決闘開始(2)
テンマ側、残り八名。
……早い……。
思わず言葉が口をつく。
『ガンスタイル』のパッシブスキル「超長距離」。
それをあんな的確に、一人を狙って使えるなんて……。
……いや、もちろんエレノアだけの実力じゃない。
いつの間にやらあおい姫が、スキルを使用していた。
『アロースタイル』のアクティブスキル「察知」。
スキルLvに応じて敵の位置を知らしてくれるスキルだ。
>>次! 東側!
おそらく、頭の中にマップの構図が叩き込まれているのだろう。
ただの図面としてではなく、ちゃんとした建物の縮図として。
どの位置から「察知」を使えば直線距離になるのか。コンテナの影に隠れていないキャラは誰なのか。逃げづらいキャラはどれなのか。……それらを彼女は、知っている。
伊達にギルドバトル上位ランカーのリーダーを務めていない、ということか。
……いや、それを言うなら、エレノアもエレノアだ。
チャットに表示されるあおい姫のちょっとした指示だけで、的確に見えない敵にダメージを与えている。
彼女が話した経歴上、そこまでマップを歩き回ったことがあるように思えない。
しかし彼女は戦闘経験の長さから、あおい姫の指示を参考程度に止め、己の予測をフルに使って、その位置を的確に割り出している。
その証拠にさっき、うろちょろさせていたキャラにもしっかりと弾を当てていた。
プレイヤースキルが高いとは思っていたが……まさかここまでとは。最早、心理を読み取っての「先読み」にまで至っている。
>>東側がすぐ射線から外れた! 次の作戦!
あおい姫がそう文字を打つと同時、星羅とエレノアの二人がコンテナの上から降り、すぐ傍の十字路を左右に別れる。
これで星羅が西側にいるテンマのチーム三名側に、エレノアが東側のダメージを与えただけのチームへと向かったことになる。
……いや、西側には『ヒーラースタイル』のキャラがいたのか、倒したキャラもあっさりと復活させられ、回復アイテムを使われていた。
ただ、PvPやGvGでは、回復アイテムのクールタイムは倍かかるようになっている。
一番回復力が低くクールタイムも短いアイテムでも、次使うのに一分掛かってしまう。
課金アイテムでも平常マップでない限り回復量に応じたクールタイムが課せられてしまうので、試合中一度しか自分に使えない回復手段、と取るしか無い。
だからこそ、回復スキルを充実させることが出来る『魔法属性』――特に味方をHP1でとはいえ復活させる事ができる『ヒーラースタイル』は、こうした戦いにおいて重宝されるのだ。
そしてそれは同時に、敵からも狙われやすくなるということでもある。
それなのにエレノアたちは、『ヒーラースタイル』のあおい姫を一人コンテナの上に置いて、分散してしまった。
画面内に味方キャラを収めていなければ、スキルの指定が出来ない。
それでは回復スキルも復活スキルも使いたいところで味方に使えなくなってしまうが……。
……と、テンマ側にも動きが見えた。
星羅が向かう西側のパーティは彼女を迎え討つためか、二人の『魔法属性』のキャラを後ろに下がらせ、コンテナの角を曲がった直線の中腹で『近接属性』が待機している。
このままメンバー全員で星羅に近づく場合、二度曲がり角を曲がる必要がある。
もし下手なタイミングで彼女とぶつかってしまうと、『魔法属性』だけが角の向こうにいることになり、上手く魔法を当てられなくなってしまう可能性がある。それを見越しての待ち伏せ作戦だろう。
対して東側のメンバーは積極的にエレノアとの距離を詰めてきている。
『遠距離属性:ガンスタイル』のエレノア相手に待つなんて行為は攻めさせる隙を与えるだけ。
こちら側のメンバーは『近接属性』二・『遠距離属性』二という構成である以上、突っ込まなければ『近接属性』が攻撃に曝されるだけになってしまう。
それに『遠距離属性』の一人は、近接攻撃も出来るタイプ、と見て間違いないだろう。
『近接属性』には『魔法属性』を・『遠距離属性』には『近接属性』をぶつけるのが定石だ。
何故なら『近接属性』は総じて魔法防御力が低いし・『遠距離属性』の攻撃は『魔法属性』のクールタイムを遅延させることは出来ても、『近接属性』には何の効果も無いからである。
「察知」のスキルでは場所は分かってもそれぞれの属性やスタイルは分からない。
その結果偶然にも、星羅とエレノアにとっては不利な属性が多いパーティをそれぞれ相手することになってしまったが……。
それに、北側に転移されたテンマ本人と兎耳銀髪の男キャラの二組は、テンマが一度死人を出した西側へと向かい、兎耳がそのままツッコんできている。
「察知」のスキルによってエレノアと星羅が二手に別れたのを知ったからこその行動だ。
やはりあの銀髪キャラは遊撃だったのか、そのままガラ空きになったあおい姫を狙いに行くつもりだろう。
とはいえ、「察知」を使っているあおい姫もそれぐらい分かっているはず。
三人共不利な状況へと邁進しているように見えるが……。
「さて」「お手並み拝見、だな」
それを私と同じく俯瞰で見ている彼も、腕を組んでそう呟いていた。




