ギルドルームでの会話(1)
そうした会話を彼としている間にも、
>>ここがギルドルーム……
>>まあ、二つ目の、だけどね
例の三人娘は、あおい姫のギルドルームへと辿り着いていた。
>>一つ目はもうちょっと装飾ちゃんとしてるんだけどね。そっちはギルメン限定だから
>>でも二つ目ってことは結構な課金じゃあ……
>>いやいや、これぐらいどうってことないって
ギルドルーム増設アイテムは二千円なので、確かに大学生からしてみれば余裕なお金かもしれない。
たださっきから質問してる星羅からしてみれば、それは大金に分類されるだろう。なんせ中学か高校生っぽいし。
>>増設よりも一つ目のギルドルームに置いてるアイテムの総額のほうが多いぐらいだし……
>>それってギルドメンバーからの貢ぎ物……
>>ギルドメンバーが自分のギルドルームに何か置くのは貢ぎ物とは言わないでしょ?
あおい姫と星羅がそうして話をしている間にも、エレノアは部屋の隅にキャラを座らせ、会話に混ざることはない。もしかしたらとっくにドット打ちに集中し始めている可能性すらある。
>>ま、この部屋のことは良いでしょ。それよりも星羅、あのイベントの彼を倒すつもりで私たちについてきたみたいだけど……さっきも言った通り、特に倒すつもりなんて無いわよ? それなのにどうしてついてきたの?
間が開いた後のあおい姫のその長文に、星羅もまたたっぷりと間を開けて返事をする。
>>それは、説得するつもりだったからです。
短い文章。もしかしたら先の長文から、あおい姫の方が年上だと何となく察したのかもしれない。
敬語にすべきか否かを考えていた間だと考えれば、辻褄が合う。
>>説得? 彼と戦うように?
>>はい。お二人はどうもこのゲームでかなりの有名人みたいなので
>>あ~……まあエレノアはPvP優勝者だし、私はGvG上位常連だもんね……一緒にいたら目立つか
>>まあ、私は知りませんでしたけど
>>重剣士じゃあ銃も治癒も見る必要ないし、まあ普通じゃない? で、そんな強い二人を説得して、チーム組んで彼と戦うってこと?
>>はい。私一人でも無理だったし、前の二人も消極的だったし……掲示板で募集しても、チームワークを発揮できる気もしないですし……
まあ、さっきのあの集団でのとりあえず突撃を見ていたら、そう思ってしまうのも仕方がない。
>>まあでもさっきも言った通り、私達は彼と戦うつもりはないよ?
>>それがどうしてなんですか? もうLvも上げにくくなってるのに……
>>エレノアはLvに囚われてないし、私も私で楽しくプレイ出来ればそれで良いタイプだから
姫様プレイもその一環、ということか。だから無理に演技を続けることもしないし、口調が崩れれば崩れたままにする。
良いように言えば「自然体」という言葉がガッチリとハマる。ま、本当に姫様に徹してアイドルアイドルしてるプレイヤーなんて大勢いるし、そういうのを望んでる人はそちらに行ってくれと、最初から信者を増やすつもりで行動していないのがあおい姫の一種のアイドル性になっているのかもしれない。
>>それなら、低レベルの私でも何かすることはありませんか?
>>それと対価に彼を倒すのを手伝えってこと?
>>はい。お二人は友人みたいですし、何かできれば……
>>あ~……生憎と、友達ではないのよ、私たち
>>え、そうなんですか?
>>そうなんです
でもまあ、そう勘違いしてしまうのも仕方がないように思えるけど。
>>私は、イベントにおける彼の受け答えのプログラミングに興味があるだけ。で、その過程で彼女と知り合って、そのままなんとなくツルんでるだけ
>>なんとなく……
>>ま、私も同じ被害に遭ったことがあるだけなんだけど。
>>被害……?
>>星羅も女の子使ってるけど、ストーカーに遭ったことない?
>>私は一度も……
ネットの中だけの出来事に思えるそれに今、被害に遭ってる人が、目の前にいる。それに驚いているかもしれない。
>>あ、それなら、それの解決を手伝うので、それを交換条件、とはいきませんか?
>>だってさ、エレノア
その話のフリにしかし、エレノアは無言。
やはり、とっくに服のイラストを打ち始めていて、こちらの画面なんて見ていないのかもしれない。
>>……まあでも、ネットストーカーの被害状況とか、そういうのすら私は聞いてないから、解決も何も無いんだけどね
>>えっ、そうなんですか?
>>さすがに、リアルでも被害に遭ってると、私たちじゃ手の打ちようが無いしね
>>あおい姫さんも経験が?
>>あるから、目的はあのイベントのプログラムなのに、彼女のこの問題にも付き合っちゃってるの
……なんか、あおい姫はリアルでも、人付き合いが上手い人っぽく見えるな……そういう世話焼きで優しい所とか、慕われる要素の一つに思えて仕方がない。
私には無いものだし、正直言って羨ましい程だ。もしかしたらこういう所が、彼女のギルドが成り立ってる所以なのかもしれない。
今日出会ったばかりなのに、ここまで心配して、しかもゲームの時間を割いてまでなんとかしようとしてくれるなんて……。
>>……被害は、現実では何もない
その言葉を見たからか。
不意に、エレノアがそう言葉を打ち始めた。




