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ペット屋、ゆるりと世界を統治する  作者: 暁暗霞
第一章~樹林での冒険~
1/21

1.目を閉じたら転移したらしい

新しいアカウントでの初の作品です。このジャンルは書いたことがないので、文章表現、ストーリー、インパクト、まだまだどれも足りてないと思います。アドバイスや感想、どんなものでもいいのでお願いします!どんな意見でも参考にするつもりです!

 「これはっっ!……」



 俺の心から漏れ出た感嘆の声。

 別に、敵が想像を絶する陣形をとったのではなく、宇宙の真理を解き明かす公式を求めたのでもない。

 かといって、研究室で油揚げが生命活動をするような大発見をしたわけでもなく、ただ俺、松河 照夢(まつかわ てるむ)は目の前の犬の、毛皮の触り心地の良さを満喫していた。



 すごいぞっ。。。これはっ……気持ちいいっ!


 「Oh KEGAWA!...KEGAWA! Why are you KEGAWAっ?」


 無駄に英語で毛皮への愛を表現しつつ、新たに入荷したトイプードルと、なんとかっていう犬の掛け合わせのフロウ――入荷した瞬間、俺が勝手に付けた――の体に頬をこすりつけまくる。


 俺は、ちょっとしたペットショップをやっている中肉中背族(ふつう)だ。

 売り上げはあんまり考えず、動物たちをできるだけ自由にさせるこのスタイルは、意外に通に人気がある。

 通とはいっても、動物にはあまり詳しくはない人たちがよくこの店に訪れる。

 そのかわり、ここに来るのはだいたい、動物の触り心地を心の安らぎとする人たちである。

 『もふもふショップ』なんて、名前を軽くつけすぎたと若干後悔していたけれど、同じ趣向の人と知り合うことができるので今では、案外気に入っている。


 そう、名前といえばうちの親だ。

照夢(てるむ)、この名前は個性を光らせている。だがしかし、名前だけで周りから好奇の視線を集める。

 黒い前髪に一筋入った金色の髪も、それに加担した。

 いや、それ自体は悪いことではないのだけど、あいにく俺は平凡のやや下を歩いてきたし、そのうえ特技皆無(nothing)人間なのだ。

 名前で期待されて、本体にがっくり。

 褒められたいというわけでもないが、名前とのギャップごときでここまで失望されると悲しくなる。

 しかし、俺は幸運なことに、もちまえの中二魂を奮い立たせて、自分を"失望ヲ与エシモノ"だと思うことでなんとか生きてきた。


 そんな俺でも、好きなことぐらいはあった。

 それが今の仕事にも、つながってきている。

 それは、動物と触れ合うことである。

 子供のころに母親と拾って育てたシロを思い出す。

 今思えば、そんなにもふもふ(・・・・)していたわけでもなかったが、あんなに触り心地の良いものと初めて出会った感激は忘れられない。


 そこから、適当に好きでもない学業を修めてやり、適当にショップを開いて、今ももふ(・・)っていたわけである。

 我ながら、何という大きなことをすることもせず、この23年間何をしていたのかは疑問だが、適度に動物と触れ合い、自分にがっくりする人間を見て、優しくクールビュティーに育ってきたというわけである。

 


 「照さん?……どうしたんかい」


 おっと。

 自分の世界に行ってしまったていたようである。


 惚れる要素の無い自分に、陶酔していた俺に声をかけたのは、ときどきここにくる柳原のおっちゃんだった。

 いつもの赤い顔が、俺の顔を覗き込んできた。


 「あぁっ!……何かごようでしょうか?」


 おっさんと恋はしたくないので、慌てておっちゃんの顔から自分の顔とフロウを遠ざける。

 フロウには、そんな趣味を持ってほしくない。


 「いやぁ、あんたがぼーっとしてるもんでなぁ。大丈夫かい?疲れてるんじゃないのか?」


 心配そうな顔を、柳原のおっちゃんが浮かべている。

 

「うーん、、この頃寝不足なのでそのせいかもしれません……。」


 今日も夜の10時を過ぎた、良い子のお眠りタイムまで店を開いている。

 良い子では無い俺は、ぼんやりする頭を正常に戻すべく、目をこすって眠気を覚まそうとした。


――……ァンデヤビルスゲゥ……ドミズグアニィ……――


 あれ、本気でやばいかもしれない。

 まさか、幻聴まで聞こえてくるとは、昨日も遅くまで左足タイピングを練習してるんじゃなかった……。

 仕事――動物と戯れているところに時々来る客の相手をする――にも支障が出るし、これからは気を付けて、左"手"タイピングの練習にでもしないとな。

 俺は、反省といえないような反省をしっかりと心に刻み、眠い目を開けた。



 え……?

 

 やっぱ俺は相当寝不足の呪いにかかっているらしい。

 しかしなぁ、幻覚・幻聴だけでなく幻嗅まで感じさせるとは、寝不足、御主なかなかやるではないか。

 いや、しかしリアルすぎないか?

