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人妖!  作者: 館内放送
入学編
1/25

一話 進学する高校

 ──今でもその日のことは、言葉は、鮮明に覚えている。

 

 いつものように、制服をきちんと身にまといながら帰った帰り道。クラスメイトが寄り道しているのを片目に流し見しながら、イヤホンを両耳に突っ込んで誰とも会話せずにいた通学路。


 ああ、そういえば今日は珍しく父さんが家にいる日であったな。──そんな風に呑気に考え歩いていた俺を今となっちゃぶん殴りたい。


 通学路を普通に歩き、二十分程度の道を歩ききり、家に到着。中学三年生になってようやっと渡された自宅の鍵を鍵穴に差し込み、くるりと回す。カチャン、と小さな音が鳴ってそのまま家に入った。

 学校指定の靴を脱ぎ、整えて手洗いでもしようと洗面所の方向へ足を向けると、リビングの扉から一人の頭が見えた。父だ。


 「(あおい)、ちょっとこっちこい」


 父が自分を呼ぶだなんて珍しいこともあるもんだと、そう考えた。あまり俺の父親は自分の子供に干渉しないタイプなのに。今日は天気予報が外れそう。

 まあ、呼ばれたからには行かねばならない。簡単に自分の両手を洗いうがいを済ませ、制服のままリビングへと姿を表した。

 リビングには特に変わりのなさそうな父の姿が確かにあった。しかし、まとう雰囲気は通常時のものではない。どこか張り詰めるような、思い詰めるような空気が辺りを満たして、呼吸がしづらい。


「……何?」


「随分ぶっきらぼうだな、反抗期か?」


「そんなんじゃねぇよ。ただ、育児放棄気味の父さんには、いい加減、(あかね)のためにもちゃんと毎日家にいてもらいたいなと」


「耳が痛いな、聞かなかったことにしていいか?」


「ご自由に」


 ここで聞かなかったことにするからこの父は駄目なんだろうなあ、と心の奥深くで考えながら、眼の前にある俺専用のグラスに入った麦茶を一気に煽る。


「それで、話なんだが──」


 ──嫌な予感が、していた。

 嫌に心臓の鼓動がうるさく、汗腺が仕事をしている。全身が、異常であると、そう伝えてくる。これ以上、父の話を聞けば、この異常は更に顕著になるとも、そう。


 「──お前の、進学する高校が決まった」


 「……は?」


 現在、五月某日。

 そう、中学三年生であれば受験勉強を始めてもおかしくない時期だ。

 かく言う俺も、特段志望校や進路は決まっていないが、勉強に力入れだしている。お陰で、人生でもう二度と読みたくない書物ランキングに英単語帳が乗ったところだ。

 そんな俺に、父は今、なんと言った?


「ちょ、い、まてや!」


「おお、父に向かって随分な口の聞き方だな。反抗期か?」


「やかましい! 反抗期相手には触れねぇのが良いんだよ! いや、んなのどうでもいい!」


「ノリツッコミが激しいなぁ……」


「は、は!? 進学する高校? なんで断定形なんだ。俺の進路には口を出さないって、約束だろ!」


 それが、俺と父の間に結んだ約束だったはずだ。俺がこの先、何をしようが、何をしたいと望もうが、一切口を出さないと。それが、俺と父の不可侵のはずだ。

 なのに、なんで──


「……これに関しちゃ、言わなきゃいけないことが多すぎるな」


「ああ?」


「大人しく、冷静になって話を聞いてほしい」


「なんで。悪いけど、今の俺の機嫌は最底辺だぞ。この状態の俺は何したって無駄、わかってんだろ」


「知ってるさ、親なんだから。そうじゃなくて、高校の決定した、その理由だよ」


 どうどうと、猛獣を治めるように手を振る父の言葉に、とりあえず耳を貸す。とりあえずだ。


「落ち着いたか? じゃあ、話すが──蒼、妖怪って、信じるか?」


「……はぁ?」


「わかる。父さんもぶっちゃけ信じてない」


「いや、待って、話についてけないんだけど。なんで急に妖怪……妖怪って、アレだよな、妖怪変化の、妖怪」


 急に父によってもたらされた疑問に、頭の処理が追いつかず間抜け面を晒した。すぐに妖怪という単語から頭の中にヒットをかけて、出てきたのは妖怪変化の、化物だ。


「一つ目小僧とか、一反木綿とか、そういうの、だよな」


「あってるあってる。そういやお前、小さい頃はよくそういうジャンルのアニメ見てたもんな」


「あー、まあ、好きだったし。って、話がズレてる。何? 妖怪がどう俺の進路に関係すんの?」


「いや、なに、蒼の入学予定の高校が妖怪学校という話らしくてな」


「…………はぁ?」


 ようかいがっこう? なん、なんだそれ。

 理解が追いつかずにほうけていると、そんなのは関係ないと、むしろ黙ってくれて好都合と言わんばかりに父の口は周り続ける。


「いや、なあ、なんでも政府だがなんだかが妖怪と人間の間で一人ずつ交換で政府直下? の学校にいれようってことになったそうなんだ。完全ランダムで、高校一年生になる子限定で選んで、それで蒼が選ばれたらしくて……別に俺はそういうの特段反対しないし、いいんじゃないか? というか、知らん間に拒否権が消えててな、怖いな!」


 濁流のように流れ込む情報を、なんとか咀嚼し、飲み込む。

 政府のプロジェクトとやらで人間と妖怪を一名ずつ交換して、それに俺が選ばれた……


「……はぁ?」

読んで頂きありがとうございます!

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