1章 少女との邂逅(?)
趣味で書いてますw。
『この世に魔法は存在しない。』
誰がそんなことを言ったのだろうか。
世界の現実しか見ていない人が言ったのだろう。
非現実に惹かれない人が言ったのだろう。
それを信じていて、諦めた人が言ったのだろう。
やはり、魔法や超能力は存在しないと。
右足が地面にふれる。
間
その次に前へ出てきた左足が、地面に触れる前、
それより先に、僕の左肩に何かがあたる。
「きゃっ!」
「わっ」
曲がり角から出てきた人と、ぶつかってしまった。
急いでいたのか、走ってはいたが、互いに転ぶことはなかった。
「すっ、すみません! ちょっとあわて――」
これを物語では、『運命の出会い』と言うのだろうか。
しかし、現実にそんなものは求めるものでもないと、僕は考えてしまう。
いや、きっと、それで正しいのだ。小説やアニメや映画を多く見てきたせいで、そういう考え方をしてしまう。それが現実に求めるには、あまりに物語性が強すぎると。
「ああ、大丈夫ですよ。すみません、僕もぼーっとしていて」
相手の言葉が、僕の顔を見た瞬間、不自然に途切れた。
そのきれいな声が途中で途切れたことを何かさびしく思う――。おっと、こういう素敵な表現も、物語の中のものだったっけ。現実では気にする事ではない。
「…………」
きっと、舌をかんだのか、そんなところなんだろう。
しかし、僕とぶつかった彼女は、まるでこれが、再会した幼馴染か、やっと見つけた英雄の生まれ変わりか、これから契約を交わして悪と戦う契約者か、であるかのように、僕の顔を見て目を見開いている。
現実的に考へるのであれば――、そんなに見つめられても困るのですが、僕の顔に何か付いているのですか……、
「ど、どうかしました? ――顔に、何か付いてます?」
顔に何か付いていますか、こんな言葉を現実で使うことになるとは――。
「――――い、いえ、ちょっとおどろ――、なんでもないです。ぶつかってごめんなさい。失礼します」
「あ……」
先に行ってしまった。
どうしたのだろう。急に、初めと違って、冷やかになったような……。
うーん……。
今の女性を、物語的に端的に説明するのなら、
セーラー服の肩の上で遠慮がちに揺れるその黒髪。長さを言うなればセミロングになるだろう。端正な顔立ちからは、美人というよりも、可愛いという言葉の方が似合っている。あまり大きいとは言えない胸部の上に揺れるリボンは、青色。腰のラインはすっとしていて、痩せている事がうかがえる。スカートは膝小僧の高さにあり、茶色いおしゃれな革靴を履いていた。
まあ、黒髪なのはうちの中学が、髪を染めることを校則で禁止しているからであって、普通のことなのだが。セミロングも珍しいことではない。学内でも学外でも外国でも、歩いていれば、セミロングの人はいることだろう。
確かに、案外顔は整っていたが、あんまりぱっとしないというか、目立つような風でもなかったな。大人しそうな印象を受ける人が多いことだろう。
一年は赤、二年は青、三年は緑。これが学校の鉄則でしょう。上履きの色もその色だし。
あ、年代によって学年は違うか……。
女子は男子と違って下靴まで決められてるなあ。どうなんだろ、不服とかあったりするのかな。
現実的に考へるのであれば――、大人しそうな、ブスじゃない子。だった。
「でも、さっきの瞬間硬直は、謎だな……」
まさかホントに、『超能力もち幼馴染』?
おっと、自重自重。
間
現実にそれはなく、また、それは現実ではない。
『この世界に魔法は存在しない。』
中学二年の始業式――。中学一年生にとっては入学式となるこの日。特に変わったこともなく、新しい教室へと足を向ける。
教室の前では、見知った同学年の生徒が、集まってドアに貼られてある紙を見て話していた。
なんだろ、この学校は一ヶ月後に廃校になります。とか、かな。
視力検査ではいつもA判定しか出ず、つまらない思いをしている僕の裸眼は、十人ほどの頭の後ろから、件の張り紙を見定める。
「あっ、あったー」
「わー、席近いよ! やったねー」
「ラッキ、俺一番後ろだ」
「ずるっ、一番前だぜー俺、最悪」
ただの座席表だった。
これが現実。廃校、なんてことはない。
当たり前か。
間
席を確認した僕は、目的地に向けて足を動かす。
ラッキ、俺一番後ろだ。と言った、あんまり話したことのない男子生徒と同じく、僕も一番後ろの窓際だった。
「ラッキ、定番席だ……」
「?」
おっと、通りすがりの知らない女子に、一人つぶやきが効かれてしまった。恥ずかしい。
ここで定番として、ひとつ前の席か、反対側の廊下側の窓際に今朝会った不思議ちゃんがいれば…………、……――――。
おっと、
いた。
今朝ぶつかった女子生徒が、反対側の窓際に、いた。
おっと、なんという偶然。
その少女は、僕の反対側の席でノートに向かって何かを思考しながらペンを走らせる。その横顔が知的で、何かを見通すような――。
おっとおっと、自重。
「こういうすぐに妄想とかに考えが持ってかれるのは、悪い癖だなー」
現実に頭を戻すために、小声で言ってみても、偶然の事実は動かない。
人数の関係か、窓側の列だけ机の数が一つ多いことから、僕と今朝ぶつかった彼女は横目で遠くに見える。二人だけ孤立しているようにも見える。
もう一度、横目でさりげなく彼女に視線をやる。
あれ
目線を前の空いている机に戻しながら、ふと思った。
見たことある……。ていうか……、去年、同じクラスだったような……。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴る。
あっ、そうだ、一緒だった。
前の席に女子座り、教師が入ってきた。
確か名前はー……、
「出席取りますよ。名前を言われたら返事ね」
去年3組の副坦だった人だ――。年寄りくさい、年寄り先生の低い声に思考が少し鈍る。
名前は――、周防!
「周防さん」
「はい」
僕の前の人が返事をした。人違い、いや名前違いだった。ごめんなさい、周防さん。
連載が続くかは気分次第ですw。
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