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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
異世界から来たる『赤の姫』
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男との戦い

 明けましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。

 『赤の姫』を逃がしたい……。

 その願いが届いたのだろうか。




 ――不意に、部屋が暗転した。




「あん?」


 怪訝な声を上げる男。

 次いで部屋の中央に現れたのは、大きな気配。


 ……ゴーレムだ。


 なるほど……時間が経って復活したのか。


 これは……絶好の機会だ。


 相手はこちらが攻撃しなければ反撃してこないのか、静かに佇んだまま。

 そして部屋の中は、私にとって有利な暗闇。


「…………」


 静かに、屈んだ姿勢のまま、音も立てずに部屋を移動する。


 男は……こちらを見てる。

 確実に、目で追ってきてる。

 なんて気配察知能力だ。私に引けを取らない。


 ……いや、微妙に私のほうがまさっている。

 私なら、この目が慣れてくれない暗闇でも、見ることなく相手を察知し続けることが出来る。


 気配を消すのに必要なのが五感だというのなら、察知するのに必要なのもまた五感だ。

 そして、視覚は最もその能力が高い。

 だから気配を消す際の前提は相手に見られないようにすることだし、察知する際の基本は相手の姿を探すことだ。


 だから……私達暗殺者の力量は、他の四つの感覚を如何に研ぎ澄まし・消し去れるかに掛かっている。


 その私の姿を、見えないながらも目で――おそらくはそこで感じる空気の変化で、追いかけて来ている。

 私なら他の四つで事足りることを、総動員して行っている。……が、そもそもは五感全てを研ぎ澄ませても、姿が見えなければ感じられない私を感じ取れている。

 それだけでも、この男は凄まじい。


 ならば――


「っ!」


 狙うはゴーレム。

 この状況でゴーレムの影に隠れ男を攻撃しても、どうせ当てることは出来ないだろう。

 あの男の察知能力なら、鉄針であろうとも平気で見抜いてくる。


 だから、見抜きづらくするための手を打つ。


 鉄針二本を、ゴーレムの膝裏目掛けて投げ放つ。

 最初に投げた一本の後を追いかけるように放つ二本目は、ちょうど一本目の一直線上――突き刺さった一本目をさらに押し込めるための一本だ。


 チン、と軽い音が小さく鳴り響く。

 それを攻撃と判断したゴーレムがこちらを向き、腕を振り上げる。

 もちろんそんな大振りな攻撃、当たるはずもない。


 だが、これで良い。

 これで私の気配は、目の前の大きなゴーレムによって隠れるはずだ。


 例え相手が私の気配を明確に掴んでいようとも、中央の大きな気配が暴れる中、見えない中でも目で追いかけなければ分からない私を捉え続けるなんて、出来るはずもない。


 だから、ゴーレムの攻撃を避けながら、そのままゴーレムの真下を潜った後、反対方向の壁際へと移動する。

 素直にそのまま彼へと迫っても、当たりを付けられ気配がバレるかもしれない。

 故に、あえて危険な方向への移動と、普通なら考えられない場所へと移動してから――さらに気配を消しつつジグザグに移動しながら、彼とゴーレムの前後二方向に鉄針を投げる。


「っ!」


 キン! と弾き飛ばす音。

 やはり攻撃ならば容易く見抜くか。

 自分の周囲にだけ気を配れば良いだけに、私自身を見つけるよりも簡単なのだろう。……尤も、攻撃が飛んできた方向に、私はとっくにいない。その上、その私が居た場所を狙って、再びゴーレムが攻撃動作に入る。


 ゴーレムの攻撃は絶やさない。

 それが私の気配を消すのに必要なことだ。


 それにゴーレムの攻撃が続けば続くほど……私の“真の狙い”に対しての意識は逸れてくれる。




 私が、本気で男を殺す気だという風に、思わせることが出来る。




 ……そう。

 この真っ暗な状況になった時点で……私は、彼を倒すことなんて、諦めている。

 そもそも、彼に勝てないからこそ、私は私を犠牲にして『赤の姫』を逃したのだ。


 だから、この有利な状況でなら……逃げられる。


 そのためにも――


「っ!」


 ――全ての鉄針を――僅か二十本しかないソレを、両手に握る。


 狙う場所は……彼自身とゴーレム。


 しかし狙い方は、真っ直ぐに、じゃない。


 鉄針を鉄針で弾き、方向をあらゆるところへと散らし……あたかも、先程投げた位置から一直線に、彼へと向かっているように偽装しながら。


 ここで全ての攻撃手段を失っても構わない。


 逃げ遂せばそれだけで、また新たな武器は調達できる。


 だから……ここで……全てを……出し切る……!


 ガギィン……! とゴーレムの二撃目が、壁へとぶつかり破壊する音が響く。


 その音に紛れ込ませるように、全ての鉄針を投げ、鉄針で鉄針の軌道を変え、男から見て右方向から襲わせる。

 さらに男の正面にゴーレムの三撃目が放たれるよう――鉄針の軌道を∪ターンさせ、さらに弾いて、軌道を調節する。


 高等鉄針暗殺術:嵐時雨あらしぐれ


 これで右方向からの迫る私の偽装攻撃を防いでも、正面からゴーレムの攻撃が迫る。


 そんな中、左方向から私が抜けようと――例え寸前で気付こうと、対処が出来ないようにする……!




 これで私は、この男と戦わずして、逃げられる。

 この男から、実質的な勝利を、掴み取れる……!

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