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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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異変への対処(3)

>>コイツ、彼と一緒


 僅かな間にそれだけの言葉を打って、テンマへと攻撃を開始する。

 二丁拳銃による小攻撃コンボ。

 その白線エフェクトの群れを、時には防御し、時には「MISS」表記を出しながら、ゆっくりとエレノアとの間合いを詰めてくるテンマ。


>>イベントのと同じってこと……?


 彼が誰を指すのかを問うためのものだったのだろうが、その言葉に返事をする余裕がエレノアには無い。


 テンマが銃撃と銃撃の隙を衝くように、一気に間合いを詰めてきて攻撃を放ってきたからだ。


 咄嗟に防御するエレノア。

 もちろんダメージは入らない。

 NPC化ということは、小攻撃と崩し攻撃の二択しか無い。

 隙の無い攻撃を防御し、隙がある攻撃なら先にこちらの攻撃を当てさえすれば、実質的にダメージは入らない。


 エレノアならそれを正確に行える。


 しかも、彼女のスゴイところはそれだけではない。

 本来防御というのは、防御ボタンを押し続けて連続攻撃を防ぐ。

 しかし彼女は、攻撃が当たるタイミングを的確に読み切り、当たるタイミングの時だけ防御ボタンを押している。

 もし格闘ゲームのように、相手の攻撃タイミングに合わせて的確に防御するとダメージが入らなくなる、といったシステムであれば、彼女はソレを全て発動できていただろう。

 もちろん、このゲームはそんなものがないのだから、普通に防御ボタンを押し続けているだけで良い。

 むしろエレノアは無意味なことをしているようにすら映る。


 もちろん、エレノアとてそれは理解しているのだろう。

 それでも彼女がそうした防御方法を取るのは、小攻撃コンボの中には、相手の小攻撃に割り込まれる隙があることを知っているからだ。


 相手にダメージを与えていれば間違いなくコンボとして繋がるが、防御されていると繋がらない箇所。

 二刀流の『ライトスタイル』だと、三回目と四回目の間。

 ……もしこれが“彼”相手ならば、この戦術は通用しない。彼はどのスタイルにも属さない、正真正銘のNPC扱いのキャラだからだ。

 でも今のテンマは、あくまでも「イベント用NPCの攻撃判定を与えてもらった一プレイヤーキャラ」に過ぎない。


 故に――




 ――三回目の小攻撃モーションを終えた後ならば、例え相手のコンボ攻撃中であろうとも、エレノアの攻撃が通る。




 先程防御されたエレノアの小攻撃の初撃が、ヒットする。

 そこから繋げるように、エレノアの乱射がテンマの身体を何度も穿つ……!


 ……簡単にやってのけているが、これはそう簡単なことではない。

 攻撃を受けていれば繋がる箇所の隙、なんてものは、本当に数フレームしかない。時間にすると六十分の三・四秒程だ。

 もちろん前提条件として、『ガンスタイル』の小攻撃初撃のフレーム数を知っておく必要がある。

 その上で三撃目を防御出来たと思った時に攻撃ボタンを押しても、まだ間に合うかどうか微妙なラインだろう。

 もしネット回線やキャラ描画による遅延が発生してしまえば、それこそこちらが無防備な姿を晒すだけになってしまう。


 エレノアは、他の攻撃も全て攻撃に合わせて防御することで、それらのタイミングを読みきっている。

 攻撃の割り込みなんて芸当、事前の知識と現在のリアルでの周辺環境全てを読みきらなければ出来ないからだろう。


 まだゲームセンターで格闘ゲームをする方が割り込ませやすい。

 ネット回線やパソコンスペックによる遅延があるせいで、幾分も難易度が上がっている。


 それを平然とやってのけているエレノアを見て……正直、背筋がゾワりとした。

 なんせ、理解できる人には理解できる神業を見せつけてきたのだ。

 ギネスブックに登録させられるほどの記録が目の前で達成させられても、果たしてこれほどの興奮からくる痺れにも似た身体の震えが来るかどうか……。


 ……最後の一撃。

 自動的に大攻撃になるコンボの締め。




 それを放つタイミングで――エレノアの背後から矢が飛来してきた。




 っ! ……もう攻撃を止めることが出来ない絶妙なタイミング……!

 これは……当たる……!


>>あなたっ!


 コンボ攻撃の締めは発動されることなく、代わりにそれと同じ大攻撃がエレノアにヒットしてしまった。


>>こんな非常事態に何やってるの!


 あおい姫の避難の言葉がオープンチャットで表示される。

 だが……今はそれどころではない。

 攻撃が中断された今、エレノアは隙だらけだ。

 もしここで、テンマから連続攻撃を浴びせられてしまうと……防御力が低いエレノアでは、耐えきれずに死んでしまう。




 ――そのはずなのに、テンマからの追撃は無かった。




「バックステップ!」


 その隙にエレノアが敵との距離を取り、後ろにいたあおい姫と同じ位置にまで下がる。


>>非常事態だ? テンマが本気出しただけだろ!


 どこからともなく表示される文字。

 残りの一人、『アロースタイル』からだ。


>>こっち


 だが当の攻撃を受けたエレノア本人は、そんなこと関係ないとばかりに少し下がった場所にある路地へと逃げ込む。矢の射線をしっかりと見抜いたのだろう。


>>テンマ! 俺と協力して、絶対に勝つぞ!


 仲間テンマへ向けた『アロースタイル』の言葉はしかし、テンマに届かない。……比喩表現でもなんでもなく。


 しかし……さっきの攻防で少しだけ分かったことがある。

 私だって何も、呆然としたまま二人の戦いを見ていた訳ではない。ちゃんと例の手段でNPC化を戻すための方法を取っていた。


 ただエレノアが戦ってくれるのならと、一息に根源に至るのではなく、NPC化を少しずつ解除していこうとした。


 だがその方法は無意味だったようだ。

 なんせエレノアの連続攻撃を受けている間にテンマを普通のキャラと同じにしても、次の攻撃に繋がっている間にNPC化に戻ってしまっていた。


 だから結局は前と同じ手段を取ろうとしたのだが……それもまた、同じ方法で道筋を変えられてしまった。


 でも……そのおかげでおそらく、エレノアは助かった。




 きっとこの敵は、小さな変化なら戦いながらでも元に戻せるが……一息に根本へと至るための大掛かりなプログラムを無力化するための道筋変更は、時間がかかってしまうのだ。




 それこそが、エレノアを追撃できなかった理由。

 だってあの停止していた間に、この組み上げていたプログラムが無力化されたのだから。

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