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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

楽園と言う名の地獄

作者: 新・ドラドラ改

 オレはかつて、一世を風靡したタレントだった。オレが出演する番組は軒並み高視聴率を叩きだし、プロデューサーやディレクターはオレをまるで王様の様に扱い、オレは天狗になっていた。


 しかし人気はいずれ落ちる物だという事を、この時のオレは知る由もなかった。民衆に飽きられれば、いずれは見捨てられるという事も。オレもご多分に漏れず、年を経るごとに人気が落ちて行った。そうなると、金魚のフンの様にくっついていた人間は次第とオレの元から離れていき、気づいたら周りには誰もいなかった。そう、オレは孤独になっていた。


 ヤツがオレの元に来たのは、孤独になり、心の隙が出来た時だった。如何にもガラの悪そうな感じのその男は、白い粉の入った袋をオレに見せながら、静かにこう言った。

 

 「金は少々かかるが、こいつを使えば嫌な事はすっかり忘れられる。『楽園』に行けるんだよ。どうだい、使ってみるか?」


 孤独になり、心に隙の出来ていたオレがその言葉に食いつき、その薬を使う事にしたのは言うまでもない。それが「楽園」という名前の、地獄への入口へと気づかずに・・・


 数日も経たないうちに、オレはその薬の魔力に憑りつかれていた。その薬を使っている間は悪い事は全て忘れられ、まさに「楽園」にいる間隔であった。周りの人間はオレの変貌ぶりに驚いてはいたが、殆どの人間が「あいつも一皮剥けたな。」といい方向に取っていた。無論、一部の人間には「あれ、一寸やばくない?」と思われていたようだが・・・


 男と出会ってから数か月後、オレはその薬がなければ何もできない状態-思えば、これが「禁断症状」だったんだろう-になっていた。常にイライラし、落ち着きを失い、不満を周りの人間に当たり散らすようになっていた。最初はオレの変貌を好意的に見ていた人間も、次第に疑念を浮かべるようになった。オレ自身も「本当にこれが『楽園』なのか?」と疑念を抱くようになっていた。


 「警察です。我々がここに来た理由、あなたは分かってますね?覚せい剤取締法違反で、あなたを逮捕します。」

 

 あの男に出会って1年後。オレの前に来た刑事達が逮捕状をオレに見せた時、オレは漸く理解できた。

 

 「あの男がオレに見せた薬は『楽園』への入口じゃなかった、『楽園』という名前の地獄への入口だったんだ・・・」


 だが、もうその事に気づくのが遅すぎた。警察へと向かうパトカーの中で、手錠をかけられたオレは遅すぎる後悔を抱いていた。(終)

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