泥人形に運命を感じた話~兄妹の回想~
グラン&エナ視点なので、楽しめる文では無いです。
本編には若干しか影響はありませんので読み飛ばしても構いません。
キャラのやや言葉足らずなところや、感情の起伏の差を書き分けようとした結果なので、文章的には表現技法が低くなっています。
ぜひ感想やアドバイスお願いします!
「キャャャアアアアア!!!……」
「グワァァァァアア!!……」
「ザールさまァァ!!!ティアラさまァァ!!」
◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆
――ガサゴソ……ゴソゴソ
なんだろう?
俺の名前はグラン・ドレ・カテナ。
ミグナーツ王国 国立魔法学校。
一応貴族だけどそこに通う普通の学生だ。
今年で15歳だが、特に魔法の才能は無いし、好きなことも無い……。
"個性"に目覚めているやつだっているんだけど。
だけど、魔法に興味が無い俺にはどうでもいい話だった。
そんな俺は、歩みを止め、ユサユサ揺れ動く茂みを見つめていた。
めんどくさて、つまらない魔法学校、その下校途中の道に動く茂みがあったんだ。
そりゃあ目を留めずにはいられない。
「ルトゥゥゥ?」
葉の間から覗いたのは……スライム?だった。
俺は今までにないほど目を丸くして驚き、
絶対……友達にしてやるぞ、お前!
そう思ったのが、俺とルトの出会いだった。
その日、俺は家族にばれないように、大急ぎで連れて帰って――執事のベルナールには見つかってしまったけど――ベルナールと一緒に庭で育て始めた。
まだ5歳の妹エナにも、親――特に父さん――には秘密にするように念をおしてスライムの育成を手伝ってもらった。
平日は魔法学校に行き、休日になれば庭でエナとベルナールと遊ぶ。
朝はスライムに挨拶をしてから顔を洗って、夜は家族で話しながらくつろぐ。
ルトに名づけを行ったり、ルト、エナ、俺、ベルナール、ペットの鳥2匹の3人+3匹で虫取りに行ったり……。
なだらかな丘の上のこじんまりとした、だけど新しく綺麗な屋敷。
俺達はその屋敷で、贅沢では無くとも幸福な日常をおくっていた。
そう……おくっていた。
平穏な日常はつまらないと思う。
だけど、それ以上にあの安心感が堪らなく好きだった。
永遠にそうなのかと思っていたんだ。
あの日俺は初めて知った。
日常が……あんな短時間のうちに壊されるなんて……。
それから2年ほど経った日のことだった。
その日、俺の気分はいつになく高揚していた。
あのなんの役にも立たないと思っていた、お年の教授の講座が、スライムについてだったんだ。
初めて知ったことばっかりだった。
特に好物とか……。
帰ったら、ルトに新鮮な心持ちで接してみようかな。
何か面白い発見があるかもしれない。
俺は国歌を鼻歌で歌いながら、赤茶色の階段を上り、屋敷の門を抜けた。
この国の国歌はコミカルな感じで面白いから、俺はいいことがあったときはいつも歌う。
「ただいま、ルト。」
俺はルトに軽い挨拶をしてから、講座で聞いたことを思い出した。
たしか……この実だったかな?
庭の端に一つだけなっていたシャルの木の実を採って、ルトにおそるおそる差し出した。
「ルトゥゥゥ!!」
わ、こんな勢いで食べるルトは初めて見るよ。
俺は、少し驚いたけど、ルトが美味しく食べてくれたようでよかったと思いながらルトに暫しの別れの挨拶を告げて家に入った。
― ― ― ― ―
「帰ったよ!エナ、母さんただいま。」
あ、お兄ちゃんが帰ってきたみたいだ。
「おかえりっお兄ちゃん!」
「お帰りなさい、グラン。」
わたしとお母さんは、帰ってきたお兄ちゃんに顔を向けて、温かく出迎えた。
なんか、学校帰りの兄ちゃんが笑みを浮かべてるなんて、とっても不思議。
「ふふふっ、何かいいことでもあったのかしら、グラン。そんなに嬉しそうにして。」
お母さんも不思議に思ったっぽい。
話を聞くと、今日の講座が面白かった、って言ってた。
講座っていうのはよくわからないけど、お兄ちゃんが言うには"つまらないの代名詞"らしい。
そんなお兄ちゃんが楽しかったって、どういうこと?
