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現実ネトゲに異世界人最強を入れてみた  作者: ◆smf.0Bn91U
MMO「ラッキー・スター」と異世界の傭兵
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交渉成立

 初めて行った場所……つまり昨日、銃士エレノアと戦った場所のことだろう。

 一体どういった意図があるのか訊ねてみても良かったが、あえてどういった行動を取るのか見てみるのも良いだろうと、何も聞かずにその場所へとテレポートした。


 海に囲まれた花畑の大きな広場。

 つい先程まで居た大きな街の広場、それと同じ広さをしたそこには誰もおらず、閑散としたものだった。BGMだけが寂しくなり響いている。


「いない、か」


 彼はそれだけを呟くと、昨日エレノアが座っていた場所に腰掛けて、武器を外して手入れを始めた。

 どうやら、彼女が来るまで一人で待っているようだった。

 ……このまま見ていても仕方がない。私も個人の仕事をしよう。


◇ ◇ ◇


 そして、現実の時間で昼の一時になる頃――彼も武器の手入れを終えて、素振りや魔法の詠唱など時間の潰し方が変わり始めてかなり経ってからようやく、彼女がやってきた。

 タヌキ耳の、金色の髪を一房の三つ編みにした『ガンスタイル』の女性アバター・エレノア。


「よお、やっと来たな」


 彼女の姿を確認し、座禅を組んで集中していた彼がそれを解いて立ち上がる。


「っと、うおっ!」


 そんな彼をいきなり射撃しだすエレノア。


「ちょっ、ちょっと待て!」「今日は喧嘩を売りに来たんじゃねぇ!」


 彼のその吹き出しを見てもしばらく攻撃を続けていたが、武器も握らずただ避け続けるだけの彼を見て信じてくれたのか、なんとか攻撃を止めてくれた。


「ふぅ~……危ねぇ危ねぇ」


 息を吐きながら、エレノアに近づき――


>>と待って


 ――その途中で、止められた。


「お、初めて声を聞いたな」


 少し嬉しそうにニヤけながら、言われた通り足を止めた。


>>なんの用?


「その前に、自己紹介しないか?」


 そう切り出してようやく、二人はお互いの名前を名乗り合った。


「エレノア、か」「良い名前じゃねぇか」


 エレノアの中の人はよく本名を言わなかったものだ。彼がプレイヤーだとこの流れ、確実に本名を聞いてる流れだった。


「それじゃあエレノア、何の用事だって話だが……」「俺はお前が気に入った」「というわけで、この世界を案内してくれないか?」


 しばらく、エレノアからのレスが止まる。


「おい、返事は?」

>>なんで、私?

「なんで? だから気に入ったんだって」

>>ちがう。どこが?

「どこが? ああ、どこが気に入ったかってか?」「そりゃもちろん」「俺に勝てる強さだよ」


 見ていて思ったのは、エレノアのプレイヤーはキーボード入力が不慣れだな、ということだった。

 チャットは遅いし、言葉も短いし、「止まって」の変換もミスしていた。

 まあ彼視点からしてみれば、無口な子、程度の差だろうか。変換ミスの場合はどう聞こえているのかは気になるが。


「しかも可愛い奴と来た」「だったら、案内を頼みたいって思うのは、男として当たり前だろ?」


>>…………


 わざわざ三点リーダーを打って、悩んでいる間を作る。


「俺はよ」


 そんな彼女に頷いてもらうためのアピールなのか、彼は返事を待たずに吹き出しを新たに作る。


「自分より強い奴と仲良くなってここまで来た」「俺が好きなのは刺激のある戦いだ」「殺し合いじゃねぇ」「だから、自分が強くなって、もっともっと肉薄した戦いをしたいと思ってる」「そのために、お前から色々と学びたいんだよ」

>>私じゃなくてもいいよね

「いや、お前じゃねぇとダメだ」

>>世界を回るって、具体的には?

「ここから出て、近くの町まで案内してくれ」「実をいうと、この世界に来たのはつい昨日なんだ」「で、今日はこの世界で一番大きな街に行ってきたばかりだ」「他の街を見てみたいんだよ」

>>面倒

「そう言わずに」

>>やりたいことがある

「だったら、案内してくれたら礼をする」「お前の頼みごとで、俺が出来ることだったら、なんでもしてやる」「お前の時間を奪うのにこの程度ってのは、傭兵業として生きてきた身分としては情けねぇが」「生憎と、金がねぇんでな」「……あれ? 思えばこの世界に来てから腹減ってねぇな……」「どうしてだ?」


 最後の独り言を見て、エレノアは返事に窮しているようだったが……しばらくして――


>>それじゃあもう、わたしに付きまとわないのなら


 ――そう、同意の返事をしてくれていた。


「それはなんとも悲しい……」「……が」「ま、仕方ねぇか」「オーケー」「それじゃあ交渉成立だ」「案内の方、頼むぜ」

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