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人妖!  作者: 家中由真
林間学校編
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三十八話 実は、少し嫌かも

 ということで昼ご飯も終わって今は施設の中にある自習室のような場所にいる。そこで先生に一枚のプリントを渡された。


 ──今回の『授業』において。


 そんなタイトルの紙にはそれぞれの『試練』の内容とそこでの行動、反省点、改善点。そしてその後の行動についての反省点、改善点を書くように指示されている。


 思えば、今回の俺はどちらかというと他人頼りであった、というか自分のできることが少なすぎたとも言えるか。


「──や、反省会中? ボクも同席していいかな」


「麗。ん、隣どうぞ」


 この自習室はそれなりに広く、おそらく六十人ほどは同時に座ることができる。そんな中で座席は自由で、だいたいの人が一人で机を占領している。かくいう俺もだ。


「蒼のとこの『試練』は矢が降ってくるんだっけ?」


「そうだね。それに最後は全部落とし穴だったってオチ。ちょっと怒り心頭だなって」


「あはは」


「って、そういう麗の方は?」


「ああ、あれだよ。蒼が風滝さんと影池さんと戦ってる最中に現れた変な化物いたでしょ? あれとの戦闘」


「ああ、あれ……」


 長い一本角に、鹿のようなフォルム。犬のような耳に、猫のような尻尾。この世に存在するありとあらゆる動物にも、妖怪にも当てはまらない、推定の術によって作られた式神。というか、あの生物? というか式神の特徴はそれだけではない。鱗のようなものがあった気もするし、翼のようなものも背中に生えていた気もする。


「マジで何、あれ……」


「想像通りに式神だと思うよ、ボクは。あれに一番最初に『旗』を取られて追いかけっこをしたんだよ。『術』で色々と封じ込めたりと、面倒くさかったなー」


 確かに動きはすばしっこかったし、というか見た目がキモかった。いや、物事を見た目とかで判断するのは良くないが。


「変に良識があるよね蒼って。にしても蒼ももう札なしで『術』使えるんじゃない?」


「? 人間ってそういうのできるの?」


「……そっからねー。できるよ。というか普通の『術』は生きてる生命体なら使えるはずだよ。動物とかもね」


 マジか。あれか、ロストテクノロジー的に人類には失われたが妖怪は『術』のテクノロジーが発展した的な。


「人間でも使えるのは一定数いるよ。それこそ神職に就いてる人間とかね」


「実は我が家の近くのあの美人の巫女さんも……!?」


「アルバイトとかでも境内って場所が特殊だからね。神様ってのは、実在するから」


「──は?」


 自分でも、驚くくらいに低い声が出た。びっくりした。


「……あー。いや、これってばジョークじゃなくてマジ。お化けとかもいるよ」


「マジで!? 妖怪だけじゃなくて!?」


「そっちは本当にファンシーだけどね。生物とかじゃないから」


 神様、お化け。いや妖怪という存在がいるのだからおかしくはないか。けど流石にそっちの方は現実を受け入れるのにもうちょっと時間を費やしそうだが。


「俺が知らないだけで現実ってマジで小説より奇天烈なんだなぁ」


 やっぱり現実ってのはフィクションよりもフィクションしているものだ。この学校だって最初っから転移的なことして入学式だったし。

 けどそういった存在があるなら、案外宗教というのは一番最初は実在したものがキチンと崇められていて今の形になったのかも。


「世の中不思議がいっぱいだなぁ」


「はいはい。で、『結界術』、結局どのくらい使いこなせるの?」


「う。必死に話そらしてたのに……」


 『結界術』を使えるようになったが、それでも不安定だし短時間で壊れやすい。一回だけ攻撃を防げるバリアみたいなものだ。


「『結界術』の本領はその応用だったりするね。ある一定の範囲にバフ・デバフだとかさ。もちろんバリア的な効果だってあるけど」


「奥が深いぜ……使いこなせてるかって聞かれれば全然使いこなせてないよ。びっくりするぐらい」


「それは見てわかったよ。『術』の綻びがめちゃくちゃ大きかったからね。初心者じゃ済まされない下手さだ」


「そこまで言えって言ってないよな、俺」


 想像以上の言葉のナイフに傷つけられつつも紙に書き込んでいく。

 今回できるようになったことといえば『術』の発動がちょっと早くなった・札を投げるではなく落ちているものの遠隔発動・『結界術』だ。『拘束術』に関してはそれなりではあるかと自惚れている。


「そうだね、ボクの目から見てもそこそこではあったと言えるよ。『拘束術』は難しい、ってわけじゃないんだけど向き不向きがかなり激しいんだ。かくいうボクも、あまり使えこなせていないからね」


「だとしたらこれが使えるのはかなりアドバンテージ、かな」


「だね」


 純粋に俺は遅れている。十五年という年月、俺は当然人間であったのだ。妖怪ではない。だからこそこうしてクラスで見ると俺は十五年分の遅れを取っている。


 ──だからこそ、こうして特異な『術』が得意な『術』になったのはかなりいいことなんじゃないだろうか。


「掛けるね〜。『拘束術』と『結界術』は応用で『封印術』とかに流用できたりするから、そっちも習得することをオススメするよ」


「封印……? なんか封じ込めそうだね」


「文字通り、だよ。まあ一時的に戦線離脱してもらうようなイメージかな」


 ラノベや漫画で何十回も見た単語がこうしてリアルとしてでてくるのは嬉しい反面、今まで画面一枚紙一枚越しに見てきたものがこうして眼の前にあると……実は少し嫌かもしれない。

