対処の終わり(2)
短い上に、明日はちょっと更新できないです。
申し訳ない。
時間が動く――
――それが、敗北に繋がる。
そう……全ては囮。
この場から抜け出せれば、相手にとっては何でも良かった。
ただそう……制限時間を止めて、それをあえて解除させることで、違和感なく、テンマというキャラを奪える。
キャラデータがコピーされるという、結果で。
……そうなるかもしれない。
直前で、そんな映像が脳裏を過ぎった。
まるで予感めいた何か。
やはり根拠は何もない。
だから……私は直前で、最後の一行をBackSpaceキーで全て消してから、エンターキーを押した。
制限時間を止めた相手の意図は、明確には分からない。
その行為こそが本当は“テンマ”というキャラデータを奪うために必要な最後の一手だったのかもしれない。
もちろん、本当にタイマーを動かせば、どうにかなったのかもしれない。
しかし、それでも……私はまるで、そうするよう仕向けられているような気がしたのだ。
……エンターキーを押してから、まるで後付けされるように、自分の行動に対して理屈が伴ってくる。
あの時は無意識に押していただけ。
生じた閃きから身体が咄嗟に動いた――謂わば反射行動だ。
最初NPC化した時、テンマは自分の味方を殺した。
もし負けてはいけないのなら、それは悪手そのものだ。
味方がいれば、それだけ勝率は上がる。
でも、そうはしなかった。
それはつまり……負けても、テンマを奪ったやつにとっては、何も困らないということ。
だからこちらにしてみれば、『アロースタイル』すらも殺してはいけないし、テンマによって殺されてもいけない。
今のテンマは死亡扱いになっているので、『アロースタイル』を殺すだけで、テンマのチームは全滅だ。
負けること=テンマをNPC化したやつの勝ち。
きっと、その図式が成り立っている。
私はそう、あの一瞬で直感し、最後の一行を消した。
そうすることで、制限時間を動かすプログラムを、動作させないようにした。
最後の一行を消すことで、プログラムは正確に組み上がっていないことになり、エラーコードを吐き出す。
それで終いだ。
制限時間は結局動かない。
……けれども、その中に。
私は別のプログラムを入力しておいた。
それは、時間が動けば敵が焦り、テンマを無理矢理どうにかしてくるかもしれないと思ったから仕掛けておいた、保険のようなもの。
その保険とは、マップの天井を転送場所とした――ある場所とを繋ぐワープポイントの設置。
マップ参照のx軸とy軸を入力するだけの、たった数行のプログラム。
結果として、NPC化したテンマを解除するためのプログラムも――時間制限停止を解除するためのプログラムも、全てがダミーになってしまった。
だが――この数行のプログラムだけでも起動できたことは、実をいうとかなり大きかったのかもしれない。
数百行にも至る二つのプログラム。
それを無駄にしてまで呼んだのは――
エレノアに詰め寄るテンマの斜め前のコンテナの上に飛び降りたのは――
「良い所に俺を使ったな妖精」「強いやつは歓迎だ」
――不敵な笑みを浮かべた、正真正銘の異世界人だった。




