騎士やスバル王子のこと、言えないや……)


 ああ、嬉しくてたまらない。こんな自分でも愛してくれているなんて。


 勘違いしたくなくて、ひどい言葉をぶつけて遠ざけようとした。それなのに、まだヒュイスを愛してくれているウェジットにヒュイスは嬉しくて、泣きそうになった。

 しかしヒュイスはバレないよう滲んだ涙を拭って、再度起き上がった。


「ッはいはい。悪かったよ。あ、そうだ。ウェジット。頼みがある」


「……早く寝ろと私は言ったのだが」


「すぐ済むからさ」


 不機嫌そうな顔をするウェジットにヒュイスはおかしそうに笑った。ウェジットは普段仏教面でわかりにくいが、心を許した人には表情が豊かだ。逆になんで観察眼があるヒュイスがウェジットからの愛情に気づかなかったのか不思議だ。自分でも無意識に、見て見ぬふりをして気づかないようにしていたのかもしれない。

 そんなことを考えながら、ヒュイスはウェジットに話しかけた。


「センってやつ、呼んでよ」


「センを?」


 センの名前が出るとは思わなかったのだろう。ウェジットは訝し気な目でヒュイスを見た。しかしヒュイスはそれにニッと口角をあげて笑った。

 それはまるで、何か悪い悪戯を企むような子供っぽい表情で。



「これから無理やり協力者にさせるんだ。まずは挨拶しないとね。……そうだな、まずは僕の護衛係でもしてもらおうかな。あの女騎士みたいにね!」





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[一言] 深夜にすみません。 とても楽しませていただきました。 今回もありがとうございました!
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