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人妖!  作者: 家中由真
林間学校編
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二十九話 何かが爆ぜる音がした

本日はちょっと短めなお話です。

 カレーを食べたら後は風呂入って大部屋で寝るだけ。大部屋では枕投げ大会などが開催されたりと色々とあったが、途中で俺の記憶は途切れてしまっており定かではない。


 というわけで、紆余曲折を経て二日目である。


「先日は『旗』を確保できました。今日私達がすべきことは時間いっぱいまで『旗』を守り抜くことです」


 ──本日の目標。三時間ある『授業』にて『旗』を最後までチームの誰かが所持していること。

 現在位置は昨日の『試練』の場所である。溶け切らなかった氷のせいで若干フィールドが悪いという意見により少しずつ移動はしているが、できれば他チームとは交戦せずに時間を終えればそれでいい。


「悪いな、俺が後先考えなかったせいで」


「いえ。実際にあそこで北原さんが反応してくれたからこそ私はこうして今日も参加できています。どうかご自分を責めることのないよう」


 すごいさらっと大人の対応を取る。これが、包括力……!?


「それで、軽く移動してるけど、どこに向かうの?」


「一応は端に。他のグループと交戦を避けるために森の奥にでも身を隠そうかと」


「確かに、そのほうがいいのかもしれないね」


 グループに指定された『旗』の場所はそれぞれ東西南北に分かれており、俺達は森の東側だ。距離的に近いのは南と北を割り振られたチームだが、どこがどこのチームであるのかは伏せられている。


「他のチームの『旗』んとこにはどんなトラップがあったんだろうなー。昨日の夜は騒ぎすぎてそんな話しなかったし」


「ああ、男子の方の部屋、かなり煩かったですよ」


「そーいう女子の方は? あれか、恋バナか」


「セクハラです、鳴雨さん。まあ、普通の話ですよ、……あ、そういえば、私は参加しなかったのですが、クラスの男子で部門ごとに順位を決めてましたね」


「待って詳しく」


 ぶ、部門ごと。顔か、性格か、財力……ということだろうか。いや高校生に財力はおかしいか。


「そういう現実は知らないほうが良いんだぜ、鳴雨。っと、分かれ道か」


 葛が雷を慰め? ながら歩いていると、分かれ道があった。どちらも先は同じ様になっていて奥は暗くて見えない。


「……どっちがいいんだろう」


「あんな『試練』を用意するような教師だぜ? 絶対にトラップがあるとオレは踏んだ」


「僕もそう思う。アレも理不尽の極みみたいだったし……できれば痛くない、心臓に優しいやつがいいや」


 実際、仕掛けられているとしたら森の中なために落とし穴とかが妥当だと思う。それ以外は昨日見かけたみたいに岩が転がるとかだろうか。


「……でも、実際どっちに進む? 圭さん、昨日みたいに『術』で見分けられたりしない?」


「難しいですね。長距離もあれですし、実際に目の前にないものは」


 『術』というものは全て一長一短である、と学園長が前に言っていた。便利である反面、やはり何かしらの制約があるということだろうか。


 まあ、俺だって『拘束術』を完全に使い切れていないのだが。


「わかれる……ってのは?」


「確かにそれもいいと思います。どちらが『旗』を持っているか不明な分、相手の戦力を削げる……けれども私としてはやはり固まっておきたいです。敵は他チームだけでなくフィールド全体といっても過言ではありませんから。申し訳ありません」


「いや、俺が出しゃばった。妖鏡の意見が正しいな」


 フィールド全体が敵である。そんな圭さんの言葉には納得だ。あの矢の『試練』で色々と学べた、やっぱり妖怪の学校じゃ俺の常識だけで物事を測り切れない。


「で、結局右と左どっちに進む?」


「僕はもうどっちでもいいかなって。……あ、先頭も戦闘も嫌だよ!?」


「一番無茶な役だったからね、竜。俺としてはどっちでもいいけど、どっちがいいとかある?」


「俺も特にはねぇな。妖鏡、どうする?」


「……運任せにしましょう。ここに一本の小枝があります。倒れた方向に進みましょう」


 この場合、俺達はどっちにいっても良い状況下だ。だから運に任せるというのもまた一興だろう。


「右か、左か……」


 圭さんがパッと手から離した小枝はぐるぐるとその場を回り……


「……俺達の方向いちゃったな」


 引き返せとでも言っているのだろうか。けれども特段気にもとめずにもう一度小枝を掴もうとし──


「ッ、危ない!!」


「うわぁあ!?」


 ガッと思いっきり背中を突き飛ばされ、思わず尻もちをつく。どこからか現れたかわからない霧で辺りを満たされ、視界は不良だ。

 誰かが俺を突き飛ばした。この声は、雷……?


「な、なにごと……!?」


 なんとか起き上がり、どうにかして周りの状況を確認しようとして周りを見渡すと──


「──緋山!」


「りょーかいっ!」


 ──バチンと、何かが爆ぜる音がした。

 同時、バチバチと赤い火花が目の前に散った。


「え」


 次の瞬間には、俺は空に浮いていた。





「うぎゃああああああああ!?」


 みっともない悲鳴を上げてしまったが、仕方がないと言い訳したい。いや、何冷静に語ってんだって状況なんだ、本当に。

 空である。

 どうやら地上から俺は吹き飛んで空彼方へとぶっ飛ばされたらしい。なぜって? 知らん。


「ああああああ!! ぁあああああ!?」


 何かが爆ぜたような音がして、気がついたら空へとふっ飛ばされたいた。それで俺はどうやら最高点に到達したようで今はとんでもない速度で落下している。風圧とか諸々で顔はぐちゃぐちゃだし、てか痛い。


「ぎゃああああああああ!!」


 落下のスピードは止まることなく物理法則に則り加速をしながら俺を地面へと叩きつけようとしている。


 ……というか、本当にマズイな。

 周知の事実であり誰もがご存知であるかと思うが、もちろん俺は空を飛ぶことなんてできない。まあ、つまりだ、何が言いたいかといえば。


「──死にたくない!」











「──死なせない!!」

 ──そんな声が、聞こえた気がした。

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