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人妖!  作者: 家中由真
林間学校編
31/72

二十五話 バスの座席

 ──林間学校、前日。


「服……詰めた。生活用品も、詰めた。……あと何がいるっけ?」


 しおりとスーツケースの中身を見比べながら。荷物がキチンと揃っているかを確認していく。最終確認としてしおりにチェックマークをつけながら漏れがないかを見ていく。


「ん、大丈夫そうかな」


「蒼は終わったー? なな、基本的に制服で行動だよな?」


「確かね。向もあとちょっとで終わりそうだね」


 自室にて。リビングには四人がそれぞれバッグやスーツケースを広げながら中身を詰めていた。


「あ、桜。オレのしおり知らない?」


「俺は見てないが……向、知らないか?」


「うーん、どこまで記憶ある?」


 普段は動かさない物を動かすのでじゃっかんドタバタしながら準備を進める。というか、そうしているうちに俺の消しゴムが一個紛失した。


 ──そんなこんなで、準備は、林間学校は着々と始まりへと向かっていく。




 ──しおり、一部抜粋。目次・『午前授業』。


その一、指定された区域外へと出ることを緊急事態以外に禁ずる。

その二、最終的に『本物』とされる旗を保有していることが合格条件である。

その三、他チームとの協力を禁ずる。

その四、『術』の使用を全面的に許可する。

その五、他者へと不可逆の傷を負わせることを禁ずる。





 準備も終わり、一度教室へと移動する。そこで集合して最終的な点呼を行い学園の敷地内まで来てもらったバスへと移動するという流れであるらしい。


「おはよ〜、葛」


「はよ。麗は?」


「まだ今日は会ってないけど……まあ、ちょっと遅れて登校じゃない?」


 教室には今日は向と一緒に登校していて、そのまま入ったら葛がいた。今日は林間学校当日ということもあり、グループにわかれて固まっているように思える。


 ……かくいう俺も、葛と一緒に今はこうして雷の前にいるんだが。


「ああ、頭内だろう? オレも同じ旧校舎だが、朝にすれ違ったぞ」


「え? そうなの?」


 麗の行方が知れたのもよいのだが、雷が旧校舎棟であったことも初情報だ。


 ……何かあるのだろうか? 流石に聞いたら失礼であろうが。


「そういや、なんか先生に用があるって言ってたな」


「そうなんだ……」


「──すみません、遅れてしまいました」


 そう凛とした声が聞こえる。そこにはスーツケースを転がしながら登校している圭さんだった。そして、その隣には伯世君がいる。


「おはよう。三人とも朝早いね」


「俺は起こしたが……竜って朝弱いよな」


「そう言われると何も反論できないな。葛は朝が強くてうらやましいや」


 この二人は同じ部屋だったな。二人部屋、というのもまたそれはそれで良さそうではある。まあ俺は四人部屋で満足だが。そこらへんは少し意見が分かれそうである。


「とりあえず、昨日頼まれていたので全員分の地図を印刷してきました」


「ありがとう圭さん! あ、お代は……渡したか」


「ええ」


 昨日話し合いの最後あたりで全員が地図を持っていれば便利という話になり、圭さんが朝のうちに印刷してくれると話したのだ。昨日の内に印刷代を渡したが、ちょっとだけ罪悪感。


「……やっぱり広いよな、この森」


「だよね。学校の私有地って聞くけど広いなぁ」


 地図に印刷されている森はかなり広いと思う。そのう内の四隅に『旗』があるらしく、中央に移動してからスタートであるらしい。

 そしてその森の端っこに俺達が宿泊する施設がある。ここも中々に広い。


「──時間だ。点呼を取る、席につけ」


 気づいたら点呼時間であり、先生が教室に入ってくる。いつものように気だるげ特段代わりは見えない。となりには一つ鞄が置かれているが、小さめだ。二泊三日分も入っているのだろうか。


 そんなことを思っていると、ふと自分の後の席で音が聞こえた。振り向くと、少し不機嫌そうな麗がいる。


「不機嫌そうとは心外……って言いたいけど否定はできないや」


「何してたの?」


「んー、まあ特に」


「……そっか」


 まあ、これ以上聞かなくとも良いような気がする。直感だが。

 今は先生が最後の確認として荷物や規律の読み上げを行っている。俺はもう忘れてたら諦めようと思っている。仕方がないことは仕方がないのだ。うん、仕方ない。


「それで、今からバスに移動する。座席はしおりに書いてあるとおりだが、もう一度確認しておけ」


「「「はーい」」」


 しおり、目次、座席表。そこにはバスの座席が印刷されており、一つの席に一人の名前が書かれいる。俺こと咲崎蒼の名前は後らへんの窓側であり──伯世竜と隣であった。





 バスへと移動して運転手さんに荷物を集めてそのままバスの車内へと入っていく。座席が後の人から入っていくように言われているので俺はかけっこう早い段階で入ることになった。


「伯世君って最近何かハマってるものとかある? アニメとか、ゲームとかさ」


「僕? そうだなぁ、最近……あ、でも最近はミステリー系のドラマをよく見るよ。葛と一緒に見て犯人を当てっこしたりしてるんだ」


「へえ! 俺も家じゃミステリー系の小説とかあって、昔は読んでたなぁ」


 実家にはあまり娯楽道具がなかったので父の書斎に入り込んで小説を勝手に読んでいたのはいい思い出だ。俺も朱もそのおかげであるかそこそこ文学は知っている。有名どころはだいたい読んだ気もする。


