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ペット屋、ゆるりと世界を統治する  作者: 暁暗霞
第一章~樹林での冒険~
6/21

6.毛玉の名前は安直に

ブクマ登録してくれた方ありがとうございます!


5話の後編です。

唐突に前回の続きから始まるので、この話だけだと混乱する可能性があります。

引き続き、よければ評価をよろしくお願いします。




 何気なく顔と体を土に衝突させながら、さっきの昼ご飯のことを考える。

 乾かしているだけのはずなのに、とにかく美味かった。

 今度料理も習わせてもらおう。

 俺は立ち上がってまた歩きはじめる。

 

 俺たちは昼を食べ終わって、次の食物を探しているところだった。

 そのうち見つかるだろうと思って探しているのだが、いまだに見つからない。 


 「クルックルックルッ!!!」


 毛玉は、まだ腹が減っているのか、いきなり俺の耳元で鳴きはじめた。

 グルメはあれでは満足できない、そんなことを考えてるんじゃないだろうな毛玉くん。


 「クルルルルルルッ!」


 鼓膜が破壊されんばかりの音量である。

 流石に異常だ。

 まさか、お前進化の時がやってきたんじゃ。。。

 毛玉が緑色の光に包まれ……ることは別に無かった。

 そのかわりに、大きく跳ね始めたのだ。


 ――バホッ……ボホッ……


 おいおい待て。

 ウェイト!

 ストップ!

 車は急には止まれない。

 毛玉は止まる気冴えないようだ。

 毛玉が(定位置)から飛び降りて、弾みながら脇道にそれていく。

 エナも不思議がったが、これは着いていくべきである。

 俺の長年の勘がそう言っている。

 小5のころ、選択式を勘で全問正解した俺の勘を裏切るわけにはいかない。


 草木を書き分けて毛玉を追う。

 ――と、少し開けた場所に出た。


 ササァ――


 風が葉を撫でる音がよく聞こえる。


 目の前には、すらっとした木が構えていた。

 

 「クルルッ!クルルッ!」


 毛玉が木の下で飛び跳ねていた。

 その木を上まで見ようと顔を上げる。

 

 「……!!」


 俺は言葉を失った。

 端正な枝、その先端の一つひとつに、銀色の柔らかそうな毛で覆われた果物がなっていた。 

 それは俺の知っている"あいつ"に酷似していた。

 

 「クルルルル?」


 どうやら、"あいつ(毛玉)"は兄弟()を採ってほしいようである。

 俺は背伸びして、柔らかな毛の生えた果実をつかみ取った。

 大きさは毛玉の半分ほどで、俺の片手に収まるほどの大きさだった。

 並べてみると、毛玉の方が金色に近いことと、大きさくらいの違いしか無いほどよく似ている。

 

 「とっても綺麗です……!このシャルの木……。こんな実がなるんですね!」


 エナが心を打たれているようだ。

 確かに、銀色に輝く実のついた、しなやかなこの木は、上品さを醸し出している。

 (オレンジ)の陽光を反射し、神秘的なオーラを(まと)っていた。

 

 「シャルの木というのか……!よく知ってたな。」


 「あ、それは、兄がスライム好きなので、シャルがスライムの好む実だということを教えてもらったことがあったんです!」


 なるほど。

 毛玉が異様な食いつきはこのせいだったのか。


 それにしても、なんという好機到来!

 俺のやるべきリストの仕事を、一つ消すチャンスではないか。

 拠点集合の予定時刻が迫っているので、さっさと名付けなければなるまい。

 あのグランなら、遅れても起こることはないだろうが、ここらでグランの信頼を得ておかないと、あの"忠誠"なんて消え去ってしまうかもしれない。

 

 しかし、まずはシャルの実の採集である。

 今日の目的は"食糧を蓄えるために狩る、採る"であって、ペットに名前を付けることではない。

 この高さなら、なんとか木に登れそうだし、エナの尊敬の念を俺に向けさせるいいチャンスでもある。





  ◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆





 採りつくした。

 この細い綺麗な木に銀色の実はもう一つも無い。

 エナは少し寂し気な表情をしていた。


 来年のこのシャルの発芽は絶望的だが俺の知ったことではない。

 まあ優しい俺なので、食べ終わったら採ったシャルの実の種はどこかに植えるとしよう。


 シャルの実を格納でまとめて収納し、エナと労いの言葉を掛け合った。



 「毛玉、お前に名をつけてやろう!」


 へとへとになりながらも俺は、シャルを食い終わった毛玉に言う。

 毛玉は細かいジャンプを繰り返し、期待を体で表現していた。

 人の言葉は一応理解できるのだろうか。

 エナも、ワクワクした表情でこちらをみている。


 あたりは段々と暗くなってきていた。

 俺は少し間をとり口を開く。


 「お前の名……それは……"シャルル"だ!」


 ――ん?シャルの実が好きだからシャルルだが?

 ひねりなんてものは知らない。

 安直だからこそのよさってものもあるのだ。

 

 ――≪【超能力(ウルトラスキル) 魔獣生成(カイブツヅクリ)】での試作品1への名付けを行いました。これによって"シャルル"の状態(ステータス)の確認や、その魔獣との思念伝達ができるようになりました。≫――


 思念伝達できるのか、すごい!


