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人妖!  作者: 家中由真
林間学校編
47/72

四十話 青春って感じ

 大部屋にはすでに三人男子生徒がいた。五海君、葛、正斬君である。なんというか、珍しいというか初めて見る組み合わせに少し驚く。


 三人は事前に持ってきていたスナック菓子を広げながらなにか談笑しているようだった。


「──あ、蒼。と、鬼城院」


「やっほー。何してたの?」


「まあ今日の『授業』に関して色々と話してたんだよ」


 ここにいる三人は確かチームがそれぞれ別だった気がする。俺と葛、五海君と桜が同じで正斬は向と一緒のチームであったはずだ。


「『授業』って言えば、俺と葛のとこはなんかこう上から矢が降ってくるって『試練』だったけど、そっちはどうだったの?」


 麗のチームがあの式神との戦闘であったというのは聞いた。けれど他二つのチームの『試練』の内容というのは知らないままだ。先生も特に明かそうとはしないだろうし。


「俺と五海のところは蒼達と逆みたいな感じだ」


「「逆?」」


「あー、あれな。なんていうか、床から金属が生えてきたんだよ」


「金属……?」


 五海君は思い出すのも嫌だって顔をしながら説明してくれる。


 俺達が空から、桜達が地面から。確かに逆ではあるか。


「地面に足をつけたら一秒もしないで金属が一気に伸びて刺そうとしてくんだ。かなーり危なかったって今でも思う」


「俺も全部叩き折るのはきつくてな……なかなかに硬かったんだ。冗談じゃねぇ」


 二人の表情から本当に辛かったんだなぁというのがしみじみと伝わった。

 下からと上からでは勝手も違うだろう。


「僕達の方はその二チームとは全然違うな。巨大迷路だった。やばかった」


「……もしかして、岩が転がってたりした?」


「あれ、知ってるの? 跡地に来た?」


「あ、いや、ちょっと岩が転がってるのが見えたから」


 正斬の発言に一日目の転がっていった巨大な岩が巨大迷路へと向かっていっているのを知った。なんというか、色々なところで状況が動いていたのか。円羅先生は俺達にだけ高難易度、なんて逆依怙贔屓をするような人にも見えないし。


「マジ最悪だったって感じだぜ。僕の『術』も全然役に立たなかったし……あー、思い出しただけでもムカつく!」


 そう言いながら正斬君はまるでビールかのように炭酸水を一気飲みして噎せた。


「まあ半強制的に他チームとの争いになるように仕組まれててその上でドッキリでしたー、みたいな終わり方じゃあ不満は溜まるよね」


「そしてそれを解消するためのキャンプファイヤーって所だろうぜ」


「だね」


 いやまあ正斬君の憤りもそりゃ当然であろうとは思う。……まあ個人的には別にいい終わりだとは思っている。今回の「どこかのチームが脱落」よりかは全部無駄でした〜の方が……うん、いいとは思う。良し悪し的に。


