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198  作者: Nora_
8/10

08

「もう一月か」

「そうね」


 僕は別に前に進んでほしくないとか考えているわけではないけどどんどんと前に進んでいってしまう。

 彼女達と話し始めたのが十一月なのも影響している、どうしてこんなに早いのだろうか。


「美森は寒がりさんなのに外だと寒いとか言わないね」

「言うともっと寒く感じるから言わないようにしているのよ」

「そっか」


 ちなみに僕達の後ろを歩いている柚莉愛は「寒い」とか「学校に行きたくない」とかわがままばかりを言っていた。

 それこそどんなことがあろうと学生である以上は行かなければならないわけで、言わない方がいいことだと思う。

 というか冬休みは美森か僕とばかりいたわけだから久しぶりにグループの子達と会えることになって嬉しいとなるはずなんだけどな。


「なんで夏休みと違ってこんなに短いのか、冬差別だ、だからおかしい」

「ぶつぶつ言っている誰かさんは放っておいて今日も頑張りましょう」

「そうだね、頑張ろう」


 いやまあ初日なら分かるけどもう十日なのにずっと続けているから美森もこのような対応になってしまうというところだった。

 もちろん冗談だろうけど何度も繰り返されるとね、多分、最後まで付き合える子はいない。


「美森って『独占しないでちょうだい』とかなんとか言っていたけど積極的に別行動をするよね」


 反対側を見てみると今日もお気に入りのグループの子達と楽しそうにお喋りをしている美森が見えた、が、周りもきっと求めているから仕方がないことだ。


「お友達が多いんだから仕方がないよ、というか、柚莉愛だって同じようにしなければならないはずなんだけどね」


 そのグループの近くに彼女のグループも存在している、あのグループはやはりグループ内の子としか話さないけどそっちも楽しそうだ。

 輪に加われたことがないから少し羨ましく感じる、ただ、合わせなければならないことも出てくるだろうから一人でよかったと考えている自分もいる。

 ただ、いいところだけを見て羨むのは危険だけどついつい繰り返してしまうのが僕だった。


「強制されて集まるようなグループじゃないからね、それに一緒にいたい子と一緒にいようとするのはなにもおかしなことじゃないでしょ」

「もう、だからやめてって、僕相手にそれは危険だよ」

「危険ねえ、じゃあなにかしてきてよ」

「それなら空き教室に行こう、さすがに教室では過激なことをできないからね」


 って、勢いで乗っかった形になるけど空き教室なんかに連れ込んでどうするのかという話だ。

 経験がないからできても抱きしめるぐらいでしかない、でも、そういうことすら勢いですることではないだろう。

 それにこうして考えてしまった時点で失敗だと分かる、だから連れて行っておきながらなにもすることができなかった。


「あれ、過激なことをしてくれるんじゃないの?」

「が、学校だからやっぱり駄目かなって、健全に過ごす場所だからやめておこうってなったんだ」

「ふーん、あ、ちょっとゴミがついているから取ってあげるよ」


 ゴミを取ってあげると言った割にはむしろくっつけるかのように頭を撫でてきた、ちゃ、ちゃんと取ってほしいかな。

 余裕があればトイレに行って鏡で確認しようと決める、こういうときのために小さな手鏡なんかを持ってきておいてもいいのかもしれないという考えにもなった。

 でも、違かったのはそこからで、彼女はゆっくりと抱きしめてきた。


「なるほど、正面から誰かを抱きしめることって全くしないからどんな感じなのかと気になっていたけど、こんな感じなんだね」

「柚莉愛は温かいね、なんか落ち着くよ」


 彼女はすぐにやめて一歩下がる、でも、何故かなんとも言えない顔をしていて気になった。

 受け入れられないからせめてこれぐらいはという考えからしてくれたのだろうか? いや、そもそも僕のこれは恋なのかな。

 恋をしている状態であれば気に入っている相手から抱きしめられて落ち着けるわけがないと思うけどな、それとも、そういう緊張とかをするような段階はもう終わってしまっているということなのだろうか。


「和音、キスしていい?」

「ちょっと待った、柚莉愛はそれでいいの?」


 ちゃんと確認をしておかなければならない、言い方は少しあれだけど言質を取っておかないと不安になってしまうというところからもきている。


「うん、誰でもいいわけじゃないからね」

「ここ、学校だけど、下手をしたら誰かが来るかもしれないそんな場所なんだけど」


 教室からそう離れていないから同級生に見られる可能性が大だ、また、たまたま通った下級生や上級生に見られてしまうかもしれない。

 見られて喜ぶ人間ではないから仮にするのだとしても家でいいではないかと内で叫ぶ、でも、もしこのまま彼女がしてきたら曖昧な状態ではなくなって安心できるかもしれないというそれもあって難しい。


