7.建築することにしました、森奥で
かなり更新時間から遅れてしましました、すみません。。。
アドバイスや、誤字などの指摘をよろしくお願いします。
「斧風!」
――ドスン
俺は、凛とした態度と共に樹木を風で切り倒した。
ふふふふふ、俺の実力をみくびったな。
愚かな樹木よ。
……とはいったもののさっきの"ドスン"は樹木が出した音ではない。
まだ育っていない細い木の枝に、渾身の力を振り絞り、それを折った反発という理由で尻もちをついている俺はグランに話しかける。
「訓練しないと難しいな、これ。俺もグランみたいなスマートな魔法を使えたらな。」
「そんなスマートですか?……あ、今度教えましょうか。」
「うーん、誰でもすぐにできるものじゃないだろ?今度技術を教えあう時間を設けるか……。」
俺はそう言うと、先ほど折った、腕ほどの太さの枝を格納でしまい、また歩き出した。
ここ三日ほど俺たちは、拠点を安全かつ、より快適なものにしようと励んでいる。
先日採ってきたネルアム、あの大きな実をグランに見せびらかそうと拠点で取り出してみたところ、採ったときよりもかなり熟していて、そのうち腐りそうだったのだ。
"格納すると、時間の干渉が無い"
俺が故郷の小説で得た知識と違うなんてひどいではないか。
とりあえず、俺たちはそれを干し果物にすることに決めた。
まずは高い位置に棚を作り、その上で乾かすことにした。
魔獣が干し果物をデザートに、俺たちをメインディッシュとして食べようとするかもしれないからな。
それで木工作に目覚めた俺たちは、レッツ拠点作成、って流れになり、木材などを集めているところなのだ。
エナは、精霊たちに頼んで石や岩を用意している。
「ふう……。これくらいでいいな。明日から建築を始めよう。」
俺は取り出しで、テントの脇にすでに積んであった丸太の上に今日の収穫を乗せる。
「そうですね!……どんな拠点に生まれ変わるんでしょうか?楽しみです!」
「作業とかもしやすくなりそうですね。」
2人とも楽しみにしているようだ。
「コァァァ!」
「クルルルルルッ!」
ロザンとシャルルは拠点で遊んでいたが、俺たちの帰りを知って、それぞれの主人のもとにと飛び込んできた。
俺の場合は首にだが……。
グランは格好よく、腕に止まらせている。
今度シャルルにも、せめて格好良く俺の首に乗ってくれるように訓練させよう。
エナが少し羨ましそうに、それぞれの相棒を撫でる俺たちを見つめている。
昨日獲得した【通常能力 木コリ】の練習をしていると、俺のいる新拠点の予定地まで、スパイスのいい匂いが漂ってきた。
どうやら疲弊した身体への恵みができたようだ。
今日の夕食は、シチューのようなものだった。
薄いクリーム色のスープで、林檎の薄切りのようなものや、脂の乗った肉が泳いでいる。
相変わらず美味い。
まろやかなものも好きだが、スパイスが効いているのもいいかもしれない。
口に入れてもなお泳ぎ続ける肉と、とける脂が舌の上で遊んでいる。
さて、次は……。
まだ食べていなかった林檎のようなものも口に運んでみる。
おお、これは……?
紫ぜんまいの汁を吸ったときの感覚に似ている。
それは力が湧く感じだったが、これは体があったかくなり、ぽわわんという表現が似合いそうな癒しである。
「なあ、グラン。これを食べると不思議な感じがしたんだが、これって?」
グランに聞くと、これはサッポクリアという種類の植物の茎で、体力回復の効果があるらしい。
紫ぜんまいと組み合わせればいい回復薬が作れそうだ、そう思ったので今度採りにいってみよう。
◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆
昨日は湧きだすわくわく感のせいで、俺もグランもなかなか寝ることができなかった。
自分自身、自分達自身でものを作成する、このことに人類はいつの時代も心躍らされてきた。
俺たちも例外ではない。
まずは、いつも通り近くの泉で顔を洗う。
朝食を食べると、いつかグランとエナが俺に忠誠を誓ったときの切り株を中心に、今日の予定を二人に話した。
こんな俺でも、今日のためにどういう建築にするかは考えていたのだ。
先のことを見通す、これも重要な力である。
まあ実は、つい最近の失敗を生かしただけなのだ。
まだ俺が地球で生きていたころ――なんか俺が死んだみたいだな――魂込めてフロウの犬小屋を作ったのだが、常連だった清井さんに「おもしろいオブジェを作るんですねぇ。」と言われたときは魂が壊れかけた。
犬が住むのだから犬の形にするのがなぜ悪い?
