12.笑みと共に
長く書きすぎた、かもしれない……です。
ですが、読んでいただけると凄く嬉しいです!
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崖を滑り降りた後、スバルは怪我人に肩を貸しながら森の中をさまよいアジトに戻ることができた。しかし、戻ってこれたと言っても楽観できる状態ではなかった。
スバルはアジトである地下の洞窟でセンたちの傷の手当てを手伝いながらあたりを見渡した。
「……だいぶやられたな」
見渡して見えるのは、傷の手当てを受けて包帯に巻かれている者ばかりだ。意識がないものもいて、この洞窟はもう怪我人であふれかえっていてまるで療養所だ。先ほどまで元気に騒いでいたあとなど見る影もない。
スバル自身、怪我はそれほどひどくはない。かすり傷や打ち身程度だ。これもスバルがユキを気にしてあまり戦闘に参加していなかったためだ。
けれど他は違う。積極的に戦闘に参加していたため傷も多いし、スバルの近くにいた者も傷が抉られ、骨折もしている。他の奴らも頭から血を流し、目を傷つけられ、剣が身体を貫いたのかどれだけ包帯を巻いても血が止まらない。わかってはいたが、人間同士の本気の戦闘が他人の命を奪う行為であるとまざまざに突きつけられる。狭い洞窟の中、血の匂いが洞窟中に巡って気持ちが悪い。
スバルは血の匂いにあてられたが、気を取り直すように立ち上がり周りを見渡した。
起き上がれないほどの傷を負い、横たわっている者。
ぐったりと壁に背を預けている者。
傷の痛みで呻いている者。
怪我が少なく元気な者もいるがやはり圧倒的に怪我人も多い。匿ってくれている店主から施しは受けているものの、薬も包帯も布も足りない。
どこかで調達しないと死人が増える。大半はなんとかアジトには戻れたものの、そのあと動けなくなったものが多い。人数の差は歴然だったにも関わらず、あの戦闘で誰一人死なずにいれたのは奇跡に近いのだから、これだけで済んで喜ぶべきなのだろうが。
この時、本当にあの時の自分の判断があっていたのかどうか、自責に追い込まれる。
スバルはこの光景から目を背けるように顔を歪ませて俯いた。
「相棒!」
「わッ!」
すると突然背後から背中を押されてつんまずく。驚いて後ろを振り向くとそこにはセンがスバルの背中を抱き着くように肩に手を回していた。センの頭には傷を負ったのか額に包帯を巻かれており、そんなセンにスバルはぐっと眉を潜ませてセンを睨んだ。
「んだよ。なんか用か?」
「……まあそうだな。おい! てめェら! ちょっと抜けんぞー。相棒と話がある!」
突然センが周りで手当てをしている仲間に大声で声をかけ始めた。その内容にスバルは目を見開いて驚愕した。
「は⁉ てめぇ人が足らねぇこの状況で何言ってやが……」
「おういいぞー! ここは任せとけ!」
「な⁉」
「あんがとなー!」
仲間の思いもよらない元気な返事にスバルはまたもや驚いた。スバルはささやかな抵抗をしてみたが、センに肩を回され逃げられず、そのまま引きずられていった。
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センに引きずられ、スバルは奥の洞窟に連れて行かれた。そこはスバルが最初に縛られた場所だった。スバルはセンに回された肩を払い、顔をしかめながらセンと向き合った。
「……で? なんだよ話って」
「あんま無理すんなよーって話だ」
「はあ?」
センはいつものように呑気な態度でそう言った。しかしスバルはセンの言葉に訳が分からず眉を潜めていると、センはいつもみたいに豪快に笑いながらスバルの肩を叩いた。
「あんたの判断は正しかったって。俺でもそうしたさ。……だから気にすんなよ。あんたのせいじゃねェから」
「……」
細められた瞳に気遣うような優しさが見えてスバルは口を結んだ。
「……お前の判断と一緒っていうのが逆に不安だけどな」
「ひでェなぁ」
スバルの悪態にセンは頭を掻きながら笑う。そんなセンにスバルは顔を逸らした。
そんなに顔に出ていたのか。
スバルはセンに顔を逸らしながら顔を歪めた。
まさかセンなんかに気づかれるなんて、会ってそれほど経っていないのに。いや、それよりも自分が無意識にもこんな奴らの心配をしていたことに驚きだ。どうでもよかったはずなのに、いつのまにか絆されている。
馬鹿で能天気で、途中で入ってきたスバルなんかを受け入れて気さくに話しかけてきて、慣れもしない気遣いなんかするから――……情が移ってしまった。
――こいつらのせいだ。
