3.幸運な主人公は有能なお供を手に入れたとさ
投稿時間、1時間過ぎてしまいました。これではいけないので次話からは気をつけます。
今回は能力さん、出番がありません。。
評価をお願いします!!
――どすっ。
鈍い音とともに、俺は脇からでてきた黒蛇を軽く叩きのめす。
――はい。
ごめんなさい。
嘘を言いました。
先ほどの鈍い音、あれは俺が、ぬかるみでつまづいて倒れた音である。
誠実な俺は、告白を恥じることなくいう堂々という。
そんなダサい人物は泥だらけで、食料を探し森を絶賛さまよい中だった。
泥でコーティングされた俺の姿は、ある種の魔獣にも見えそうだ。
これもある種の魔獣生成じゃね?すごくね?あひっ。あひひひ。
俺は壊れかけている。
そう客観的に見て、ようやく自我が保てている俺であった。
食料を探し始めてから俺は、何度も何度も転倒している。
その転倒の回数に比例して、元の世界の唯一の形見である俺の服はみるみると汚れていった。
片足だけ丈を短くしてあるジーンズと、苔色の水玉のシャツは、俺のファッションの集大成といえるものだっただけに残念でならない。
元の世界では、なぜかこのファッションの理解者を見つけられなかったのだが、ここでは見つかるかもしない。
――どちゃ。
そんなことを、ぼんやりと思いながらまた転ぶ。
しかし、それはこの世界で人を見つけてから言うセリフであった。
あ、そのセリフさえも、生き延びてから言うセリフだった。
俺の精神が飛びそうだ。
発射の、カウントダウンが今にも開始する……。
そんな俺を、現実につなぎとめてくれている毛玉にはあとで感謝しなければならない。
こいつにはどういう名前が似合うだろう。
けだまん、けだまのすけ、ケダマ1世、もふりぬす、モフ・ケダマ、もふりん、一もふ郎、二もふ郎……。
「クルルッ。クルルッ……。」
俺は手に抱いている毛玉をぼーっと見ながらまともな思考を再開しようとする。
なんたっておれーはー、じょーじれいせーだからなー、はっははー。
――どちゃ。
もはや10歩ごとの恒例行事となっている転倒だが、今までは起き上がることができた。
今までは。
もう本当に死ぬのかもしれない。
先ほど転んでから、まったく起き上がれそうな気配がない。
あ、あんなところに川がある!
まるで三途の川みたいな雰囲気なので興味がわく。
わあ、体もとっても軽いなぁ。
どうやら、反対岸まで舟を出してくれるらしい。
なんて優しいんだ!
あれ、眠いなぁ……。
…………。
◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆ ― ◆
「んがっ。」
……あれ、ここは?
俺は上体を起こした。
周りがまぶしい。
目が慣れて周りを見てみるとどうやら俺は簡易布団のようなものに寝ていたらしい。
横にはもう一つ布団があり、部屋にはそれだけしか置かれていない。
低い天井からはランプがぶら下がっているが、それでも十分に光で満たされるほどの、狭い部屋だった。
壁にはファスナーがあり……。
ようやくわかったが、どうやらここはテントの中のようだ。
状況を整理して、今の状況になった理由を推測してみよう。
推測と言ってはみたものの、しょせん俺の能力じゃ予想程度にしかならないだろう。
それでもいい。
混乱している頭を正常にするには、情報を整理することが大事だと思う。
俺は手元の毛玉をなでながら……。
「……!」
俺の手は、手元の空気中を泳いでいた。
毛玉がいない。
なぜだ?あれは夢?
――ジジジジジィ……
突如、なにも無かったところにいきなり出入り口が出現した。
――まあ、テントなのだからファスナーを開ければ出入り口は現れるのだが。
そのファスナーが、外から開けられたのである。
テントの内側には……に、人間の首を抱えた人影が映っている。
俺は身の危険を察知して立ち上がり、身構えた。
そいつが顔をのぞかせる。
俺はそれと同時にこぶしを握り締めて――。
「あっ!お目覚めですか!?」
「クルクルルルッ!」
「……ふぁふぇ?」
マツカワテルムは倒れた!
