表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/140

話し合いの、片隅で

 明日で番外編終わります。

「なんで席に戻ってこないのよ」


 春と萌が見えるけれど、少し離れた席。

 ケーキを取りに行ってから戻ってこないあおい姫を見つけた星羅は、彼女と同じようにケーキ皿を手に取り席を立ち、その正面の椅子に腰掛けた。


「なんでって、そりゃ真剣に二人で話ししてるからよ。星羅だってそれを察したから私の所に移動してきたんでしょ?」

「気まずかったからよ。私が移動したことすら気付かないほど真剣に話してるでしょ、あの二人」

「そうなるのが分かってたからさっさと食べてさり気なく移動したのよ」

「先に話せ!」


 机をバンっと叩くが、キャピキャピとした周囲の喧騒に紛れて消えた。


「全く……ってことは、そもそもこのオフ会はあの二人を会わせるためのものだったってこと?」

「まさか。星羅とエレノアの中の人に会いたかったのが第一よ。テンマはついで」

「ついででストーカーと対面させたの?」

「ストーカーじゃないって」

「なんでよ。女同士だから?」

「ちゃんとした理由はあるのよ?」

「は? 理由? 直感って理由にはならないのよ?」

「違う違う。ほら、テンマって慕われてたでしょ」


 あおい姫に言われて思い出してみれば、確かにそうかもしれないと星羅も思う。

 急にGvGをすることになったのに九人も集めることが出来たのだ。どうでも良い相手やただのネットの知り合いだと、そうはいかない。


 星羅だって、フレンド登録している相手を急に呼び出したとしても来てくれるとは到底思えないし、逆の立場で急に呼ばれても誰の元へも行かない自信があった。


「アレを見た時にさ、ただのストーカーじゃないな、とは思ったの。だから、あの時戦闘した人たちから色々と話を聞いたって訳」

「わざわざ?」

「わざわざ」

「……あなたのことじゃないでしょ? それなのに?」

「それなのに。ま、エレノアのストーカー言い分だけを信じるのはアレかなって思って」


 思っただけでそこまで行動する人なんてほとんどいない。

 まして相手はネット内で知り合った、明確な友人でもない人だ。

 ……いや、それなのにそこまで出来るから、ちゃんとした姫キャラじゃない彼女が、ちゃんと姫キャラとして扱われているのだろう。


 要は、似た者同士だったのだ。

 あおい姫とテンマは。


「課金装備貸したりレベル上げ手伝ったり、一緒に冒険したり友達作ってあげたり、色々としてあげてたみたいよ。あの時戦った人たちは、そうしてテンマを慕った人たちばかりだった。まさかそこまで気を回せる子が女子高生だとは思いもしなかったけど」

「ギルドとかは?」

「作ってないみたいだし、あのキャラだけでサブキャラはいないみたい。それは二人で待ち合わせした時に聞いたことだけど」

「ふ~ん……ま、作らない方が慕われるようになったりするものよね。そういう無償の心が良いって人が一定数いるみたいだし。まるで正義の味方だもんね」


 答えながら、あおい姫の話が本当なら全てエレノアの勘違いということになるな、と星羅は思っていた。

 同時に、きっとあおい姫もテンマの仲間に話を聞いている時同じ気持ちになっていったんだろうな、とも。


 課金装備を貸してくれたり足りないアイテムを課金アイテムとしてくれたりした、という話をチャットで見た時、エレノアに会いたいがために貢いでいるのだろうと思っていた。

 だがそれがどうも、テンマにとっては周りに行う“当たり前”のことだったようなのだ。

 まさか課金装備を貸したり課金アイテムをくれるのが“当たり前”だとは、思うはずもない。

 現金を渡してくれているようなものだ。

 それが裏のない善意だなんて、普通は考えない。……少なくとも、星羅とあおい姫はそうだった。


「……まさか、そんな優しい人がまだネットゲームやれてるなんてね……」


 課金アイテムを無償でくれる人……そんな噂が広まれば、すぐにたかられるに決まっている。

 しかし今もそれを続けて、しかも慕ってくれている面子がほとんどだということは……周りがテンマを守っているということになる。

 痛い目をみれば、周りに無償で課金アイテムを渡すなんてこと、止めているはずだから。

 なんならネトゲ時代を辞めていても、おかしくはないのだから。


 ……だから尚の事、テンマの仲間たちは、エレノアのことに必死になっていたのだろう。

 慕っている人が、気にかけていた人だから。


「だから、会わせたくなったのよ」


 課金アイテムで補助するという点は違うにしても、周りが慕ってくれている。

 そうした部分が自分と似ているから。


 そんな含みがある言葉を呟いて、あおい姫はソフトクリームでも作ろうかと思い、ケーキ皿を置いたまま席を立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