第二部―第一章『ウィー・カム・トゥ・ザ・ユナイテッド・ステイツ』
流輝とミリアが『イカン』に帰って来たとき、いやな予感は既にしていた。
なぜなら、まず、迎えの車が遅れてきたこと、黒服の男から疲れた顔をしていたこと、最後に『イカン』にものすごい活気があふれていたこと。
ここにきてもうすぐ三週間になるが、ここまで熱気を感じたのは初めてな気がする流輝だった。
「ミリア」
「何、流輝」
「駅前に良い演歌CDショップがあるのでそこに行きましょう」
「流輝って結構不思議な趣味してるよね」
「そうでしょうか?」
二人がのんびりと現実逃避をしていると、そこにダーレスがやって来て、手を挙げて挨拶をすると二人に話しかけた。
「君達、ちょっと来てくれ」
「嫌な予感しかしませんが」
「私も同意」
「早く、隊長室に来てくれ話があるんだ」
「「はぁ……」」
二人は先を行くダーレスの後を追うように隊長室に向かうと、ダーレスが話を始めるのを待った。
ダーレスは空中に映像を投影させると、アメリカの地図を表示させると言った。
「新しい邪神一機が発見された」
「え、邪神って敵じゃないんですか」
流輝がそう訊ねると、ミリアは流輝のいう事がよく分からなかった。
「確かに、敵は主に邪神だが、それは『レイク・ハス』サイドの邪神だ、『クトゥルフ』サイドの邪神はいくつかがこの世界に封印されている」
「でもどうして今頃になって一機?」
「うぅむ、契約者ができて、封印が弱まったのを見計らい、出てきたらしい」
「なるほど、そういう事ですか……」
「え、えぇ?」
ミリアは話についいくことができなかった。
流輝は考え込むと、言った。
「で、今どこに?」
「ミリアにとっては因縁の地だ」
肩を震わせ、ミリアはぼそりと呟く。
「……まさか……」
「あぁ、ンガイの森付近だ」
「――――ッ!!」
流輝はミリアの雰囲気が変わったことに気が付いた。表情が固まり、目が真っ黒になる、流輝は少し不思議に思ったが、何もいう事は出来なかった。
ダーレスは少し含み笑いを浮かべると、言った。
「君達にはこれからアメリカに向かってもらおうと思う」
「え、でもどうやって?」
流輝がそう聞くと、ダーレスは「ついて来たまえ」と言うと、席を立ち隊長室から出て行こうとする。流輝とミリアはその後を追って行く。
歩きながらダーレスは話を続ける。
「アメリカには既に『クトゥグア』や『ハスター』『ガタノトア』が向かっているらしい、自衛隊からの情報で分かった」
「つまり、敵は既に邪神の反応をキャッチしているってことですね?」
「あぁ、ここ最近『レイク・ハス』との戦闘が少なかったのもそのせいだ」
「なるほど」
三人は外に出ると、アスファルトで舗装された道を歩き、格納棟の向こうにある海の方へと向かって行った。
ちなみに、この前の戦闘で森が焼け、その後が痛々しく残っていた。
が、そこにも新しい施設が作られているようで、数人の人が作業をしているのが確認できた。
「何を作ってるんですか?」
「索敵装置」
「なんでまた」
「この間、『クトゥグア』の発見に遅れた反省を生かして」
「そうですか」
と、海を一望できる高台に到着し、そこに登ると、ダーレスは腕の端末を起動させると、なにやら操作をしながら話を始めた。
「アメリカまでは『シャンタック』では行くことができない」
「なぜです?」
「簡単に言うと、『シャンタック』は国内便だ、アメリカまで行けるほど性能は無い」
「そうなんですか?」
「あぁ、だから、あれを使う」
「あれ?」
ダーレスが海の方を指さす。
すると、海の底から巨大な倉庫が現れると上から順に壁が外れていき、中にある何かが姿を現していく。
流輝とミリアはそれを見て驚く。
「すごい……」
「あれは…………」
「あぁ、こちらの巨大戦艦『シュブ・二グラス』だ」
そこにあったのは全長何百mもある巨大な戦艦で、二つの独立可能な艦がついていたようだが、中心部の艦橋と合体していて殆ど一つの形をしたものとなっていた。
その他には六つの球体のような物が埋め込められていた。
独特な形状をしたそれは、不気味な駆動音を響かせると、宙に浮いた。