こいつが、センが、誰かのために動いていると知ってるその姿が、自分と同じかもしれないと、思わず思ってしまったから。
もし、センがスバルと同じで誰かのために何かを成そうとしているなら、それがもし成功すればスバルの行動にも意味があると証明できるから。
ユキを手放して、傷つけてまで、行ってきたスバルのすべての行動に意味が成すはずだから。
「……なあ、お前どうしてこのゲームに参加したんだ?」
「ん?」
「さっき言ってたろ。もう仲間の泣く姿はもう見たくないって」
「ああ、あれか」
センは思い出したかのように声をあげた後、手近の岩に座った。それに続いてスバルもセンと向かい合うように岩に座る。するとセンは頬杖をつきながら遠くを見て語り始めた。
「ダチが死んだんだ。それだけだ」
スバルは目を見開いて驚いた。あまりにも世間話をするように話すものだから、一瞬センが放った言葉の意味が理解できなかった。
「……殺されたのか?」
「殺されるのは当然のことよ。死ぬのは弱いからだ。けどさ、なんかさ……」
センは俯いて視線を逸らしながら言いよどんだ。いつも豪快でうるさいぐらい騒がしいセンにしては珍しい姿で、その次に語る言葉がセンにとって大事な言葉であることを察し、スバルは真剣な面持ちでセンの言葉を待った。
死ぬのは当然だと言いながら、その瞳には確かな悲しみがあったからだ。
「ダチが死んだっていうのに、泣けない自分が嫌だったんだよ」
「……」
そう言ったセンにスバルは黙ってセンをじっと見つめた。
続きを、訳を話すように促すスバルの眼差しに、センは苦笑いを浮かべた。
「……俺さ、昔からこうだったんだよ。ただ戦うのが好きでさ。向かってくるやつ、強いやつと戦って戦ってさ。まあ、命があぶねぇときもあったけどよ、楽しくて仕方がなかったんだ。……そうやってやってたらさ、気が付いたら一人になってた」
顔は笑っているが、まるで嘲笑のような笑みに、初めて語るセン自身の話にスバルは少し真剣な面持ちで向かい合った。
スバルは少し、センを勘違いしていたのかもしれない。
豪快で、騒がしくて、何も考えてない、頭の空っぽなただの戦闘狂な男だと思っていた。
戦闘で人が死ぬのは当然で、何も思わず、仲間の死も悲しまない、まさにカグネ王国らしい男だと。
けれどセンは、あの古城で仲間が危険にさらされた時、自分の戦闘の欲を押さえて仲間の命を救うことを優先した。
それは紛れもなく、仲間を想っての行動だったのではないのだろうか。
「……後悔してんのか?」
「まさか! 俺はこの生き方が好きでやってんだ! 後悔なんかねぇよ! まあけどいい加減一人でやんのも飽きてよ。んでこの『ササメ』を作ったんだ」
センは懐かしそうにそう語りながら、上を仰いだ。
「結成当初は俺と、もう一人いてよ。カノウってやつ。……カノウとは気が合ってよ。俺と同じ戦闘が好きなやつで。まあ俺と違ってなんか頭もよくてよ、毒舌で、言いたいことはズバズバ言うわでさ。けど、あいつと戦うのが一番楽しかった」
瞼の裏にその情景を思い出しているかのようにセンは目を瞑る。その声はいつもの豪快さとは違い、ひどく優しかった。
「そうやって仲間がどんどん集まった。カグネ王国の連中は暴れたがりの馬鹿ばっかだからよ。街で歩くとすぐ戦闘になるし、買い物するだけでも店主と必ず戦いになる。俺にとってこの国は生きやすかったから好きなんだよ。俺も、カノウも、楽しくやってたさ。けど……」
そう言ってセンは目を開いて、スバルに向き直った。
「そしたらカノウのやつが、国から他の国の戦闘に参加するように収集がかかったんだ」
「他の国の、戦闘?」
まさかの言葉にスバルは口をはさむ。
確かに各地で内戦は起こっているのは聞いたことがある。
人種差別や独裁への反旗、革命、貧困による物の奪い合い――あげたらキリがないがこうしている間にもそういった戦闘は続いている。しかし、その戦闘にカグネ王国が関わっているというのか。
そう考えながら怪訝そうにセンを見ていると、センも首を傾げながらスバルを見返した。
「知らねぇのか? この国の収入を得るために俺たちを使って他の国での戦闘を援助してんだよ。まあ、それに別に不満なんかねェけどよ」
「……」
スバルは内心なるほど、と頷いた。
ようやくすべてが繋がった。
あの街中で売られていた武器の多さ。城の豪華さ。
つまりカグネ王国はその生まれ持った戦闘能力を生かし、労力を売っているのだ。各国から内戦を止めるため、もしくは成功させるためカグネ王国の力を借りて、カグネ王国はその見返りに金と物資や武器をもらっているのだろう。それならあの街の武器の種類の豊富さも納得できる。貿易なんかしなくても、国を維持できたわけだ。まるで『傭兵の国』だ。