力が抜けて、布団の上にへなへなと座り込んだのである。
――目の前の、テントの出入り口からは、毛玉を抱えた幼い少女の顔がのぞいていた。
年は9歳、10歳といったところだろうか。
絹のような光沢の、透き通ったパステルブルーの髪がランプの光を優しく反射している。
髪の色より濃い、海のような瞳を大きくさせて、俺を見つめている。
俺がいきなり倒れたことに驚いたのだろう。
驚かせてしまったのは悪いが、俺だってこの状況は驚きなのだから仕方ない。
そんなに見つめられて――しかも結構かわいい子に――俺は内心照れそうだったが、ジェントルマンでクールな俺は落ち着いて問う。
「初めまして。君の名前は松河照夢。俺は誰……」
あっ、、。
女の子は困惑を隠せない様子だった。
俺は何事もなかったかのように、再度問う。
「は、初めまして。俺の名前は松河照夢。君は誰かな?」
「あ……、はい。お初にお目にかかります、エナと申します!」
年に似合わず、丁寧な口調だったが、明るい子のようだ。
エナは中に入り、ファスナーを閉めた。
「クルッ!」
笑顔で――もちろん顔はないのだが――毛玉が俺のもとにジャンプして戻ってきた。
もふもふ感は健在である。
俺の能力を一つ食わせてあげたのだから、期間限定のもふもふ感は許さぬ。
「元気だったかー?」
毛玉をなでて、安否を一応聞いてみる。
食料を求め、ともに森をさまよった仲間だ。
不名誉な仲間だな!そんな突っ込みは聞こえない。
「仲がよろしいようですね!」
「まあ、な。」
こいつの感情はよく分からないため、俺からの一方通行な友情かもしれない。
なので、俺は答えをぼかしたが、この毛玉は俺への好意はもってくれているだろう。
「そういえば、森の中で、照夢さんが倒れている場所を教えてくれたのもこの子なんですよ!教えてくれなかったら照夢さんに気付かないところでした。」
えらいえらい、そう言ってエナは、跳ねていた毛玉を褒めた。
「毛玉には世話になってしまったな。エナも。今頃だけど、助けてくれてありがとう。……そういえば、エナは一人なのか?」
俺の思い身体を、小さな少女が持ち上げられるとは思えなかったのだ。
それとも、なにかしらの能力を使ったのだろうか。
「いえ、今は兄と共に旅をしているところです!だけど……この森で迷ってしまって。。。水と、果物の木が近くにあるここに、しばらくとまっていたんです。」
「エナのお兄さんは今どこに?」
「私たちのために、魔獣を狩りに行っています!兄は多種多様な魔法は使えるので、狩りも得意なんです。」
エナは得意げに言った。
なにその兄っ!
頼もしすぎるだろ。
(おそらく)年下に憧れそうになった。
魔法は今度ぜひ学びたいものだ。
能力との違いはなんだろうか?
それにしても、兄妹で二人旅なんて、しっかりしている。
俺がそのくらいの年のときは、一人で自分の部屋の横のトイレに行くのも怖かったぞ。
俺はエナを、布団に座るよう勧めて、自分も腰を下ろした。
――なぜか自分のもののように言ってしまい、怒りを買うかと思ったが、エナは気にしていないようでよかった。
あの頃は臆病だった。
名前や混じった金髪と、本体の出来の差を周りから残念そうな目で見られ、すべての人に対しビクビクしていたものだ。
そんな俺の心を支えたのが、母親と買って、飼った犬のシロである。
それがもとになり、ペットショップを作り、ある日なんか異世界に飛んでいた。
そんな話をエナにしてみた。
最後のほう、説明の密度が濃くなった気もしたが、エナはちゃんと聞いてくれた。
話し終わってから気付いたのだが、ペットショップや犬という言葉が通じていたのが驚きだった。
それ以前に、俺の言葉が通じるということが不思議である。
そのことについて聞いたところ、異世界からの転移者はまれにいるようで、その世界の文化や技術、知識などは、貴重な情報として記録され、世間に公表されているということである。
実用化されているものも多いそうである。
言語については、この世界では意思の力が大きく働くために、違う言葉であっても意思の疎通は可能ということだった。
能力の発動を念じるだけで出来るのも、これが関係しているようだ。
あと、エナに指摘されたのだが、異世界人は珍しがられて、自由に行動しにくいらしい。
考えてみればそうなので、俺の経歴として偽のものを作っておく必要があるかもしれない。
「ドラゴンの子として生まれ、魔王に育てられて世界を支配するために特殊な訓練を受けてきたよ!」
迂闊にこんなことを言いかねないので、聞かれてもすぐに答えられるようなものがいいだろう。
俺のやるべきことのリストに、毛玉の名前付け以外に、偽の経歴づくりが加えられた。
俺はテントの中で、この世界のことについてエナと話し込んで――俺からの質問攻め――いた。
――ジジジジジィ
オレンジ色の光が、開いたファスナーを通ってテントの中に差し込んでくる。
「おっ!眠りから覚めましたか!……あ、エナ。ここにいたのか。」
「お兄ちゃんおかえり!あ、照夢さん。こちらが私の兄のグランです。」
ゆ、夕やけをバックに爽やかな美形……だと……!?。
究極の技を決められた俺は、悪くはないと思っていた自分の顔を隠さずにはいられなくなりそうだった。
エナよりも深い青髪に、マリンブルーの瞳、鍛えられて締まった肉体。
この兄妹の親を見てみたいものだ。
どれだけ美形なんだろうか、特にお母様にお会いしたいぜ。。。
そ、そんなことは、考えていないから安心してほしい。
冷静さを欠くところであった。
兄のグランは、俺より3つほど下の年齢で、趣味はスライム観察だという。
ひとしきり、挨拶と身の上話――特に俺が異世界から来たこと――を語ると、なぜかグランは納得したようにうなずいていたが、エナと同じように話をしっかりと聞いてくれた。
このルックスに、この性格とは俺をも負かしそうな魅力をもったやつである。
――俺の魅力?魅力ってのは自分でいうようなものじゃないからな、うん。
俺は一通り話し、布団の中で座りなおした。
気に入らぬことでもあったのか、グランは何か言いたそうな顔をしている。
エナは、言っちゃいなよ、という感じの顔でグランに視線を送っている。
人の気持ちも察せないような人間ではない俺は聞く。
「どうしたんだ、グラン?気になることでもあるのか?」
「い、いえ……実は。あの……行動を共にさせてもらうことって可能ですか?」
ん?
