東の戦い(2)
……ここで、エレノアの「ダッシュ」のクールタイムが終わった。
「スロウ・バレット」のクールタイムは未だ消耗中で、「バックステップ」もあと二秒ほどのクールタイムが残っている。
クールタイムは合計三本までしか置いておけない。
つまり今、一つのスキルを使えるようになったということだ。
……が、そこでエレノアはスキルを使って追撃することはせず、「スロウ・バレット」の影響を受けている敵に向けて崩し攻撃を放った。
バッドステータスの時はつい防御に頼りがちになる。それが例え予備動作が長い崩し攻撃だと分かっていようとも。
崩し攻撃を防御すればノーダメージだが大きな隙を生んでしまい、逆にそのままヒットすれば大攻撃を防御した時と同じぐらいのダメージが入る。
状況によってはそのままダメージを受ける方が有利に事を運べるのだが……それを理解していようともつい防御してしまう絶妙なタイミングだ。
……いや、エレノアのことだ。
そうなってしまう心理すら読んで、崩し攻撃を使ったに違いない。
「フラッシュ・バン!」
その後ようやく、体力バーを大きく削った敵に向けて、スキルを放つ。
ダメージを与えないスキルを。
……「フラッシュ・バン」。「スロウ・バレット」と同様、敵にバッドステータスを与えるスキル。……ただその対象が、モンスターかプレイヤーによって、効果が変わるだけで。
モンスター相手に使えば五秒間ターゲッティングされなくなるスキルなのだが、プレイヤー相手に使えばその効果は、画面を一秒かけてホワイトアウトし・一秒かけて元に戻すスキルと化す。
……でも、ただそれだけだ。
ホワイトアウト中もキャラの移動や攻撃のターゲッティング指定は普通に出来る。
ただの目眩ましスキルだと言われればそれまで。
だからきっと、エレノアはこの後崩し攻撃で敵の体勢を崩し、そのまま連続攻撃を仕掛けて仕留める。
……と、敵が読んでるということを読み、小攻撃から攻撃を仕掛けて連携を決め、今度は大攻撃まで繋げて一気に倒しきった。
これで、一人。
……そこで、敵の「スロウ・バレット」の効果が消えた。
つまりあと五秒後に、「スロウ・バレット」のスキルクールタイムも終えるということ。
……ただまぁ、それまでに決着は着きそうだけど。
「スロウ・バレット」の効果が消えると同時、一対一では勝てないと思ったのか、慌てて「ダッシュ」を使ってまで逃げ出す。
しかし『遠距離属性』を相手にそんな行動は取るべきではない。いくら逃げようとも攻撃が届くのだから。
特に「超長距離」のスキルを持っている相手なら、尚更だ。
一丁に持ち替えた武器で、逃げようとしている敵に向けて攻撃を仕掛けるエレノア。
移動しながらも時たま防御ボタンを押して何とか攻撃を防ごうとするが、エレノアは巧く移動のタイミングを狙って撃っている。
しかし距離が開けば開くほど、小攻撃は連続で当たらなくなってくる。
それを敵も理解しているのだろう。
だからダメージを受けながらも、必死に移動を続けている。
画面から外れればターゲッティング指定も出来ないから命中すらも難しくなってくる……その希望に縋るように、逃げている。
……今更ながらに気がついた。
ここで仕掛けたのは、星羅が体を張り始めたからではない。
ほぼ直線しか無い場所に誘い込めたからだったのだ。
それも、『遠距離属性』二人を引き離せた状態で。
『遠距離属性』の一人がなまじ近接戦闘もこなせるスタイルだったせいで、二組に別れて挟み撃ちしようと動いてしまった。
それを巧く誘導し、引き離し、ここに誘い込んだあおい姫の指揮能力。
そしてそれを無駄にしないエレノアの戦闘能力。
案外、良い組み合わせなのかもしれない。
「ダッシュ!」
逃げていた敵が画面から外れた瞬間、さっき敵が逃げるために使ったスキルを使って距離を詰める。
逃げることに必死でパニックになっていたのか、そのことに頭が回らなかったのか。
結局逃げ切れず、その驚いている隙を衝いたような小攻撃からの連続攻撃で体力バーを一気に削りきった。
事前のおびき寄せが功を奏したのもあっただろう。
しかしまさか、不利な『近接属性』を相手にノーダメージで勝利を収めるなんて。
……エレノアの強さを、改めてまざまざと見せつけられた。




