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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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プロローグ(2)

 MMO「ラッキー・スター」。

 HMDヘッドマウントディスプレイを使った3DネットゲームやVRMMOが主流になりつつある昨今、未だキーボードやマウスを基本アイテムとしたドット絵を使っている2Dゲームだ。

 古き良きオンラインゲーム、といった感じだが、このゲームにはある特徴がある。

 それが服装の自作だ。

 ドットさえ打てれば、自分で自分のキャラの服装を作り、着せることが出来る。しかもその服をネットで配信することもでき、公式サイトに申請して認められれば、ある程度の現実金リアルマネーを必要とするが販売することも出来る。

 このゲームは、そういうクリエイト系の人や、昔のオンラインゲームをしたい人に支えられているといっても過言ではない。


 そんな、今年で二十周年を迎えるこのゲームで、私はイベント企画を担当している。

 しかもその、二十周年記念イベントという、大きなイベントの。


 もちろん、大掛かりで公式サイトのトップを飾ってまで宣伝しているような看板イベントではない。そんなものを入社数年の私に任される訳がない。

 それでも十分、大役ではある。

 複数ある小さなイベントの一つとはいえ、だ。

 しかし私がプレゼンした企画が通ったのだから仕方がない。


 その企画というのが先程“彼”のおかげでようやく形にできた、プレイヤーキャラに襲いかかるNPCノンプレイヤーキャラクター、というものだった。


 「ラッキー・スター」ではPKプレイヤーキラーエリアや闘技場と呼ばれる場所でしか、他のプレイヤーに攻撃することは出来ない。

 しかしこのイベントキャラは、プレイヤーキャラのような外見で、普通のダンジョンでもいきなり襲い掛かってくるのだ。

 もしそれを撃退すれば、現在経験値に関係なく、レベルを一上げる。

 そんなキャラを一日一体限定で出現させる。要は擬似的なPKプレイヤーキラーイベントを作ろう、といったものだ。


 今思えばどうして通ったのかよく分からない。もちろん言うまでもなく、私以外の他のイベント企画も色々と通っている。あくまでその中の一つに過ぎないのだが……しかしそれでも、だ。

 任されてしまった以上、企画書通りの完璧なものを作り上げたい。


 ……そう思っていたが、次第にそのモチベーションが下がってきてしまっていたのだ。

 いや、やる気が無くなった、とかではない。ただ、そのプログラムを組んでいる内に、「何か違う」という感覚に苛まれてしまっていた。

 本当の人間のように、時にはプレイヤーを助け、時には敵対する。そんなキャラを作りたい。……のに、上手くいかない。

 考えれば当たり前のことで、妥協しなければいけないことだったのに……その時の私は、そうは出来なかった。


 そんな時だった。

 “彼”と出会ったのは。


 ……ここで少し現実味のない話をするが、実をいうと私は昔から、異世界を覗き見る事が出来た。

 見方としては二種類。

 上から俯瞰で見るか、その世界の妖精や精霊のような存在になって見るか。


 もちろん、見ることが出来る異世界も様々だ。

 私の世界から観れば遠い未来のような世界もあれば、少しだけしか違わない世界もある。それこそ、魔法が飛び交う世界や、銃と剣と荒野だけの世界まであった。

 見ようと思って見れるし、一度見た世界なら何度でも見ることが出来る。しかし他の世界を一度でも見ると、もう二度と同じ世界は見れなくなる。


 最初はただの夢かと思った。

 なんならイタイ妄想かとも思った。

 でも、それは違うと、感覚のどこかが訴えた。

 だから私は、自分には異世界を見る能力がある、と思うようになった。


 多分その能力を暇つぶしとして使ってきたせいで、自分がプログラムで作り上げるキャラに違和感があったのだろう。

 でもその能力があったからこそ、この企画を思いついたとも言える。


 しかしながら私は、その能力を使って、誰かを別の世界に移動させる、といったことをした記憶が無い。出来た記憶もない。出来ると感覚が訴えたこともない。

 それなのに何故か、彼に声をかけた時は、出来る気になっていた。

 ……きっと、五日間寝ていなかったせいだろう。あの時は意識がどうにかなりながら、彼と言葉を交わしていた気がする。

 目を瞑るようにすれば異世界にいけるのに、一緒に睡眠時間を取れないのは欠点以外の何物でもない。精神的疲労は取れてしまうせいで、自分は元気でなんでも出来ると、勘違いしてしまったのだろう。


 まあ、実際出来た訳だけど。


 でももう二度と、同じことが出来る気がしない。アレはきっと火事場の馬鹿力的なアレだったのだ。




 だから、失敗しないよう、徹底して組み上げた。




 認められるために。


 彼の存在を入れた、このイベントの出来が完璧だと。

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