「あれは……」
「数年前に私たちが回収した邪神『シュブ・ニグラス』を改良したものだ、正式名称は『シュブ・ニグラス・カスタム』と言う」
「数年前……?」
「あぁ、改良した際に、武装の二割を取り除き、ブースターやらを増設、壱番艦と弐番艦を中心の艦橋と合体させた、分離は可能だがしたら最後、艦橋は捨てることになる」
「…………」
「搭載可能な機体は二十機、全長七二○m、全幅二六○m、満載排水量は二二七五五○○t潜水可能、宇宙にも行ける優れものさ」
「はぁ、サイズの割には機体は二十機までなんですね」
「こちらの技術が未熟だったこと、搭載しているAI『∀―Ⅲ』による遠隔操作補助の限界数でもある」
「なるほど…………」
「あれならアメリカまでは七時間ほどで行ける」
「早いですね」
「あぁ、早いんだ」
ダーレスはそういうと「話はもう終わり」とでも言いたげに手を振る。二人はそれを見て一度寮に戻ることにする。
ミリアは終始浮かない顔をしていたが、寮に着くと、勝手に流輝の部屋に入って来た。
「ミリア」
「何、流輝」
「勝手に部屋に入らないでください」
「いいじゃん、別に」
「はぁ……」
流輝はいつの間にか用意されていた旅行バックに服を詰めることにする。何日分必要かよく分からなかったが、適当に十日分だけ詰めることにした。
ミリアはそれを見ながら話を続ける。
「流輝、『コス』シリーズって『シュブ・ニグラス』を元に作られたんじゃないの?」
「それは無いです」
「何でさ」
ミリアは結構鋭いことを言ったつもりだったが、あっさりと流輝に否定されてしまったので、少し気分を悪くする。
が、とりあえず話を聞くことにする。
「いいですか、『シュブ・ニグラス』は人型じゃありません」
「でも、サブ電脳からの情報……」
「旧支配者を元にしたのに、ですか?」
「『シュブ・ニグラス』にだって旧支配者の情報は……」
「無いです、そんなミスを敵が犯すと思いますか?」
ミリアは『クトゥルフ』『ナイアーラトテップ』もサブ電脳の旧支配者に関する情報はほとんど残っていなかったことを思い出した。
それを踏まえて返事をする。
「思わない」
「そうでしょう、旧支配者のサブ電脳だからこそ、情報があるのであって、邪神のは無いとみていいでしょう」
「そう……ね」
ミリアは納得した。
流輝は準備を終えて、ミリアの隣に座ると懸念をそのまま話す。
「それに、ですよ、改良まで行ったんですよ、完全に邪神について知っている、と言うことになりますよ」
「確かにね、勘だけじゃあんな改良は行えないだろうし……」
「さすがのミリアでもそう思いますか」
「さすがって何!?」
「いえ、気にしないでください」
「…………」
ミリアは釈然としない、と言う顔をしたが自分も荷物をまとめなくてはならないので、自室へと戻って行った。
流輝は大きく息をつくと、腕の端末を起動させ、データベースと直結させる、これはこの間増やしてもらった新機能だった。
そして、さっきの話で気になった単語があったので、調べてみることにする。
AI『∀―Ⅲ』についてである。
「これ、ですかね?」
どうやら、ここ『イカン』で使用されているAIの三番目の名称であるらしかった。
『∀』『∀―Ⅱ』に次ぐもので、『シュブ・ニグラス』に搭載された物が『∀―Ⅲ』らしい、旧支配者のサブ電脳を元に作られたものだと記載されていた。
地下にある施設二基のAIが収納されているらしい。
「また、これですか……」
流輝は頭を抱えた。
が、考えても仕方ないので、とりあえず『シュブ・ニグラス』と『クトゥルフ』の様子を見に行くことにした。
寮から出るとまずは、格納棟へと向かう。
その道中、叶芽さんと会った。
「叶芽さん」
「あ、立木君」
「こんにちは」
「こんにちは、『クトゥルフ』の様子でも?」
「えぇ、そんな所です」
「そう……」
「名に浮かない顔をしてるんですか?」
「いいえ、たしたことは無いのだけれど」
叶芽は少し言いよどむと、ふと思い出したかのようにバックの中から二冊の本を取り出すと、流輝の方に差し出した。
綺麗な本で、つい最近作られた物のようだった。
