十三話 個性が強い
「えーと、五海駿です。趣味は……機械いじりとかです。一……じゃなかった。四年間、よろしくお願いします」
暗い青色の前髪テールの髪型をしたどこか生真面目そうな少年は、そう言った。
「稲荷向でーす! ……趣味はゲームです、よろしくお願いします」
金髪の狐耳の少年は、そう言った。……途中から自分のテンションに恥ずかしがりながら。
「影池穂香です。趣味、は特には……強いて言うなら読書が。四年間、何卒宜しくお願い致します」
黒髪をローツインテールにした真面目そうな少女は、そう言った。
「華胥之愛って言いまーす。趣味はカラオケとか、出かけるのが好きかなぁ。 四年間ヨロシク!」
紫髪をポニーテールにし左の前髪でその瞳を隠したどこか小悪魔の様な少女は、そう言った。
「……風滝瀬奈です。趣味は、最近はアニメとか、漫画とか。よろしくお願いします」
緑髪の少年はどこか気まずそうに、そう言った。
「私の名前は川岸凛です。趣味はお裁縫で、たくさん話しかけてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」
黄緑髪のとても明るそうな少女は、そう言った。
「鬼城院桜です。趣味? は、特にはありません。よろしくお願いします」
額に二つの黒い角を生やした少年は、そう言った。
「北原葛といいます。趣味、というより特技ですが、昔からウィンタースポーツが得意です。よろしくおねがいします」
黒髪のセーターを着崩した美少年は、そう言った。
「さ、咲崎蒼です。よろしくお願いしますっ!」
黒髪を肩で一つに結んだ少年は、そう言った。……緊張でセリフを少し飛ばしながら。
「ボクの名前は頭内麗です! 気軽に話しかけてください。趣味は読書です。よろしくね」
黒髪の前髪の両端を伸ばした『さとり』は、そう言った。
「鳴雨雷です。趣味はスポーツ観戦とかかな。まあ、四年間よろしく」
黒髪を腰まで伸ばした美しい少年は、そう言った。
「名前……銅牆成矢です。趣味、は、DIY、とか? です。よろしくお願いします」
灰色の髪の深蘇芳色のパーカーをまとった少年は、そう言った。
「伯世竜です! 特技は脚が速いことです! よろしくお願いします!」
白髪の左右に角を生やした少年は、そう言った。
「火山園て言いまーす。趣味は、んー、読書? です。よろしくね〜」
赤髪を一部サイドテールにした少女は、そう言った。
「えーと、正斬蓮太郎って言います。実家が美容院で、俺も散髪が得意です。強いて言うならヘアアレンジが趣味です。よろしくお願いします」
黄色がかった髪型をきれいに揃えている少年は、そう言った。
「……水無月花芽」
紺色の髪を腰のあたりで一つにした少女は、俯きながらそう言った。
「満夜瑠奈です! えっと、趣味はこれといってないんですけど、見ての通り犬耳なので、めっちゃ遠くの音も気づきます! よろしくお願いします!」
銀髪の犬耳と尻尾を生やした少女は、そう言った。
「……め、命厄風、です。よ、ろしく、おねがい、します」
緑色の髪を一部三つ編みにした肩にかからないほどの髪の少女は、そう言った。
「妖鏡圭といいます。趣味はこれといってありませんが、強いて言うなら料理が得意です。よろしくお願いいたします」
きらきらと輝く灰色の髪を三つ編みにした少女は、そう言った。
*
……うん、個性が強い!!
黒髪の割合が多いと言っても、そもそも容姿が美形ばっかりであるし、瞳の色が日本人じゃねぇ。髪型も多種多様だし、マジで一癖以上はありそうなクラスメイトである。
「蒼も蒼で一癖や十癖くらいありそうだけどね」
「え? そ、そう? ……褒めてる?」
「さぁ」
意味深に言われてもこっちが困るのだが……まあ、いいだろう。
「──この学校では四年にわたりクラス替えは行われない。途中で転校生が入ってきたりと例外はあれど、このメンバーで固定されると思ってくれ」
どっひゃあ、人間関係が拗れたら終わりだな。いや、人間ではないんだけど。
担任もメンバーも固定となると、通常と違い四年間もあるから、まあクラスメイト全員とお友達も夢じゃない、って感じなのかな。すごい呑気な発想だけど。
「まあこうしてボクも蒼も一日で友だちになれたんだし、事実夢じゃないだろうね」
「そうなら、嬉しいかも」
中学時代では友達ができなかったので、今度こそはとリベンジ精神のようなものが芽生えている。
「……ま、頑張りなよ。君はただでさえ諸事情で明かせない秘密を抱えちゃってるんだしさ」
「痛いとこを的確にキツく突くなぁ」
急所を刃物でぐりぐりと押されている気分。痛いし、辞めてほしい。……やっぱりコイツSっ気あるよな。
桜にバラしたこと、気にしてるのだろうか?