 平和主義者、というよりかは見て見ぬふりをしてしまう性格なのだ、俺という人間は。


「安全圏から物事を見るのと実際に当事者になるのはまた話が別だからね。……っていうか、蒼は良くプロジェクトに参加したね」


「拒否権なかったんだよね」


「マジで? 人権に拒否権は含まれない、か。人って難しいね」


「妖怪目線……!?」


 久しぶりな人外目線で人権を語られた。よくよく考えれば妖怪に人権はないか。妖権でもあるのかな。


「人間の法律とか憲法に則って似たようなものを作っているよ。法律だって、そういうのもあるからね。ほら、殺しちゃ駄目とか」


「法律以前に倫理で止めてほしい問題だよね、それは」


 こっちでは『術』という誰にだって使えるような物があるからこそ銃や刀の危険度が低いが、別にそれは殺傷力が落ちたというわけではないはずだ。個人的にすくすくと人間の世界に住んできた俺とすれば今すぐにでも取り締まって欲しい。

 そういえば、この裏界には三権分立とかそういうのはあるのだろうか。


「警察とかもあるし政治家もいるけど……別に総理大臣はいないな。なんというか、こっちで法律とか作るけど結局外交とかは表界も通してるイメージはあるよ。なんというか、内閣は人間の方しか無いかな。御三家とかも絡んでてちょっと複雑だし」


「ってなると、俺は誰の決定でこうして妖怪の学校に通うことになったんだろ……学園長って実は超絶権力者だったりする?」


 ああいったちょっと怪しめのキャラクターは実はすごい人だったりするというのがド定番ではなかろうか。


「学園長ってあれでしょ? 天狗の里の長だったはず」


「ああ、そういえば言ってたな」


 学園長が『天狗』という『種族』であることは初対面のときに明かされている。けど顔だって赤くないし鼻だって長くない。要素が見つからない。それこそ『術』だってちょっとしか見せてもらっていないし。


「『天狗』っていえば少数精鋭で有名だからね。ほら、山の神様的な扱いって言われてるし。……先の大戦でも、活躍したしね」


「──?」


 麗が最後に言った言葉。暗い表情をして放たれたその言葉は俺には聞こえなかった。聞き返そうかと、そう思うけど、しなかった。なんとなく変に察したからだろう。


「──ま、そろそろ自分の課題に向き合わないとね。麗はどう?」


「おや。ボクの戦うところは今回で二度目。そこそこ実力を認めてくれたって良いんじゃないの?」


「実際すごいと思ってるよ」


 なんというか、まるでサーカスを見ているような気分だ。動きというか関節? がすごい。無理だろと思う状況下でもするりと体を動かして抜け出したり。


「サーカス見に行ったことあるの?」


「機会に恵まれればと、そう思う所存……」


「……あっそ」


「わあ冷たい目」


 麗からの冷たい目を受け流しつつもついさっきまでの出来事を思い出す。


 あの時、というかその前の桜との模擬戦でも麗は刀を駆使していた。真剣、というのだって俺は初めて見たし、それに剣撃も見たことはないがそれでも麗の腕前は凄まじいものであるとは実感している。正直、『さとり』としての能力から見て敵には回したくないタイプ。味方でも何か企んでそうなタイプ。


「そうそう、戦いが終わった今も実は憂さ晴らしに蒼をぐさーっと……」


「怖いよ! 麗から見て俺の評価ってどんな感じ?」


 俺の主観でしか無いが麗はかなり強いほうじゃないだろうか。

 それこそ葛みたいに目に見えて誰かをぶっ飛ばす、ではなくて一対一ならば無類の強さを誇りそうではある。それこそ『未来視』を持つ圭さん相手だって俺が居ても優位に立っては居たのだ。

 それに、麗は分析能力に優れてそうに見える。


「ボクから見ての蒼? そうだね……まず、『術』の扱いは三流」


「三流!? そこまで!?」


「三流以下じゃないだけ成長成長。でも『結界術』はまだしも『拘束術』は本当に使い手が少ないからその希少価値で見たら蒼はすごいと思うよ」


「? 『結界術』って『拘束術』の応用じゃないの?」


 応用が使えるなら基礎が使えるようなイメージがあるが。


「厳密には違うね。それこそ拘束→封印はイメージできるけど、拘束→結界ってのはなんか違くない?」


「た、確かに……!」


「またジャンルが違うってだけ。似てはいるよ」


 『術』ってのもなんか属性分けとかあるのか。そりゃ一括りになんてできないよな。文化的なアレっぽいし。


「まあ文化的なアレではあるけども。ま、これから蒼がどんな『術』を身につけるかはボクだって予測不可能だけどさ……それでも、応援はしてるよ? 頼っても許してあげる」


「おおお、優しい……!」


 友達っていいなー!

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