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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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鼠との言い争い

>>あっと、逃げないで逃げないで

>>やっと久しぶりに再会出来たのに、いきなり街エリアの外に出ようとするのは酷くない?

>>っていうかキャラ消して無かったんだ


 次々と表示されるネズミ耳の男キャラからのチャット。ただでさえ打ち返すのが遅いエレノアでは全く返事が出来ない。

 その男にカーソルを合わせると、頭上に出てきたのは「テンマ:Lv356」という表示。かなりの高レベルプレイヤーだった。


>>ま、そりゃそうだよね。Lv200超えてるキャラを早々消せないか

>>いや~……ささやきモードでも全然返事しないから、てっきり消してるのかと思ったよ~


 ささやきモード、というのは、一対一でチャットウィンドウを使って会話をすること。相手の名前を直接指定することも出来、そうすればどれだけ距離があろうとも、その人がログインしていれば、その人のチャットウィンドウに直接メッセージを表示させることが出来る。

 本来の用途は友人にパーティのお誘いをする時などに使うのだが……まあ、生存確認のために使うことだってなんらおかしくはない。


>>それでさ、エレノア。ま、俺とパーティ、組まない?

>>Lv差は前よりもさらに広がったけど、俺は気にしないから

>>むしろ、俺のLvで行けるランダムダンジョンにパーティとして付いて来たら?

>>昔みたいに、寄生して経験値稼いだら良いよ

>>怒らないからさ


 ビクりと、エレノアの身体が怯えたように動いた気がした。

 もちろん、ドット絵でそこまで分かるはずもない。


 だけど、なんとなく……ネズミ耳のテンマの文字は、当事者には十分ビビらせる効果があるように思えた。


「ちょっと待てよ」


 そしてそれは、間近で会話を直接聞いていた彼ならば尚、分かること。


「彼女の先約は俺だ」


 二人の間に手を差し入れ、会話とも呼べない一方的な言葉に、割って入った。


>>何、お前? ただのNPCがいっちょ前に何の用だよ

「それはこっちのセリフだ。まだ俺は彼女と別れていない」

>>はんっ。もう御役目は終わったろ? オープンチャットのログにも残ってんだよ。っていうかNPCはさっさとはけろ

「生憎と、俺はこの世界に連れて来てもらった別世界の人間だ」

>>そういう設定で生み出されたんだよ、お前は。ただのAIが

「AI、ってのは分からんが、ここで生まれたってのはお前も変わらねぇことだろ?」「それなのに粋がれんのか?」「そのお前は、本当のお前じゃねぇんだろ?」

>>は? 訳分かんねぇ


 言い返せなかったのか言い返す気が失せたのか、


>>んなことどうでも良いから。これは俺とエレノアの問題だから


 テンマは面倒くさそうに話を戻した。


>>テメェはさっさと戻れよ。プレイヤー狩りにさ

「なら、テメェを狩るか?」

>>あ?

「そもそも、俺とエレノアとの会話に割って入ってきたのがお前だ」「勘違いしてんなよ?」「俺は、つきまとうな、と言われたが、それは俺の出来る範囲での報酬なら、って話と合致しない」「って話をするつもりだったんだよ」「そこでオメェの邪魔が入った」「だからおい、エレノア」「コイツの居ない所で話をするぞ」


 それはまるで、テンマからエレノアを引き離そうとしているように見えた。彼当人は本当にその話をしたがっているだけなのかもしれないが、当事者からしてみればそうは見えない。

 なんせその当事者は彼のことを、ただのイベント用NPCとしてしか見ていないから。


>>テメェ……運営の回し者か?

「運営、ってのも分からねぇな」

>>ごめんなさい


 と、不意に言葉が割り込む。

 エレノアだった。


>>確かに、言うとおり。ちゃんとその話をしないと。イベントだって、途中かもしれないし。というわけでテンマさん、また。


 事前に文章を打ち込んでいたのか、一方的にワープポータルの方を向きながら告げると、エレノアは村から出て行った。


>>おい、逃げんな!


 その言葉がちゃんと、彼女のチャットウィンドウに表示されたかどうかは分からない。ただ――


「それじゃあな」


 ――選ばれた彼と――




 選ばれなかったテンマは、揃って村から出た。




 すぐにフィールドに出たはずなのに、そこには既にエレノアの姿は無く――


 そのことに舌打ちでもしそうなテンマの首元に、不意に迫る刃。


 一緒に出た彼が中剣を一本抜き放ち、真隣から彼の喉元へと刃を添えていた。




「それじゃあ、戦うか」


 戦闘狂らしい彼の言葉にしかし、テンマは反応しない。

 すぐさま村へと戻ろうとする。


「ちっ」


 舌打ちと共に刃を振るい首を斬り、「CRITICAL!!」の文字と共にテンマを一撃で葬り去った。


「あ~あ、つまんねぇの」


 海底フィールドで静かにボヤきながら中剣をしまい、彼はしばらく何か考えるように立ち止まった後、元々やってきた洞窟に向けて歩を進めた。

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