流輝はそれを手に取ると、ぱらぱらとめくる。
日本語で書かれているようだったが、挿絵が一切なく、少し味気なく思えた。
「これは?」
「ダーレスさんから渡すよう頼まれて……」
「そうしたか……ありがとうございます」
叶芽は、まだ何かを言いたげな顔をしていたが、流輝に背を向けると、浮かない顔のまま戻って行った。
流輝は本の題名を確かめると、少し疑問に思ったので、データベースにアクセスし、検索してみる。
ところが――――
「該当…………無し?」
流輝はもう一度その本を見てみる。
一冊には日本語で『ネクロノミコン』、そう一冊には『アル・アジフ』と書かれていた。
次の日
流輝とミリア、その他諸々の人達は『シュブ・ニグラス』に乗り、アメリカを目指して空を飛んでいた。
『クトゥルフ』と『ナイア』あと『コス―GⅡ』を十八機載せていた。
今は整備士たちの手で整備が行われている。
二人は第二艦橋にある船室の一つでくつろいでいた。
「で、どうしてミリアと相部屋なんです」
「仕方ないじゃん、他の人と一緒なんか私嫌だよ」
「僕と一緒は嫌じゃないんですか?」
「普通」
「…………」
何とも言えない気持ちになった。
ミリアはそんな流輝のことそっちのけで、携帯ゲーム機を取り出すと、何かのゲームを始めた。
「…………」
流輝も何かをしようと思ったが、特に何も持ってきていなかったので、暇の潰しようが無かった。
叶芽から貰った本は寮に置いて来た。
どことなく開いてはいけない気がしたので、読まなかったのだ。
「……ちょっと散歩行ってきます」
「あ!!畜生!!回復薬が切れた!!」
「…………」
流輝は部屋から出ると、適当に辺りを見渡してみる。
『シュブ・ニグラス』の内部は昔見たロボットアニメの戦艦内部とそっくりで、少し心が高鳴るのが分かった。
流輝はロボット物が好きなのだ。
自分が乗るということを除いて、だが
「どこかに見取り図は無いですかね?」
少し歩いて探してみるも、見つからない。
「仕方ありませんね」
腕の端末を起動させ、『シュブ・ニグラス』の見取り図を探してみる。
「あれ、無いですね」
「これを使いたまえ」
「あ、……ダーレスさん?」
「私だが、何か?」
流輝はダーレスが差し出したチップを端末に入れると、情報を入れる。
その間も隙を見せないようにして、ダーレスを睨みつける。が、ダーレスはそんなこと気にしない、悠々自適に煙草を吸っていた。
「ダーレスさん」
「なんだい?」
「ここは禁煙ですよ」
「はい、すみません」
ダーレスは大人しく、煙草を携帯灰皿に捨てた。
流輝はチップを返しつつ『シュブ・ニグラス』の情報を確認する。
「大きいですね」
「まぁな」
「兵装は?」
「ミサイル多数とレーザー、後は対空防御のマシンガンとかかな」
「なるほど…………」
二割削ったという割にはなかなかの重装備だった。が、十分と言えるかどうかと聞かれたら、流輝には答えようが無かった。
ぼんやりとそんなことを考えていると、ダーレスが何かを言いたげに口を開いた、と同時に警報が鳴った。
ウーウーと耳障りな音が響き、アナウンスが流れる。
『第二種警戒態勢、第二種警戒態勢、手機影をキャッチしました、各員戦闘態勢に移って下さい、繰り返します――』
「流輝君」
「はい、わかりました」
流輝は走ると『クトゥルフ』の元へと向かって行った。
五分後
流輝は『クトゥルフ』に乗り、壱番艦で出撃を待っていた。ちなみに『ナイア』は弐番艦の方に格納されていた。
「さて、次はどんな敵ですことやら」
『流輝君、子Y知らで手に入れた情報を送る、役立ててくれ』
「はい」
返事をすると同時に幾つかの情報が送られてくる。
敵は邪神、数は一から二、『シュブ・ニグラス』の正面から向かって来ているらしく、到達するまでは後二分ぐらいであるらしい。
『ハッチ、開きます』
「はい、いつでも」
流輝が答えるのと同時に、目の前の壁が開き、外へと通じる。外と言っても上空一二○○○mの空中ではあるが
『クトゥルフ』を一歩一歩動かし、開いたハッチに近づいて行く。反重力発生装置を展開し、いつでも飛べるようにしておく。
