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第38話:婚約パーティーへ

 あれよあれよといううちに、フレデリックの婚約パーティーの日になった。


 王子の正式な婚約発表パーティーなので、当然のごとく会場は王宮のボウルルームだ。

 もちろん正装なので、アリシアもとっておきのドレスを作ってもらった。


(いいのかしら……私、王族のパーティーに出席しても……)

(しかも、仮の婚約者なんて中途半端な立場で……)


 だが、ヴィクターの笑顔に勇気をもらい、アリシアはパーティーへと出向いた。

 正装した華やかな貴族たちで広いボウルルームはぎっしりだ。

 奥には玉座ぎょくざも用意されている。


(もし……本当にヴィクターと婚約したら、私もこんなパーティーに……?)


 考えるだけで足がすくむ。


(分不相応だわ。私、目立ちたくない……のんびり暮らしたいだけなのに)


「アリシア、大丈夫か? 緊張しているようだが」


 ヴィクターが心配そうに顔を覗き込んでくる。


「すごい人ばかりで……」


(でも……この人と離れたくない……)


 アリシアはきゅっとヴィクターの腕をつかんだ。


「大丈夫! この二ヶ月できみは各国の大使やそうそうたる貴族の面々と会ってきただろう? ほら、見知った顔触れがあちこちにあるじゃないか」


 そう言われ、アリシアは改めて会場を見回した。


(本当だわ……ご挨拶した人たちがたくさんいる……)


 特にスフィア王国大使夫人のマリカは、目が合うと満面の笑みを見せてきた。


「アリシア様!」


(マリカ様……ホッとするわ。彼女の存在が)


 胸元にエメラルドのペンダントを輝かせたマリカはとても可憐だった。

 夫のシオンと腕を組み、とても幸せそうだ。


(幸せそうといえば……)


 目立つ美貌で周囲の視線を集めているマルティナも、シドニア公爵と仲睦なかむつまじそうに談笑している。

 あの後、夫としっかり話し合い、望郷の思いを理解してもらえたようだ。


(よかったわ……)


 自分が関わった件はやはり気になっていたので、アリシアはホッとした。

 そのとき、マルティナのオリーブ色の目がアリシアに向いた。


 輝くような笑顔には、アリシアへの感謝の思いが込められていた。

 アリシアも笑顔を浮かべ、軽く膝を折って会釈をした。


「――カミラ様よ!」


 いきなり周囲がざわめき、アリシアは驚いて振り返った。

 一人の貴婦人が優雅に会場に現れていた。


(あれがカミラ妃……フレデリック殿下の母上で第二妃……)


 野望を抱くだけあり、カミラの容姿は群を抜いて美しかった。

 だが、傲然とした表情や、周囲を気遣うことなく歩みを進める姿は刺々(とげとげ)しく映った。


 何より、幼いヴィクターに悪夢の魔宝石を贈った女性だ。

 アリシアは自然と厳しい目になっていった。


 ぎゅっとヴィクターの手を握る。

 アリシアの意図いとを察したのか、ヴィクターが笑顔を浮かべた。


「大丈夫だよ、もう昔のことだ」

「でも――」

「今はきみがいてくれる。魔宝石なんかにつけいられない。そうだろう?」

「ええ」


 いつの間にか奥の玉座に、王と王妃が腰掛けていた。

 そして、かたわらにはフレデリックとエリスの姿もある。


 睦まじそうなふたりを目にしたカミラ妃の眉間にしわが寄った。

 明らかに息子の婚約を歓迎していないのが手に取るようにわかる。


 王位を狙うのであれば、有力者の娘と結婚するべきなのに、相手がよりにもよって平民なのだ。


(でも、お二人は愛し合っているのに……)


 カミラ妃の表情は、とても息子の幸せを願う母とは言えなかった。

 アリシアはつらくなり、そっと視線を外した。


 子どもよりも自分たちの幸せばかり考える親はどこにでもいる。決して珍しいことではない。


「お姉様!」

「えっ」


 いきなり声をかけられ、アリシアは青い目を見開いた。

 金色の髪を結い上げたシェイラ――二つ下の妹――がそこにいた。


「シェイラ!? どうして――」


 結婚して家を出てから一度も会っていない妹が、笑顔を浮かべて立っていた。

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