六十話 本当に憂鬱
いつもより短い話です。
最近、段々と文字数が減っていってるので元に戻したい……
──いよいよ、あの悪魔の予定が明日に迫ってきた。
「明日が期末だなんて、俺信じないからね!!」
「信じる信じないじゃなくて現実なんだよなー。おれも勉強しなきゃ」
明日が期末テスト初日であり、そこから四日間俺は地獄を味わうであろう。最悪だ。
けども今日はもう二十三時。詰め込めるとしてもあと一時間で寝ないと翌日に響く。限界までブドウ糖のお菓子を摂取してなんとか脳の回転を上げようと試みている。
「ったく、だから常日頃から計画的に勉強しとけって言ってるだろ?」
「うーん、前日に言われてたくないセリフ堂々の第二位かも」
一位は「え? 試験範囲じゃないよそこ」だ。一回だけやらかして、その時はすべてを諦めてテスト中に寝た。先生にはめちゃくちゃ怒られた。
「全く持ってわからないんだがこの問題……誰かー、オレを助けてくれー。桜ー」
「俺は睡眠不足が翌日に響く方なんだ。おやすみ」
「おい向! 桜が裏切るぞ!」
「何ィ!? 捕らえろ!!」
数学は……どうにかなるだろう。理科は……記号問題に賭けよう。社会は……一般常識でどうにかなると信じよう。国語は……まあ、どうにかなるだろう。
副教科系は期末テストしかないからここで落とすわけにはいかない。そもそもこういうテストの成績が将来的に推薦とかに関わってくるし……まあ、俺がどんな進路を歩むかなんて本当にどうなるのかわからないんだけども。
「うーん、このXに七を代入したら……なんで人数を求める問題でマイナスに……? デスゲーム……?」
「そんなわけないから! もっかい冷静に計算してみ!?」
もーやだ! もーこりごりだー!!
それに、今回のテストで俺が一番できないのは──
「──妖学」
『術』を扱う上での座学だとか成り立ちだとか……『妖怪』という種族に関わる全てをまとめて「妖学」と呼んでいる。これが現状の俺の一番の課題だ。
麗に教えてもらいながらなんとかやっていって、今では「まあ中学生レベルじゃない? 赤点ギリギリ回避か怪しいラインまでは届いたよ」とお墨付きをもらえるほどに……お墨付きか、これ?
「はぁ……」
少し脳を休めようと横においていたスマホを取り出してそこからネットニュースを除く。今の俺のスマホには二つのニュースアプリがあって、一つが表界──人間の。もう一つが裏界──妖怪のアプリだ。
ネットワーク回線とかがなんたらこーたらで専用のアプリを入れることで俺のスマホの中には二つの世界の情報が入るようになってくる。
「便利なのかどうなのか……」
──こうして、ある意味別世界に行くに渡っての障害は多々ある。
それこそ実家に戻るのだってもう一度『亀裂』というやつを通らなければならないらしく、そこはなんと百パーセントの命の保証ができないだとか。未成年だぞ、俺は。なので滅多な機会、それこそ長期休み以外はあまり渡らないでくれとも言われてしまった。
「いちいち学園長に許可取るのもそれはそれで面倒くさいからなー」
個人的には週に一回ぐらいのペースで渡れるようになれば便利なんだが、その『亀裂』ってのは渡るたびに微妙に広がって、広がり過ぎたらまずいらしい。一定のラインを超えたら『結界術』の専門家が塞いでくれると言うが、あまりそれに頼り切りにならないでとも言われている。
「どうしたんだ? ちょっと顔が怖いぞ」
「え? んー、ちょっと悩みごとがあってね」
……心配してくれている向にだって、ちゃんと説明できない。いつか全てを明らかにしたいとそう思うけど、それは今ではないのだ。
今はただ、隠し通さなければならない。
「……」
「ま、あれだ。なんか困ってることがあるんだったら言えよ? 力になるからさ」
「ありがとうね」
「? おう!」
向はそう言うと再び自身の机に向かって問題に悩み始めた。生憎と、さっきの言葉に礼を返したいけども俺は勉強が本当に不得意なので教えて返すとかはできない。やればできる子は褒め言葉じゃない。人類、大体やればできる。
「あー、なんか掃除したくなってきた。あるあるじゃない?」
「あるある」
なぜ明日がテストで勉強しているときに限って他のところに意識が向いてしまうのか。本当に罪な現象だ。そうして少し机周りのレイアウトを変えてみる。時計の方はもう見ない、絶対。
「……眠い」
──結局、目標としていたテキストの二十ページ中三ページも終わらずに、寝た。おやすみなさい。
*
──朝は億劫だ。特に、今日の予定が望んでない場合は特に。テストなんて、そんな勉強が大好きなやつだけ受けさせればいいだろう。いや、教育ってのはそういうんじゃないし義務教育でもない高校でこう言うのは間違いだとはわかってはいるが。
「高校も義務にしろよ……今どき高卒はしとかなきゃいけないんだったらさ……」
社会に対する不平不満を垂れながら体を起こして体をほぐしていく。ルーティーンだ。
テストがあるとわかっていても「いつも」は崩したくないので今からジョギングに行く。
「っと。あれ、瀬奈が早起きしてる。珍しいね」
「……流石に、オレだってテスト前はギリギリまで寝ないな」
「そっか。じゃあ俺はちょっと外出るから」
そう言って勉強机に向かっている瀬奈を横目にハシゴを降りて寝間着からジャージに着替える。脱いだ服は洗濯籠に。そのまま外に出ようとしたら──ふと、瀬奈が立ち上がった。
「──お前は、」
「? 瀬奈? どうかした?」
「……いや、なんでもない。──いってらっしゃい」
「ん、いってきます」
*
「──それで、大丈夫そう? 今日はまず国語と数学、家庭科だけど」
「うーん、絶妙な教科。別に苦手ってわけじゃないけどさー」
昔からなぜか国語は減点を食らいやすいので得意ではない。数学は内容が難しくなってきていて得意とは言えないし、家庭科は微妙だ。つまり、自信なんて無い。
──朝、教室にて。いつもよりも少し短い距離のジョギングを終えて桜が作ったマジの和食の朝食を食べてそのまま登校した。そしたらいつものように麗がすでに教室にいて、何やら問題集を解いているようだった。
「……ここってなんでこの定理使うの?」
「面積をだすためだよ。ほら、ここから逆に解いていったら……ね?」
「なるほど!」
今は理解できた! 三十分後には忘れてるだろう!
なんとかギリギリまで暗記系を覚えようと自作した単語帳を眺めながら勉強をする。ついでにブドウ糖摂取のためにお菓子も食べながら、だ。
本当に憂鬱だー。もうやだ……
「なるようになる。日頃の努力だね。……まあ、ボクの言葉がどれほどまでに君に安心感を与えるかはわからないけど、蒼ってばかなり器用だしどうにかなるんじゃない?」
「ぅん……」
そもそもの話、今日はテスト初日であり最終日でない。こっから四日間は憂鬱であることが確定である。最悪だ。
「あー、もうやだ…………れいー」
「ボクは便利なお助けアイテムじゃないよ。自分でどうにかしな」




