三日目
日本政府、いや首相の強硬姿勢を受けて、周辺諸国はとくにアクションを起こさなかった。特に反日政権が成立している韓国であっても、沖縄との関係は百害あって一利なしである。そんなところと誰が関係を結ぶのだろう。
「国防軍装備はおろか、施設も接収できなかっただと。何でこんなことになるんだ?」
明らかに怒気を孕んだ声で、知事は怒鳴る。
「施設、土地、その他国防軍、在日米軍所有の全ての物品が一つの民間企業に売却されていたようです。日本政府のダミー会社だと思われますが、民間企業である以上、手を出すには早いかと」
知事の側近の男が冷静に諌める。沖縄県土木建築部部長を務めただけに下手に強行手段に出ることは、難しいと睨んでいた。成田空港の時の三里塚闘争のような結末にもなりかねない。在日米軍が如何に嫌われていようとも、所有する地主達にとっては飯の種、金儲けのための手段だ。そんな彼らの要求するだけの金額を沖縄単体で用意しきれるわけがない。
「無理矢理、脅し付けてでも所有権を変更させろ。手段は問わん。最悪の場合、殺してもいい」
意外と知事の思考は単純なようだ。民間企業に土地の所有権が無いからと言っても、無理矢理な手段は不味い。
「その民間企業は不動産及び警備会社を事業の中心にしているようです。下手に強行手段に出ますと、そこを介して日本政府が介入してくるかと」
それに日本政府はこうなっている以上、借用契約の続く限り、その土地を握り続けるだろう。契約の一方的破棄は沖縄の財政に大きな損失を与える。
「物資、土地、施設等に対する強制収用法を認める。なんとしてでも、手に入れたい」
「憲法案も纏まっていないこの状況では厳しいかと思います。やっていることが独裁政権と変わりません。数十日の我慢です。お願いしますよ」
いくら補償があっても、現時点で強制収用法を認めてしまえば、琉球国の評判は地に落ちる。ただでさえ関係を持とうとしてくれる国がないのに、そんなことになれば琉球国を守る盾としての外交ができない。日本政府、それに国防軍は嬉々として奪還作戦の準備を進めているだろう。
(これは最終手段だが、知事の首、私らの命、日本政府に捧げれば、それで済む。沖縄が踏みつけられるのは、見てられなかったが、県民が苦しむのは不味い。いざとなれば、)