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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
8/140

幕間(2)

 都市キャラデリック。

 通称「キャラデ」。


 MMO「ラッキー・スター」にある街フィールドの中で最も人が集まる場所だ。

 手っ取り早くパーティメンバーを集めたかったり、レアなアイテムが欲しければとりあえずココに来れば良い。パーティ募集をしている人や、露店を出している人が多いからである。

 逆に、パソコンのスペックが極端に低いのなら、この街には近づかない方が良い。処理落ちでロクに歩けなくなること請け合いだ。


「さて……と」


 キョロキョロと周囲を見渡す彼。相変わらずどういう動きをしているのかが、ディスプレイ越しじゃない視点からも分かる。


 中央広場だけで、彼が先程までいた星空の砂浜と同じ大きさをしているこのキャラデリック。その中央にある噴水の周りには、様々なプレイヤーキャラが露天を出したまま放置してあるが、生憎と彼にはそれらの商品が買えない。

 また彼の視点から見るそれらの人物は全て、ただ虚空を見つめて座り込んでいる人にしか見えない。

 ハッキリいって軽いホラーだ。

 等身大の人形が列を組んで、時には不揃いに並んでいるようなものなのだから。


「とりあえず、ぶらぶらしてみるか」


 そうボヤきながら、てくてくと歩きながら街を歩き回っていく。速度としてはプレイヤーキャラの移動速度よりもさらに遅い。

 走っているモーションをデフォルトで取るプレイヤーキャラとは違う、本当の歩くモーション。こういう所がNPCらしさであるとも言える。


 この世界の中心街として作られたこの街は、どの街よりも広い。容量だってかなり食っている。しかし街の中にある施設へのワープシステムだって整っているので、慣れたプレイヤーならそれほど移動に苦労したりはしない。もちろんその中には、イベントのためのコンサート会場や、結婚式場まであったりする。

 他にも、ゲーム内通貨を払うことで別の街へとワープしてくれる施設があるため、ハブ空港のような役割も担っている。


「ん……」


 一通り、建物に入ること無くゆっくりと歩きまわってから、不意にキョロキョロと周囲を見渡し、街の端っこの建物と建物の隙間へ向かっていく。

 隠れて何か実行しようとしているのか……。でも正直2DMMOである以上、マップを全て俯瞰で見ているので何処にも隠れられないのだが……。


「…………」


 隙間に隠れてからもキョロキョロとして……しばらくしてから意を決したかのように、腰の剣の柄を握り、引っ張った。


 ……が、当然抜けることはない。


「……なるほどな」


 呟く彼を見て、確認したかったのだと理解した。

 彼の武器は左の腰にある中剣二本と、右の腰にある長剣一本。その武器が私に言われた通り使えるかどうか確認したのだろう。


「囲まれし火炎の秘跡。我が身・我が手・見えざる力を糧に発現せん」


 次いで、聞き覚えのある呪文詠唱。彼の世界の魔法だ。

 この世界では、ボタン一つでスキルという形で魔法が使える。しかも彼のような詠唱もないため、ボタン一つでノータイム発動してくる厄介な仕様だ。

 ただその代わり、使い終えたら同じスキルを使うのにクールタイムが必要になる。さらにはクールタイムが三つになると一つもスキルが発動できなくなるため、無闇やたらにスキルを発動できる訳でもない。

 その点彼の魔法はこうして一つ一つ詠唱が必要になるが、そうしたクールタイムは無い。どちらが有利かは担い手次第だろう。


「……………………」


 詠唱を終えた魔法を発動させようとするが、当然街の中では発動しない。

 それは本人も分かっていたのか、やっぱりか、とばかりに大きく溜息をつきながら、建物と建物の隙間から出る。


 そして、つい、と街の外へと視線を向ける。

 外へと繋がっている道の果て。そこにある移動用魔法陣。

 彼はそこへと足を運んだ。……どうでも良いが、わざわざ三点リーダーまで吹き出しで起こしてくれるのか……。


 そのせいであんな――


「ん……?」


 ――彼の疑問のふきだしを残し、シュワン、という効果音の後、彼の姿が消え、マップが切り替わる。

 周りに木が生い茂っているマップの東端。ただ土を固めただけの道幅は広く、どちらかというと「森」というよりかは「樹に囲まれた路」といったところか。

 ここから北に行けば本当に深い森へ。西に行けば森を生い茂らせることで作られた行き止まり。南に行けば遺跡があるまた別の町へと繋がる路……といった感じだ。


「?」


 ワープしてきてすぐ、さっき出てきた街へと視線を向け、歩いて行く。

 再び街の中へ。


「???」


 またまた街の出口へと視線を向け、もう一度移動用魔法陣へ。

 そしてまたまた、先ほどのフィールドマップへと出る。


「…………なるほど」


 腕を組んで少し考えてから、


「さすが、詠唱無しで攻撃や防御の補助魔法が使える世界だ」「こんな短い距離であろうともテレポートなんていう高度な魔法を使うなんてな」「しかもこれに似たのがさっきの街にも沢山あった」「まさか扉を開ける手間をこんな魔法で乗り切るなんてな……」「俺たちの世界じゃ考えられねぇな」「しかも俺の魔力が使われた形跡もねぇし」「……マジで、魔法に関しちゃ俺たちの世界は圧倒的に下だな、こりゃ」


 次々と吹き出しを出しながらそんな結論を出していた。

 ……まあ、そう自己完結をしてくれたのならそれで良いか。


 それよりも、この路を進んでいくのなら彼の世界にはいない魔物と対峙することになるが……。




 その前に――


「……っと」


 しばらく、道なりに歩いていた彼が……突然、左にサッと飛んだ。




 すると、彼が今まで立っていた場所の地面から、火柱が立ち昇った。




「不意打ちだな」


 不敵な笑みを浮かべながら街の出入口へ振り返ると……そこには、男一女三のパーティ構成をした、プレイヤーキャラたちがいた。

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