「逆に来年はもっと難化するのかな~」


「うげ、嫌なこと言うなよ。今回だって僕もギリギリだったってのにさぁ」


 なんてことを言い合いつつ、時計を見ればあっという間に時間が経っていた。


 大浴場は部屋の同フロアにあるが少し前に行っておいたほうがいいだろうということで、着替えやらなんやらが入っている袋を持つ。


「んじゃ、お風呂行こっか」


「......僕を置いてくの?」


「えっ!? あ、そういえば正斬君は後半グループだったね」


「ちょっと誰よその男!」


「俺!? え、急に巻き込むなよ......」


「そ、そんな、誤解だ! 俺と葛はそんな関係じゃない!」


「下の名前で呼んだわね!? 僕との関係はお遊びだってこと!?」


「違う! むしろ葛がお遊びだ!」


「巻き込まれた上に本命じゃないのかよ俺は。どうしろってんだよ」


「いいから行くぞ!」


「はい......」


「いってらっしゃーい」


 なんてころっと快く送り出してくれた正斬君に「じゃあさっきまでの茶番の意味とは?」と問いかけたかったが怒った桜は怖いのでやめたのだった。





 午後は入浴やらなんやらしてあとは部屋のなかで皆でゲームやったりとで時間は過ぎていった。そして夕食。


 夕食のバーベキューを終えたあとにそこから少し移動した場所でどうやらキャンプファイヤーをする予定だそうだ。


「──ですから、栄養バランスを考えて野菜も入れましょう」


「僕は反対だよ! せっかくのBBQだよ? 野菜は邪道だって!」


「その考え方のほうがズレています」


「いやー! 野菜はやめよ!」


 俺達のグループでは野菜を入れるか入れないか論争が幕を開けている。正直、どっちだっていい。好きに焼けばいいのではなかろうか。


「だって圭さんって野菜を皿に入れてくるじゃん! 葛、止めて!」


「えぇ……まあ野菜も好きな人が好きなだけ食べればいいんじゃないか? ほら、無理強いって良くないし」


「今回の戦いで伯世さんには無理をさせてしまいました。ですのでこうやって栄養バランスのいいものを食べて一刻でも早く回復をしてほしいのです」


「その気持ちもわからなくもないが……」


 竜の顔やら腕やらには湿布や絆創膏が貼られていて決して無傷でないことを物語っている。


 なんというか、あれだ。子供に野菜を食べさせたいお母さんとそれが嫌な男の子。そういった図にしか見えない。


「いや、そろそろ肉焼いていいか? 野菜云々は後ででいいから肉を焼こうぜ。オレはもう腹が減りまくってて仕方がないんだが」


「肉! うん、たくさん焼いて!」


「竜って本当にお肉好きだね」


「大好き!」


 かく言う俺も肉は嫌いではない。むしろ好きと言えるだろう。そう思いながら串に刺した肉を焼いていく。


「というか俺的には初めてのバーベキューでちょっと緊張……焼き方とかなんかあるのかな」


「そのままでも大丈夫だと思うが……まあ火が通ったらでいいだろ」


「適当すぎると危ないからな。ん、その肉は大丈夫だろう」


「さすがは旅館の若旦那……!」


「候補だ候補。もしくは推定」


 そう言いながら葛は慣れた手つきで皆の皿に肉を取り分けていく。肉の表面もきれいに焼けて格の違いをわからされた気分だ。


「ん、うんまぁ〜♡」


 やばい、ほっぺが溶ける! うまい、超絶品だ!