「あ、あとは趣味なのかな、ミニチュアを作るのにハマってるよ」


「ミニチュアって、小さな町とか作るってこと?」


「そうだね。ピンセットとかで色々と動かしたりしてね。ジオラマもたまに作るかな」


 ジオラマとミニチュア……確か、ジオラマが街全体の背景とか諸々合わせてできたものであったか。

 俺はそういった細々とした作業はびっくりするぐらい向いていないのでたぶん作ろうとして全てを壊して終わる。


「蒼は何かにハマってたりしてる?」


「俺かぁ……そうだね、最近はパズルゲームとかさ、暇つぶし系のゲームをしたりするよ」


 ……まあ、ゆうて入学してからは学園長から個別課題と言われて小学生とかが身につけている常識とか妖怪の歴史とかをやらされているので遊ぶ時間が減っている気もする。


「お、ジオラマ? いいなー。今度オレにも見してよ」


「うわ、雷君。そうだね、葛、いいかな?」


「いいんじゃないか?」


 後の席は葛と雷が座っていて、今は雷が身を乗り出している形だ。圭さんは別の班の人と隣らしい。


 前に二人の部屋に行った時は奥に何かケースがあったように思ったが、流石に除くのは失礼だと思って見てはいなかった。でも、確かに生で見てみたい気持ちもある。


「にしても、こっから二時間だっけ? 三時間?」


「そこら辺だったよ、しおりの通りならね」


 まあゆうてもまだ四月。そこまで道路は混んでいないとそう思いたい。暇つぶしの道具は特段持ってきていないので、寝るか持ってくるように言われた課題を解くかのどちらかだ。できれば課題はさけたい。数学、キライ。


「……そうだ。何かゲームをしない?」


「ゲーム?」


「そう。んー、あ、じゃあYES/NOクイズしない? 先に咲崎君が回答者で僕が出題者。どう?」


 詳しくルールを聞き、それは質問を回答者が出題者にすることができるが全て二択で答えられる質問でなければならない。質問数が多すぎるとアレなので数を十へと縛る。始めに出題者がある程度のテーマを決める、という遊びらしい。

 そして、今回のテーマは「生物」だ。


「えーと、んじゃまず最初に……それは魚ですか?」


「NO。魚類じゃないな」


「魚じゃない……んー、でも一個ずつ虱潰しに五つも聞いてたら残りは五回……」


 爬虫類とか両生類とか聞くだけでも大きくわけられるが、それでもその後の絞り込む質問すぐあ少なくなってしまう。となれば、賭けに出るか。


「……それは哺乳類ですか?」


「なんだっけ……あ、違うね」


「マジでかぁ……」


 正直、哺乳類であると勝手に決めつけていたので違うのに軽くショックだ。もうちょっとテーマを絞ってから始めれば良かったか……


「三つ目……それは大きいですか?」


「いや、そこまで大きくはないね」


「なるほど」


 大型系は外れる。でも残るのが多い。

 ……いや、でも一瞬だけさっき伯世君は「哺乳類かどうか?」という質問で悩んでいた。だとしたらパット見でわかるヘビだとかトカゲは外れそうではある。


「……それは飛びますか?」


「いや、飛ばないよ」


「鳥でもない……だとしたらなんだぁ? うーん、……それは冬眠しますか?」


「え、しない、はず……だよ」


「歯切れが悪いな。えーと、魚類でも哺乳類でも鳥類でもなくて、そこまで大きくない生物……」


 これで質問は四つめ。残されたのは最後に当てるのもあるから実質的に五回、半分である。


「飼うことはありますか?」


「少なくとも日本じゃ聞かないね。施設ならまだしも」


「ペット的なあれでもない……」


 もっと絞り込むようなことを聞かなきゃ駄目かぁ? ……あれ。


「……ペンギン?」


「……せ、いかい。びっくりした、急に飛んだね」


「あ、いや、俺って鳥類ですか? って質問してないよね」


 魚ではない。哺乳類でもない。そこまで大きくない。冬眠しない。……飛ばない。

 そうだ。別に飛ばない鳥だっているだろう。豚の話ではなく。あそこで逆になんで俺は鳥類ですかって聞かなかったんだ。


「好き?」


「え、隙?」


「まったイントネーションが違った気がする。ペンギン、好き?」


「あ、好きか。うん、可愛いからね」


 俺もペンギンは好きだ。テチテチと歩いと思ったら仲間を突き落とす姿にギャップがたまらん。野生というのはやっぱり美しい。


「咲崎君は何か好きな動物とかいる?」


「好き……」


 間髪にれずに妹と答えようとしてしまったこの口をなんとか一回閉じて、少し考える。別に犬猫はそこまでだ。けれどもだからといって動物のアレルギーがあるとかはない。ただ、好き、か。


「────」


「……? えっと、」


「あ、どうだろう。アヒルとか可愛いなーって思うよ」


 アヒルも中々に可愛いのだ。水遊びしている動画で心を打たれた。……アレは、あんまり好きじゃないし。


 その後は少しだけ動物トークを繰り広げて、次は俺が出題者の番。少し掴んだ要領で、少しいじわるな引っ掛け系の問題を出してみようと思う。


「じゃあ、テーマはね──」


 ──初めての長距離の移動。これは、楽しい思い出として俺の心に残ることとなるのだった。

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