全てにおける序章というか(仮)その1?
見切り発車もいいところ。御目汚しにならないことを祈ってみる。
朝靄の中に不気味にそびえ立つ黒。
それが我が職場たる今のところこの町唯一の駅舎である。
見た目おどろおどろしい城だけど。
所々に置かれた小悪魔?の像とか、リアルに描かれた内壁のヒビとか、外観のあちこちにある妙な尖りとか、無駄に凸凹してる外壁とか。
この案をすんなり通したお偉いさん。どんな鼻薬かがされたんです?
ありえないくらいの酩酊状態だとか高熱で三日三晩のその瞬間とかですか?
素面でなんてありえないレベルですよ。
展望台はいいとして、それより上の登れない塔とか、でーんと鎮座する巨大な彫像。
魔王ならまだしも、なんだかよくわからないおっさんの像はいらない。本当にいらない。
外観だけでもツッコミどころ満載だけど、それはまぁこのくらいにしておくとして、
毎日勤務する私たち職員にとって辛いのは職場環境。
城の土手っ腹ぶち抜いて線路を敷き改札は見晴らしがすこぶる良い上層、なのに駅長室や職員のロッカーが何故か地下。
一階でも良くないですか?地上通り越して何故地下!?
ランダムで消える機能付きの電灯の何が楽しいんですか!不意に壁から玩具とはいえ槍やら棘やらが飛び出てくる仕掛けなんていりませんよね?
お客様が全く訪れない場所まで悪魔城チックにする必要性はまったくありませんよね?
もちろん、今まで改装まではいかなくとも改善要求は何度も出されたそうです。が、すべて却下。
理由は簡単。
予算がない。
世知辛い。ああ世知辛い。
開業当時は相当集客があったそうですよ。ボーナス出ちゃうくらいには盛況だったそうで。
しかし1年も経たない内に閑古鳥。赤字が嵩むのなんの。
それでも潰れなかったのはオーナーの財力の賜物だったりします。
そのオーナーの財力で改修という話も当然上がりましたが、改修話はオーナーまで上げないという上層部の歪んだ気遣いが発動されておりました。
デザイナーと懇意とかよくある話ですよね。
おっさん像のアイデアがオーナーってのもよくある話です。言い切りますよ。
そのオーナーが昨年他界。
新オーナーの意向で再来年廃線とあっさり切り捨てと相成りました。ドンドンパフパフ~
新駅開業なのです。開業しちゃうんです。だから採算取れる見込みのない駅はバッサリなのです。
この城の真正面にとっても近代的なビルが建設途中なのですが、その地上1階と地下部分が駅になる予定らしいですよ。
就職先あっちの会社にしたかったなと、ホント、急いては事を仕損じるですよ。
あっちの会社の締め切り日を1か月間違えて諦めちゃったとかそんな・・・自業自得とはいえ今ひしひしと染み出す悔しさ。
この会社には面接担当だった前オーナーのほんわか具合が気に入ったので入社した、ので、
オーナー変わっちゃったら途端に後悔が寄せては返すわけですよ。会社に愛はありません。
手段に愛など注げない捧げない主義なんです。今のオーナーなんだか怪しいし。
ああでも、廃線と思うとなんだか・・・・・・・・・・・・・
・・・・。
すいません、嬉しさしか込み上げてこなかった!
2年と言わず今すぐ廃線でもいいのにー
ブツブツ文句を言いながらも日課の清掃をこなす私ことシェルト・シー。
悲しいかな当ドクールドクルー駅の駅長です。
正社員が私だけ、そんな理由で押し付けられただけですけどね。
先輩方の笑顔に人生で最も恐怖を感じた事は一生忘れない。女子の群ちょーこわい。
まぁ・・、駅長の制服だけなんだかとっても格好いいので引き受けたんですけどね。
これは先輩たちには秘密です。墓場まで持っていく話ってやつです。
制服のデザイン、簡単に一言で説明すると執事、ですね。
帽子がなければ。
駅長以外は帽子以外が全職共通でいわゆる作業着。
お偉方が来訪時に全員で整列すると私、浮きまくりボンバーです。
浮きすぎて認識されないという・・・ちょっと泣いてきます。