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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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終わりの近付き

「ヒール!」


 神鳴が死んたのを確認してからようやく、復活したてでHP1の星羅のHPを回復し始める。

 あと二回ヒールをかければ全快するだろうが、クールタイムが合計三本になってしまった今、それは出来ない。


 復活魔法「リザレクション」のクールタイムは長い。

 スキルのクールタイムはアイテムとは違いバトル形式によって延長されることはないが、それでも素で五分必要なのである。

 つまりこの試合の間、あおい姫は連続で二回しか魔法が使えないようになってしまったということ。

 しかもその内の一回は、定期的に使用している「察知」スキルのクールタイムで埋められてしまっている。

 回復スキルを使うまで間が開いたのは、これらクールタイムのせいだった。


>>全く……私なんか犠牲にしても良かったんですよ?


 初めて、作戦指示以外の言葉がパーティチャットに打ち込まれた。


>>それは出来ないって。完膚なきまでに叩き潰さないと


 星羅の言葉に、あおい姫はそうあっさりと答える。

 完膚なきまでに……どうしてそこまでする必要があるのか。勝ちさえすればそれでテンマがエレノアに付きまとうことはなくなるはずなのに……。


 いや……そうか。


 徹底的に、完膚なきまでに勝つ。


 そうすることで二度と、こちらに向かせないようにする。


 ここまでボコボコにされている動画も撮っておけば、掲示板に張る際に使える。


 負けたら付き纏わないと約束したのに、これだけこっ酷くやられておいてまた付きまとった……そんな風に。


 これからのために。

 エレノアのために。


 ……今日出会ったばかりの、ギルドメンバーでも何でもないプレイヤーにそこまで親切にするなんて……エレノアがPvP優勝者ということを踏まえても、あおい姫の親切心は底知れない。


>>それにしても、星羅が戦ってた二人がこっちに来るのを止めたんだけど

>>仲間に言われたんじゃない?

>>まあ、近接二人が近接一・魔法一を相手に戦おうとは思わないか


 しかしそれでも、完膚なきまでに叩き潰すつもりなら、戦わなければならない。

 それにこのままだと、敵も判定で負けることは分かっている。

 つまり互いに、戦闘したいという利害は一致している。


 ただそう……相手は仲間との合流を目指せる、という点が異なっているだけ。


 エレノアが戦っている二人のチームメイト――『遠距離属性』二人との合流は、そのまま勝ちへ近づく一歩となる。

 例えパーティリーダーが死んでしまい、小隊チャットが使えなくとも。


 だから……その希望がエレノアの手によって摘み取られるまで、向こう側に行かないようにしておかなければならない。

 もちろん合流されたところで、勝つことは出来るだろう。ただ乱戦になってしまうので色々と面倒というだけで。


 だがまあ……そんな心配、あまりする必要もないだろうけど。


 なんせエレノアはとっくに、「超長距離」のスキルで飛んでくる矢の軌道を読み切っているようだったからだ。


 筋肉ダルマがいる側のコンテナとは反対側のコンテナ側の道……そちらにエレノアが逃げた場合のみ、矢が一直線に飛んでくる。

 どうやらエレノアに合わせて左右に移動してまで撃つということはしない、固定砲台として撃ち続けるようだった。

 下手に動いてコンテナの隙間に矢が入らないようになってしまうと困るからだろう。

 数センチキャラを動かすその距離をミスしてしまうと、この作戦が成功しないことを知っている。だから固定砲台として留まったほうが確実性は上がる。


 もしこれが、エレノア相手で無ければ成功したとは思う。

 ……本当、相手が悪かった。


 まず彼女は、固定砲台と化している『アロースタイル』の元へと進み始めた。

 もちろん、放たれる鞭剣を防御しながら。


 その動きを「察知」で見て気付いているであろう射撃をしてきていたキャラは、二度ほど牽制のための広範囲攻撃スキルを放つが、防御したり移動スキルで避けて止まることなく迫るエレノアのアイコンを見て、その場からようやく動き始めた。


 ……それだけで良い。

 何もそのキャラに追いつく必要はない。


 固定砲台と化している理由ぐらい察しがついている。

 だから一度動かしてしまえば、二度と同じ位置から射撃できないだろうと彼女は読んだ。

 よって動かしさえすれば、その敵を相手取る必要はない。

 狙いはすぐさま鞭剣持ちの筋肉ダルマに移る。


 固定砲台に近づこうとしていたため、彼との距離はそれなりに開いている。……が、「ダッシュ」のスキルで詰めれば、エレノアの攻撃範囲に入る。

 その位置からの射撃は当然、鞭剣の範囲でもあるのだが……この武器にはある一つの弱点がある。


 それは攻撃から攻撃に繋ぐ時の戻りの遅さだ。


 戻りの時も攻撃判定があり、その軌道も独特ながら……相手との距離が開けば開くほど、戻るまでの時間が掛るようになる。

 しかも『遠距離属性』の攻撃は、当ててもクールタイム遅延はあるが『近接属性』のような小攻撃を連続攻撃で当てるためのコンマ秒の仰け反りが無い。


 その結果、仰け反ることで距離があろうとも鞭剣が勝手に戻ってくれるようなことが無くなり、戻るまで無防備に姿を晒してしまうことになる。


 結果、高い攻撃力を持つエレノアの小攻撃からのコンボ攻撃を、全て受けることになってしまった。


 このままでは分が悪いと思ったのか、鞭剣が戻ったタイミングですぐさまコンテナの奥へと引っ込もうとする。

 そうすれば下から攻撃してくるエレノアの射撃は当たらない。

 ギリギリエレノアの攻撃が大攻撃まで繋がらないタイミングで移動を――


「矢時雨!」


 ――されると読んでいたかのようなスキル攻撃。


 自分の真上へと射撃するような動きの後、しばらくしてからスキル発動した際に指定したポイントへと小攻撃の雨を降らせる『アロースタイル』の攻撃スキル。


 ……逃げることも、読んでいた彼女のことだ。

 逃げ道も当然、読んでいる。


 数歩踏み出したその場所を中心に、エレノアのスキルが降り注ぎ……筋肉ダルマは死亡した。

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