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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
異世界から来たる『赤の姫』
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宝の番人(5)

「ヒーリング!」


 薄っすらと聞こえた声は、あおい姫のものか。


「……って、あれ……?」


 思わず、声が漏れ出る。

 そして自分の声が聞こえたことに対して、再び動揺が走る。

 今度は、言葉を失くすという形で。


「クロっ!」


 つい考えなしに、地面に腕をついて上体を起こしてしまう。

 横向きで倒れていたのか、起き上がる時は片腕しか地面に触れなかった。

 ……そんな無防備な姿を晒してしまったせいだろう。身体全体に重い何かが飛びついてきた。


「っ!」


 受け止めきれず、無様に倒れてしまう。

 それでようやく、誰かが自分に襲い掛かってきたのだと気付いた。


「……?」


 だが、どこにも痛みがない。

 身体にナイフを突き入れられたような感触が無いのだ。


 ……いや……そうだ。


 そもそも私は、あのデカくて硬いゴーレムとか呼ばれていた人間じゃない魔法を使う生物を相手にし……『赤の姫』を庇って、死んだはずだ。




 それなのにどうして今……私はその『赤の姫』に、抱きしめられているんだ……?




>>死んでなくて良かった


 『赤の姫』が抱きついてきたのとは反対側――最初に上体を起こした時の背中側から、そんな安堵にも似た声がした。倒れたまま顔を向けてみると、あおい姫が杖を構えて立っていた。


>>さすがに、NPCに復活魔法は効かないだろうしね

「復活魔法……?」「……もしかして、私を治したの……?」

>>そ。街でNPCにも魔法が効くかどうかって、昔気まぐれで調べてて良かった

>>そんなの調べてたんだ……


 呆れたようなエレノアの声が、『赤の姫』の少し後ろから聞こえてきた。

 顔を向けなくても気配で分かる。段々と感覚が戻ってきている証だ。


>>覚えたらとりあえず使ってみたくなるでしょ

「……わたしを、蘇らせたの……?」

>>じゃなくて、傷を治したの。私これでもヒーラーだからね

「魔法で傷を治せるの……?」

>>治せるの

「じゃあ……」「私は、死んでない……?」

>>ギリギリ、HPが残ってたの


 HP……?


>>それよりも、その子のことを宥めなさいな


 言われてようやく、ずっと抱きついたままの『赤の姫』を見た。

 涙を滲ませ、泣くのを我慢し、喜んでくれている彼女を……。


「……そこまで」


 私のことを、と続きそうになる言葉を、グッと飲み込む。


「当たり前じゃない」


 けれどもその飲み込んだ言葉すらも分かったかのように、彼女はそう答えた。

 私の胸に顔を押し付け、グリグリとしてくる心地よい重さ。

 涙や鼻水で服が汚れることすらも気にならない。

 こんなにも大事に思われたことなんて、一度としてなかった。


「でも私は――」


 それが嬉しかったせいなのか。

 つい、暗殺者だから、と言ってしまいそうになった。


「――死んでも構わない、量産品みたいなものだから」


 咄嗟に言葉を変えるが、伝えたいことは変わっていない。


 そもそも暗殺者なんてのは、消耗品だ。

 潜入方法は自由だが、その先で捕まってしまえば、色々と情報を開示してしまう前に自害する存在。

 拷問に掛けられずとも、服装や持ち物・身体の作りや怪我の治療痕だけで色々とバレてしまうものだ。

 だから敢えてソレ等を残し、偽の情報を与える目的が無い限りは、自爆して自害する。

 そうならず、目的を達成し・成功し・生還したところで、他の消耗品よりも長持ちするな、程度の価値しか、国は持ってくれない。


 私が、そうだったように。


「そんなことない」


 顔を上げ――潤ませた瞳で私の目を見て、彼女は言う。

 言ってくれる。


「だってクロは……」「初めて、私を認めてくれた人間だから……」

「っ!」


 言葉に、詰まった。


「あなたのおかげで……」「私は、人間を助けたいっていう」「自分が間違いじゃないっていうことに、気づけたんだから」

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