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その異世界で、勇者はごみクズと呼ばれる。  作者: 馨あひる
第1部 神坂翼、巻き込まれて異世界へ?編
6/27

第6章 神坂翼、ギルドで変な目に遭う。

 城下町の入り口からほど近くの場所に、それはあった。

 見るからに年期の入った外観は、古い西部劇に出てくるバーのようだ。

 そして、看板には俺にも読める字でこう書いてある。

 “GUILD”と。

 木製の扉を押し開けると、そこには大小さまざまなテーブルと椅子が並んでいる。朝だというのにアルコールの臭いもして、ますますリアルさが増す――。


 ・・・なんて、思っていたのですがねぇ。


 俺を待ち受けていたのは、まっ白い建物。表現するなら「え、病院?」というような清潔さ溢れるものだった。

 そして、中ももちろんピカピカ綺麗。そして、漂っているのは、保健室とか病室とかの消毒液の香りだ。


 ハッキリ言おう。俺が思っていたものと違っている!!


 だが、看板は確かに出ていて、そこにはアルファベットで“GUILD”書かれている。だから間違いはない、はず。


 ・・・どこの世界に、こんな綺麗で清潔なギルドがあんだよ。


 そんなことを思いながら、カウンターらしき場所にいる医療事務員、ならぬ受付係だろう人に歩み寄った。

 

「あの、すいません」

「はい。なんでしょうか?」


 茶色に赤を足したような髪と目を持ち、なかなかにスタイルの良いその女性(推定年齢、20代前半)は「まさに看護師さん!」という白のナース服を着ていた。


 ・・・ほんと、なんなんだろう、この異世界は。


「ここって、ギルドですよね?」


 思わず尋ねてしまったのは、仕方ないと思う。だって、あまりにも予想外なんだもの。


「はい。レイノ王国、王都・ソルにあるギルド本部です」


 にっこり素敵スマイルで言われてしまえば、健全な男子高校生は黙るしかない。


 というか、可愛いなぁ、この人・・・!

 幼い顔つきだけど、胸は結構あって、アレだアレ、日本人は大好きだけど、外人からすれば「オーッ、ファニーバディーッ(変な体)!!」とか言われる童顔+巨乳の持ち主だ。


 ・・・いやいや、俺が好きなのは小鳥遊さん! 俺は小鳥遊さん一筋だからっ!


 そう頭を振ったものの、一緒に嫌な記憶が出てきてしまい、陰鬱な気分になってしまった。騎士野郎とか騎士野郎とか、あと騎士野郎とかな。

 それは顔にも出ていたらしく、巨乳ナースはオロオロと俺を見ている。


「あの、気分が優れないのですか?」

「・・・あ、いいえ。ちょっと過去と戦っていただけです」


 ほんと、異世界に来てロクなことがないよなぁ、俺。


「あの、俺、冒険者になりたくてここに来たんですっ」


 気分一新、王道だろうその言葉を吐き出してみる。すると、巨乳ナースは一瞬きょとんと目を見開いたが、次の瞬間にこっと笑った。


「はい。“冒険者の証(ギルドクレスト)”の発行ですね」

「・・・くれすと?」

「はい。“ギルドの紋章”を意味し、それを持つことで各地のギルドに出入りはもちろん、クエストを受けることができます」


 なんだかよく分からんが、とにかくソレが必要だ。そう思っていると、巨乳ナースはにっこり、そして丁寧に両手で俺にあるモノを差し出してきた。


「では、こちらに必要事項をご記入ください」


 出されたのは、明らかに問診票っぽいソレ。


 ・・・ちょ、マジで初診の病院に来た気分なんだけど・・・。




 必要事項は、名前と生年月日。そして今まで大きな病気はしましたか、入院経験はありますか、今体の部分で気になっていることはありますかなどなど、ほんとのほんとに問診票だった。こんなのおかしいよ!


 そして俺は今、次の手続きに入っている。これが王道ゲームなら「では、この街の近くにある、とある洞窟で、とある鉱石を探してきてください」っていう、冒険者の証になるもの貢いだら認定! の件である。


 ドキをムネムネ、ではなく、胸をワクワクさせていた俺を待っていたのは――血液検査でした。


 ・・・なんか、ギルドなんだか病院なんだか、本気で分からなくなってきた・・・。


 巨乳ナースは、みんなおなじみ注射器を持ち、アルコールで消毒した後に採血をし、それを検査機にかけ出した。


 ・・・あの、普通「お前にこのギルドのクエストをこなせる資格があるか、己が力で示してみよ!」とかってなるもんじゃないの? ね、そうでしょ?