つまりは、俺と一緒に旅をしたいってことなのか?
いや、魔獣を軽く倒せるハンサムが、魔獣の夕飯である平たい顔に付き添いたいわけがない。
何かの罰ゲームで、一番哀れな人間を連れてくる、みたいなやつがあったり?……。
とにかく、俺はよく事情を聞いてみることにした。
2人が言ったことを、まとめるとこうなるだろう。
はっきりとした宛てがあるわけでもなく、エナとグランは旅をしていた。
その途中、迷い込んだ森の中で心が折れかけていたとき、グランが興味深いスライムを発見したらしい。
これは運命だ!そう思った二人が跳ねるスライムの後についていくと、泥人形が落ちていたので、介抱したというわけらしい。
ちなみに、そのときの俺は神々しいオーラを放っていたとか。
直感的に2人は、俺に忠誠を誓うべきだと感じたということである。
話を聞いて、2人がやけに丁寧な口調だった訳が分かったが。
それにしても。
それにしても、君達、そんなに自分の人生を軽く見ちゃって大丈夫か?
そう、聞いたところ
「この考えは本気です!じっくりと考えた結果なんです。」
と、2人揃って言われてしまった。
少し時間を欲しい、それが俺の返事だった。
まだ、『忠誠を誓う』の意味がよく理解できていないし、若き2人の人生がかかっているのだから悩まずには答えは出せない。
そう伝えると、2人も納得し、こちらの思いを分かってくれたようだった。
時間も時間なので、夕食を取ることになった。
話し合いにより、作る時間があまり無いので、簡単な食事ということだったが、グランの料理はそれでも満足できるものだった。
何の魔獣の肉か、それは考えずに夢中になって口に食べ物を運ぶ。
新鮮な出来事ばかりで、空腹を忘れていたが、そういえばこの世界に転移してから何も――紫ぜんまいは除く――食べていなかった。
絶妙な、スパイス加減、火加減で調理されたステーキ、高山植物のサラダのようなものと、何かの穀物、それとデザートの果実であった。
簡単な食事といえども、森で自給した食事といえども、俺の毎日のコンビニ食事よりも断然おいしくてなんか少し悔しいくらいだった。
毛玉も、先ほどまではエナとグランのペット?の紅く燃える鳥と遊んでいたが、今は大急ぎでサラダを掻き込んでいる。
どんなものでも捕食できると思うのだが、スライムでもやはりうまいものはうまいらしい。
調理といえば、グランの炎の魔法はすごかった。
何かをぶつぶつ言っているかと思うと、目の前にはチロチロと踊る炎が現れていた。
ぜひとも習いたいものである。
全ての男子の夢である、炎の操作、これを果たせるかもしれない。
満腹になるまで、胃に食べ物を供給し、片付けを軽く済ませ、俺達は幸福状態でテントの中に横になっていた。
遠慮はしたのだが、どうしてもというので俺はグランの布団に寝かせてもらっている。
俺がさっき寝ていたところだ。
グランはどこまでも感心なやつである。
自身は、毛布で作った布団で横になるグランと、年下の布団で堂々と寝る俺を、俺は比べたくない。
俺の心の醜さが、浮き出るだけだからだ。
せっかくの好意だし、うけとったが少し悪い気がしている。
――スーッ、スーッ
俺達2人の間で、エナはもう寝てしまったようである。
寝顔がとても可愛い。
そんなエナを温かく見つめながら俺とグランは、この先のことなどについて、話すことにした。
何事にも、計画は必要である。
明日の朝には、この兄妹へ、返事をしなければならない。
果たしてどうしようか。
――ウォーーン――
遠くで遠吠えが聞こえる。
テントの中のランプは、闇から俺達を守るように明るく光を発している。
アドバイスや感想、評価ぜひ待ってます!ちょっとした点でも構いません。
さて次回は、照夢さんたち、森から抜けられるでしょうか。