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8.一時の別れ


 

 その日は少し蒸し暑かった。

 この国の特産品であるワインは今日も絶好調だ。ワインと観光国で有名なこの国では、この居酒屋や料理店の多さ、さらに沿岸沿いだからか海も近くて海水浴としても人気だ。酒に料理に海。この三大要素が揃ってるこの国は、この時期は大忙しの時期だ。暑いとはいえ、ガヤガヤと賑わうこの王都ではこの暑さは店が儲かるのにちょうど良いらしく、外国観光客と国民が入り混じって楽しそうに陽気に騒いでいる。ワインを一気に喉に流し込んだり、ゆっくりと料理と一緒にワインを楽しむ人もいるが、基本的には悪酔いしている者はいないようだ。


 その街並みに一人、エメラルドの瞳を持った美しい金髪の青年がいた。


 その光景を横目に、金髪の男はふと笑みを浮かべる。

 そして男はそのまま酒屋に向かった。あまり人がいない静かな店だが、壁沿いにズラリと並ぶワインがあり、少し見上げれば年代物のワインも多く並び品ぞろえのいい店だ。店員は来店した男をチラリと確認した後は、そのまま男に近付かずに直立不動で立っている。一見無愛想に見えるが、本当の名店はあまり過度な接客をせずに商品を品質だけで勝負するというものだ。

 男は笑みを浮かべながら改めて商品を見る。


 さて、どれを選ぼうか。


 今頃異国の地で式典に出てるであろう主と同僚と一緒に飲む約束をしたのだ。

 記念すべき初の飲み会。いいワインをあけて飲みたいものだ。しかし、高い酒でなくともおいしいワインはある。王族でありながらも男の主は安いワインも美味いといってくれたし、安いのを何本かと新改良したと言われているオレンジワインなるものを試してみるのも悪くはないか。女性のあの同僚が一体どれだけ飲めるのかは知らないが、これだけ買えば大丈夫だろう。

 

「楽しみだなぁ。スバル殿下もユキさんと飲むのはじめてっぽかったし、ユキさんの酔った姿とか見てみたいっすよねぇ」


 男が思うにユキは酔ったら悪酔いするタイプだろう。我慢強い分酒という薬でリミッターを溶かしてしまえば、今まで我慢していた欝憤などが表に出そうだ。きっとめんどくさくなるに違いないが、めんどくさくなると分かっていながらも楽しみの方が上だ。こんなことを考えながらも笑みは止まらない。

 両手に酒を抱えながら店を出る。この暑い中、重い荷物を持って王城に戻るのは少ししんどいが、まあこれも後の楽しみのための先行投資だと思えばなんてことはない。これであの二人も少し距離が縮まればいい。お互い惹かれ合ってるくせに素直にくっつかないから外野はやきもきするのだ。それに今は二人で旅をしているみたいなものだし、帰ってきたときには恋人同士になりました、みたいな嬉しい報告がないものか。そうしたらこのお酒だって祝い酒に変わるというものだ。

 そんなことを考えながら、男は酒を抱えて内心スキップ気分で王城に向かった。


「あれ? お前、ユウトじゃない?」


「え?」


 いきなり名前を呼ばれて男は、ユウトは振り向いた。


「……ッ!」


 呼ばれた人物の姿を見て、ユウトは息を飲んだ。

 

 コントラス王国の騒がしい王都で、ユウトの世界だけ音が消えた。

 

 先ほどまであった浮かれていた気持ちが、周りの暑さと違い、一気に冷めていくのを感じた。



@@@@@@@@



 コントラス王国の隣国のカグネ王国の山の古城で、カグネ王国の王選に向けてのゲームが行われていた。そこには関係のないはずのコントラス王国の王子であるスバルとその護衛のユキが、なぜか敵対していた。

 

