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新たな仲間へ

ミライとソウト、机を挟みユカ、ユナ、セラの順に座ったところで開口一番にユカがプリントを配る。


「とりあえずこのプリントを記入して。この登録が完了しない限り、私達も事情が説明できないから」

「……住民、登録ですか?」

「日本とは世界の仕組みが違うからね。身分証明のためだと思って書いてよ」

「これって全部埋めないといけない感じですか?」

「そう、どうしても書いてもらわないと困る部分があるんだよね……」


住民登録に必要な情報は主に名前、生年月日、血液型、性別、アレルギーの有無など、個人情報に関連するものである。

個人個人のペースで書いていく二人の手元を見ていたユナは、ようやく彼らの名前を理解する。


神崎(かんざき)未来(みらい)ちゃんと北岡(きたおか)奏斗(そうと)くん、ね。改めていい名前だね」

「ありがとうございます」

「……ありがとう、ございます」

「ほら、ユナ。あくまでも個人情報に入るんだから見ちゃダメでしょうが」

「うぐっ……もう、引っ張らないでよ」


首元から後ろへとセラによって強制的に引き下がり、女子ならぬ声が漏れる。

毎度のことなのか、軽く睨むだけで目線を戻したユナは思わず目を見開く。


「えっ、もう終わったの!?」

「はい。それで、記載された情報に変更が生じた場合のことなんですけど……」

「あぁ、さっき話しかけた受付の人に報告すればいいの。容姿とかが変わったら、個人を特定できないからね」

「ではこれは私の方で受理しますが、一つ守ってほしいことがあります。この世界、またはここで起こった出来事は決して他人に公言しないこと」


暇そうに髪を弄っていたセラの動きが止まり、ユナも黙ったまま紙の一番下に書かれたサインの部分を指差すユカを見つめる。


「……それって、破ったらどうなるんですか?」

「公の場で住民登録が取り消しが伝えられ、追放……二度とこの世界には来れなくなるよ」

「でも破ったかどうかなんて分からなくないですか?」

「それもそうなんだけどね……私も、そのところはよく分かっていないんだ。この世界はまだ謎に包まれてるからね」

「……ここまで聞いた上で、この規則を守ってくれるとお約束していただけるならサインを」


ユカの一言に、二人の名前が書かれる。

その文字は光を放ったと思えば、紙に焼き付くようにはっきりと存在を主張した。

二枚の紙を回収するユカを他所に、形苦しい雰囲気を壊したのはユナだった。


「……ここの住民になれたってことで、改めて自己紹介だね!私はユナ。タメ口で話してくれると嬉しいかな。神界では修界者(しゅうかいしゃ)をしています!」

「僕はセラ。ここでは警備守護者(けいびしゅごしゃ)っていう、治安の維持を主にしてる。ユナとは同期で、付き合いが長いんだ」

「……ユカです。ユナとは姉妹で、基本的にここで色々やってます。以上」

「あの、シュウカイシャってなんですか?」


未来の質問を待っていたかのように、ユナは目を輝かせながら言葉を紡ぐ。


ここ、神界は本や漫画の物語及び世界観が浮かぶ一つの生命体として存在している場所のことを指す。

その一つ一つを「世界」と呼んでおり、そこには「バグ」と呼ばれる異常事態が随時発生している。

それを直すことが、修界者の仕事である。


「誰しも一度は憧れる仕事ではあるんだけど、かなり危険なんだ。能力検査を通して、自分の能力がどれほど強いことを理解しても、必ずしも就くべき仕事じゃないからね」

「僕みたいに守護者になる道も当然ある。修界者と違って危険性も少ないし、仕事も幅広く選べるよ」

「……私も守護者ではあるけど、ここ夢幻郷(ユートピア)で自分の意思のまま自由にしている人も多いし、ここでの過ごし方は人それぞれ」

「この話をしたってことは、何か関係があるんですよね?」


未来の問いかけに全員が首を縦に振る。

住民となった以降は過ごし方はそれぞれだが、能力という個性を持つ以上はそれなりの知識は必要不可欠となる。

そのような知識を学ぶための教育機関が神界には存在している。


「その教育機関では就きたい職業別の授業もあるからね!私……的には修界者はオススメできないのだけど」

「僕としては大歓迎だけどね。そっちとは違って、常に人不足なんだから」

「まるで私が原因みたいに言わないでもらえるかな!?」

「どっかの誰かさんが人助けと称しては人を誑かしては、勧誘してるからね〜。あ〜、恐ろしっ」

「あのねぇ!?」

「喧嘩するなら追い出すけど……別に今決める必要はないから。ただ入学手続きするついでに聞いてるだけに過ぎないし」


ユカの一言で静まり返った二人に、未来と奏斗は顔を見合わせる。

言葉を交わすことなく無言であった二人は、決心したかのように前へと振り返る。


「私、修界者になりたいです」

「……僕も、です」

「おぉ、ちなみに修界者になるのは相当大変だからね?頑張ってね、後輩たち!」

「まだ正式に決まったわけじゃないのに、先輩ズラしない方がいいと思うよ〜」

「……そのように伝えておくので、私はこれで」


颯爽と扉から去っていったユカを追いかけるようにユナが立ち上がる。

そして、彼女は二人に手を差し伸べる。


「改めて、神界ーー夢幻郷へようこそ。神崎未来ちゃん、北岡奏斗くん。

新たな仲間として、貴方を歓迎します!」


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