「『クトゥルフ』行きます!!」
『あぁ、行って来い』
一息に飛びだすとすぐに反重力発生装置の出力を最大にして、真っ直ぐ前に向かって飛んで行く。
少し離れたところで『ナイア』が飛んでいるのも確認できた。
通信を繋げると、流輝はミリアに話しかける。
「どうです、調子は」
『最高、修復も完全、ところで『コス』は?』
「まだ出られないようです、遠隔操作のチューニングが終わってないらしく」
『本当、使えないね』
「そうですね」
そんな無駄話をしていると、『クトゥルフ』が敵影をキャッチした。
ズームをして見てみると、それは独特な形状をした戦闘機型の機体だった。二機いるが、それぞれ色と形状は違っていたが、とてもよく似た機体だった。
「これは?」
『楽勝そう、私から行くよ!!』
「あ、ミリア!!」
ミリアは『ナイア』にライフルを構えさせると、少し黒色をした機体に向けて弾を一発撃った。
しかし、かわされる。
ミリアは予想通りとでも言いたげに、かわした機体の方に向かって飛ぶと、ナイフを突き刺そうとする。
が、敵はレーザーを放ち、『ナイア』を牽制すると、離れて行こうとする。
『クソッ!!』
ミリアも一旦離れると、兵装を変え高機動用のパックに切り替え、サブマシンガンを二丁手にする。
そして、もう一度突っ込んで行こうとする。
が、敵が不思議な動きを見せたので、一旦止まらざるを得なかった。
「ミリア、あれって……」
『まさか、ね』
敵は両方とも可変すると、一機が上にもう一機が下に来ると、お互いがお互いに近づいて行き、合体した。
そして、人型となると、上半身の機体にマウントされていたビームライフルを構えると、いきなり撃って来た。
ミリアと流輝はそれを躱すと同時に叫んだ。
「『マジか!?』」
『二人とも、あれは『ツァール』と『ロイガー』だ、合体可変機だ、気を付けたまえ』
「………はい」
流輝は『ハイドラ』を撃ちだし、合体した『ツァール』と『ロイガー』を同時に捕獲しようとする。
が、ビームライフルで応戦され、触手を焼かれる。
流輝はそれを見て『ハイドラ』を『シュブ・ニグラス』内部に送ると、『ダゴン』を構えて接近戦を挑むことにする。
と、『ツァール』『ロイガー』はビームライフルの銃身を掴むと、そのままそれで殴りかかってくる。
「なんて雑なっ!!」
流輝は開いて左腕でどれを払うと、『ダゴン』を胴体部分に叩きこもうとする。
すると『ツァール』『ロイガー』は二つに分かれ、可変すると二つに分かれ上下に飛ぶと、『クトゥルフ』の攻撃を躱した。
「んな!!」
『すごい動きだね』
ミリアは流輝にそう言いつつ、サブマシンガンを『ロイガー』に向かって乱射するが、なかなか当たらない。
一瞬、『ツァール』とすれ違った瞬間、変形、合体するとビームライフルの引き金を引くと、『ナイア』に攻撃を仕掛ける。
ミリアは『ナイア』を高速で動かし、ビームを躱していく。
その間もサブマシンガンを乱射し続ける。
流輝は左脇に『リトル』を持ってくると、グリップを展開、それを掴むと引き金を引いてビームを放つ。
『ツァール』『ロイガー』はそれを躱すともう一度分離、『クトゥルフ』を囲うように動くと、ビームを放って牽制してくる。
そこで、流輝は違和感を感じた。
『ツァール』と『ロイガー』の攻撃にやる気が見えなかったのだ。
なんというか、牽制ばかりで本気で攻撃していないような
「どういうわけ……ッ!?」
その時、流輝は気が付いた。
『シュブ・ニグラス』の後方遠くに敵影があることに
少し大きめな点にしか見えなかったが、『クトゥルフ』が自動で拡大したので、鮮明では無い物の、敵だと分かった。
流輝はダーレスに通信を繋げると、言った。
「ダーレスさん!!」
『どうした?』
「敵影があります」
『何?』
「『シュブ・ニグラス』の後方に、数機見えました」
『おい、索敵班!!』
ダーレスが何やら叫ぶ声が聞こえてくる。
その間も流輝は『ロイガー』と『ツァール』に注意を払い続ける。
と、索敵が終わったらしく、ダーレスが奉公してくる。