お兄ちゃんは宿題をしに2階に上っていった。
それで、お母さんは夜ご飯の準備を始めちゃった……。
侍女さんに頼めばいいのに……。
わたしは何をしようかな。
今日は朝にしか行ってないし、ルトのところに行ってみようかな!
お母さんには、お庭で遊んでる、って言ったからばれないと思うし……!
― ― ― ― ―
宿題がなかなか思うように進まない。
今日の講座のことばかり考えてしまう。
下等な種族だけどペットとしては人気、かぁ。
俺が飼いたくなってしまったのも仕方ないな。
それにしても……。
そんなことを考えていたら、侍女のマグダレーナの、「お夕食が用意できたようで御座います。」という声が扉ごしに聞こえた。
「今行くよー。」
俺はそう言ってマグダを連れて下に行った。
楽しくて美味しい食事だった。
うちの食卓は賑やかなんだ。
ベルナール、マグダ達侍女3人と、父さん、母さん、エナ、それと俺。
大きな食卓を囲んで食べる。
食事の時には、執事や侍女も身分を忘れて、楽しく食べるようにしよう!父さんがいつかそう言ったのがずっと続いてる。
食べ終わったので、ベルナール達はそれぞれの仕事へと戻り、俺達家族はいつものようにリビングで談話をしていた。
「それで、スライムは個体によって鳴き方が違うんだって!……どこから音が出るんだろうね。」
俺も今日知った知識を披露していた。
エナは、父さんの膝の上に、母さんは父さんの向かいのソファーに、俺は母さんの隣に座っていた。
いつも通り、ふわふわのソファーがいい感じだな。
「ふむ、そうなのか……。知らなかった。」
父さんは魔法の研究をしているんだけど、動植物も好きなんだ。
庭の木も父さんが選んで植えたものが多い。
エナと母さんもへーって感じの顔をしながら頷いている。
「あ、わたし話すよ!今日はね、お母さんに本を読んでもらったの。」
エナが話し始めた。
「どんな本だったんだ?エナ。」
俺も聞こうとしたことを父さんが聞いた。
「えっと……。昔々に、小さな家があって――」
「待てっ!!!……。」
父さんの、太い眉が寄って、顔つきがいきなり厳しくなった。
魔法の気配に集中し、何かを感じとっているように見える。
「ティアラ……」
父さんは深刻な表情で、母さんに視線を投げかけた。
「ええ……。そのようね……。」
母さんは頷き、険しい顔で再び口を開いた。
「グラン、エナを連れて非常用脱出通路に入りなさい!」
え……どういうこと?
何があったんだ?
さっきまでは毎日と変わらなかったじゃないか……。
「どういうことだ!?なんで――」
「行くんだ!グラン!!!」
俺の困惑の一言を父さんは遮って俺達をせかした。
穏やかな父さんが……怒鳴った。
これはただ事ではないんだ……。
俺はやっと気付いた。
そして、立ち尽くすエナを抱えて、ソファーの脇の非常口の扉を開いた。
――ギギギィ……バタンッ
俺は扉を閉めて暗い通路の先を見つめ――。
――ガシャァァァン!!
突如、扉の奥からものすごい音が響いてきた。
「……アルノルト様、このゴミは私が処理します。」
――ドォォォン!