そんなことを考えて一人で納得し、スバルはセンに話を促した。
「んで? そいつはどうしたんだよ?」
「あいつは意気揚々と出ていったよ。けど、俺あいつと喧嘩してよ」
するとセンはやれやれと言ったように肩をすくませた。
「好きな女ができたんだってよ。仲間のうちの女。だからグループを抜けてその女と一緒に別の国に住むって言いだしてよ。……信じられなかった。あいつは俺とおんなじだ。簡単に俺を、戦いを捨てられるわけねぇって。けど、どれだけ説得してもあいつの意思は変わらなかった」
「……」
好きな女、という言葉に少なからずスバルは反応した。
カノウは好きな女とカグネ王国を出ると言ったらしい。
センは意味が分からないと言ったけれど、スバルには理解ができた。
この国はセンも言っていた通り、戦いを生業としている。街を歩くだけで喧嘩になり戦闘が起きる。そうなれば当然恨みだって買う事も買われる事もある。関係のある自分の大切な女性が危険にさらされるのは想像に難くない。だからそのカノウという男は女を守るために故郷を離れることを決めたのだ。
スバルもそうだ。ユキが死ぬかもしれないその可能性から遠ざけたかった。母のように死んでほしくはなかった。母のようにスバルと一緒になったことを後悔してほしくはなかった。
だから、ユキを手放したのだ。
置いてきてしまったユキを想って、スバルは瞳を細めて想い馳せた。
あの後、無事に帰れただろうか。今でも、もしかしたら自分を探しているかもしれない。
そう思ってスバルは膝に置いた拳をぎゅっと握った。
そうしている間にもセンは話を続けた。寂し気な声を響かせながら目を伏せていた。
「帰ってきたらまた話せばいいって思ってた。けど、あいつは死んだ」
「……」
「別に俺は、なにも思わなかった。むしろ誇らしいとすら思った。羨ましくもあった。俺たちは別の国の奴と戦う機会なんてそうそうない。強い奴はもっと他の国にいるかもわからないって思うとワクワクするしな。あいつは他の国の奴と戦って死んだ。ということはあいつより強いやつと戦ってことだ。羨ましかったね。強い奴と戦えて、死ねてよ。楽しかっただろうなってさ」
そう言いながら、明るく声を出しながら、笑みを浮かべながらも、膝に置いた拳が白くなるほど、力強く握っていたのにスバルは気づいた。
「けど、あいつが惚れたっていう女は泣いてた。帰ってこないって知ってずっと泣いてたんだ」
センは強く握った拳を額を持っていった。苦し気な表情で、まるで何かに祈るかのように、許しを請うかのように。
「俺には分らない。なんでその女が泣いてたのか。悲しんでたのか。死んだのはあいつのせいだ。あいつが弱いから死んだ。ただそれだけなんだ」
センは言い聞かせるように何度も軽く額に当てた拳を当てた。自分の考えは間違っていないと自分自身にいいきかせるように何度も何度も拳をあてた。スバルは見ていられなくなって、手を伸ばしてセンの腕を止めた。
するとセンはゆっくりと顔をあげる。その顔には眩しいもの見るかのような、泣きそうな、そんな表情で、それでも笑みを浮かべていた。
「けどさ、だけどさ、わからねぇけどよ、俺は……嫌だった。そんで、泣いてるあいつがなんだか羨ましかった」
そう言ったセンの晴れやかな表情に、スバルは目を見開いた。
「だから俺はこのゲームに参加したんだ。この気持ちは俺にはわからねぇ。俺には王になるなんざ向かねえ。けどこの王選のルールを変えて、もっとマシな奴が王になればこんな、俺みたいなやつがいなくなるんじゃねェかって。誰かのために泣けるようになるんじゃないかって、もう誰も死なせず、泣かさないようになるんじゃないかって思ってよ。……きっとただ強い奴じゃ、ダメなんだ」
そう言って膝の上に置いた拳をぎゅっと握り、スバルを強く見返す。
まるで、自らの決意を改めて心に刻むように。
スバルは思わず目を細めた。
あまりにまっすぐで、眩しくて、目を逸らしたくなったから。
それが少し、ユキに似ていると言ったらおかしいだろうか。
「……お前は立派だよ」
そういうとセンは苦笑いを浮かべた。
「そうかァ? ただ単純な理由よ。ただ俺はもう仲間が死ぬのも、泣くのも見たくねぇだけだ」
「動く理由なんかそれで十分だ」
そう言うとセンは苦笑いを浮かべながら首を傾げた。
「……そういうもんか?」
「俺も似たようなもんだ。身近にいるやつが傷つくのは、死ぬのは嫌だよな」
「……」
やはり、センに協力してよかった。
センも自分と同じだった。