 ユキはスバルを救いだすために、スバルを攫った武装集団『ササメ』と戦闘していた。しかしスバルはその誘拐集団の中に紛れ込んで戦闘に参加していた。

 本来であれば、ここでユキと合流してこの『ササメ』という武装集団を捕まえる予定であった。


『……ただ、やりたいようにしてるだけだ。わかんねェけどよ、仲間の泣く姿はもう見たくねェんだよ』


 センの言葉が頭をよぎる。

 先ほどユキに語っていたセンのこの王選に対する想いが少し触れた気がした。


「……」


 そう思った時、スバルはセンのもとに走り出していた。

 スバルはユキと戦っているセンのもとに駆け付けて、センの腰に下げている煙幕玉を奪い取ってユキに目掛けて投げた。


「!」


 するとユキは持っていたナイフで煙幕の玉を一刀する。すると煙が漏れユキの姿を隠した。煙幕と言ってもそれほど範囲は広くない。せいぜい数メートルほどで、ちょうどユキとセンの周りを囲むように煙幕が覆っている。あの会食の時に会場が全体で覆われれたのは複数の煙幕玉が使われていたからで、一つ一つにそれほど範囲は広くはないのだ。

 急に現れたスバルにセンは目を瞬きして驚いていた。


「おおう? 相棒⁉」


「逃げるぞ!」


 驚いているセンをよそにスバルは鋭い眼差しでセンに声をあげる。


「はあ⁉ まだ戦い足りねェよ!」


「待ち伏せされた上にこの人数じゃ不利だ! 無駄に仲間を死なせていいのか⁉」


 ざっと見ても人数は数十人の差がある。囲まれているが今はなんとか持ちこたえているようだ。しかしこのまま持久戦になるともたない。それに相手はコントラス王国の一番の騎士と言われているユキが相手で、王国騎士団全員でかかっても倒せない化け物だ。好きな女を化け物扱いするのはなんだかおかしい気がするが、実際の戦闘を見てしまえばその言葉も痛感するというものだ。味方にすれば頼もしいが、敵にするとこれほど厄介な相手はいない。

 すると、センもスバルの言葉を聞いて落ち着いて周りの戦闘の音を聞いて唇を噛んだ。


「……ああクソッ!」


 今は煙幕でセンとスバルの周りは煙幕に囲まれているが、センも周りの苦戦しているような仲間の声を聞いて悔しそうに声をあげて、出口に向かう。それをスバルも追う。しかし背後から感じる殺気でスバルは勢いよく振り返り剣を向ける。するとスバルが向けた剣は短い刀身を受け止めた。

 そこには、煙幕から飛び出したユキがスバルに向かってナイフで対抗していた。その表情は、怒りに染まっている。


「逃がすと思うか⁉ このナイフだけでも貴様を倒すことは簡単だぞ!」


「……チッ!」

 

 微妙な煙幕の動きでスバルたちが動いたことに感づいたか。相変わらず恐ろしい観察力だ。ユウトとの試合でもそうだったが、本当にわずかな変化も逃さない。

 スバルはユキを押し切ろうと足に力を入れる。すると、ユキは急にナイフに込める力を抜いた。押し切ろうとしていたスバルは急に重みが無くなり態勢を少し崩した。その瞬間ユキはスバルの剣を上へとはじいた。スバルの手から剣が離れ剣はくるくると回りながら宙を舞い、地面に突き刺さった。そしてユキはそのままスバルの横っ面目掛けて足蹴りをする。しかしスバルは剣を離れた衝撃からすぐさま戻り、ユキの蹴りを腕でガードする。


「……ッいってぇな!」


 ガードをして受けたのはいいが、そのあまりの攻撃の重さに驚く。痛みはあったがスバルはなんとか耐えて、後方に下がった。しかしユキは逃がさなかった。スバルを追いかけナイフを容赦なく突きつけ攻撃をしてくる。何度もくる追撃にスバルは紙一重で避ける。


 避けて、避けて、避ける。


(ああくそッ! 何してんだ俺は!)

