雪の村での雑談
今回は明日もちゃんと更新します
>>とりあえず、この村でもギルドマップ作れるから、そこに逃げる?
>>そこまでしてもらう理由がない
あおい姫の提案に、エレノアが素っ気なく返事をする。
>>掲示板を見てここに来てるんなら、いつもの所に戻る。
>>いつもの所?
>>あなたには関係ない
>>私は関係あるつもりだけど?
>>どうしてそこまで私に付まとうの?
>>ネットゲームだよ~? ちょっとしたキッカケでも知り合ったら仲良くなりたいよ~
急に姫モードで会話とか……。
>>それにネットストーカーなんて、同じ目に遭ったことがある身としては、なんとかしてあげたいのよ
>>…………
なるほど。
真面目な会話を打つ前におどけることで、真剣味を感じさせるって魂胆か……わざわざ考えてることを伝えるために、エレノアも三点リーダー打ち返してるし。
>>でも私、ネカマかもしれないよ?
>>そうであったとしても、このゲームの中では女の子でしょ? それに本当は困ってないなら、プログラムのアイツに助けられたからって心惹かれたりしないでしょ
しばらく間を空けてそんな長文の返事を送るあおい姫。
それを見ていると、本当に心配しているのかも、と思ってしまう。実際はそれすらも演技かもしれないけれど。
こういうところがチャットでのやり取りの欠点であり……利点なのかもしれない。
>>彼は人間
>>だから、あなたはそう思ってれば良いって。わざわざ訂正しなくても大丈夫だから。で、どうする?
>>なにが?
>>ギルドルーム。作ったら入る?
その質問に答えるよりも先に、
>>あれ?
急にオープンチャットで割り込む言葉があった。
星羅だ。
画面を操作し見てみると、そこには彼から逃がすためにと彼女とパーティを解散した二人がいた。
>>待っててくれたの?
その言葉の後、再び二人とパーティを組む星羅。
そこからはパーティチャットに切り替わった。
……ので、そちらのチャットも見れるように別ウィンドウに開けるよう操作する。
>>ギルドルームって、服の着替えって出来る?
その間にも、エレノアとあおい姫の会話が続いていく。
>>出来るけど……なんで?
>>今ドット打ちしてる服があるから、それを完成させたい
>>は~……ただでさえ強いのに服も作れるの
>>作るようになっただけ。優勝した頃は作ったことも無かった
>>なんでまた
>>どうでも良いでしょ
>>さすがにそこまでは教えてくれないか~……
……いや、そんな世間話するんなら早くギルドルームに入りなさいよ……まあそこまで警戒することもないのかもしれないけどさ。
ちなみにだが、彼は当初やってきた十人をあっさりと倒し、次にやってきた五人の相手をしている。
さすがにコレだけの数が相手ならどこかしらで負けるだろう。言っちゃなんだが、負けてもらうことでも成り立つイベントだし。
……とか思って見守ってるんだけどなぁ……このままだと、襲ってくる奴全員に余裕で勝ち続けそうだ。
むしろ数が集まりすぎて処理落ちが発生してしまい、プレイヤー側が勝てなくなってきてしまう可能性すらある。
プレイヤースキルが高いエレノアや、練った戦略で戦えていた星羅がおかしいだけで、本来はこんなものなのかもしれない。
ホント、普通のモンスターを相手にするみたいにとりあえず小攻撃かスキルで始動してばっかりで、相手の隙を窺うような真似はしない。
本当の戦いのつもりじゃない、というか、ゲームのような戦いしかしていない、というか……まあゲームだから、やっぱりこれで普通なのか……。
それに夏休み中のこの昼間だしな……学生ばかりだから尚の事、なのかもしれない。
>>あ、そういえば掲示板にあのイベントの場所書いてくれたのって二人?
星羅と仲間たちの会話が、ふと視界に入った。
まあ、そうだろうな……なんて思いながら会話を見ていると、
>>え、違うけど?
>>うん、とりあえず負けても来てくれるだろうから待ってようか、って話して待ってただけだし
二人のそんな返事を見て、ビックリした。
そう、ビックリだ。
だってあのタイミングで掲示板に書かれたとなれば、普通に考えてこの二人だと思うだろう。
私は三者の様子を映したウィンドウを、とりあえず一番左のディスプレイへと移動させ、公式サイトにある掲示板を社員モードで見る。
この掲示板は、キャラを一人でも作り、ユーザーIDが発行されていなければ使えない。だからこそ信憑性があるとされている。
そんな掲示板に書かれていた――今も彼が強いという感想が次々と書き込まれていくスレッドの、立ち上げた人のIDを確認すると――
誰のIDにも、引っ掛からなかった。
つまりこの書き込みは……このゲームのプレイヤーのものではない、ということだ。
このゲームのプレイヤーしか、書き込めないはずなのに。