ただ、近くの人に、大事な人に死んでほしくなくて、傷ついてほしくなくて、泣いてほしくなくて、動いていたのだ。もし叶うなら、なんとかしてあげたいと思う。
スバルももう、嫌なのだ。
泣くのも、泣かれるのも。絶望するのも、されるのも。死ぬのも、死なれるのも。
大事にされたり、守られたりするのもだ。
母は死んだ。絶望しながら生き、最期は幸福に死んでいった。
兄の死が迫っている。大事にしてくれた、愛してくれたあの兄が。
スバルのために何もかもの重責を背負って、スバルの幸せを祈っていた。
大事にされたいんじゃない。大事にしたいだけなのに。
たった一人、初めて愛したユキを傷つけないために、守るために、傷つけて、手放した。
そのユキも、自分を守ると言ってまたスバルにもとに帰ってきた。
守られたいんじゃない。守りたいのに。
守りたいのに守れなくて、いつもうまくいかない。
でも、それ以外のやり方を、スバルは知らないのだ。
すると、少しひげの生えた顎に手をあててじっとスバルをニヤニヤした顔で見ていることに気づき、スバルは顔をしかめながらセンを見返した。
「なんだよ」
「いやぁ、なるほどね。あの女を庇ったのはそういうことか」
「は? なんの話だよ」
話の展開についていけず、スバルが顔をしかめていると、ますますセンはニヤニヤとスバルを見つめた。
「古城でのことだよ。逃げる寸前、あの女助けたろ? 見えてたぜ。それにあの女相手には反撃もしなかったしな。……惚れてんの?」
「……ッ違う!」
指摘をされて咄嗟にスバルは噛みつくように否定した。その反応に何かに気づいたのかセンはさらにニヤニヤと憎らしい笑みを浮かべた。
「ほおほお? 惚れてんのかぁ。まあ強ぇもんな! 無理ねぇか!」
その言葉にスバルは思わず顔をしかめる。
「別に強くて惚れたんじゃ……」
「やっぱ惚れてんのか」
「……」
しまった。
センなんかに嵌められた。最悪だ。末代までの恥だ。
絶望したように茫然と青ざめているとセンが「なんかすっげー失礼なこと考えてね?」とセンが呆れたように目を細めてスバルを見ていた。
するとセンはスバルの肩に手を回した。スバルは嫌そうに顔をしかめながらもその手を振り払おうとはしなかった。
「いいのか? 裏切って?」
他人事だと思って楽しそうに聞いてくるセンに少しながらイラつき、スバルはセンを睨みつけた。
「よかねぇよ。……ちゃんと事情は説明するつもりだ」
そう言うとセンは苦笑いを浮かべて今度は小声でスバルに話しかけた。
「ま、いいけどよ。……そういやもう一つ、お前影武者じゃねぇだろ」
「……」
「あとカグネ王国のやつじゃねぇよな。身なりがよかったからどっかの国の貴族か王子とかか? 俺、勘はいいんだよ」
「……」
ばれていたことには驚かなかった。
影武者ごときにあれだけの兵が救出に来るなんて考えればおかしな話だろう。いつかは勘づかれるとは思っていた。ただ、ばれたその後どうするかは考えてはいなかっただけだ。
けれどこのセンの口ぶり、まるで最初から知っていたかのような口ぶりだ。
スバルは怪訝そうに顔をセンに向けた。
「わかってて俺を仲間にしたのか?」
「まあ面白そうだったし? 俺あんたを気に入ったのは嘘じゃねぇし」
「なんで俺をそんな……」
そう聞くと、センは寂し気な笑みを浮かべた。そこにわずかな懐かしさをにじませながら。
「言ったろ? 俺は勘はいいんだ!」
「……馬鹿じゃねぇの」
スバルは鼻で笑いながら今度こそセンの手を払って怪我人のいる方に向かった。
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「さて、これからどうすんだ?」
二人は仲間も元に戻る前に食糧をもらうため、地上にいる店主の下に向かった。センは手を頭に回しながら隣に並ぶスバルに話しかけた。その問いかけにスバルは眉を潜めた。
「……手がかりがなんもねぇんじゃ動きようがねぇ。結局古城にはいなかったしな」
「手がかりねぇ……」
そう言いながら考えるようにセンは天を仰いだ。その横顔を見つめながらスバルも考えを巡らせた。
もう時間はない。最悪にも明日には見つけてユキ達の元に戻らなければならない。センも考えていた通り、本当はヒュイスを連れ出して居場所を吐き出せたら早いのだろうが、一度襲撃した手前もう難しいだろう。ユキが向こうにいるが、スバルのわがままで巻き込むわけにはいかない。
(ヒュイスがどういう意図でこのルールを作ったのかわからねぇ。『王を見つければ王選のルールを改変させる権利を与える』、これに何の意味がある?)