 

 なんで今ユキと戦ってるんだ。

 こんな、スバルを心配して助けにきてくれたユキを裏切るような行い。

 

 自分でも矛盾している行いだってわかっている。


 けれど、だけど、どうしても、この狂った王選を変えようとするセンたちを、無視することはできなかった。


 それは、何かを変えようともがいているその姿が、スバルにどこか似ている気がしたから。


 すると、武器を失ったスバルを庇うようにセンが飛び出し、ユキに向かって籠手を振りかぶる。しかしそれをユキは持ち前の速さで後方に避け、センが攻撃したその一撃は簡単に地面を砕いた。

 

「今の避けんのかよ! 完全に気配消したはずなのに!」


「あいつを普通の奴だと思うな。あのキリエルと同等ぐらいに思っとけ」


「はああ⁉ あのキリエルと⁉ それはお相手願いてぇ‼」


「て、違っげぇよ! 馬鹿が! だから早めに逃げろって言ってんだよ!」


 意気揚々と戦闘態勢に入ろうとするセンを止めていると、煙幕がやっと晴れてきて視界がクリアになる。すると視界の上、先ほどユキがいた二階の廊下からヒュイスの姿が見えた。ヒュイスは二階の廊下から手すりにもたれかかって一階を面白くなさそうに見下ろしていた。その傍らにあの老執事が控えている。武装をお互いしているが、戦闘に参加する気はないようだ。カグネ王国の国民は全員戦闘狂でこういう戦闘にはすすんで参加するかと思ったが、あの二人はそうでもないらしい。王子だから、という理由かそれとも単純にヒュイスが全く興味がないのか。

 そんな二人に少し違和感を感じながら、スバルたちは出口に向かった。


「おい! 逃げるぞお前ら! 撤退だ!」


 センがそう叫ぶと同時にユキも声をあげた。


「一人たりとも絶対に逃がすな! 囲めッ!」


「クソがッ‼」


 声高らかに命令を出すユキに、センは吐き捨てるように言葉を吐いた後、ユキに続いて追ってきた敵を振り向きざまに殴った。スバルも応戦するように剣を構える。


 しかし次々とやってくる敵にだんだんと息が上がってきた。周りを囲まれているから当然だ。センも余裕ぶっているが息が上がって辛そうだ。他の連中も同じような状態だ。このままでは完璧に捕まる。

 すると静かな声が背後から聞こえてきた。


「もう逃げられない。もう体力の限界だろう? ――諦めて、あの人の居場所を吐け」


 凛と響く透き通るような声。スバルが好きな、ユキの声だ。

 けれど今は、その声に自分を心配するその声に、焦りを感じる。

  

 スバルは急いで周りを見渡した。


(何か、何かないか。何か――……!)

  

 ユキがゆっくりと近づいてくる。

 好きな女だが、今は得体のしれないものに見える。本当に敵にすると厄介だ。


 捕まるのは問題ないはずだ。

 けれど、まだ、まだ、見てみたいものがある。

 こいつらの行く末を、見てみたいのだ。


 だから、まだ捕まるわけにはいかない。


 そう思った時、二階の窓ガラスが勢いよく割れた。



@@@@@@@@



 スバルたちが限界を迎えたとき、突如として二階の窓ガラスが割れた。


「なに⁉」


 スバルもユキも、そしてセンもその窓ガラスに目を向けた。窓ガラスから出てきたのは複数の矢だった。

 その矢はカグネ王国の兵、そしてセンたち『ササメ』にも攻撃を浴びせた。ユキはその矢を剣ではじき、スバルもある程度剣ではじいた後、落ちていた盾を使って攻撃を防いだ。センは籠手でガード、他は矢が刺さり動けないものやスバルと同じく盾でガードしている。

 突然の攻撃にスバルは矢を防ぎながらセンに顔を向けた。


「お前の仲間か⁉」


「ちげェよ!」


 センはスバルの問いに焦ったように答えた。スバルはそのセンの表情に眉を潜めた。

 どうやら本当のようだ。嘘を吐く理由もない。


 だったら一体誰だ――……。


 しかもこの複数からくる矢。おそらく古城の周りにあった山腹から放っているのだろうが、囲んでいるとはいっても城から山まである程度の一定の距離はある。スバルたちが山から橋を渡ってきたのだから矢で届く距離ではないはずだ。それにこの四方八方からくる矢の多さ。一体何人の人間が矢を射ているんだ。