 溜まっている疲労感と友達と学校の施設で食べるというシュチュエーションが旨味を加速させている。

 なんというか、青春って感じだ。


「んー、おかわり!」


「自分でも作れよ……」





 バーベキューはその後滞りなく終わり、少し森を移動して再び開けた場所に出た。


「おおお、ああやって木が積まれてるとキャンプファイヤーって感じがするね」


 時刻は午後八時。ここら一帯は森でありビルなどはないため夜空がよく見える。今日は雲が少なくてよく月が見えた。


「あれがデネブ、アルタイル、ベガってね」


「? 蒼、そろそろ並ぶよ」


「わかった〜」


 出席番号順に円になって囲むらしい。人数が二十人しかいないので少し小規模だ。麗に呼ばれてその隣に行く。

 火をつけるのは学級委員と副学級委員である影池さんと五海君がやるらしく、先生が少し離れた場所からそれを監督している。


「それでは点火します。五、四、三、二」


「ちょ、穂香早いっってば!」


「いいから、いくよ駿。それでは、一、──零」


 同時に二人が持っていた火が放り込まれてセッティングされていた丸太が燃え上がる。


「こうやってキャンプファイヤーするのって小学校以来かも。中学校のときはこういうイベントなかったし……いやぁ、凄いね」


「普段は見ることのない景色だから非日常的ではあるよね」


 バチバチと燃え盛る炎は少し離れているこの場所にも熱が伝わり汗をかく。それを着ている服の袖で拭いながら瞼を閉じ、この林間学校での思い出を思い出す。


 まずは、……そう、バスで竜と少し仲良くなった。


 そして『授業』ってことで馬鹿みたいに危ない矢が降ってくる場所で『旗』を取るためにチーム一丸となった。あそこで色々と絆みたいのが、芽生えた、気もする。


 その夜には枕投げもしたっけ。


 今日はその『旗』を巡って他のチームと戦ったりした。対人戦、というのは始めてやったし、色々と新しく身についたものもあると思う。これを活かして〜、なんて言うほど俺は真面目じゃないが、この出来事がなかったらもっと俺は出遅れていただろう。


 あとはさっきのバーベキュー。結局竜は圭さんに野菜を食べさせられてたけど、野菜もまた絶品だった。火加減だろうか。


 ──そうやって振り返り、再び目を開けた。


「やっぱり、この学校でよかったのかも」


「……それは、早計じゃない?」


「麗?」


「蒼は──人間だ。そしてそんな中で君は半強制的にこうして妖怪の世界に招かれた。これは……幸せなこととは、言い切れないだろう。君は人間の世界での高校生の幸せみたいなのをしらないから、こうしてこっちをいいものだと思っているだけに過ぎないのかもしれない」


 そう言った麗は真剣な表情で──どこか、心苦しそうでもあった。

 麗は、否定したいわけじゃないのだろう。ただ、俺のいった言葉が正しいわけではない、もっと他にあったって、そう言いたいんだろう。


「──優しいね」


「……全然。優しかったら、こうして水なんて差さないよ」


「あはは、やっぱり優しい」


 そう言うと麗は少しジト目で俺の方を見る。いいもんね、怖いくないもん。


「ちょっ、蹴るのはちがくない!?」


「ああごめん、暗くて見えなかったや」


「嘘つけ!」


 思いっきり足の甲を踏んでただろ!

 そうツッコミを入れるか悩んでいると、先生がなにやら台本を取り出して話している。話の内容は今回の林間学校での総評みたいなものだった。


 それを耳に入れながら、ふと麗の方を向く。そこには相変わらず整った顔があるだけだ。


「嬉しい評価だね。……ああ、そうだ。じゃあ蒼にボクの秘密の一つ、打ち明けてあげる」


「え?」


 秘密、とはなんだろうか。麗はその『種族』から隠し事というか言っていないことは多いだろうとはなんとなく思っていたが……


「ボクね──女の子じゃないよ」


「………………………………………………………………え?」


 え?


「そ、れは、つ、まり……男!?」


「ああ、いや、違う違う」


「エッ!? じゃあ何!?」


 麗はどこか飄々としながら笑いながら言った。


「『さとり』って種族は生殖行為がないんだ。自然から生まれる、みたいな感じかな。そこら辺はまた追々話すとして……簡単に言えば、雄雌が必要ないワケ。だからボクも明確に男女のどちらかであるってことはないよ」


「…………じゃあなんでセーラー着てるの!?」


「制服もどっちでもいいんだけどね、あえていうなら趣味かな」


「趣味!?」


 しょ、衝撃の事実すぎて他の情報が何も入ってこない。

 え? ……え? どういうこと? 性別がない……女の子じゃないの!?


「……! そういえば、麗がトイレ行くところとか見たことないかも!」


 男女のどっちを使っているのか、それはどっちなんだ!?


「さあね〜」


「はぐらかされた!」


 ──まさかの友人の衝撃の新事実を知り、このキャンプファイヤーの終わりから学校に帰るまでの記憶が消し飛んだのだが……ある意味、とんでもない爆弾を落とされた気分だった。

記念すべき四十話! ちょっと雑ですがこれにて林間学校編は終わりです(いつものように幕間が一個だけありますが)!

衝撃の事実(?)が明かされました! ちなみに、麗はヒロインではない!

次からは「期末編」が始まる予定なんですが、想像以上に期末テストが絡まない気もするので悩み中です。

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