王選のルール変更。本来なら王でも改変できないらしいルールを別の誰かに委ねようとしている。しかしそれは実質王を決める行いと変わらない。王選のルールを変えられるということは、自身の有利なルールさえ作ってくれればもう王が決まったのも当然だ。期限だってないし、王候補であるヒュイスにメリットがない。どういうつもりだ。
(もしかして、ヒュイスは王になるつもりがないのか……?)
王は、王選試合で王を倒すことで王になることができる。そしてその王子は王選試合までに王子を殺すことができれば王選試合での準決勝者として出場できる。これのメリットは王選試合で次々と敵を倒していくより遥かに早く、効率的に王になる道を進めるということだ。どちらにせよヒュイスが王になるには自分の命を狙う敵を倒し、そして決勝で王に勝つことだ。国民には平等に王になる権利が与えられ、王選の参加は自由だが、王子に関しては王選からは絶対に逃れられないルールになっている。もしかすると、ヒュイスは王選に参加することにあまり乗り気ではないのか。
何かひっかかる。
何かが見えそうなのに、まだ足りない。情報が――……。
微妙な違和感。もう少しで掴めそうな気がするのに。
スバルは、まとまらない考えを表現するかのように、髪の毛をくしゃくしゃにかき混ぜた。その様子を怪訝そうに見ていたセンにスバルは顔を向けた。
「本当になんも聞いてねぇのかよ。よくしらみつぶしに探す連中が出て被害が出ないもんだな」
そう言うとセンは一瞬目を丸くした後、うーんっと首を傾げた。
「みんな王選のルール変更になんか興味ねぇしな。動いてんのは俺とタクミのとこだけだ」
王になれるかもしれないというのに、興味がないというのもおかしなものだ。やはりカグネ王国の国民は王になる云々より、一番強いとされている王と戦えるということの方が重要らしい。こいつらにとっては、これは遊びで子どものかくれんぼみたいなものなのだろう。
「タクミ……。あの矢の集団か」
「俺はまあ気にしてねぇんだけどよ。執念深いのか一度倒したことがあってよ。それからずっと追っかけ回されてんの」
げらげらと笑うセンにスバルは呆れた視線を向けた。
「お前のそういうあっけからん態度が奴のプライドの気に障ってるんだろ」
「そんなもんかねェ?」
そう言いながらも地上に続く梯子につき、センに続いてスバルも登っていく。
「ッ‼」
すると、梯子の先の開きからドオンっという地響きとともに何かが崩れる音が聞こえてきた。何があったのかとセンとスバルは一瞬顔を見合わせ急いで地上に向かった。
地上に上がると、居酒屋であった店はモクモクと煙に巻かれあたりを白く染めていた。煙の隙間から店の入り口近くの天井の一部が崩れているのが見えた。あれが落下したことで粉塵が舞ったのだ。あたりを見渡すと、その地下への開きの近くに店主が倒れていた。スバルはすぐさま近づいて容体を見た。頭から血を流しているが、どうやら気絶しているだけのようだ。ほっと息をつくとどこからか声が聞こえてきた。
「みィつけたァ」
はっと声のした方に振り向く。声は出口の近くからし、そこにはニィっと不気味に笑う男の姿があった。木造の扉はめちゃめちゃに破壊され、月光がその男の姿を映していた。見た事のない男だ。しかしあまりにも普通の男に見える。けれどこの破壊された様子から犯人はその男なのは明らかだ。だからなのか、その姿と持っている武器が相まって、不気味な出で立ちに見えてぞっとする。
「タクミ‼ てめェの仕業かァ⁉」
センは怒りに顔を染めながら、籠手を構えた。しかしスバルはセンの言葉に眉を潜めた。
(こいつがタクミ?)