 盛大な疑問を抱えながらも「しばらくお待ちくださいね」と巨乳ナースにお茶を出され、仕方なくゆったりとした白いソファーに座っていた。


 特にやることもないので、お茶をちびちび飲みつつ、この後のことを考える。

 まず、お腹がすいた。

 なにか俺でもできる超簡単なクエストを斡旋してもらって、お金を手に入れなければ。

 そういえば、あの騎士野郎、手切れ金とかも渡さなかったよな! まぁお前からもらうものなんて嫌味も金銀財宝も全部いりませんけどね?!


 ヤツを思い出してイライラしてしまった自分を振り払うため、今度はギルドの中に視線を投げた。

 俺と同じように、一人ソファーに座る人。旅仲間なのか、複数で楽しく談笑している人達。そして、壁に貼られた掲示物を見分している人など。


 そんな中で、気になるものを見つけた俺は、コップに残っていたお茶(ちなみにハーブティーみたいな味でした)をぐびっと飲みきると、てこてこと歩き出した。


 俺が向かったのは、壁に貼られた大きな絵。

 年期が入っているのか、紙は薄茶色になり、端なんかヨレヨレしている。

 でも、そこには日本でよく、いいや、小さい頃から目にしていたものにそっくりなものが掲げられていた。


 ――世界地図だ。


 ユーラシア大陸に、アフリカ大陸。南と北に分かれたアメリカ大陸など、おおよそ俺の知っているものと変わらない代物だった。


「よぉ、坊主。そんなに地図が珍しいのか?」


 手で書かれたらしくいびつだが、それでもやっぱりよく似ていて、細部までしげしげと見ていたときだった。

 隣りを見れば、さっき掲示物を見ていたオッサン(推定年齢・40半ば)が立っていた。


 日によく焼けた浅黒い肌に、スキンヘッド。格好はレザーアーマーと言ったところだろうか? とにかく軽装備に身を包んだ屈強な体格の人だった。身長も2メートルくらいありそうだ。いわゆるガチムチってヤツ。


「これ、やっぱり世界地図なんですか?」

「おうよ。坊主、見るの初めてか?」


 その言葉に「はい」と答えつつ、本当は違うんだけどなぁと、余計なことは言わずにまた地図に視線を戻した。


 俺の知っている世界地図でいう、カナダの辺り。そこに“REINO”と赤文字で書かれていた。

 ということは、ここがレイノ王国、なのだろう。


「今いるレイノ王国は、ここで合ってますか?」


 隣りのオッサンに尋ねると、またも「おうよ」と威勢の良い声が返ってきた。なんか、魚屋とかにいそうなオッサンに思えてきたぞ。「へい、らっしゃい!」とかめちゃ似合いそうだ。


「ツバサさん、ツバサ・コーサカさんっ」


 その時聞こえたのは、巨乳ナースの声。検査結果が出たのだろうか、俺はオッサンにぺこりと頭を下げると、受付へと向かった。


「結果、どうでした?」


 これで晴れて冒険者だ! そんなことを思いながら巨乳ナースを見たが、彼女の顔は明らかに曇っていた。というより、そこに浮かんでいたのは、畏怖。


 ・・・え、もしかして俺、自分でも知らない内になにかヤバイ病気にでもかかってたの?!


 まさかの病名告知を受けるのかとビクビクしていると、巨乳ナースは俺を恐ろしいものでも見るかのように一瞥した後、一枚のカードを差し出した。


 四方を金の飾りで縁取られた赤いソレ。そこには、ローマ字で俺の名前と生年月日、そしてアルファベットでよく分からない単語が書かれていた。


 ・・・なんだこれ、ヘロエ? アルファベットの上になんか変な点があって、読み方が分からん。

 それに、その後に括弧付きでなにかまた書いてあるし・・・。


 読めないソレに首を傾げていると、隣りに人の気配がした。驚いて振り向くと、そこにはさっきのオッサンがいて。そして俺の持つカードを見て、驚愕の表情を浮かべていた。


「・・・坊主、お前――“勇者”なのか?」

「へ?」


 「なぜにそれを?」と驚いたまま、俺はポカンと間抜けな顔をしてオッサンを見上げていた。

それっぽいギルドもいいのですが、せっかくだから面白いものにしよう!

そう思ったら病院なギルドが出来上がりました(笑)

翼っちの身バレや、カードの説明などなどは次回に。


※誤字を直しました。あと「巨乳看護師」→「巨乳ナース」に変更。

いや、そっちのがぽいかなぁと・・・(笑)

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