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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
異世界から来たる『赤の姫』
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初めての会話

 竜族。

 その単語を聞いて思いつくのは、大きな蜥蜴のような化物の姿だろうか。

 裂けた口に大きなあぎと、吐く息は火炎に喰らうものは人間の血肉。その身体は人の数十倍に至り、その全身が人間では対抗できない硬い鱗で覆われている。


 私もまた、伝承で聞く竜族はそんなものだった。

 ……いや、事実そうなのだろう。

 ただこの“病気”に対して、後付けとしてこの伝承の竜を当て嵌めただけで。


 それ程までに恐ろしいものだと意識付けるためだろう。

 この病気に掛かると、救いが無くなる。そして誰もその発症者に近づかないよう分からせる。それを一聞きで分からせるための言葉選び。

 そうした部分も確かにあったはずだ。


 だがそれ以上にあるのは、人間ではなくなる、という言葉での締め付け。

 その病気を発症して、人間から竜族になるという、それを当人に意識付けるための言葉。

 口は裂けない。顎も大きくならない。吐く息だって普通だし人間の血肉すら食べない。もちろん身体だってそのままだし、鱗なんて生えるわけもない。

 ただ、頭に角が生える。

 小さな小さな角が。


 そして、死ななくなる。

 死んでも傷が塞がり、身体と角が少し成長して、生き返る。

 その上大きな特徴が、魔法が使えるようになる。

 私達人間には、絶対に届かない領域に、手を伸ばす。


 だから人間ではないと、言われてしまう。

 竜族として、扱われてしまう。


「ねえ」


 そんな子が、私に声をかけてきた。

 今までコッソリと助けてきて、気付かれないようにしてきて……でも今日、三人同時に彼女を襲おうとするから、助けてしまった。




 だってこの娘はきっと……竜族なのに、次殺されたら、死んでしまうだろうから。




 竜族は、誰かを憎んだその時に、植え付けられた種が発芽して、発症する。


 でも逆に言えば、誰かを愛すれば、その芽は枯れてしまう。


 ……この娘はもう、人間を愛してしまっている。

 迫害されて、島に閉じ込められたのに、そこから出てきてまで、閉じ込めた人間を助けてしまっている。

 それほどまでに、人間を好いている。


 私なんて、そこに惹かれたのだから、間違いない。


 だから、殺されたくないから……助けた。


 初めて、彼女の前に、その姿を晒してまで。


「いつも、私を助けてくれてるのって、あなただよね?」


 明るい声。

 死体が三つ転がっている、宿屋の一室で聞くには違和感のある程、見た目通りの子供特有の高い――けれども聞き心地の良い声だった。


「……それが?」


 ランプが消され、月明かりだけが挿す部屋の中央。ベッドから上体だけを起こして私を見ている彼女に背を向けて、私はそれだけで応える。


 遠くから見たことある彼女の姿は、『赤の姫』と呼ばれるだけのことはあった。

 長い髪は真紅で瞳も赤く・いつも装着している鉄の鎧も朱を基調としている。

 その中で脚具・スカート・角だけが黒く、太ももが真っ白で、それらの部分だけが際立っていたのが記憶に残っている。

 顔立ちは身長と同じで未だ少女の域を出ておらず、どちらかというと“可愛い”という言葉がピッタリ。

 雰囲気も無邪気に近しかった。

 それなのにどこか、上品と感じさせる何かを醸し出しており、さすが“姫”と呼ばれるだけはある。


 ……でも、彼女は厳密には『姫』ではない。

 ただ、竜族を隔離する島から出てきた竜族、というだけに過ぎない。


 だから国は、私に彼女を殺すように、命じてきた。


 今彼女を殺せることを知っていて、殺してしまっても、何の問題も無いのだから。

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