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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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洞窟旅行

 この広場へたどり着くまでにある洞窟へのワープエリアに触れ、エレノアも彼もその場を後にする。

 ついで映った画面は、一本道の洞窟だった。


 海底洞窟、という設定なせいか、青白い岩壁と土で囲まれたその道を、エレノアの後をついて行くように彼は歩いて行く。


「そういや、この場所もこうやって道が繋がってんだな」「当たり前なことだが、ずっと妖精にテレポートしてもらってたから忘れてたわ」


 と、一房に結ばれた金色の髪を揺らしながら足を止め、


>>妖精?


 チャットウィンドウにそう表示させてから、エレノアは再び歩みを再開した。


「俺をこの世界に連れて来てくれた奴だよ」「元の世界じゃ戦える奴がいなくなったからな」

>>戦える奴がいない?

「誰にも負けないぐらい最強になっちまったんだよ」

>>でもさっき、負けるって話した

「まだ未熟だった頃はな」「俺だって何も生まれつきこんなに強かった訳じゃねぇよ」「負けて、今みたいについて回って、弱点を嗅ぎつけて、勝ってきたんだよ」

>>ひきょう……

「傭兵は情報戦だ」「俺達の世界じゃ当たり前で、向こうも同意してたんだよ」「ま、それをこっちの世界で当て嵌めて、こうやって勝手について回るのは卑怯だったかもな」

>>そうやって、人を殺してきた?

「殺してねぇっての」「俺は向こうが殺す気でいない限りは殺さねぇ」「こっちから喧嘩を売る時はギリ手加減するっての」

>>そうなると、負けるよ

「なに?」


 今までも足を止めていたのに、今度はかなり長い時間、足を止める。


>>死にかけでも、平気で動き回れるから


 きっと、HP1でも動きが鈍らないことを伝えたかったのだろう。

 彼が本当にこの世界にいる人間だと考えて、必死に言葉を探してくれたのかもしれない。


 もしかしたらエレノアのプレイヤーは、この道案内もイベントの一つだと考えているのかもしれない。

 そのため彼の言葉を、先ほど会ったあおい姫とは違い、ちゃんと一登場人物として見て・聞いて・考えて、答えてくれている。


>>トドメを刺さないと、逆に殺される

「だとしても、俺は自分の理念は曲げたくねぇ」「つーかそれこそ、そこまでして襲ってくるってことは、俺を殺す気だってことだろ?」「だったら十分対象内だ」「お前だってこの前は、俺を殺す気でいただろ?」

>>……なるほど


 まあ確かに、この世界では全員、彼を殺す気で来るだろう。

 なんせ強制Lv1アップイベントの対象なんだし。

 そのことを把握しているはずなのに、ど忘れでもしたのか、本気で心配してくれたエレノアのプレイヤー。……あれ? 現実リアルはドジっ子属性かな?


「そういう意味じゃあ、お前はなんでこの世界にいるんだ?」


 さっきからずっと立ち止まったまま、二人は話を続ける。


「妖精に聞いた話だと、この世界は現実で戦えないから戦うための擬似世界、なんだろ?」「でもお前はどっちかっていうと、戦いたがってるようには見えねぇ」「あんな人気のないとこに一人でいて、一体どうしてぇんだよ」


 足を止めたまま――けれどもさっきとは違い、三点リーダーを打って考えていることを伝えにしないエレノア。


 イベントのNPCに話して良いことなのかどうかを考えているのかもしれない。


>>私は、周りにチヤホヤされたい


 やっと、文字を打ち出した――そのタイミングで、急に魔法陣が現れ、魔物が姿を見せた。


「うお!」


 驚きの吹き出しを出す彼と、すぐさま戦闘の構えを取るエレノア。


「なんだよこれ……」「こんなのがこの世界にいるのか」


 そういえば、彼の世界は生粋のファンタジーっぽい世界なのに、こうした魔物のような異形の怪物はいなかった。

 変わりに、人の心に巣食う「魔族」なるものはいたが……それは心への寄生なんで、外見は人と変わらない。


 バンバン! と驚く彼を置いて、SEを鳴らしながらモンスターへの攻撃を始めるエレノア。

 大きな蟹、とでも表現すれば良いのか。

 色は真っ赤ではなく、ハサミや脚が紅いだけで、他はどちらかというと水色。

 目もギョロりとしていて、気持ち悪い。

 まあ、ドット絵で見れば、そこまで気持ち悪い外見ではないのだけれど。


 ただやはり、キークエスト終盤のダンジョンにいる敵なせいか、大きさは普通の蟹とは比べようもない。むしろ彼の視線から見てみれば、そのサイズは人の三倍はあろう大きさだった。


「ふむ……」「攻撃は通るのか」


 エレノアの攻撃を見ながらそれだけ呟くと、一本の長剣を抜き、両手で握って構える。

 そして銃撃しているエレノアへと歩き迫る、その蟹にある無数の脚を――一薙ぎのもとに、全て切り捨てた。

 ガクッ! と姿勢を崩したのを確認し、


「我が手には大地。我が足には空。覆す力・相手への罪・屠り諌める力となりて」


 詠唱――魔法発動。


 瞬間、大きな蟹が上下逆さになり、地面に叩きつけられる。


 そうして身動き取れなくなった蟹の胴体を……ジャンプし、上から真っ二つに、切り裂いた。


 しかしドット絵で見ていると、ただ一度攻撃をした後魔法を唱え、一瞬だけ浮いたモンスターに再び攻撃したあと「CRITICAL!!」の表示が出て、一撃で倒したようにしか見えなかった。


「なるほど……まあ、俺でも倒せるか」「ふむ……こういうのを相手にして戦うのも悪くはねぇな」「これもまた、俺の世界にはいなかった存在だしな」


 独り言を呟き何やら納得している彼の脇を、戦闘状態を解除したエレノアが、スッと追いぬく。


「ん?」「おい待てよ」「さっきの続きは?」


 その言葉に一度足を止め、


>>また出るから。とりあえずすすむ


 とだけ返して、さっさと歩いて行った。

 まあ、言うタイミング逃しちゃったのは確かに事実だ。ただでさえ言い難いことで、本人もそれなりの覚悟を持って文字を打ち始めたのに、あそこでモンスターが出ちゃうとどうしても……ね。まあ仕方ないだろう。


 こりゃ、後でまた同じ話を聞き出すのは、至難の業になるだろう。

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