センから聞いていた話では矢の集団を率いている過激派集団と聞いていたので、どんな武骨な奴かと思っていたら、思ってたより細身で、さらに普通そうな男で驚いた。今は背に弓矢を背負っているが、両手には特徴的に形のした剣を握っている。このことがもう普通の男ではないことを物語っている。
スバルは店主の介抱をしながらチラリとセンを盗み見た。
こんなに怒ったセンは初めて見た。やはり店主が傷つけられたことに腹を立てているらしい。しかし当のタクミはひらひらと挨拶をするように笑顔で手を振っている。
「こうしないと出てこないかなーって、思ってねェッ!」
話し終わるのを合図にタクミは両手に持っていた剣をブーメランのようにして交差に投げる。センはそれを避けるようにして、ブーメランが帰ってくる前にタクミのところまで走り拳を振るった。しかしタクミは懐から筒のようなものを取り出し、先端を床にこすらせそのままセンに向かって投げつけた。するとそれはセンにあたる前に大きな火花を散らばし爆発した。爆雷筒だ。
センは思わず籠手でガードはしたが、そのままタクミを見失ってしまった。すると背後から気配を感じ、センは振り向いて籠手を振りかぶる。タクミは先ほど放った剣を手に持ちセンの籠手とぎりぎりと交え合った。そのタクミの表情はギラギラとした笑みが浮かんでいた。
「やっぱセンくんが一番楽しいや!」
「何の用だよ!」
「ちょっと不完全燃焼でねェ。ちょっと付き合ってよ!」
「おめェに付き合ってる暇はねェ‼」
そう言ってセンは籠手で押し切り、タクミに籠手を振りかぶって攻撃をした。しかしタクミはそれを剣で何度もはじき返し、さらに背に背負っていた弓矢でセンの肩を至近距離ですぐさま射た。
「センッ!」
視界が見えにくい中でセンの近接型の武器では分が悪い。それにタクミの弓の腕も聞いた通り名人並みだ。至近距離でさらに相手が目の前にいる状態でいつ攻撃されてもおかしくない中、射てきたのだ。弓矢は本来相手を遠方から攻撃を与えるものだ。なぜなら弓で相手を絞り、さらに威力を出すための絞りを十分にしないと弓の攻撃力は発揮しないからだ。なのにタクミはそれらをほぼゼロの状態で弓を射て、さらに的も攻撃力も正確だ。このままではセンに不利だ。
スバルは加勢しようと剣を抜き、タクミのもとに走ろうとした瞬間、出口の方から静かな声が聞こえた。
「見つけたぞ」
その声に導かれるように、スバルは顔を向ける。
粉塵が少し残っていて見えにくい中、風になびいた白銀の髪が月光に輝き、満月のような黄金の瞳キラリと怪しく光るのが見えた。
煙が晴れた先に、ユキがいた。
ユキは狡猾にニヤリと笑みを浮かべて剣を構え、そのまま真っすぐタクミに向かって走り出した。タクミは一瞬でセンから相手をユキに切り替え弓を引いた。怯ませるように矢を一本ユキに射たが、ユキが避けるとすぐさま手に持っていた特徴的な形をした両手剣でユキの攻撃に対抗した。
「望み通り戦いに来たぞ!」
ユキは狂気的な笑みを浮かべながら、タクミと鍔迫り合いになる。それにタクミは嬉しそうに笑い声をあげる。
「あっははははははは! いいねいいねいいねいいね‼」
そう笑いながらタクミはユキの剣を押し切ろうと力を加えた。力技ではユキには不利だ。ユキは対抗するように鍔迫り合いになった剣を横に向かわせ力をうまく流し、そのまま後方に飛んで距離をつける。距離をつけられたタクミは片手に持っていた剣をブーメランのようにしてユキに向かって投げた。ユキはそのまま剣で受け止め弾くが、その間にもタクミはユキとの距離を詰めもう片方の剣をユキに向かって振り下ろした。
「怒ってる? 怒ってる⁉ 俺が君の仲間を殺しちゃったからかな⁉」
「……」
また鍔迫り合いになったタクミは狂ったように笑いながらユキに詰め寄る。それでもユキはふっと笑みを向けながらも口を開かず、一度タクミの剣を弾くと、タクミの顔に目掛けて何度も突きつけた。その速さが目に追えず、タクミは避けきれず頬にいくつもかすり傷をつけた。
「ッやっぱり君は僕とおんなじだ! 戦うことが好きで仕方がない壊れた人間だよ!」
頬を傷つけられたことに少し怯んで自ら距離をあけたタクミだが、傷つけられたにも関わらずタクミはさらに高らかに笑い声をあげた。それに対しユキは笑みを浮かべながらも冷めた目でタクミを見た。
「少しは黙ったらどうだ? よそ見をしてると、お前を苦しませて殺せないだろ?」
笑みを浮かべながらも恐ろしいことを口にしたユキに、スバルは目を開いて驚いた。
ユキは騎士に拘っていた。だからこそ、こんな風に痛めつけて自身の力を誇示するようなことはしなかったし、それにそういうやり方を何よりも嫌っていた。
そして見たことのない冷たい笑み。
控えめに笑い、嬉しいときには花が咲くように笑い、時には自信満々に笑う、そんな笑みしかスバルは知らない。
なのに、なんだ。
あの張り付いたような、冷たい笑みは――……
