五十七話 選曲センス
この話から向の一人称を「おれ」に変更します!できれば今までの話も変えたい……!
そこからゲームセンターで一時間ほど遊んだ。竜の豪運は色々なところで発動させてフィギュアも二回ぐらいでサクッと取っちゃうし、コインもじゃらじゃらとどんどん増え続けた。
そうしてそろそろお昼の時間になったのでひとまずはフードコートに行こうという話になった。
「じゃあ俺はラーメン買ってくるけど……皆んなはどうする?」
「お、じゃあオレもラーメンで」
「わかった」
フードコートもかなり広く、机を二つつなげて六人で食べることになった。とりあえず真ん中にある手洗い場所で手を洗ってその隣にある飲水が出てくる機械のボタンを押して汲む。
フードコートにあるお店の一つが全国的に展開されているラーメンのチェーン店で、とりあえず俺はそこで醤油ラーメンでも注文しよう。
「いやぁ、にしたて竜の豪運っぷりには度肝を抜かれたね」
「マジでな。今度からほしいプライズがあったら代わりにやってもらおうかな……」
雷は勉強やら部活やらでも基本的に器用よくこなすのだがゲームにはあまり向いていないようで、クレーンゲームもいい位置だったのにアームの引っ掛かりが悪くて元の位置に戻ってしまう、とかを連発していた。
「まあクレーンゲームは運にもよるし……」
「うぅ……神社でも行こうかな」
「やめた法が良いと思う」
「えっ?」
個人的な事情で今は神社をおすすめできない。いや、あんなのが例外なだけとはわかってはいるのだが……
「元気だしなって! ってか午後はどうする? あそこのゲームだいたい遊んだと思うけど……」
「オレとしちゃ皆んなが行きたい場所に行くが……ああ、カラオケとかどうだ?」
「いいかも!」
店の前にできている列に並びながらそんなことを話す。
ちらっと咳の方を見たら瀬奈と竜がハンバーガーショップに行っていた。確か桜と向は和食にしようかって話てたし、早く行けるようにちゃっちゃと会計を済ませよう。
「次の方どうぞー」
「あ、はい」
「ご注文はお決まりですか?」
「醤油ラーメンを一つください」
「わかりましたー」
そのまま事前に会計を済ませてレシートと番号の札をもらう。いい匂いが鼻をくすぐってお腹が鳴ってしまいそうだ。
「……あ、そういえば。雷ー」
「なんだ?」
注文をし終わった雷もこちらに来て、ふと思い出したことを話す。
「ほら、林間学校が終わったときにチームで遊びに行かないかって話したじゃん」
「あー、……ああ! あたったな、そんな話」
「俺さ、それで圭さんに場所決め任されたんだけど、どっか行きたい場所とかある?」
「行きたい場所かぁ……竜とか他の皆んなはなんて言ってんの?」
「遊園地とか、動物園とか」
「たしかにそこらが無難か……じゃあ俺も遊園地」
提案したのは圭さん。夏休みのどっかで皆んなで遊びに行こうとのことだ。俺としても断る理由なんてないし、こうしてまた遊べるなら嬉しい。
あと聞いてないのは……ああ、後で竜にも聞いておこう。
「百五番でお待ちの方ー」
「あ、俺だ。じゃあお先に」
「ああ」
*
昼食も無事に終わり、所変わってショッピングモールの近くにあるカラオケ。会員制らしかったのだが、向がアプリを持っていたので入ることができた。学割でかなり安くなるからかドリンクバーなどですれ違う他の客ももっぱら学生である。
「──ってわけで、竜もどっか行きたい場所とかある?」
「そうだなぁ……僕だったら……あ、夏祭りとか」
「夏祭り……そう言えば学校の近くでもあるんだっけ?」
「そうそう! それが花火とか打ち上がって結構盛り上がるって部活の先輩が言ってたの!」
そう言って竜はスマホの検索結果の画像のところを見せてくれる。そこには学校付近の商店街やらなんやらがお祭りムードになってかなりの人混みができている写真だった。
「なるほどなるほど……ちょっと圭さんに相談してみるね」
「ありがとう」
夏祭り……か。そういえば、俺の実家の近所でもやってたけど、ここ数年は行ってない。昔はよく遊びに行ったのに、なんだかんだ「面倒くさい」とか言いがちだった。
……今度、朱を誘って二人で行こうかな。
「にしたって、すごかったね雷!」
「アイツすっごい歌上手かったね〜」
余興的な意味でカラオケで点数を競っているのだが、今のところ雷が不動のトップである。聞いていてノリやすかった。
俺は可もなく不可もなくと八十点台を出し続けていて、それは瀬奈と向も同じだった。どちらかというと意外なのは……
「? どうかした?」
「あ、いや、なんでもない」
──竜の選曲センスがかなーり古いということだ。
なんというか、演歌ばかりである。それにギリギリ俺達も「古い名曲!」とかでも知らないような古さだ。最近の曲はあまり聞かないのかちょっとだけズレていた合いの手を打っていたし。
「蒼はドルソン好きなの?」
「え? ああ、妹が好きでそれに感化された感じかな」
中学二年生あたりの話になるが、妹が一時期とある女子アイドルグループにハマっていて俺はその歌を完コピするために夏休み毎日カラオケに通ったことがある。おかげで裏声が上達した。
