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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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決着は、未だ

 テンマの上に「CRITICAL!!」の文字が踊る。

 この世界の人間である彼ならば、人体の急所を突くだけで相手を一撃で殺すことが出来る。

 だから、これで終わりだ。

 彼もまた指先を動かし、魔法で繋げておいたのだろう上に弾かれた中剣を引き寄せ――




 ――そしてとっくに殺したはずのテンマに向けて、刺突こうげきを繰り出した。




 とっくに死んでるのになにを……! といった考えは、すぐに払拭された。

 テンマはあっさりと動き、その刺突を弾き上げ、身体を少し屈めながら躱していた。


 彼に急所を突かれたのに一撃死が発動しない……!?

 ……でも、HPバーは減ってる……もしかして、ダメージ判定を強制的にキャラに寄せている……!?

 だからただのクリティカルとして処理されたのか……!


 ……いや、違う……!

 強制的に彼の「この世界の人間」という特性に合わせるようにしている設定を、テンマだけ適用外にしている……!


 こんなの、ゲームのシステムの書き換え――世界の改変に等しい……!

 それなのにハッキングやクラッキング報告が他部署から来ないってどういうこと……!?

 中心点にイベントたる彼がいるのなら、私のもとに連絡が来ないとおかしいのに……!


 ちっ……!

 何にせよ今は、そのことを気にしてる場合じゃない……!


 おそらく彼にあっさりと力負けしたのは、このプログラムに書き換えるためというのもあったのだろう。

 つまり、こちらが長いプログラムを入力すれば、解除することも可能なはず……!


「いいね」「不死身を相手にするのは初めてだ」


 こちらの焦りに反し、対峙している彼はいつものように楽しそう。

 躱した後、仕切り直しとばかりに距離を取るテンマ。

 しかしその間合いは、一歩で己の領域へと至る距離。


 彼も彼で平然としたままそれを見つめ、その胸元に刺さったままの中剣を指先で操作して引き寄せる。

 遂に二本の中剣を握り、力を抜くように構える。


 その構えはこの世界に来て初めて戦ったエレノアに見せたのと同じ――あくまでも自然体。

 力を抜き、ともすれば隙だらけに見え――けれども一切の隙が生じていない、無為の構え。

 コンテナの上から飛び降りた彼を追撃する時と同じ、腕を組むような十字の構えを取るテンマとは真逆。


 しかしながら、相手は片刃の長剣二刀流。

 対する彼は両刃の中剣二刀流。


 間合いと構えの差はあれど、奇しくも互いに使用する武器は同じだった。


>>東斜め下


 そんな二人の戦いに、エレノアもあおい姫も混ざるつもりは最初から無かった。

 代わりに、未だ生き残っている『アロースタイル』を狩ることに集中するようだ。

 さっきのあおい姫の指示はまさに敵のいる方向。「察知」のスキルによるものだろう。


 対して『アロースタイル』の敵もまた、その移動を「察知」を使って分かっている。

 相手は二人。

 しかもPvP優勝者とGvG常連チームのリーダーであり、圧倒的有利な状況を覆した三人の内の二人だ。真正面から戦うのが得策ではないことを重々承知している。

 必然、二人の追撃から逃れるように立ち回るしかなくなる。


 時間が動いていないからこそ取れる戦術ではあるが、このバグは絶好の好機、と思って活かしているのなら、したたかさはかなりあるだろう。バグだからと戦闘を止めようとせず攻撃してきた時点で、そんな気はしていたけれど。


 対して私も、何もせずにただ戦いを彼に任せている訳ではない。

 私のプログラムが敵の動きを少しでも止めるのなら……彼との戦いに於いてその隙が、かなりの痛手になることは間違いない。


 それに……最後の締めはやはり、私に掛かっている。


 目を閉じて、彼との視界共有を行いつつ、自作のソフトを改めて操作する。

 マップを見ていない以上、プログラムの流れは分からない。


 だがそれで良い。


 今のテンマは、世界を変えたせいなのか、その無理によって綻びが生じている。

 そこにプログラムの流れを読み、穴を見つけて修正を加えていこう、という手段は必要ない。




 今やNPC化という現象そのものが、あらゆる攻め口になっている。




 彼との戦いに際する防御を高めた結果、プログラムに対する防御力が落ちた。

 それを利用しない手はない。




 さあ……今度こそ決着をつけようか、テンマを操作している存在さん。

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