そうスバルが茫然と見ている中、戦いは続いていた。
タクミは嬉しそうに笑みを浮かべて投げたもう一個の剣をユキの攻撃を避けながら取りに行き、構えなおす。
「いいじゃんいいじゃん! そうだよこうだよ! こういうのだよ!」
タクミはギラギラと瞳を輝かせてもう一度持っていた剣を投げようと構えた瞬間、ユキが一瞬でタクミの懐に飛び込んでいた。タクミが気づいたときにはもう遅く、ユキはタクミの腹に一線横に切った。
「ッ‼」
ユキの攻撃を避けられず、タクミは腹を押さえながら急いでユキから離れるように後退する。
「浅かったか? いや、浅すぎたかな?」
そう言ってユキは見せびらかすように手に持っていたものを振る。ユキの手には剣、ではなくナイフが握られていた。タクミは腹の傷を押さえ痛みに耐えながら怪訝そうに顔をしかめた。すると一度自分の腹の傷を見ると、徐々にタクミの表情が怒りへにじんでいった。
「……ッわざとナイフで腹を切りやがった……ッ」
ユキはあの一瞬でナイフに持ち替え、懐に入ったにも関わらず致命傷を負わせず腹を一線にして切ったのだ。これが剣であればタクミの腹に深々と剣が刺さり、致命傷になっていたであろう。それはユキの余裕の表れ。いつでも殺せるぞという脅しでもある。
それに気づきタクミはユキを睨みつけた。それに対しユキはにこっと口角をあげた笑みを向けた。
「死んでは困るからな」
「なめやがって……ッ」
タクミは顔に笑みを浮かべながらもこめかみに青筋を浮かべた。そこでユキは持ち前の速さを生かしてすぐさまタクミの下に走り横っ面を蹴り飛ばした。腹を斬られた痛みに反応が鈍ったのか、それともユキの速さに反応できなかったのか、それともその両方か、タクミはそのまま吹き飛ばされた。しかしタクミは地面に手を付けてくるっと回転し着地する。射手だからか恐ろしく身軽だ。
ユキから遠ざかったタクミはすぐさま弓を構え、ユキに放った。タクミはどんな体制で着地をしようと弓を構えて打つことができている。しかもかなり正確にだ。センの言う通りタクミが弓の名手であることは間違いない。これには少しスバルも目を瞠った。
しかし射られたユキは避けるでもなく叩き斬るわけでもなく、ユキはその矢の柄の部分を素手で受け止めた。
「……ッ⁉」
これはさすがにタクミも息を飲んだ。
そしてユキはお返しとばかりに持った矢をタクミに投げつけ、袖から数本のナイフを取り出し、タクミに再度投げつける。その矢やナイフはまっすぐタクミの腹や肩、足をかすめた。
わざとユキが外していることは明白だった。命はまでは取らない、けれどじわじわとタクミを殺すために、少しずつ傷つけていく。ユキの真意に気づいていたタクミは一瞬その傷の痛みに顔を歪ませながらも、楽しそうに狂気的に笑い、再度ユキに向かって剣をブーメランのように投げつけた。
スバルは茫然とユキとタクミの戦いを見守った。
騎士に拘っていたユキが、騎士とも思えない戦いぶりだ。剣だけではなく、ナイフや敵の矢を使って応戦している。そのあらゆる武器を使いこなす、あまりの手練れっぷりに感心どころか脅威さえ感じている。
すると、何度か打ち合って戦っていたタクミの剣がキンッと弾かれる音が聞こえた。見上げるとくるくると回って地面に突き刺さる剣が見え、その先でユキとタクミは対峙していた。片方剣を弾かれ、もう片方の剣で応戦しようとしたタクミだが、そのもう片方の剣もユキの剣ではじかれ宙に浮いた。そしてユキはそのままタクミの腹を蹴りつけ、地面へ投げた。
避けきれずそのままの衝撃で倒れてしまったタクミの上にユキは剣先を向けた。
これでユキの勝ちだ。
しかし剣先を向けられているにも関わらずタクミの笑みは消えなかった。
「……ッ正解だったよ。君の部下を殺して王子を攫うのは。ほんとはウェジットを呼び出すはずだったけど」
「……ヒュイスを返せ。お前を殺すのはその後だ」
ユキはタクミに冷淡な表情で見下ろし、剣先を喉元にわずかにあてそこでできた傷から血を流す。しかしタクミは浮かべていた笑みをさらに深くしてニイっと笑った。
「そういうところが、甘いんだよッ!」
「ッ!」
タクミは懐から煙幕玉を取り出してユキの顔に目掛けて投げつけた。ユキは驚いて思わず煙幕玉を斬ってしまい、煙が出てタクミの姿をくらました。
ユキは近くで煙が出たことで煙を多く吸ってしまい、ごほっと少しせき込む。そうしている間タクミの気配が移動していることに気づきあたりを見渡した。すると天井の方からタクミの声が聞こえてきた。
「俺が君を見逃したのは、もっと面白いのが他にあったから! 殺すんだったらさっさと殺さないと!」
「……ッ待て!」
そう言いながらタクミが逃げていくのが見え、ユキは追いかけるように出口に向かった。
「待てユキ! 深追いは……」
タクミの後を追おうとするユキをスバルは咄嗟に腕を掴んで止めた。
「!」
