表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
61/140

決着の時(2)

「ふっ!」


 彼の両手で握った長剣による、隙だらけな振り下ろし。

 それを一歩退いて避けたテンマは、そのまま追撃のために片方の剣で刺突しにかかり――




 ――そのまま、彼の振り上げる斬撃によって、真っ二つにされた。




 だがそれでも、彼の特殊なダメージ判定を無効化しているテンマは、一撃で死なない。

 だからそのまま、上段に振り上げ隙だらけになった彼の心臓を、反撃で穿つ――




 ――はずが、今度は振り下ろされる斬撃で、その刺突の軌道が大きく逸らされる。




 見えぬ腕からの二撃目すらも、躰を回転させながら接近した彼には当たらない。

 ……いつの間にかその腕から剣が離されていて、支えを失った剣が落ちてきている。

 それを……至近距離にまで近付きしゃがみ込んだ彼が手を上げてキャッチし、そのまま顔を狙った片手の刺突へと切り替える。

 腕だけをテンマの顔に位置に持っていっての攻撃。


 当然テンマはそれを、顔を逸らして躱す。

 片手で握られた長剣の刺突。容易に軌道は変えられない。




 しかしその読みは、長剣を持った彼には適用されない。




 長剣を持つ腕をもう片方の腕で握りしめ、無理やり刺突を斬撃へと変え、避けたテンマを追撃してその首を斬り落とす。

 しかしもちろん、首は落ちない。


 ただ……この距離に達した彼を相手にまともに戦えるとは、到底思えなかった。


 彼の戦闘スタイルはチグハグだ。

 もちろん、間合いに沿った戦いも出来る。

 言うまでもなくそちらが弱い訳ではない。むしろそちらのほうが単純な強さで考えると強い。


 ただ彼が個人的に好きで得意としている戦闘スタイルがチグハグというだけだ。


 中剣を持っている時ほど距離を取った戦いをし、長剣を持っている時ほど距離が近い戦いをする。

 現に今だって、テンマと至近距離で対峙している。


 あえて不利な状況に自分を持っていくことで――本来の武器とは違う間合いに己を持っていくことで、真価を発揮する。


 その戦い方は実に独特だ。

 短剣・短刀であればあるほど有利な間合い――それこそ目と鼻の先と言ってもいいほどの至近距離で、上体を半分引き、長剣で刺突を繰り出すスタイル。

 長剣だからこその振り下ろす勢いの乗せた、破壊力の高い斬撃を全く繰り出せない、上半身のバネだけを利用した非効率な戦い方。


 届かない中剣で戦う際は魔法を使ってフォローするが、長剣の場合は己の身体能力だけでフォローする。


 だがもし、このフォローを必要としない状況で――それぞれの武器を適正距離で扱い、尚且つ彼が己を追い込まなくてもモチベーションが維持されるほどに強い敵と対峙したなら……全ての枷を外し、全力で戦えたなら……一体どれだけの実力を発揮できるのだろうか。


 おそらく彼自身も、それを知らない。


 だから、常に求めているのだろう。


 強い敵を。


「しっ……!」


 下げた半身のバネを最大限利用した至近距離からの刺突。

 それを普通に躱すだけでは、追撃の斬撃が襲いかかることは先程首を狙われたことからも明白。

 故にテンマはその攻撃を横に避けながら、自らも反撃に転ずる。

 刺突を避け、さらに間合いの内側へと入り込みながら、彼と同じ刺突を放つ。

 刺突から斬撃へと軌道を変えるのには、自らの腕を取らなければならない分それなりに時間を要する。

 それならば避けるよりも反撃に・臆病になるよりも積極的に攻める。

 その判断はさすがと言うべきなのだろう。




 相手が彼でなければ。




 迫る己への刃の先を、まるでそこにくるのが分かっていたかのように――突き出した腕側の脇腹が狙われるのが予め見えていたかのように、彼は手を離して己の武器を捨て、すぐさま上体を引き戻して避けた。


 そして引き戻す勢いのまま軸足を使い身体を回転。

 そんな彼を横薙ぎしようと軌道を変える二つの刃を、彼はしゃがんで躱し、そのまま足払い。

 それによりテンマの姿勢が崩れる……かと思いきや、ギリギリでジャンプし避けていた。


 ……が、それこそが狙いとばかりに、彼は自らの手から離れ地面に倒れたままの長剣を上手くつま先で自分の方へと蹴り寄せる。剣脊が少し膨らみ、刃が地面につかず少し浮いているからこそ出来る芸当だ。




 ――だがその寄せられた剣を無視して、彼はしゃがんだ姿勢のまま駆け出して、テンマの背後を取った。




 ……剣を引き寄せる動作はただのフェイク。

 狙いはただ、テンマの背後に回ることだけ。

 気付いた時にはもう遅い。

 足を上げてテンマ背中を蹴る。

 たたらを踏むテンマ。

 立ち上がりながら肘打ちを当て、さらにテンマを強制的に移動させる。

 そして再び足で剣を踏み、蹴り上げ、中腰のまま今度こそ手元に長剣を引き寄せる。




 ――その隙に、テンマは倒れながらも振り返り、剣を突き出すように構える。




 当然だろう。

 テンマは彼の攻撃であろうとも、一撃で死にはしない。

 刺し違えてでも、という攻撃は必然、彼だけを殺す刃となる。

 だから自分を貫かれてでも彼を貫くために、両の刃を突き出そうとしている。




 しかし、テンマの腕が伸び切る前に……彼の長剣が先に、テンマの心臓を貫いた。




 後はそのダメージの中、テンマもまた彼の身体を狙って刺突を放てば……テンマの勝ちだ。




 ……その、はずなのに――




 ――地面を背にし貫かれたその身体が動くことは、無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