 「シャルル、これからもよろしくな!」


 光る汗と共に、俺は最高に格好をつける。


 「クルルルッ」


 シャルルが俺のもとへと飛び込んできた。

 友を新たな仲間として向かい入れた、そんな感動的な瞬間である。

 

 ――ずしっ。

 

 うげ……。


 重力め……。

 素敵な友情を汚しやがって。


 とにかく、シャルルには定位置に戻って軽くなってもらい、俺たちは来た道を戻り、拠点へと歩を進めた。


 

 移動中、思念を伝達させることを試したのだが失敗だった。

 まあ、それで良かった。

 愛玩動物(シャルル)が意思を持っているのは、違和感を覚えてしまう。

 俺でさえ意思を持ってるのはぎりぎりなんだからな……。

 なんて。

 俺もそこまで落ちぶれはいないはずだ。

 

 それともう一つ、シャルルの鑑定も行ってみた。

 下等生物なのに、俺には分からないような、微妙な味の区別がついたり、重さを操作したりすることができるようになりやがっていた。

 ちょっと悔しい。


 ―――――――――――――――――――――


 《名前》シャルル

 《称号》"跳ねる自動首こり機"

  性別:-

  種族:-

  職業:愛玩動物(ペット)


 (能力(スキル))

  高能力(ハイスキル)軽重操作(ジユウナオモサ)

  通常能力(スキル)柔毛(ウィークファル)美味好み(グルメ)


 (状態(ステータス)

  体力(ヒットポイント):300

  魔素貯蔵(タンク)(1)現在:1000/1000

  魔素吸引(ポンプ)(1)効率:0.08/1秒


 ―――――――――――――――――――――


 称号はね、俺が悪かったよ。

 自尊心なんてないんでしょ?シャルル君。

 というわけで頑張ってもらおう。

 理不尽なんて言葉、俺の辞書には無い。

 

 タンクやポンプは、俺と大差がない。

 俺の中で少し、シャルルの評価が上がった。

 いや、俺の評価が下がったのか?


 まあいいや、ということにして俺は久しぶりに自分のステータスも見てみた。

 確認してなかったこの一日になんらかのステータスアップがあったことを望んで……。


 ―――――――――――――――――――――


 《名前》テルム マツカワ

 《称号》"失望ト希望ヲ与エシ者"

  性別:男

  種族:人

  職業:人


 (能力(スキル))

  超能力(ウルトラスキル)魔獣生成(カイブツヅクリ)

  高能力(ハイスキル)鑑定Ⅱ(シナサダメ)格納操作Ⅱ(アイテムボックス)

  通常能力(スキル)状態通知(ステータステル)話題操作(ナンノハナシ) [NEW]


 (状態(ステータス)

  体力(ヒットポイント):3300

  魔素貯蔵(タンク)(4)現在:3250/3300

  魔素吸引(ポンプ)(2)効率:0.16/1秒


 ―――――――――――――――――――――


 なんと……。

 俺の幼なじみの"失望ヲ与エシ者"が、栄光の光を浴びたような称号に代わってしまった。

 共にじめじめとした道を歩んできた仲間だったのに……。

 おそらくは、グランとエナに発見されたときに、2人に希望を与えたことによるものだろう。


 それ以外は、話題操作(ナンノハナシ)以外は特に変更もなく……。

 なんてさらさらと上から読み流していた俺は、あることに気付いた。

 以前、タンクとポンプが今のレベルと同じときにステータスを確認したのだが、そのときの値より、明らかに数値が高くなっているのだ。

 俺の成長?なんて思ったが、これまでのレベルの上がり方から見て、レベルがそのままで数値だけが上がる、ということはなかった。


 不可解だが退化をしていないことに安心した俺は、久しぶりに大地と心を通わせる――という名目の転倒――。

 

 ――ドベチャ


 ぴかり、頭がぬかるみに没した瞬間俺の脳は覚醒した。

 

 俺の脳のちょっとした無双が続く。

 (

  先ほどのシャルルの体力は300、魔素最大容量は1000だった。……①

  また、先日までの俺は、体力は3000、魔素最大容量は2300だった。……②

  そして今の俺は、体力は3300、魔素最大容量は3300なのである。……③


  ①+②=③より、単純な足し算から、これはxを証明できます。

 

   ――華麗なる証明を自分自身に披露して、俺は満足げに頷き、続きを考える。


  そのxに当てはまるのは、ズバリ『シャルルの体力と魔素最大容量が俺にプラスされている』でしょう!

 )

 

 俺は、自分で証明しながら、考え出した結果に驚く。

 本当にそうなのだったら魔獣生成、神能力(スキル)なんじゃ……!


 俺は、一人で鼻息を荒くして興奮した。

 もしかしたら、これがレベルアップしたら、シャルルの能力(スキル)まで?、、。


 ぐふふ。ぐふふふふ。


 俺の期待は膨らむばかりである。

 "それは期待ではなく、欲望だ"

 そんな声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。


 

 そうして俺はほくほく顔――焼き芋じゃないが――で、闇の中に沈んだ影とエナを引き連れ、薄暗い中拠点へと戻ったのである。

アドバイスや感想待ってます!

些細なことでもとても参考になるのでお願いします。


次話は、グラン視点での過去のお話になります。

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