するとスバルの掴んだ腕はユキに振り払われ、腹に蹴りを入れられた。スバルはまさかユキに攻撃されると思わず、そのまま蹴飛ばされ地面に倒れる。そしてユキは起き上がる暇も与えずスバルに跨ぎ、そのまま剣先を振り下ろそうとした。
その瞳に確かな殺気を孕みながら。
「ユキ!」
「ッ!」
スバルが名前を呼ぶとユキははっとしたように目を開き、剣がスバルの喉元に刺さる寸前で止まった。
「……で……ん……」
ユキは茫然としながらスバルを見下ろし、呟いた。ユキはしばらく下にいるスバルをじっと見つめた。
「……ッ」
すると、ユキはくしゃっと顔を歪ませた。
それは泣きそうに、苦しそうに、悔しそうに、――憎むように。
その表情に驚きスバルは手を伸ばそうとしたが、触れる寸前ユキがスバルから退き剣を一度振って鞘に納めた。
スバルも起き上がり、ユキのあの表情の意味を聞こうと口を開こうとしたとき、どこからか声が聞こえてきた。
「ユキ様」
「ウェジット」
振り返ると出口の方から数名に兵を引きつれているウェジットの姿があった。おそらくユキと共に来たものの、ユキが先走って置いていかれたのだろう、先ほど到着したようだ。
ユキはウェジットに呼びかけられ、ユキもそれに応えてスバルの横を通り過ぎウェジットに近付き話し始めた。
――スバルに見向きしないまま。
「……」
スバルは横目でその姿を見ながら先ほどのユキの表情を考えた。
あんな殺意のこもった瞳も、憎むような表情も、スバルはユキに向けられたことなどない。いつだって慕ってくれた優しい微笑みしか見たことがなかった。時には怒ったように眉を潜ませてそれでも最後は笑ってくれた、そんな表情しかスバルは知らない。なのに今のユキはまとう空気をヒリつかせ、淡々とした表情をしている。そこに先ほど戦闘であった冷たい笑みはない。それでもいつもの彼女であれば、すぐにスバルの下に駆け付けたであろう。
いつものユキとは確実に違う。
離れている間、ユキに何があったのだろうか。
『……ッ正解だったよ。君の部下を殺して王子を攫うのは……』
先ほど言っていたタクミの言葉を思い出した。
部下を殺した? 王子を攫う?
(ユキの部下が、いや、コントラス王国の兵が一人殺された、のか? それに王子。ヒュイスのことか。あいつが攫われたのか)
スバルは聞いた話から推測を立てた。
ユキがセンたちではなく、タクミを追いかけていたのはおそらくヒュイスが攫われたのと、コントラス王国の兵が傷つけられたからだ。タクミがなぜセンではなく、ユキ達の方に矛先を向いたのかわからないが、どうやら状況がめちゃめちゃなことになっているのだけはわかる。
しかしそれでも、ユキのあの笑みが、納得できなかった。
戦闘を楽しむような人間ではない。
あれはまるで、そう演じているような――……
そう考えユキを見つめていると、ウェジットと話し終えたのかユキはスバルに近付いた。いや、正確には隣にいたセンに向かって歩き出した。
そうしている間に地上の騒ぎに気付いたのか地下からササメの奴らが様子を伺いに続々と姿を現した。それをセンの背中越しに確認したユキは改めてセンを見上げた。
「ここのリーダーはお前だな?」
ユキがそう聞くとセンは渋い顔をしながらも答えた。
「……ああ。であんたは古城にいた奴だよな?」
「そうだ。……あの時はすまなかったな。私の勘違いで」
「あ?」
そう言って笑みを浮かべながらセンに話すユキにセンは思わず声をあげた。突然の友好的な態度に眉を潜めて首を傾げる。それでもユキは話を続けた。
「スバル様を保護、してくれたんだろ? ヒュイスから聞いたよ。タクミが王を狙うことで、もしかしたら王城に招待されているスバル様に危険があると考えて保護を依頼したって。……ありがとう。君には感謝している」
「何言ってんだ?」
とうとうユキが何を言っているのかわからず、怪訝な表情をユキに向けた。
しかし隣で聞いていたスバルにはわかった。
今も少しだがコントラス王国の兵がウェジットの後ろで控えている。今ここにスバルが自由にできていることの説明となぜスバルがセンと親し気なのか、周りに違和感を持たせないためだ。少々、苦しい言い訳だがこうでも言わないとこの状況が成り立たない。
しかしこの咄嗟の対応といい、先ほどスバルに声をかけなかった態度といい、とういうことはユキはずっと前からスバルがセンたちと行動していることはバレていたことになる。それに、少し罪悪感を持つ。
「……そこで相談なんだが」
センはユキの意図がわからず未だに怪訝な顔をしていたが、ユキは無視してそのまま話を続けた。センにあまり考える暇を与えないようにするためだ。変なことを言われ、周りに建前だという事がバレたら大変なことになる。
そして不気味に笑みを浮かべながら、ユキは手を差し伸べた。
「手を、組まないか?」
日本の名前っぽいのがちらほらいるな、と思いませんか?
これ少し、私なりの都合によりこの名前なのです。