そうは思ったが、今度からよく設計してから作るようにしようと思った。
どうも、俺は昔から、俺のことを感性が独特だと表現する変人たちに、囲まれる。
松河照夢が変人だ、そんな考えは軽く振り捨てる。
俺が変人とかそう考えてしまうようなマイナス思考では生きてはいけないのだ。
計画の概要を話すと、二人は感心した眼差しで俺を見ていた。
そう、主たるもの、これくらいの尊敬は集めないと主とはいえない。
「さて、建築予定地を軽く確認しよう。」
二人を連れて、切り株の場所からいったんテントに戻る。
そこから反対方向の、泉の近くに拠点を建てるのだ。
水の近くは文明が繁栄しやすいだろ?
二人にそう言うと、エナは納得したように首を縦に降っていたが、流石にグランは苦笑をしていた。
今は文明を発達させる必要など皆無なのだから。
しかし、水の近くにあるということは、どの作業をする上でも重要なことだとグランもわかっているようで、建築予定地の場所には賛成してくれた。
泉はいかにも美しい女神が出そうだから選んだとかそういう理由じゃ、だ、断じて無いのである。
後で泉にネルアムを落としてみようかな。
泉は、エメラルドグリーンと群青色が混ざったような、美しい色をしていて、蓮のようなものがいくつか浮かんでいた。
周囲には、背の低い草木が生え、泉を取り囲むように紫ぜんまいが生えている。
俺たちは、そこから少し離れた開けている場所へ移動した。
「ここですか!……日も差し込むし、拠点を建てるには絶好の場所ですね。」
グランはこの場所の良さがわかるようだ。
エナもグランの言葉で、この場所の有用性に気が付いたようで、うなずいていた。
ほかの場所は、みずたまりのあるところが多いのだが、ここは少し高くなっていた。
壺型の木々に囲まれ、上にはまだ白っぽい青空が見える。
鳥のさえずりも聞こえてきて……。
あ、これは幻聴だった。
聞こえるのは風による葉の囁きと最近ずっと聞こえてくる、コーンコーンと何かを木にうちつけるような音だった。
誰かが藁人形を……。
そんなことを考えると悪寒がしたので、どのように建てていくかをグランとエナに伝えた。
少し長い説明だったので、最初は興味津々に聞いていたシャルルはすぐ飽きてロザンと遊び始めていた。
俺の計画はこうだ。
①俺の風斧で草木を排除する。
②土を平らにならす。
③エナの集めた薄い岩を、グランの技術で研磨し、いい形に整える。
④それを土に大きく四角形にならべ拠点の土台を作成。
柱が立つ岩の部分は、岩の精霊に頼んで丸く穴をあけてもらっていた。
それなりに大変らしく、精霊は作った干し果物を両手いっぱいにエナから貰ったようだ。
⑤採ってきた細い木の幹から枝を切り落として柱とする。
⑥岩の穴部分を通し、地面深くまで柱を突き刺す。
その柱を8本使い、物置と食料の乾燥棚、居間兼寝室の3つの部屋の枠を作るのだ。
とりあえずここまでを今日の目標にして俺たちは作業にとりかかる。
「風斧!」
――ザザザザパッ
爽快な音と同時に、目の前の草木が一瞬浮いてから地面に落ちる。
たいした能力でもないのだが、こう使うととても気持ちがいい。
今度どこかの街に落ち着いたら、芝刈り屋になってもいいくらいだ。
俺はもともとの職業、ペット屋のことを忘れかけるほどに上々の気分で草木を刈った。
――ガゴッ
いきなり、木の幹にあたって跳ね返った恐怖の風が俺に帰ってきた。
間一髪でよけた俺は胸をなでおろし、調子には乗りすぎないようにしようと心に誓った。
自分から、肉の切り身になるところだった。
危ない危ない……。
そこからは、スムーズにワークは進んでいった。
スクエアな感じにロックをプットしたり、ウッドをアースに突き刺したり。
ハードだったが、それ以上にエキサイティングなアクティビティだったと思う。
拠点の形ができていくのを動力として、俺たちは筋肉を限界まで動かした。
それゆえ俺の精神はまたもやおかしな方向に向かっていたのである。
それを癒すのがこれだ!
俺は目の前の食事に食らいついた。
「すごい食いつきですね、照夢さん。」
グランもそう言いながら、スープをすごい勢いで飲み干す。
「そんなお兄ちゃんだって!」
エナも笑いながら小さな口で、パンを大きくほおばる。
やはり今日は、皆とても疲れたようだ。
明日の作業がちゃんとできるか心配なので、今日はグランと夜更かしせずに早く寝ることにしよう。
俺は、心地の良い疲れと楽しい食事の幸せに包まれながら、また一口ステーキを口に運んだ。
ストーリーが進みませんでした。
次回は拠点がだいたい完成する予定です。
戦闘シーンも出す予定があったりなかったり。
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