「竜は最近の曲とか聞くの? ちょっと昔のやつとか歌ってたけどさ」
「……昔? そうかな」
「え、そうだよ。俺生まれてないもん」
「そんな昔だったっけなぁ。でもあんまり最近は……僕、あんまりスマホとかテレビも慣れてなくてさ」
父さんと同じようなタイプだろうか。触ったら全部壊す破壊神のようなタイプ。……まあ、流石にそこまでではないとは思うが。普通にセルフレジとかで会計できてたし。父さんならできない。
「まあ曲の好みなんてそれぞれだよね。次は何歌おっかな〜、このあいだのアニソンとかいいかも」
「いいんじゃないかな。僕もドラマの主題歌とか」
「なんのドラマ?」
「『凄マシ刑事』ってやつ」
「……それって五十年くらい前のやつじゃ……」
……うん、やっぱりちょっとだけ古いかもしれない。今度、なんかおすすめのアニメとか漫画とか教えてあげよう。
そのままドリンクバーのある二階から部屋のある三階まで階段で上がっていく。一階分くらいならエスカレーターを使わなくたっていいだろう。
階段を登ると部屋から漏れ出る歌声が聞こえてくる。いろんな部屋からも、それに廊下にあるスピーカーから最近の流行曲が流れたりしてるので自分たちの歌声が誰かに聞かれるというのはないだろう。そこは安心だ。
「戻ったよ〜」
部屋を少し行儀が悪いが足で開けてそのまま部屋の真ん中にある大きな机にドリンクを置く。注文したフライドポテトが先程より量が減っている。
「お、戻ってきたか。んじゃ次は蒼の番な! 今さ全員で点数競ってんだよ。今度こそはおれが一位に……!」
「向ってば結構負けず嫌い?」
「だろうな。さっきも瀬奈に別の曲で競って負けて悔しがってたし」
桜がジュースを飲みながらそう答えてくれる。話題に上がった瀬奈はスマホとカラオケの端末をにらめっこしながら何かを打ち込んでいた。
「お、瀬奈瀬奈、一緒にデュエットしようぜ。オレ、この歌を歌ってみたいんだよなー」
「別にいいが……あんまり期待しないでくれよ? 三回ぐらいしかフルで聞いたことねぇし……」
「次にあの……最近やってたアニメの曲……なんだっけ。ほら、英語のやつ入れてくれ」
「選択肢が多すぎるだろ、桜。なんて名前のアニメ? おれ調べるよ」
「僕も……これ!」
「まーた演歌ぁ? ま、いいとは思うけどさ。オレも歌ってみようかな」
歌う曲、というのはそれだけで色々とわかったりする。どんなアニメとかドラマ見てるだとか、どういう系統を好むだとか、好きな歌手だとか、色々と。
最近の流行には敏感な方だと、俺は俺自身をそう評価している。……もしかしたら違うかもしれないけど。
──こういう時、周りの誰にもわからない歌ってのは歌はないほうがいいのだろうか。この問題、かなり別れる気がする。
友だちと遊ぶのだから好きな曲か、それでも親しき仲にも礼儀あり的な理論でやめた方がいいのか。
「なに悩んでんだ? すっげぇ顔してんぞ」
「え、そんなに? いや、どんな曲入れよっかなって」
「ランキングでも見てみたらどうだ?」
「ん、そうしてみる」
とりあえずこのランキングに乗ってる曲なら無難だろう。他にも何か……ああ、この曲は確かあの映画の主題歌だったっけか。
よし、と思って曲を予約する。
「にしても──流石に入れすぎじゃね?」
予約数、三十。残り滞在時間、一時間三十四分。……うん、多分歌い終わらないな。
*
延長ができても未成年が入れる時間は決まっているので、延長無しでそのまま終わった。十分前コールって、歌ってる途中だから少し心臓に悪い。
今は六人で電車に揺られながら帰っている。結局カラオケの後もちょっとだけ買い物とか行ったので俺の手には買ったばかりの漫画と竜がクレーンゲームで取ったぬいぐるみがある。これが少し大きい。
「いやぁ、楽しかった! ありがとうね、瀬奈!」
「……そうだな。楽しめたなら、よかった」
提案してくれた瀬奈には感謝だ。こうして息抜きにもなったし、本当に楽しかった。また、皆んなで行きたいな。
……まあ目を逸らしつ続けていた期末勉強にはいい加減そろそろ向き合わないといけないと思うが。明日、麗が暇かどうか聞いてみよう。勉強教えてもらって……したくない……
『──次は、妖境学園前。妖境学園前』
そんな車内アナウンスが聞こえてきた。学校の前にバス停もあり、こうして電車の駅も作られているのはかなり交通の点から見て便利だ。
降りる準備をしようと荷物を持って席からすぐに立てるようにする。そうして電車が止まって降りる。改札にぬいぐるみが引っかかりながらもなんとか抜け出して学校へと向かう。
学校の正門には事務室があって、学生証を見せれば事務員さんが笑顔で対応してくれる。
そのまま雷は旧校舎棟へ、竜は北館へと向かおうとした。その後姿に、少し”何か”を思って──
「──なにはともあれ、今日はほんとーにありがとうね!」
──そう言った。そうすると、二人が笑顔で手を振ってくれて、それがまた、嬉しかった。