 俺は周りを見渡す。

 鬱蒼(うっそう)とした壺のような形の木々?が生い茂り、木の根本には水溜まりができている。

 まだ、春が始まった頃で、柳原のおっちゃんと話していたときまでは、涼しかった。

 額に浮いた汗を拭って、これは流石に寝不足の呪いではないのだと気づいた。

 そして何よりも、さっきまでかかえていたフロウが手元にいないことが異様である。

 それは、アルコールのようなここに漂う匂いからも分かることであったが、俺にはここがどこなのかが全くわからない。

 上を見上げても日差しはなく、ただ木の葉?がこの空間を覆っているだけだった。

 そもそも、ここに太陽はあるのか?

 そんな疑問はどんどん出てくるのだが、一番重要であるのは状況を整理することである。

 俺はなにしろ、いつ何時でも冷静な男だからな!……。

 いや、別にこの汗は暑いだけだし、焦ってるわ、わけないしな。

 

 さて、俺は先ほどまで職場で客とたわいもない話をしていた。

 次に、目を閉じた。

 開いた。

 こうなっていた。


 えーっと……。


 ……ここから何かが分かるなんて思ってた自分が悪かった。 

 俺は、幾度となく他人にさせてきた失望を、自分で味わうことになった。

 "失望ヲ与エシ者"の名は伊達ではない。

 が、考えられるパターンはいくつかある。


 一つは、睡魔に誘われ、夢世界(ドリームワールド)に旅だったパターン。

 もう一つは、いきなり異世界に転移したパターン。 


 現実的に考えると、いや、考える必要もなく前者なのだけど、俺は裏をかくのが、大好きである。

 ここで裏をかく必要性があったのかは別として、俺は立てた理論を証明してみることにした。

 


 あれから、かれこれ10分は唱えた。

 何をかって?

 呪文に決まってるじゃないか。 

 その成果は、聞かないのが優しさっていうものである。

 俺は、足に絡んでいるぜんまいのような紫の植物も、時折聞こえる何かの咆哮も、この蒸し暑ささえも我慢して唱えつづけたのだ。

 しかし、こうなってしまった――というべきか、さっきから何も変化していないというべきか――とにかく、俺の完璧だったはずの検証実験は失敗だった。

 だが、分かったことはある。

 今は使用できない魔法だったのかもしれないので、ここが異世界であるという可能性は捨てきれない。

 また、夢ならば自分の思ったように事が進むため、発動するはずだ。


 つまり、ここは異世界である!



 操作のできない夢もあることは、このときの俺は忘れていたが、結果的にはここが異世界であるということは、正しかった。 それは、ダメもとで、あることを試すことによって、証明された。



 (ステータス!)


 俺は念じてみた。

 ……何も起こらない。

 じゃあ、ここは異世界でもないのか?

 と、すると、この精神は……

 俺は冷静な分析を始め――ようとした俺は息をのむ。


 頭脳?精神?の中に"ステータス"を感じたのだ!


 体の中のエネルギーが少し少なくなった気がしたがそれはどうでもいい。

 ここが異世界であるという、確信を持つ前に俺はまず"ステータス"を確認してみた。


―――――――――――――――――――――


《名前》テルム マツカワ

《称号》"失望ヲ与エシ者"

 性別:男

 種族:人

 職業:人


(能力(スキル))

 超能力(ウルトラスキル)魔獣生成(カイブツヅクリ)

 高能力(ハイスキル)鑑定(シナサダメ)格納操作(アイテムボックス)

 通常能力(スキル)柔毛(ウィークファル)

 

―――――――――――――――――――――


 見たところ、よくビデオゲームで見るような"ステータス"と大きな違いは無いことに気づく。

 しかし、ツッコミどころはゲームより多いかもしれない。

 だいたい、称号って俺の自称でしかないし、'職業:人'とか訳がわからないぞ?

 まあ、俺はクヨクヨ悩むような性格を有していないので、そのことを考えるのをやめて、違うことを考えることにした。

 能力(スキル)を試すのは後でのお楽しみとしておこう。

 わくわく……。

 俺は超クールではあるが、かといって好奇心がない訳ではない。

 むしろ、昔から、率先して面白いことに飛び込むタイプだった。

 それによって、後悔したこともあったがやはりこの胸の高まりだけは止められない。


 ――おっと、違うことを考えることにしたのだった。



 考えなくてはいけないことがあった。

 それは、この世界での最終目標をどうするかということだ。

 俺は、膝たけほどもある、紫ぜんまいをかき分け、少し湿った地面に腰を下ろした。

 まず、この世界からの帰還は可能なのかということ。

 可能だったら、もちろん帰りたい、というのが俺の思いなのだが、この世界を一通り楽しみたい、という気持ちもある。

 例え、帰れたところで、時間の流れが違ったら浦島二郎になってしまうが――あれ、太郎の次だし一郎でもいいのか?――そんなことにはなりたくない。

 その反対もありえる訳で、老人になるまでここにいて、ようやく帰ったら柳原のおっちゃんの目の前に戻るのも避けたい。

  


 俺は、いろいろ考えた挙げ句、考えをひとつにまとめた。

 

『この世界を楽しみつつ、帰る方法をさがし、見つかったらいつでも帰れるようにしておき、異世界をそれなりに楽しんだら帰る』


 これで行こう。


 適当な部分もある気がするがそこは置いておいて、とにかく重要なことが決まったので一安心である。



 さて、いよいよ能力(スキル)確認である。

 期待が体中から湧き出そうだ!

 ふふふふふ。


 

思ったより、長くなってしまいました。おそらく次話からは短くなると思います。

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