戦いの後の会話
次かその次で最終回です。
彼も既に、突き刺した長剣を抜いている。
極端な話テンマは、そのまま彼に襲いかかることだって可能だったろう。
しかしようやく操作権が戻ってきたテンマに、そんな余裕があるはずもない。
その辺でキャラをウロチョロとさせ、本当に動けることを確認している。
>>結局、なんだったの?
「取り憑かれてたんだよ、お前は」
長剣を納刀し、地面に捨て置いていた中剣を拾い上げながら、彼はテンマに言葉を続ける。
「身体を乗っ取られてしまうほどの強い乗っ取りなんて聞いたことは無かったが……」「ま、ここは俺の世界とは違うしな」「そういう魔物が居ても、なんらおかしくはねぇってことか」
>>は?
「分かんねぇなら良いんだよ」「お前の言うイベントってのだと思ってろよ」「ただ後はもう、お前たちの問題だ」「この勝負を続けるのか降りるのか、しっかりと考えろよ」
>>NPCのアンタに、そんなこと言われたくない
「へいへい」「ま、乗っ取られてる時のお前の方が強かったけどよ……」「次にやり合う時は、お前自身の腕を見せてくれよ」「前の、エレノアに気を取られてるお前じゃなくてよ」
それで言いたいことは言い終えたのか。
「妖精」「俺を戻してくれ」
私に向けてそう言ってきたので、彼を星空の砂浜へと転移させた。
そうして消えた彼の場所を見つめながら、テンマは何を思ったのか――
>>……ふぅ……エレノア
姿が見えないかつての友人に、オープンチャットでそう呼びかける。
>>負けた。降参
そしてそれだけを告げると、自分の画面を操作して、降参ボタンを押した。
>>三人相手にここまでやられて、しかも時間が止まってたからなんとか続いてただけのバトルだからな
>>本来なら時間オーバーで負けてる
>>だから、こちらの負け
>>今度からもう、近づかない
>>本当にイヤがってるの、分かったから
一方的にそのメッセージだけを打ち込んで、自動退出のための三十秒を迎える前に、テンマは決闘場フィールドから出ていった。
◇ ◇ ◇
その後、テンマの味方だった『アロースタイル』のプレイヤーはジッとしたまま退出時間を迎え、エレノア・あおい姫と共に、決闘場フィールドを強制的に出ていった。
控え室となる戦況を見れるマップは、チームごとに別々で用意されているため、会うことはない。
ここから外に出る時は自分から行きたい街マップを選ぶため、相手が選びそうにない所を選べば何も問題がない。
つまり今すぐ、意図しない限りは、あの敵対した十人と会うことは無いということだ。
>>……終わったの?
>>なんか、最後呆気なかったですね
エレノアの疑問に、ずっと戦況をこの控え室で見ていた星羅が答える。
円形石造りのマップ上側中央に大きなディスプレイがあるだけの部屋。そのディスプレイをクリックすると、「察知」のスキルを使った際に見れるマップ状況が、画面全体に表示されるといった仕組みだ。
もっともこちらの場合はプレイヤーの名前も見れるので、より高性能な訳だが。
>>まさか降参するなんて……というか途中、あの降参宣言した人いなくなりませんでした?
>>え?
>>マップに孤立してたアイコンが急に消えたからあれ? って思ってたら、次々と敵のアイコン消えてくし……
そうか……死亡扱いになってたから、周りからは見えてなかったのか……。
その間、テンマ側の陣営がどうなっていたのか気になったが、それはもう確認しようがない。
ちなみに今彼等の陣営は、テンマが感謝と謝罪の言葉を口にし、途中で勝手に操作されていたことをバグとして話しているような状況だった。
>>その上、急に二人も逃げるように動き出すから……
>>それは、あの人が操られてたから
>>えっ?
>>よし! オフ会しよう!
今まで黙っていたあおい姫が急に、そんな提案をしてきた。
>>は? なんです、急に?
>>ここで会ったのも、こうしてグループで戦えたのも何かの縁だしってこと
ともすれば冷たくも見える星羅の言葉に、あおい姫は躊躇せず提案を続ける。
>>さっき起きたこと文章で打つの面倒だし、でも星羅も一緒に戦った以上は教えときたいし、だったら会って話すのが一番でしょ
>>……出会い厨?
>>女の子同士限定のね。ちなみに、私は女子大生だから。不安なら自撮り写真アカウント名付けて送るけど?
>>いえまあ、そこまでは……っていうか、私が女じゃない可能性は?
>>それはない。星羅もエレノアもリアルは女。私、男が女キャラ使ってる場合の察知能力高いから
>>場所が、合わないかも
>>二人が住んでるのは何県?
エレノアの逃げるための言葉にもグイグイと食い込み、そのままあおい姫主導のもとドンドンと話が決まっていく。
……まあ、ここからは三人の問題か。
これ以上見ているのは彼のイベントとしてもあまり関係がない。
ただのプライバシーの侵害に当たる。
次また彼がエレノアに勝負を挑むその時になって、この三人がどうなったのか分かるだろう。
願わくば、エレノアの新しい友だちにでもなっていて欲しいと思う。




