歪な同行人
という訳で、明日更新できない分のもう一話です。
本音を言うとコレでキリが良くなるのでちょうど良かったです……。
となれば、ここで嘘をつき、私の信頼を失くすことは、彼をこの異世界へと連れてきた妖精をも裏切ることになる。
それぐらい彼も分かっているだろう。
となれば、嘘をついている可能性は極端に低い。
それに何より、ここで抵抗する理由の方が無い。
もしここで、私が無理をし、自らを犠牲にして彼を殺したとしても……彼の言う異世界と不死性が本当だった場合、私だけが無駄死にすることになる。
もちろんそうさせないための嘘である可能性もあるが……彼ならば周囲を巻き込む私の自害を無力化することぐらい、訳ないだろう。
それこそ、武器が失くなったことを瞬時に察し、私の手足を切り落とすぐらいは平気で出来たはずだ。
さらに言えば、私がここでこの提案を拒絶する理由も殆ど無い。
もし拒絶し、一人で『赤の姫』を探すことになれば……慣れない場所を一人で彷徨うことになる。
彼のほうが慣れていることを思えば、私一人で彼女を見つけることの方が、圧倒的に難しい。
例え彼女たちもまた、私を探してくれていたり、外で待っていてくれようとも。
「……分かった」
でも……それでも、留まりたい理由は話せない。
もしそんなことをすれば、『赤の姫』がどういった目に遭ってきたのかまで話さなくてはいけなくなる。
そんなのはゴメンだ。
完璧に相手を信用するなんてこと……してはいけない。
「私がこの世界に留まりたいのは、あの子を守りたいから」
だから、嘘をつく。
真実を織り交ぜた嘘を。
……いや、もしかしたらこれは、私の本質なのかもしれない。
元の世界に戻りたくないから、この世界に留まりたい……それがどうしてなのか、と問われれば、それはどうしても「『赤の姫』を守りたい」に行き着く。
「そうか……」「つうことは、あの子次第で元の世界にも戻るってことか?」
「…………」
それには、答えられなかった。
そればかりは……実際に彼女に言われてみないと、分からなかったから。
私自身は戻したくないけれど、彼女が戻りたいと言ったなら……私は……。
……どうするの、だろうか……?
「……ま、そこまで聞くのは野暮か」
追求を止めたその姿を見て、もしかしたらさっきの質問の答えで、私の本質と自分の本質がどこか似てる、と、この男に私と同じことを思わせてしまったのかもしれない。
「んじゃ、約束通り、あの子を探すのに協力するよ」「というわけで、コレを」
そう言って、自分が着ていた外套を、私に投げつけてくる。
真っ暗なこの部屋の色を溶かし込んだかのような黒の外套。
咄嗟に受け取ったそれは、それなりの重量があった。……が、まあ着る分には、私の速度を阻害するほどではなかった。
「……なに?」「これは」
「外套だよ」「ほら、ここの出入口が無くなってんだろ?」
言われても、この暗闇では黄光の帯なんて見えないが、嘘をつく理由なんてないので事実なのだろう。
「外に出るためにも、妖精の手が必要でな」「とりあえずはそれ着てくれりゃ大丈夫だからよ」
「……なんか匂う」
「男の旅の服だ」「当たり前だろ」「それに、服の中に何本か短剣を忍ばせてる」「武器使い切ってんなら使ってくれ」「外は危ねぇからよ」
そこまで言われれば、着ない訳にはいかない。
外に出れないのでは話にならないからだ。
何より、こうして武器が手に入ったのもまた大きい。
短剣なんて使ったことはないが、投げることも造作ない代物だから私に勧めたのだろう。
そうしてバサリと羽織ると同時――私の意識が、急に途切れた。