「……ガハッ……そう、簡単に……死ねるものか!!」
激しい音と、見慣れぬ男の声、父さんの苦し気な声。
俺は出口を目指し、四つん這いで必死に逃げ出した。
耳に届いたもの……それは、間違いであってほしい親の悲鳴、それに重なるように轟く衝撃音だった……。
◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆
「お兄ちゃん!森が見えてきたよ!」
「そうだな。深緑の綺麗な森だ……。」
あの日からもう3年が経ったのかあ……。
逃げ出した日は家の近くの林の茂みで夜を越したんだけど……。
次の日に町に下りていって、お母さんとお父さんが死んじゃった、って聞いたときはその意味が全然わかんなかった。
だけど、わたしとお兄ちゃんは、あんなことがもうないように強くなろうって決めたんだ。
あれから、いろんな国に行って、いろんな人と会ったなあ。
お兄ちゃんが、サグネでサーカスの人たちにすかうとされたときはとってもおもしろくて笑っちゃった。
すかうとが、一緒に行こう!っていう意味ってことはその時に知ったの。
いろんなことを知ったし……あと、わたしは個性?ってものが使えるようになったんだ!
今ではたくさんの精霊さんたちとお友達になった。
この旅で、お兄ちゃんも使えるようになったんだ、個性。
二人して個性を持ってるって凄いことだってお兄ちゃんが言ってた。
フランドル公国やデラ国も楽しかった!
それで、今はドチアネに向かうために通る森を見つけたところ。
― ― ― ― ―
森に入ってから一ヶ月。
出口の現れる気配すら無い。
俺達は、最初こそ手間取ったものの、個性や、鍛えた力を活かして、この生活にもなれてきたところだった。
今日も移動してるけど、全然終わりが見えなくて心が折れそう……。
今日ももう、日が暮れていた。
そんなときあの変なやつが現れたんだ。
出口じゃなくて、俺達の前にいきなり姿を現したのは、金色に近い銀色の、柔らかそうな毛を体中に生やして、必死に跳ねるスライムだった。
何だこのスライム!!
俺は心が弾んだ。
あれ、どこに行くんだ?
「エナ、追うぞ!」
俺はエナにも声をかけてスライムの後を追った。
うわ、何だろ、あれ。
俺達は近くに寄ってその泥の塊をよく見てみた。
……人?!
それが人だとわかった途端、なんかあの土塊が輝いて見えたんだ。
これが、俺の主なんだ!そんな意志がいきなり芽生えた。
出会ったばかりの人を、そう思うってのもおかしい話なんだけど、それはなんとエナも同じだったようで、どうにかこの人間を俺達の拠点までつれてかえろうとしてる。
俺は精一杯の力を振り絞ってテントまで運び、俺の布団に寝かせておいた。
照夢さんとどういう経緯で会ったか、それを照夢さんが目覚めた日の晩に話した。
照夢さんは転移者
これには驚いた。
俺は、これはチャンスとばかりに、知りたかった異世界の文化を聞きまくった。
次の日の朝には、俺達が照夢さんに忠誠を誓うことを承諾してもらえた。
深く考えてくれたようだけど、俺達は断ってもきっとついて行った。
それほどまでに、照夢さんからはそういうオーラが感じ取れたんだ。
そして、早速受けた指示に沿って今日はたんまりと魔獣を狩ってきた。
そろそろ照夢さんとエナも拠点に戻って来るはずである。
俺は夕飯を作りながら俺のペットというか相棒のロザンを撫でる。
本当に残念で、申し訳なかったけど、ルトは一緒に逃げることができなかった。
しかし、小さい頃から共に暮らしていた、炎鳥のロザンは、勝手に付いてきてくれたんだ。
ロザンの姉のリザーネはベルナールが世話をしていたけど、残念だがもう会えないだろう……。
俺はあの日のことを思いだし、悲しい気分になっていた。
「遅れてごめんな!グラン。」
お、我が主のお帰りだ。
「ただいま!お兄ちゃん!」
エナも元気そうでよかった。
二人はいつものように俺の料理をうまいうまいと言って食べてくれた。
セルナの粉がミソなんだ。
照夢さんが料理を教えてほしいと俺に相談されたので、セルナの作用とかも教えさせていただこう。
少し寂しかった一昨日の夕飯とはうって変わった食事だ。
賑やかなのは好きなんだ。
またあの頃を思い出す。
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次話は照夢視点に戻ります。