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共に出会い、話し合う

「……で、あおいさん。このめぐむちゃんは本当にテンマなの?」

「ホントのホントにテンマ。なんでそう星羅は疑ってかかるかなぁ……」

「いやだって、ストーカーでしょ? 男の」

「男キャラを使っていたネカマってだけ。男性が女性キャラを使うのと感覚としては一緒よ」


 言って、持ってきたチョコレートケーキをフォークで一口分切り分け、口元へと運ぶ。


「言ったでしょ? 私は文字を読んだだけで、その人の中身が男か女かが分かるって。いつも男の人が女キャラ使ってばっかだから判断に時間かかったけど、テンマのプレイヤーが女の子だってのはわかったわよ」

「そんなの勝手に言ってるだけの統計も何もない持論めいたものでしょ?」

「失礼なっ。私のギルドで行われたオフ会での的中率は現在のところ百%だから!」

「それはあなたのギルドがあなたの雑な姫プレイに新鮮味を感じて集まった野郎信者ばかりだから当てやすいってだけじゃ……」

「ほんっと信じないなぁ……星羅ちゃんは。っていうか、私のほうが年上なんだけど?」

「え? 今更敬語とかの話? ヒくわ~……」

「いやまあ冗談だけどさ……」


 ちょっと焦らせよう、と思ってのあおい姫の言葉を、星羅はコーヒーを口に含みつつあっさりとかわしてみせた。


「星羅は知らないだろうけどさ、私とエレノアだけが残ってテンマと戦ってた時があるでしょ?」

「あ~……後で話してくれた、あのやたら強くなったテンマとってやつ?」

「そうそう。多分変なプログラム入れられてたやつ。あの時急にさ、テンマのチャットが復活したのよ。その時の文字の打ち方がどうも女性っぽかったから」

「そうだったの? 春ちゃん?」

「え、えっと……」


 いきなり隣から話を振られて準備していなかったのか、オドオドとしているだけでまともな返事が出来なかった。


「というかエレノアもテンマも、早く食べたり飲んだりしないと。時間制限あるんだから」


 話しながらもパクついていたからか。チョコレートケーキと、一緒に持ってきていたチーズケーキを平らげたあおい姫は早々に席を立ち、次のスイーツの物色へと向かった。


「はやっ……いやでも、言ってることは最もか……二人共さ、何か気になることがあるんなら、これを機会に話しといたら? 多分、あの人もそれが目的でめぐむちゃんを呼んだんだろうし」

「……そ、それじゃあ……」


 星羅に背中を押されたからか。

 それとも、挨拶の時に腹を括ったのを思い出したのか。

 先に会話の橋を掛けたのは萌だった。


「どうして……エレノアは――ううん、春、ちゃんは……私を、避けたの?」


 それは、いきなりの核心。

 そして、テンマが最も聞きたかった、エレノアとの不仲が起きた、始まり。


「だ、だって……嫌われたと、思って……」

「え?」

「もう二度と、会いたくないかな、と思って……」

「は? えっと……私、エレノアにそんなこと言った……?」

「言ってない……言ってないけど……私が、PvPで、優勝しちゃったから……」


 テンマと一緒に冒険して、テンマの癖を見抜いて、テンマとPvP代表戦で戦って……勝って……。


「テンマに勝った、卑怯者だから……」

「卑怯者……?」

「……あなたが、そう言った……」

「え? そんなこと――」


 言ってない、と続けそうになって、春が膝の上に乗せている手を握りしめ、震えさせていることに気付き、慌てて言葉を食い止めた。

 テーブル越しでも分かるその震えは、怒りからなのか失望からなのか。


 どちらにしても、彼女を傷つけたことに変わりがないことを、萌は悟った。

 ……ここで仲直りをしたいのなら、否定するだけではいけない。

 ゲームの中で出来なかったことが、今現実で出来ている――話し合うことが、出来ている……。……これはもう、ラストチャンスかもしれない。


「…………」


 PvPでエレノアと戦った後……勝ったことに申し訳なさそうなことを言った彼女に、気にしないで、的なことを言ったような気がする。

 ……いや、その時の言葉を明確には憶えていない……。

 もしかしたら……その時に……。

 それまでずっと一緒に居たからこそ……冗談として、言ったかもしれない。


「……卑怯だね、って」

「…………うん」


 思い出せた言葉をつい呟くと、小さく、春が頷きだけで同意を返した。

 それを見て……やっと、自分が言ったことを――あの時のチャット場面を、思い出した。


「あ! いや、あれは! 冗談だってあの後……!」

「そんなの……! ……分かんないよ……」

「なんで……!」

「だって……! ……だって……言われた後、すぐに返事しなかった私を見て……気を遣って、本音を、誤魔化して……」

「そんなこと……!」


 無い、とは言えなかった。


 だって今、こうして言葉を交わしても、仲直りしたいという自分の本心が、伝わっていないのだ。


 文字でだと尚の事、伝わらない。


 最初からこうして会って、言葉で伝えていれば……きっと結果は、違っていたのだろう。


 もしくは一度でも、こうしたオフ会で会って、互いの人となりを、理解していれば……。

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