表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/48

第28話:第六王子からの誘い

「アリシア、ちょっといいか?」


 届いた郵便物を見ていたヴィクターが声をかけてくる。


「ええ、何?」


 アリシアはペンを置いた。

 外交担当のヴィクターには毎日、大量の手紙が届く。朝食後はその選別に追われる。


 アリシアも一緒に執務室で返信の手伝いをするようになっていた。

 以前、ケインの屋敷でもやっていた女主人の仕事なので慣れている。


「義弟のフレデリックが婚約するらしい」

「フレデリックって……第六王子の……?」


 アリシアは王族の系譜を思い浮かべた。

 フレデリック第六王子は二十三歳。母は側室である第二妃で、ヴィクターとは腹違いの兄弟となる。


 遠目に見たことがあるが、輝くような黄金色の髪をした美男子だ。


「そう! 俺とは逆に派手に女性と付き合いまくっている、社交界の華だよ」

「確かに……」


 フレデリックは輝くようなオーラを放っており、彼の周りには女性たちが鈴なりだった。


「フレデリックはパーティー好きで、月に一度屋敷でパーティーを開く。今回は初めて恋人をお披露目するので、ぜひ来てほしいとのことだ」

「ということは、婚約パーティー?」


「その前段階だな。親しい身内や友人に紹介して、後日改めて公式に婚約パーティーを開くのだろう」

「……私、出席してもいいのかしら」


 かりそめの婚約者である自分が、他の王族のパーティーに第五王子のパートナーとして出席することに躊躇ためらいがあった。


「もちろん、一緒に来てほしい。王族ということで肩肘を張る必要はないよ」


 ヴィクターが安心させるように微笑んだ。


「平和な時代だ。間違いなく第一王子の兄が王位を継ぐだろう。小さいがもう御子もいる。第五王子の俺は気楽なものだ」


 それは確かだろう。でなくば、離婚経験のある侯爵令嬢など、非公式とはいえ婚約者にするわけがない。


「しかし……フレデリックの相手とは誰だ? 会うたびに違う恋人を紹介されてよくわからん」


 どうやらフレデリックはヴィクターと違い、恋多き王子のようだ。


「そういえば、ここ三ヶ月くらい忙しくて会っていないな。いい機会だから出席しようと思う。アリシアも一緒に来てくれるか?」


「え、ええ、もちろん……」

「こぢんまりしたパーティーだ。気楽にしてくれ」


 ヴィクターはそう言ってくれるが、仮にも王子主催のパーティーなのだ。


(ちゃんとした格好でいかないと……)


「さて、他には……」


 郵便物のチェックに戻ったヴィクターが手を止めた。


「アリシア、きみに手紙が来ている」

「私に!?」


 アリシアは驚いた。


(もしかしたら、マリカ様から?)


 自分にわざわざ手紙を送ってくる相手など、マリカくらいしか思い当たらない。

 手渡された手紙を開けたアリシアはぎょっとした。


「え……嘘」

「どうした、アリシア」


 アリシアの動揺に気づいたヴィクターが近寄ってくる。


「誰からだ?」

「……ケイン。元夫よ」

「ウェズリー伯爵だな」


「ええ……なぜ私がここにいるってわかったのかしら」

「社交界一の噂好き、ギャレット夫人のお茶会に出たんだぞ。もう知らない者はいないさ」

「そうよね……」


 落ち着いて考えればわかる。

 アリシアがヴィクターの元にいることは、遅かれ早かれケインの耳に入っただろう。

 それでも胸騒ぎが止まらなかった。


(今更、何の用かしら)


 アリシアは不安な気持ちを押し殺して手紙を読んだ。


「なんて書いてあるんだ」

「えっと……信じられないが、きみがヴィクター王子の婚約者だと聞いた……長々と書いているけれど、要するに本当に王子の婚約者なのか、と聞いているみたい」


「そんなつまらないことをわざわざ手紙にして寄越よこしたのか」


 ヴィクターが呆れたように眉を上げる。


「そのとおり、とだけ書いて返せばいい」


 アリシアは思わず笑ってしまった。


「そうね」


 ヴィクターのそばにいつまでいられるかわからない。

 婚約者といっても名ばかりだ。

 だが、慌てふためいたであろうケインの顔を想像するだけですっとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