『流輝君、ステルス仕様の『イタクァ』がこっちに来ているな、まんまとはめられたという事か……』
「僕が迎撃に向かいます」
『わかった、こちらからも援護しよう』
ダーレスがそう言ったあと、『シュブ・ニグラス』の武装が展開、ミサイルやレーザーが放たれ、弾幕が張られる。
ミリアは少し驚き、『ナイア』を止めるが、ダーレスから通信が入ったらしく、すぐに『ロイガー』と『ツァール』の迎撃に移る。
『流輝、頼んだよ』
「分かりました」
流輝は『シュブ・ニグラス』の上を飛んで行くと、後ろに回り『イタクァ』を視野に入れる、と同時に『ク・リトル』と『リトル』を展開し、カノン砲を撃つ。
『イタクァ』は五機いたが、ビームを躱し損ねた一機が爆散する。
四機の『イタクァ』がこっちに向かってレールガンを撃ってくるが、そんなこと一切気にせず、流輝はビームを連射する。
また『シュブ・ニグラス』の援護もあって『イタクァ』の連携がバラバラになる。
その隙をつくように、大きく離れた一機の『イタクァ』に目を付けると、弾幕の間を縫うようにして飛び、近づくと『ダゴン』を叩きつける。
するとその『イタクァ』は機能が停止し、下に落ちていく。
流輝はそれには目もくれず、次の標的を探す。
と、携行音が鳴り、左側から何かが来ると表示された。
見てみると一機の『イタクァ』が手の平のビーム砲を構えているのが分かった、流輝は後ろに下がって攻撃を回避しようとするが、一瞬遅れた。
左肩の装甲の前部分にビームが命中し、少し大きめな傷ができる。
「チッ!!」
傷がついた今、気にしたってしょうがないので『ク・リトル』を敵の方に向けると、ビームを放つ。
その『イタクァ』は躱すことには成功したものの、たまたま対空防御のレーザーが命中し、片腕を貫き爆発を起こす。
すると『イタクァ』はスピードを落とし、一瞬動きが止まった瞬間、ミサイルが命中し『イタクァ』が爆発し霧散する。
それを見た流輝は
「何か釈然としませんね」
そんなことを呟いていると、残った二機の『イタクァ』が弾幕を躱しながら『クトゥルフ』に近づいてくる。
「弾幕は火力だぜ、とはよく言いますね」
流輝は余裕の表情のまま、近づいてきた『イタクァ』に内、一機に向かって『ダゴン』を投げつける。
すると同時に散開し、左右に分かれる。
流輝はそのうち一体に近づくと、攻撃を仕掛けられるより先にゼロ距離まで接近、『イタクァ』の体を掴むと、残った持一機に向けて投げつけ、『ク・リトル』にビームを放つ。
完全に不意を突かれた『イタクァ』は投げられた『イタクァ』に当たり、その上ビームも命中する。
そして、二体同時に爆散する。
「よし、全滅しましたね、ミリアの方に行きますか」
流輝は『クトゥルフ』を一八〇度回転させると、ミリアの方へと向かって行った。
一方のミリアは苦戦していた。
サブマシンガンだけでは火力が無く、致命傷にはならないが、ミサイルやビームでは辺り王にもない。いくら高機動タイプの兵装を備えているとは言え、接近戦を挑むには二体同時になるので少し厳しい。
そのうえ、弾幕のせいで行動が制限されてしまう。
「あー、もうめんどい!!」
ミリアは自爆覚悟で特高を仕掛けることにした。
先ずは装甲を、高機動を活かしたまま、防御力を重視した物に変える。
そして、兵装を『チェーンボム』と言う特殊な物に変える。形状としては、円盤状の物が連なった鞭のような物である。
また、腰に散弾を装填したバズーカーを召喚する、これは命令すると撃ちだすタイプの物だった。
「よし、準備OK」
ミリアはあえて弾幕の事は一切気にせず、比較的近くにいた『ロイガー』に向かって突っ込んで行く。
すると『ロイガー』はビームを放ちつつ、『ツァール』の方へ移動しようとする。
ミリアはそれを見ると、こしのバズーカーから弾を一発撃ちだす。
するとその弾は途中でばらけると、大量の鉄の弾をばらまく。
すると、いくつかの弾が当たり『ロイガー』は傷ついてしまい、『ツァール』から離れるように移動してしまう。
ミリアはそれを見逃さなかった。
弾幕の間を縫い、躱しきれないものはシールドで受けて、『ロイガー』野に接近すると『チェーンボム』を振るう。