「関係ないよ、和音だからいいんだし、和音だからしたいんだよ」

「ぼ、僕からは無理だけど柚莉愛から――ちゅ、躊躇がないなぁ……」


 彼女は先程と違っていい笑みを浮かべてから「そりゃそうでしょ」と答えてきた。

 ちなみに安心できずに学校でやってしまったというやばさに負けて一日中集中できなかった。




「いやらしい子ね、あれではなにかがありましたよと自分から言っているようなものよね」

「な、なんか冷たくない?」

「別に、でも、まさか自分の友達がここまでいやらしい子だとは思っていなかっただけよ」


 やけに僕にだけ厳しかった、柚莉愛の方には「付き合い始めたのね、おめでとう」と言っていたのにこれだ。

 そうか、柚莉愛を横取りしてしまったから冷たいのか、僕に嫉妬をしてしまっているという状態なのか。


「で、できる限り柚莉愛とこの関係でいられるように頑張るから、でも、横取りしちゃったのはごめん」

「は?」

「ひぇ!? な、なんで今日はそんなに僕に厳しいの……」

「はぁ、そういうことね、つまり戦う以前の話だったのね、ライバルにすらなれていなかったというのはむかつくわ」


 怖いから逃げるは残念ながらできなかった、何故ならここは教室だからだ。

 放課後というのも困るところだった、ちなみに柚莉愛は突っ伏して休んでしまっているから助けを求めることもできない。


「柚莉愛、起きなさい」

「いや起きていたけどさー、美森って和音のことが好きだったの?」

「あなたみたいに一緒にいられていたら変わっていたわ」


 あ、そういうことなの? だから勘違いをした僕に厳しかったのか。

 いやでも柚莉愛が美森を、美森が柚莉愛をということなら分かるけど相手が僕となると分からなくなる、正直、柚莉愛のためには最初だけ動けたけどそれだけで好きになってもらえるとは思えないし……。


「なるほどねー、じゃあ美森の失敗は先輩といることを選んだことだね、それも彼氏がいて付き合うことすら不可能な先輩のさ」

「別に先輩に彼氏がいなくても変わらなかったわ」

「じゃあ単純に和音といなかったからだね」

「ちっ、和音よりも柚莉愛の方がむかつくわ」


 えぇ、舌打ちをするとは、あ、だけどこれも仲がいいからこそできることなのか。

 もちろんこういうことは少ない方がいいけど言い合いをしても一緒にいられるような関係を求めている、柚莉愛とそうなれるかな。


「知りませーん! 私はあなたと違ってずっと和音と過ごし続けたんだからこうなって当然なんですよー」

「……ふぅ、和音、私はなんとか耐えられたわ、でも、このまま一緒にいるとぶっ飛ばしたくなるから帰るわね」

「あ、き、気をつけてね」

「ええ、あなたも気をつけて」


 柚莉愛は教室から彼女が出て行く前に「うわ怖いなぁ」と、いやでもこれはやりすぎだ。

 もう少しマイルドな感じでやっていきたい、それならなんとか長期化できそうだ。


「さてと、いまからは和音を独占しますかね」

「そういえば言ってなかったけどありがとね、お友達としていてくれたことも、受け入れてくれたこともさ」


 これを言い忘れるなんてどうかしている、でも、思い出しただけではなくちゃんと言えてよかった。

 こういうことをちゃんと言っておくことで自分の理想とするそれに少しずつ近づくだろうからこれからも忘れないようにしよう。


「どっちも私がそうしたくてしているだけだからお礼なんか言わなくていいんだよ」

「そういうわけにもいかないよ、で、お礼の仕方なんだけどいい考えが出てこないからまたなにかを買うということでもいい?」

「駄目、そんなことより一緒にいてくれればいいよ」


 彼女は一気に距離を縮めてきてそのまま抱きしめてきた、うん、こういうときはやはりドキドキよりも安心できるから何度もしてほしいと思う。


「するよ?」

「ま、待った、抱きしめるのはいいけどそれはよくないと思う」

「なんでー、あれから一回も受け入れてくれないじゃん」

「そ、それはほら、歯磨きをした後じゃないと気になっちゃうし……」

「問題ないよ、するからじっと――はぁ、いちいち変なことを気にするなっ」


 気にするなと言われても気になるものは気になるからここですることを許可しなかった。

 それこそお休みの日とかなら、自分の家だったり彼女のお家だったら気にならないはずだからそのときにしてほしい。

 そのときなら逃げないと誓おう、で、実際にそうぶつけてみると「約束だからね、破ったらお尻を叩くから」と言ってきたものの、受け入れてくれるみたいだったからほっとする。

 だからまたありがとうと言っておいたのだった。

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