 それにこの正確性。完全に窓に矢が入るように射ている。今見た限りでは百発百中だ。さらに他の崩れかかっている微妙な隙間からも矢が入ってくる。あの距離に加えここまで正確に射てくるなんて、並外れた弓矢使いだ。


 すると、城の外から山全体に響くような声が響いた。


「はぁーーーーーーい! センくぅーーーーーん! 元気ぃーーーーー⁉」


 男の声だ。

 まるで久しぶりに会う友人に声をかけるような挨拶。こんな状況でなければ大人しく見守るところだが、こんな矢が振りまいている戦闘状態だと不気味に感じる。


「うわぁ……。嫌な奴きたな」


 その声に聞き覚えがあったのか、センは思いっきり顔を歪めた。しかしスバルは襲い掛かる矢の攻撃に耐えるのに精一杯で構う余裕はない。


「おい! セン! あいつなんだ⁉」


「タクミっていうのをリーダーにした矢の達人集団で、俺たちと敵対してる王様探してる連中だよ! 俺たち平和主義とは違って過激派連中だ!」


「お前らのどこが平和主義だよ! この国治安悪すぎだろ! どれだけ武装集団がいるんだよ‼」


 などと文句を言っている間に矢は降ってくる。これでは身動きが取れない。相手はセンやユキ達を見張っていて、ユキたちと戦闘になったのを見計らって矢を射てきたんだ。スバルたちを袋小路にして、両方とも倒す気だ。相手が矢の達人なら直接攻撃は不利、だから機を見て射てきたのだ。


「次から、次へと……! 邪魔ばかり!」


 そのころユキは剣で幾重も来る矢をすべて剣ではじき落とすという人並外れた芸当を披露していた。するとユキは目の端で仲間が怪我をしたのを見て駆け寄った。仲間に来た矢を弾いて、物陰に連れて行く。


「大丈夫か?」


「あ、ああ。けど、足が……」


 物陰に連れて行ったユキは兵に視線を合わせるために屈んだ。兵は傷に顔を歪ませながら足の傷口を押えている。矢が深々と脚に刺さっている。ユキはその傷口を見て眉を潜めながら、思いっきり矢を抜きとった。その瞬間兵の男は呻き声を出したが、ユキは構わず懐からハンカチを取り出し傷口を塞いで止血をする。


「大丈夫。治療すれば治るよ。誰も、お前を置いて行ったりしないさ」


 ユキは安心させるように兵に微笑んだ。そして、ユキの言葉を聞いて兵は詰めた息を吐き、ほっとしたように顔を緩めた。


「あ……、ありがとう……」


――――

―――――――――


 その姿をスバルは尻目で確認した。


 こういう時のユキは強い。


 剣の腕という意味ではない。今のこの追い詰められた状況で誰かに気を遣って微笑むなんてことは早々にできるものじゃない。誰かを、何かを守るものがあるとき、ユキの心は強く在れるのだろう。以前、身体を震わせて泣いていた人物とはとても同じとは思えない。あの時は、まだ弱いと思っていたのに。

 ユキの強さは、本来はこういう面で発揮されるのだろう。

 他人を気遣える優しさがあるからこそ、それは守るという強さに変わる。

 その強さが、スバルには時々眩しい。

 

 そんなことを思いながら、スバルは改めてユキの姿を見つめた。ユキは仲間の兵を庇いながら、じっと矢が降ってくる方向を睨んでいた。どう対処するか考えているのだ。自分に微笑みかけていたあの優しい笑みを消して。

 スバルはユキの戦闘姿を間近で見たのはこれが初めてだった。これは試合のときとは違い、生死が問われる本物の戦闘だ。強いことは知っていた。けれど、まさかここまでとは思わなかった。