『ロイガー』はそれを躱そうとするも、一瞬遅れた。
『チェーンボム』が『ロイガー』の全身に巻きついたことを確認すると、ミリアは持ち手にある引き金を引く。
すると、巻きついた円盤が爆発を起こす。
ミリアはその一瞬前、後ろに飛ぶと『ナイア』を爆発から逃れさせる。
『ロイガー』は完全に爆散すると、欠片とも言えないようなゴミをまき散らしながら海へと落ちて行った。
「この武器、嫌いなんだよねー」
ミリアはそんなことを呟きながら兵装を変える、『チェーンボム』を太刀に変えると、片手に二本ずつ、計四本さらにいくつかの太刀の入った鞘を召喚しておく。
そして、『ツァール』に接近する。
「一機だけなら!!」
ミリアはまず、指に挟み込むようにして持っていた左手の太刀二本を投げつける。
『ツァール』はそれを躱し、『ナイア』の真上に来るような形になると、機首を下に向けてビームを乱射してくる。
それを躱しながらミリアは腰にあるバズーカーから弾を一発撃ちだす。
先程と同じ散弾で、弾がばらまかれると『ツァール』はそれを正面から受けてしまい、全身が大きく傷つき、バランスを崩す。
黒煙を上げて、弾幕の方へと突っ込んで行く。
「あ、」
すると『ツァール』は一筋のレーザーに貫かれた。
それを見たミリアは唇を尖らせると呟いた。
「なんか複雑…………」
と、そこに流輝の駆る『クトゥルフ』がやって来た。
ミリアは通信を繋げると愚痴った。
『ねぇ、流輝、一ついい?』
「なんですか?」
『弾幕が敵を倒すと複雑な気分になるね』
「同感です」
二人はそんなことを言いながら、『シュブ・ニグラス』へと戻って行った。
戦いを終えた流輝とミリアは第一艦橋にある指令室で、外の様子を眺めていた。
そこには大きな湖が広がっていた、出不精の流輝はここまで大きな湖は、今まで見たことが無かった。
ミリアは子供のころこの湖の近くまで来たことがあるので、懐かしい物を見る目でそれを見ていた。
「さぁ、着いたぞ」
「ここは?」
「エピリオル湖だ」
「具体的な場所は?」
「ウィスコンシン州の近くの湖だ、暫くの間はここの湖底で過ごすことになる」
「あぁ、そういえば、これって潜水もできるんでしたね」
「あぁ、そうだ」
ダーレスがそう言うと、『シュブ・ニグラス』はゆっくりと潜水していく。ちなみに指令室はダーレス一人分の椅子しかない、他には空中に様々な映像が投影されているだけである。
ゆっくりと期待がゆっくりと湖の名完備入って行くのが見える。
画面が少しずつ水で埋められていく。
ちなみに、ミリアは魚が見えるかと思ったが、既に逃げた後らしく、近くには生き物が見えなかった。
一方の流輝は少し頭痛がしていた。
湖の中を見た瞬間、少し気分が悪くなったのだ。
流輝は悪いものでも食べたかと思ったが、そんなことした覚えはない。
ダーレスはそんな流輝の姿を見て、小さく「なるほど」と呟いた。
「あれ、流輝、大丈夫?」
少し遅れてミリアが流輝の異変に気が付いた。
流輝は手を振りながら返事をした。
「大丈夫です、でも、一応部屋に戻りますね」
「そうか……分かった」
「あ、私ついて行きますね」
「好きにしたまえ」
ミリアは流輝に肩を貸すと、ゆっくりと指令室から出ていく。ダーレスはその後ろ姿を見送りながら、小さく呟いた。
「やはり、こうなったか」
すると、画面に何やら不思議な文字が出てくる。
ダーレスはそれを見ると、小さく頷き言った。
「あぁ、大丈夫だ、後で精神安定剤を送る、それよりも、お前の予想通りだったな」
ダーレスは新しい文字が出るのを待ってから喋り出す。
「嬉しくない、か、それよりも『アトラク・ナクア』の座標を探してくれ」
そう言ったあと、ダーレスは椅子に深く腰掛けてたばこを吸うと、新しい映像を投影させ、それを凝視した。
するとそこには、アメリカ海軍の保持する戦艦の様子が表示されていた。
そして、顔をしかめると、小さく呟いた。
「面倒事に、なりそうだな」
『ツァール』と『ロイガー』は完全に這〇寄れニャル子さんが原形
しかも、デザインが限りなくゲッター〇ボに近くなってしまった……
直さなくては……