「時間割などは後でプリントで渡す。今日の予定としては、この後にクラスごとで校舎案内がある。五組は九時半からだな。……その前になんだ、親睦を深める時間を作るよう言われ……作るから、そうだな、机をくっつけてくれ」
まあ、ほぼ初対面の面子じゃあこういった時間が欲しかったのも事実だ。先生の指示に従って机を四人で一つにする。ただこのクラスは四×五で机が並んでいるので、数的に五人一組が四つできることになる。
こうしてメンバーは俺・麗・葛・瀬奈・愛さんに決まった。
「さっきの自己紹介でも言ったけど今一度。ボクの名前は頭内麗。気軽に下の名前で呼んでね」
「俺は風滝瀬奈だ。俺も気軽に呼んでくれ」
「北原葛。よろしく」
「華胥之愛って言いまーす。よろしくね」
「咲崎蒼です。よろしくお願いします!」
……美形ばっかだなぁ。ちょっと涙出てきそう。いや、別にこの顔は普通だと思うよ? でも周りの偏差値が上がると相対的に自分が衰えて見えるんだよ。
そんな俺の劣等感にまみれた醜い内心を知っている麗だけが少し引く顔をしながら、他のメンバーは話を進めている。
「んー、こういう時はどんな話題が良いんだろうねぇ。あ、部活って何か入る予定ある?」
「部活?」
この学校では部活動への所属は必須となっていて、種類も多い。運動系も文化系も広大な敷地を持っているからこそ同時に複数の部活ができこともあり活動日も多めだろう。
「俺は運動系かな。ずっと中学でも運動部だったから、できればになるけど」
「うーん、言い出しっぺだけど、わたしはこれと言って入りたい部活動はなんだよね。まあ、わたしも運動系かな。体動かすの嫌いじゃないから」
そう言いながら愛さんはさらりと髪を撫でた。そうすると、必然と彼女の正面に座っている俺はその隠れている耳が見えるわけで。
……あ、愛さんって、ピアス付けてるんだ。
よくよく見ると、彼女の左耳にはピアスがついており、棒状の貴金属がそこから垂れている。左側の前髪を長く伸ばしているから気づかなかった。
「……蒼、流石にヘンタイだよそれは」
「唐突な罵倒! やめて! 人のことをよく見てるとか、すごい観察眼だねって言って!」
「凄い観察眼だね」
「変態眼って何!?」
やめてよ! 見たら気づくけど見ないと気づかないから今気づいたんだよ! 決して俺が女の子の左耳をまじまじと眺めている変態ってわけじゃないから!!
「その言い方もアレだよ」
「八方塞がり!」
「? ピアスは校則違反じゃないからね、高校デビューにはしゃいじゃって付けたんだよ」
「そ、そうだったね」
これ以上誤解はされたくない!
そんな切実な思いでなんとか決死の覚悟で話を無理やり切り替える。
「そっ、それで葛と瀬奈はどの部活入りたいとかさ、ある?」
「ん? そうだな……俺はどっちかっていうと文化部かな。運動部ってのは柄じゃない」
「オレは……まあ中学の頃と同じくバレー部かな。この学校にはあったと思うし」
「バレー! そうなんだ」
俺の場合は運動部でも陸上部だったので、球技に関しては全く持って初心者だ。それこそ学校の授業でバスケとかをちょっとやったくらい。
──その後も他にも学校の委員会の話とか、他にも行事の話、中学での話とそれなりに盛り上がり、先生の声で解散となった。
その時に。
「ねね、蒼。今度一緒に部活動見学いかない? 葛も誘ってさ」
という麗からの提案により、来週から始まる部活動の見学は三人で回ることになった。
そして、この後には学校見学だ。このバカでかい校舎と敷地を回ると思うと少し萎縮するが、同時に、それ以上に楽しみなのもまた事実。
まだまだ知らないことばかり、であるということは知れるということ。その高揚感が、俺は嫌いではない。