 本当に、死に物狂いで特訓をしたのだろう。

 剣も碌に持ったことがなかった彼女が、戸惑っただろうに、手に汗握って、豆を作って、泥だらけになって。スバルのそばに来るために、ここまで強くなった。

 そんなユキを今は裏切っている自分が、どうにもおかしいことはわかっているのだ。


(本当に、俺は、あいつにとってひどい男だ)


 そう感傷に浸っていると、ふとユキの足元に目がいった。

 割れている。先ほどセンがユキを攻撃するのに地面を割ったものだ。

 建て替え工事だと言っていた。センの腕力ももちろんだが、元々脆いこともあったのだろう。


「……脆い?」


 スバルは瞬時に周りの外壁を見た。

 ところどころ崩れかかってる。壁に内蔵されている女性の像もだ。あれは大理石でできている、早々に割れるものではない。


 つまり――……


「セン! あの壁を崩せ!」


「は⁉ 崩してどうすんだよ!」


 スバルは、古城の壁に向かって指を指した。その壁にはヒビが入っており、脆く崩れそうだ。しかしスバルの突然の命令にセンは戸惑った。崩せる崩せないかに戸惑っているわけではないようだ。それだけ腕力に自信があるのだろう。しかしそんなことはどうでもいい。スバルは真剣な表情でセンを見やる。


「そこから崖を滑り降りる!」


 スバルの突拍子のない言葉にセンは呆気にとられたように口を開いた。


「矢が何本も来てるんだぜ⁉ 自殺行為だっつーの!」


「盾でもなんでも使って防げ! このままここにいるよりかはマシだ! 行くぞ!」


「ああくそッ! わかったよ相棒!」


 センとスバルは同時に壁に向かって駆け出した。他の仲間もセンたちが駆け出したのを見てがむしゃらに追いかけてくる。

 そして襲い掛かるおびただしい矢を抜けながら、壁にたどり着く。

 この先は崖だ。山で覆われているのであればその下は木で覆われているはずだ。飛び降りたとしても最悪は死なない。

 

「セェエエエエエエエエエエエエエイ‼」


 センは掛け声とともに壁に向かって右腕の籠手を振り上げる。すると壁が崩れ、青空が見えた。緑の山々に囲まれている美しい景色だ。けれどその山々から矢が無数に飛び出し無慈悲にスバルたちを攻撃してくる。その間にも盾で防御するのを忘れない。盾を持っているものが仲間同士でカバーしている。

 下を見てみると、そこは木々で覆われている。あの木々が飛び降りたときのクッションになってくれるはずだ。まあ、高いことには変わりはないし正気の沙汰とは思えないが、これしかない。崖を滑り落ちる分、勢いは減る。打ち所が悪くなければ、せいぜい骨折ぐらいで大丈夫だろう。ここで命を失くすよりかはマシだ。


「飛び降りろッ!」


「うっひゃあああああああ‼」


 スバルの掛け声とともにセンたちは飛び降りた。先ほどまでこの高さに一瞬怯えていたセンたちも飛び降りたときには笑って楽しんで飛び降りているのだから、本当に単純だ。

 少し呆れながらもスバルも早々の戦線離脱のために飛び降りようとした。


「待てッ!」


「……ッ」


 声と共に振り返ると、ユキがスバルを追いかけてきていた。その手が伸ばされた瞬間、一つの矢がユキに向かって飛んできているのが見えた。


 今のユキは目の前のスバルを捕まえることで頭がいっぱいだ。 

 このままでは、ユキに矢が当たる。


 それを見たスバルの行動は、一つだけだった。


 スバルは剣を抜き、ユキに向かった矢を弾き飛ばした。



「!」



 弾いた瞬間、スバルの身体はゆっくりと後方に倒れる。


 風で少し捲れたフードの隙間から、驚いたように目を開くユキと目が合ったような気がした。 




ユキが悪役っぽくなってしまった。。

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[一言] 世界が混沌となるならば、誰かが救いを作ればいいと祈ります
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