水明
これはエリカの記憶。
私というちっぽけな存在が
私を形成するためにあなたを求めたのかも知れない。
気のせいでも
あなたは間違いなく私にとっては
夜に凜と儚く咲く夜桜だった。
そう、桜だ。
そうだ、枝垂桜だ。
冬のインクを溶かしたような空の中に
抗っているみたいにそこに立っている。
そんなあなたに見とれた私がいたのでしょう。
凜と立つあなたを私はよく知っています。
だからこそ
私はあなたのことを知らなくて
自我を失ったみたいに喪失感に怯えて
春の日の輝かしさに目を奪われる。
そんなことはわかっているさ
私はあなただからね。
私がエリカであったから
あなたが枝垂桜であったから
私は今も生きてゆけるだろう。
今もその儚さを忘れたくて
私は今も夜の中にぽつり。
あの凜とした記憶があなたを今も映し出す。
あなたはもう忘れてしまっているでしょう。
それでも、私はエリカのままでいよう。
私のあなたへ向けた幼い感情の視線は
桜並木の花吹雪に遮られた
夜から抜け出した貴方の視線とは
もう出会うことはないでしょう。
はらり、はらり
記憶は鮮明に浮き出して。
はらり、はらりと
季節は巡る。
いつまで経っても私はエリカだ。
武 頼庵(藤谷 K介)様主催 第二回初恋企画
「春、出会いや別れのある季節の涙な初恋」参加作品です。
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